〈第二回〉
・道路で耳をふさいだまま座り込んでしまった恵都にトラックが迫る。前回ラストの続きからですが、思ったとおり危ういところで回避してくれる。飛び出したのと違うからそうそう轢かれはしないでしょうけど。
そこにちょうど通りかかった浩一は彼女の体を乱暴に起こす。でも動作が乱暴なわりに「自殺する気?」という言い方は責めるというには淡々とした調子。このクールさが浩一ですね。
・自殺する気がないんなら、と道路の端へ恵都を連れて行った浩一はいきなり「謝ってくれよ」と言い出す。逆じゃないの?リストンでの発言を言い過ぎたと反省したんじゃないのか?と思ったら「見に行ったんだ、サニーデイズ」「代金返してくれ」と続いてちょっと納得。
「そんなこといまさら言われても」「冗談だよ。こだわりすぎ、自意識過剰すぎ。元有名人でも今は俺らといっしょじゃん」。
前半はひどいこと言ってるようですが、その実恵都を7年間の呪縛から解き放つ言葉だったのかもしれません。
・青山家のリビングで親子三人の楽しげな会話。恵都が降りてきて冷蔵庫を開けるとその気配で会話が止まり空気が固まる。「いつもこうだ。あたしが行くとリビングの会話が止まる」。
こういうのは何気にこたえる。知佳は結構、恵都で失敗したと思ってる両親がのびのび育てる方針に転換したおかげで楽しくやれてる一面があるのかも。
・恵都はまたエル・リストンへ。理由は「誰でもいいから誰かと話したくて」。その「誰か」は自分に対して黙ってしまう家族じゃダメなんですねきっと。浩一などはキツいこともいうけど、それだけ恵都とのコミュニケーションの意思はあるということですしね。
・恵都を待ってたかのようなタイミングでコーヒーを差し出す剛太。そのまま無言で恵都の手をとって紅葉のところへつれていく。人手のほしかった紅葉は歓迎し恵都は生地切るのを手伝うことに。
こうやって向こうのペースで居場所をくれる人間はひきこもり脱出初心者には一番有難いですね。
・また来てくれて嬉しいと喜ぶ紅葉。しかし「女の子の友達があたしも欲しかったしさ」との言葉に恵都はつい身構えてしまう。友達という言葉、友達になりたいという意志表示は否応なく奈子を思い出させますからね。
「あたしやっぱ帰る」と席を立つ恵都に、浩一が来るまでいれば仲直りできると思ったのに、と紅葉は浩一が不登校になった原因(高校でのいじめなど)について話してくれる。ちょうどそこに浩一登場。恵都への第一声が「やっぱ来たか。ま、他に行くところもないだろうしな」。
紅葉がなんでそんな言い方するのと席を立って怒る。剛太はハラハラ顔。後の発言からすると、浩一もこういう言い方した後“またバカにするような言い方してしまった”と反省したりしてるのかな。
・自販機でコーヒーを入れる浩一に「一年間入院してたって、どうして?」と訪ねる恵都。「人に聞くな、そういうこと。人が話すまでは聞くな。自分だって聞かれたくないだろ、なんで15分舞台で黙ってた」。
浩一の言うことは間違ってはないけど一言多いうえキツいんですよね。そういう奴だとすでにわかってるはずなのに自分から話しかけた恵都は、言葉は悪くてもかつてクラスメートや奈子が向けてきたような悪意を彼が発散してないのに気づいてるんでしょう。
・出ていく恵都をハラハラ顔で見ていた剛太が建物の外まで後を追ってきて恵都の腕をつかむ。普通は呼び止めるところでそれができない。彼も恵都とは別の意味で声を失った人間には違いない。
一生懸命声を震わせながら「また、きて」とやっと言葉にした剛太は恵都が少し微笑んだのにほっとして笑う。こんないい顔で笑えるのになあ。
ドラマで玲の存在を消した代わりに出してきたキャラが吃音の剛太だというのは、声を失った、でも極上の笑顔や直接行動によって言葉不在によるコミュニケーション不足を補っている、という点で恵都と対比させる意味合いだったのかと想像されます。
・そこに剛太を知るいじめっこたちが校門外から現れる。なれなれしく肩を抱いてきたり彼の吃音を揶揄する連中にも剛太は微笑んでいる。でもさっきき恵都に向けたのとは違う弱々しい笑顔。
恵都は男を突き飛ばし、そのへんにあったものを投げつけたうえで、男たちの怒りの声を無視して早足で歩き去る。恵都のこうした、元有名人でそれを知られるのを怖れてるわりには躊躇いなく怒りを表明できる強さは最初期からずっと変わらないんですよね。
