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旅芸い者放浪記

前沢政次 ブログ

精神医学は変われるか?

2014-02-03 06:57:34 | 読書
resilienceはレジリエンスとなったり、レジリアンスとなったりしていますが、後者は精神医学分野の方々の本で使われています。

「病気に陥らせる困難な状況や病気そのものを跳ね返す復元力・回復力」と考えられています。

これまでの精神医学は患者を「障害化」、「病気化」「脱主体化」してきたのではないか。この反省に基づいて、患者の回復力を引き出そうとするものです。

生物学的還元モデルから将来志向的な生成モデルに変わることができるのでしょうか?

加藤敏、八木剛平編集『レジシアンス 現代精神医学の新しいパラダイム』(金原出版)では新しいパラダイムの提案をしています。

子どものレジリエンス

2014-02-02 12:14:08 | 読書
佐藤元美先生からコメントをいただいた「レジリアンス」は精神医学分野や子どもの行動学で使われている言葉です。

子どもの分野では深谷昌志監修『子どもの「こころの力」を育てる―レジリエンス―』(明治図書)が出版されています。

「元気、しなやか、へこたれない」力をつけようと呼びかけています。

元気:  ①自尊感情 ②感情の調整 ③欲求不満耐性 ④直接体験の積み重ね

しなやか: ⑤楽観性、プラス思考 ⑥つながる力 ⑦コミュニケーション能力

へこたれない: ⑧ストレスコーピング ⑨立ち直れる自信と見直し ⑩アイデンティティー、正義感、信念 ⑪夢や目標、生きる意志 

ここまで細かく分けると、何がだいじか分かりづらいですね。みんな大事、総合力ということになりますでしょうか。

昔、感銘を受けた本

2013-12-14 22:46:58 | 読書
昨日、一昨日と書きましたのは、ある出版社から「座右の医書」という原稿を2本依頼されたからです。

まだ推敲されておりませんが、昔を思い出して書きました。

ぼくの医療観の基本はこれらの本によって形成されました。

今、手元にない本もあり、厳密に「座右」とは言えませんが、編集者の方が引用のため国会図書館まで出向いて原本を手にしてくれました。感激でありました。

大段智亮先生と真壁伍郎先生

2013-12-13 07:29:13 | 読書
大段智亮・石川左門・土橋洋一『死と向かい合う看護』(川島書店)
真壁伍郎『看護しつつ生きるとは、なに』(日本看護協会出版会)


 「君のやっていることは医者の仕事じゃない」とぼくは周囲からよく批判される。なぜか。
 若いとき、つまり医学生・研修医の時代に看護について学ぶ機会が多かったからである。
 それは医学部最終学年に近い頃、友人に連れられて真壁伍郎先生のお宅を訪問したときに始まる。真壁先生は長岡高専の教員から、後に新潟医療技術短期大学のドイツ語の教授を務められた。
 真壁先生は毎年夏に妙高高原で看護の学習会を開いていた。1973年の夏のテキストが、大段智亮先生の『「死と向かいあう看護」と取り組む』という小冊子だった。この冊子はまもなく石川左門氏、土橋洋一氏の文章と合わせて『死と向かいあう看護』と題する単行本になった。
 不治の病をもつ患者に対して医療者の側のあるべき姿勢、態度についてこの本から多くを学んだ。
 石川左門氏は難病患者の親として闘っていた。
 「すべての人間は本来病める存在だ。それ自身病める存在である人間が、相互に支援と援助の関係を結び、そこに連帯をつくり出してゆく。それが真実の人間関係だとすれば、それはそのまま看護の関係である。われわれが患者同士、障害者同士の団体をつくる意味は、社会的活動の効用という意味だけではない。人間同士の真のふれあいを成就したいからである」
 筋ジス病棟の看護の本質は患者の《自己受容》に向かって助力すること。ここにはビクトールEフランクルの「創造価値」「体験価値」「存在価値」の中の「存在価値」や「人生の意味」が問われる。そして「~にもかかわらず」の自己肯定、パウル・ティリッヒの「存在への勇気」の重要性が説かれる。
 この本に引用されているカールロジャーズの助力的関係の原理は今でも役立っている。
 不適応状況にある患者が状況を克服して建設的な人格の変容が起こるための情況は何か。
それは行為や知識の伝達でなく、あるタイプの人間関係、名づけて助力的関係という。それには①受容と尊重の態度②共感的理解の態度③自己一致(透明性・真実)の3条件が必須である。この条件が守れれば苦手な患者ともコミュニケーションがとれる。
 真壁伍郎先生の著書は1986年に『看護しつつ生きるとは、なに』が出版された。ナイチンゲール、ヘンダーソンなどの看護論を通して、健康とは何か、医療とは、いのちの流れを個別的に深く看ることのたいせつさを教えてくれる。

二つの世界を生きる

2013-11-25 23:47:59 | 読書
野中猛先生の『心の病 回復への道』を読み返しています。

先生は2つの世界を生きたのだそうです。

①「普通ではない」と言われる狂気の世界に健常な心を追う

②「普通の人」に中に制御しがたい言動があることを見つめる

どちらの世界にも身を置き、ときには境界をさまよいながら、全体を見ることができるようになったのでしょう。