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俳優・勝地涼くんのこと。

『機動戦士ガンダム00』(1)-8(注・ネタバレしてます)

2025-01-25 19:42:20 | ガンダム00

ティエリアが改めてヴェーダから拒否されたのは国連軍との初の戦闘の時である。国連軍は〈裏切者〉によって手に入れた疑似GNドライヴを搭載した新型モビルスーツGN-Xを投入。
先立つGN-X対トリニティの戦闘でGN-Xの性能のほどはすでに承知していたものの、物量とエース級揃いの敵パイロット達の実力を前にガンダムマイスターたちは苦戦を強いられる。それでも必死の抵抗を続ける中、いきなり機体のシステムが完全ダウンしたのだ。
ヴェーダが裏切者によってハッキング、一部改竄も行われていることはすでにマイスターを含めたプトレマイオスクルー皆がわかっていたことだ。だからこそスメラギはフェルトとクリスにヴェーダから独立したシステムを構築させていたし、ガンダム4機のシステムダウンを知ってすぐに予備システムへの切り替えを行っている。おかげで機体が動かなくなったのは一時だけですぐにエクシア・デュメナス・キュリオスは活動再開できたのだが、ティエリアのガンダムヴァーチェだけは全く反応しなかった。
これは後のフェルトの独白にあるように、ティエリアが直接ヴェーダと精神でリンクしていたためティエリアの存在自体が予備システムへの切り替えを妨げた―つまりはシステム的な障害が直接原因だったようだが、ティエリア自身の気持ちの問題も大きかったはずだ。機体を立て直そうともせず「僕は・・・ヴェーダに見捨てられたのか・・・」と呆然と呟くばかりだったのがその証だ。
ヴェーダを絶対的な指針、神として信奉するティエリアがその神を見失った絶望は想像に余りある。少年兵時代にガンダムに命を救われた経緯のある刹那も、ヴェーダでなくガンダムを一種神のごとくに崇めていてエクシアが動かなくなったことに一時絶望しかけているが、まもなく自身を奮い立たせて懸命に機体を動かそうと試みた。
両者の違いはおそらく、ヴェーダの生体端末として作られたその出生ゆえに、ヴェーダとリンクできるのは生まれ持った能力であり、それを当然のこととしてきたか、ガンダムに憧れ自らガンダムになろうとして努力を重ねてきたかにあるのではないか。あるのが当たり前、それがない状態が想像もできないティエリアと、最初から持っていたわけではない、持っていない時間の方がずっと長かった刹那では、失った時の気持ちの切り替えに差が出るのが自然である。刹那は失った物を取り戻そうと足掻いたが、ティエリアには取り戻すという考え自体思いつかなかったのかもしれない。

それにしても前回書いたようにヴェーダに背かれるのはこれが最初ではないのだ。ナドレの強制解除という異常事態をティエリアはすでに体験しているが、その時はここまで動揺してはいなかった。
国連軍との戦闘でのティエリアの絶望がとりわけ大きかったのは対トリニティ戦以上に多勢に無勢の危機的状況であり、全システムがダウンしたため全く動けない―死ぬのは必至という状況だったこと、さらにシステムダウンの少し前、「ぼくらの滅びは計画に入っているというのか」というアレルヤの疑いの声を聞いてしまったことによるのではなかろうか。
単にヴェーダが乗っ取られたというだけでもヴェーダの無謬性を冒されたという意味ではティエリアにとっては大いにショックだろうが、アレルヤの疑いが本当だとすればヴェーダは最初からティエリアを使い捨ての道具としか見ていなかったことになる。「そんなことが!」とアレルヤの言葉を否定しようとしたところへシステムダウンが起こったことがその疑惑を裏書きした。
ナドレのような生命維持に直接は関係ない一部能力が使えなくなったのと違い、敵の真っただなかで身動き一つできなくなるというのは、死ねと言われているのに等しい。「ヴェーダに見捨てられたのか」という言葉が出てくるのも無理からぬところだ。

