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俳優・勝地涼くんのこと。

『機動戦士ガンダム00』(1)ー9(注・ネタバレしてます)

2025-02-01 20:32:30 | ガンダム00

セカンドシーズン初期のティエリアは、二代目ロックオンことライルと沙慈に対する態度を見る限りではファーストシーズン途中までの頑なさに後退した感がある。
沙慈にきつい説教をするのはもっぱらティエリアだし、ロックオンに対してもガンダム操縦の教官役でからみが多かったこと、物を教える立場だったこともあり(ロックオンをスカウトしてきた刹那が指導係でなかったのが謎・・・と言いたいが、まあ誰がみても刹那は人に物を教える柄じゃなかったんでしょうね)、苛立ったような当たりの強い言動が目立つ。
まあ前者は誰かが言わなくてはいけない事をティエリアが代表して言っていた感もあり、アロウズによるカタロン基地襲撃を招いた責任に打ちひしがれる沙慈を厳しく叱ったのには、かつて戦闘時に放心状態になったために自分をかばったロックオンが目を負傷した―それが彼の戦死の遠因にもなった―自分を重ね合わせる部分もあったのでは(小説版では「ロックオン・ストラトスを失ったときの自分を見ているようで、小さく胸にうずくものはあったが」との一文がある)。
ロックオン=ライルについては、ティエリアの敬愛するロックオン=ニールと同じ顔同じ声で同じ通り名を名乗りながらロックオンではない彼に対する戸惑いと存在そのものへの苛立ちみたいなのがあったんでしょうね。半ば八つ当たりというか。「ロックオンならこのくらい簡単にできた」とかついついニールと比較してしまう部分もあったろうし。
とはいえティエリアは刹那がプトレマイオス2に沙慈を連れてくるのを止めていない。ティエリアの台詞にもあるようにソレスタルビーイングで保護せず自由の身にしていれば、一度カタロン構成員の疑いをかけられた沙慈はすぐさまアロウズに捕まり処刑されていたはずだが、それでも昔のティエリアなら(最初は監禁に近い扱いだったとはいえ)〈プトレマイオスに一般人を乗せるなんて〉と苦言を呈していただろう。
なのにそれどころかカタロンが襲撃される原因を作ったとショックを受けている沙慈を「君も来い。ここにいたら何をされるかわからないからな」と仲間の死に怒り嘆いているカタロンの人々から彼を引き離しプトレマイオス2に連れ帰った。イオリア計画を忠実に果たすことが全てで、使命感でがちがちだったかつてのティエリアなら考えられない対応だ。
加えて連邦軍の捕虜になっていたアレルヤを救出した後のシーンでも、死んだはずのロックオン(にそっくりな弟)の顔を見た彼の反応に「変わらないな君は」と微笑んで「おかえり、アレルヤ」と優しく声をかけたりしている。明らかにファーストシーズンでのもろもろの経験を踏まえて、ティエリアはかなり軟化していると言っていい。

それが顕著に現れているのが刹那への態度の変化だ。ファーストシーズン初期で刹那がガンダムを降りてサーシェスに姿をさらしたさいには「彼の愚かなふるまいを許せば我々にも危険が及ぶ可能性がある」と銃殺しようとするほど怒っていた、というか刹那をソレスタルビーイングにとっての危険因子と見なしていたのに(アレルヤの「ぼくたちはヴェーダによって選ばれた存在だ。刹那がガンダムマイスターに選ばれた理由はある」との言葉で銃を下ろすのが、ヴェーダを絶対視していた当時のティエリアらしい)、刹那の項でも書いたようにセカンドシーズン始めの再会時には連絡もせずエクシアごと四年間消息を絶ったままだった刹那を咎めもせず普通に挨拶している。
またアレルヤ救出作戦のさいにはマリナが同じ施設に監禁されていると知って、「残り二分でもう一人を助けたらどうだ」と刹那にマリナを助けに行くよう促した。昔のティエリアならソレスタルビーイングの任務に何ら関係のないマリナ救出を刹那に勧めたりなどまずしなかったろう。
さらにその後、マリナをアザディスタンに送っていく刹那に「何ならそのまま帰ってこなくてもいい」と口にするにいたっては。ティエリアが刹那とマリナを恋愛関係にあると思ってるのか定かでないが、アレルヤに「まさか君があんな冗談をいうなんて」とつっこまれ「別に。本気で言ったさ」と返したり、さらに「冗談だよ」と言ってみたりと、仲間との軽口の叩き合いを楽しんですらいる姿には目を見張らされる。

もっとも刹那との関係はファーストシーズンの半ばから明らかに良い方向に変わりはじめていた。最初の変化は対トリニティ戦だった。トリニティがアイリス社の軍需工場を攻撃し800人以上の民間人従業員を殺傷したニュースを聞いた刹那が、即座にトリニティを〈紛争幇助対象〉と位置づけ彼らを駆逐するべく勝手に出撃したのだが、刹那のガンダムエクシアvsトリニティのガンダムスローネ3機という数的に劣勢な状況に駆け付け参戦したのがティエリアのガンダムヴァーチェだった。
到着のタイミングの早さからすると刹那が出撃したと知って追ってきたのでなく、ティエリアも刹那同様アイリス社襲撃のニュースにブチ切れて、自分一人でもトリニティを討つ気持ちで現場に向かったら刹那の方が早く来ていたという流れだったのではないか。
民間人を巻き込むどころか正面から攻撃することも辞さないやり口、初顔合わせ時の(特に次男ミハエルと末っ子ネーナに対する)悪印象、ヴェーダのデータに載っていない彼らの存在への疑念から、プトレマイオスクルーのほぼ全員が彼らを警戒し嫌っていたが(クリスだけは美形のヨハンとツーショット写真を撮ったりとヨハン限定でそこそこ好意的だった)、中でもなまじ初対面でネーナに命を救われた刹那、ネーナがヴェーダの深層部分にアクセスする現場を目撃したティエリアは、とりわけ彼らへの反感が大きかった。
とはいえあれだけ規律や命令違反にうるさいティエリアが独断で出撃したのには驚いた。まして相手はいかにデータ上存在しない怪しげな相手とはいえ同じガンダムマイスターであり、いわば同士討ちだというのに。
ティエリアが加わっても2対1、スローネの機体性能を考えても不利な局面ではあるのだが、ティエリアに悲愴感はない。むしろ「まさか君とともにフォーメーションを使う日が来ようとは思ってもみなかったよ」と刹那に声をかけるティエリアは笑いすら滲ませている。刹那も「俺もだ」と応じているが、何だかんだこの二人は似たもの同士なのである。
無口で無愛想、基本無表情でクールな印象なのに思い切り感情で動き、精神的に動揺しやすい。かたやガンダムを、かたやヴェーダを神として信奉している。ティエリアが初期に刹那に示した強い反発は、同族嫌悪だったのではと思ってしまうほどだ。
ここでトリニティという共通の敵を相手に、それも任務としてでなく自由意志で共闘したことから、ティエリアは明確に刹那に仲間意識を示すようになり、規律一辺倒だったのが次第に角が取れてくる。
対トリニティの戦闘から帰還したのち「命令違反を犯した罪を(与えてくれ)」と自らスメラギに申し出るあたりはまだ堅物らしさを思わせるが、「そんなのいつしたっけ?」とスメラギに笑顔でごまかされ、ロックオンに「そういうことだ」と取りなされると、それ以上食い下がろうとはせず「それが人間か」と薄く微笑む。アレルヤも「何かあった?」とティエリアの変化を感じ取っているほどに、ティエリアは柔らかくなりつつある。
その後ヴェーダからのバックアップ完全停止とロックオンの負傷→死去という大きなショックを経て、ティエリアの心はどんどん人間に近づいていく。ヴェーダとのリンクができなくなった以上、彼はもはやヴェーダの生体端末とは言えず、残ったのはティエリア・アーデという一個体なのだから、彼の心持ちが人間と変わらなくなっていくのは当然のことだ。

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