この時我が身を盾にティエリアを救ったのがロックオンだった。自分をかばって怪我を負った、それも狙撃型ガンダムのマイスターであるロックオンが効き目である右目を失った。ヴェーダに見捨てられたショックに加え、ロックオンに戦士として致命的な(三週間ほど戦線を離脱して治療すれば治るのだが)大怪我を負わせたことがティエリアをさらに懊悩させる。
その苦しみからティエリアを救ったのは、怪我を負った本人であるロックオンだった。一人沈み込んでいたティエリアに声をかけ、「ヴェーダとの直接リンクができなければ(中略)僕はマイスターに相応しくない・・・」と弱音を吐くティエリアに「単にリンクができなくなっただけだ。俺たちと同じになったと思えばいい」「四の五の言わずに(戦争根絶を)やりゃいいんだよ」と発破をかけた。
ロックオンの負傷を自分のせいだとあれだけ苦悩していたティエリアがいざ本人を目の前にしたら、まず謝ったり怪我を気遣ったりするのでなく別の悩みを吐露してしまうのが―そして去り際のロックオンにようやく「・・・悪かった」と一言だけ告げるのが―彼の不器用さとロックオンへの甘えを示しているようで、ちょっと微笑ましい。
この時ロックオンに「失敗くらいするさ、人間なんだからな」と言われて、「人間、か・・・」とティエリアは呟く。おそらくティエリアが自分を〈人間〉として位置づけるようになったのはこれが最初だ。
ずっとヴェーダの生体端末―人ならざる者であることに誇りとアイデンティティを置いていたティエリア、過去の大失敗の傷を抱えながらも戦うことを選んだスメラギを評した「そういうことができるのもまた人間なんだよ」というロックオンの台詞に「人間か・・・」と呟き、刹那とロックオンの和解のシーンを見て「これが、人間か」と微笑んだ時は外側から人間という物を眺めて関心や好感を抱いたという感じだった。
それがヴェーダの忠実な僕としてのアイデンティティが決定的に揺らいでいる時に命の恩人たるロックオンから人間として扱われたことで、自身を人間の側に置くようになった。そしてやがてセカンドシーズンでイノベイドのブリング・スタビティと戦った際には「討つというのか、同類を!」とのブリングの言葉に「僕は人間だあっ!」と叫ぶに至るのである。

同時に、この時からヴェーダという神を見失ったティエリアは、ロックオンに崇拝にも似た思い入れを見せるようになっていく(この場面以降ファーストシーズンのラストまで、ティエリアはしばしば「私」という一人称を口にするようになる。怪我人のロックオンが出撃できないよう扉にロックをかけた際の「私は前回の戦闘で彼に救われた。だから今度は私が彼を守る」、ロックオンが亡くなった後、不利を知りつつ最終決戦に挑む意志を示した際の「これは私だけの気持ちではありません。マイスターの総意です」「私はロックオンの仇を討たなければならない」もそう。多くはロックオンがらみで「私」とたびたび発するティエリアの姿にまたまた〈ティエリア実は女説〉が浮上したんじゃ?なんて想像したりします)。
ファーストシーズンのクライマックス、戦いは終わったもののナドレが大破し、死を覚悟したティエリアが「これで、行ける、これで、あなたの元へ・・・ロックオン・・・」と口にする場面など、どれだけロックオンが好きなんだと驚いた。
この場面、すでに機体はぼろぼろだったが、最後の力を振り絞って太陽炉を取り外し宇宙に放出して(少し離れたところにいる強襲用コンテナに乗るスメラギとイアンに託した)しまったのでティエリアは意識不明のままナドレごと宇宙空間に漂っているしかない状況になっている。「あなたの元へ」の台詞からしてもここで亡くなったのだろうな・・・と思わせておいてセカンドシーズンでは初回から元気に登場している。
あの状況からどうやって助かったんだ!?おそらくコンテナに向かって射出された太陽炉に気づいたスメラギたちが太陽炉を放出した機体がそばにいるはずだと周辺を捜索してティエリアを見つけたという流れではないかと思うのだが(ファーストシーズンのラストでは、刹那もグラハムと相討ち→爆発のあと姿を現さず、マリナに宛てた「あなたがこれを読んでいるとき、俺はもう、この世には・・・」で始まる手紙が紹介されたりするので、刹那死んだ?セカンドシーズンあるのにここで主人公まで死ぬ?と視聴者を驚かせる展開になっている)。
ともあれ、他のガンダムマイスターが刹那とアレルヤは機体ごと行方不明、ロックオンは死亡と総崩れ、スメラギもソレスタルビーイングを離れた中、ティエリアがイアンやフェルトたちとともにソレスタルビーイングを守ってくれていたことに何だか頼もしさを覚えたものだった。
しかし刹那・アレルヤ・スメラギが復帰し、ロックオンの弟ライルが二代目ロックオン・ストラトスとして加入、4年ぶりにソレスタルビーイングが本格稼働しはじめた矢先、〈同胞〉であるイノベイター(イノベイド)たちの登場によって、ティエリアは新たな悩みを抱えることとなる・・・。

 

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