剛太、紅葉、浩一全員に共通する“昔を知るいじめっこに囲まれて吊るし上げられる”シーン全てで彼らに代わって逆襲し、自分が近い状況になった時もそれぞれの形で堂々と対処して、恵都の精神の芯の太さみたいなものを感じます。
・窓から状況を見ていた浩一は恵都の後をついていき、CD屋で声をかける。「上から見てた」とちゃんという(たまたま知りえた恵都情報を「知っている」と開示する)あたりはフェアというか。無視してほかの棚に移動する恵都に浩一はまたも話しかけるが、この態度の変化は剛太の件で見直したということでしょうか。
・たまたま店の外で知佳が元同級生の子たちにからまれてるのを見かけた恵都は走って後を追う。カツアゲされる知佳は渡す金が少ない、姉貴が子役で稼いでたくせにと言葉で責められる。
「セイジョ入ったからってあたしたちと縁が切れると思ったら大間違いなんだから」という表現からして中学からいじめられてたわけだ。同じ高校行きたくなくて勉強頑張ったのかも。
・一部始終を見ながら出ていかれない恵都。先に剛太を助けた勇敢さからして集団に向かってくことを怖れてるわけじゃない。知佳は自分に助けられたらかえって嫌がりそうなのと恵都の顔を知ってるだろういじめっこたちがそれをネタにさらにいじめを加速させるのを心配したからでしょう。
「助けたい?」と尋ねた浩一は返事をきかずノーパソを出してパトカーのサイレンを演出。女の子たちがあわてて逃げたすきに反対に逃げた知佳は恵都と顔を合わせ、微笑みとも無表情ともつかない表情の恵都を見て反対を向いて逃げ出す。
「ちゃんと話したら一度、妹とさ」という浩一は自分もいじめ不登校体験者だけに恵都と家族との微妙な距離感を察してるわけですね。
・家に帰った恵都は、何事もなかったような顔で母と談笑する知佳を見つける。恵都と目が合った知佳は顔をこわばらせ二階へあがるが、恵都はあとを追って「知佳」と呼びかける。もしかして7年ぶりに名を呼ぶのかも。
「今までもいろいろあったの」「知らないの?あたしがあんたの妹だってだけでいままでどんなつらい思いしてきたか」。恵都はダメになった子役の妹ということでいじめられてると思ってたようですが、知佳のうらみつらみはもっぱら恵都が売れっ子子役だった時代にできる姉と比べられたこと――両親は姉にばかり夢中、学校でもあの天才子役の妹なのに意外に普通じゃんと言われたと昔の話に集中している。
学校の方はある程度しょうがないにせよ、妹にこれだけ引け目感じさせてしまったのはやっぱり両親の罪が大きいですね。
・それでも昔はまだよかった、今のあんたは最低、こんな抜け殻みたいな人のためにあたしはずっと苦しんできたの ?今でも両親は恵都の心配ばっかりで自分がいくら頑張っても追いつけやしない、目障りなんだよ、と叫ぶような知佳。
かなりひがみ入ってはいるでしょうが、子供の頃からの積み重ねが知佳を頑なにしてるんでしょう。昔の恵都ほどではないにしても両親を喜ばせたくて無理して良い子にしてる感はありありですしね。
大きな声で怒鳴ってるため階下で母も会話をすべて聞いてしまってますが、このことが母と知佳の関係を多少なりとも改善に向かわせたでしょうか。
・再び大洋の学校を訪ねた恵都は、サッカー中の大洋と目が合ってもそらそうとせず逆に目で彼を呼ぶ。恵都は着実に強くなっていってますね。
・並んで歩きながら「ちゃんと謝ろうと思って」という恵都。何のことかという反応の大洋に「セリエA」なんてバカみたいだと言ったことだと言うが、気にしない、だっておれバカだし、サッカーバカと大洋は笑う。
でも恵都は深々と頭を下げ、「あたし大洋がうらやましかったんだと思う。これだって夢を持ってるのが。私にはないから」「そっか・・・」。
それだけだからと立ち去ろうとする恵都に大洋が子供のころタイムカプセルに入れるためにと渡された瓶?を恵都がずっと机の中に入れっぱなしにしてたのを持っていると言って渡す。そんなものを大事に持っててくれるのに彼の恵都に対する好意が濃厚に感じられます。
・恵都に代わって瓶を割り、中の紙を出してやる大洋。「わたしのゆめはじょゆうになることです。」それを見た大洋は「おまえ、夢あったんじゃん」。
親に勧められてやらされてたことでも恵都自身も本当は演技が好きだった、ただ無理強いされた格好のために自分でもそれがわからなくなってた。
「でも親から押し付けられた夢だから。だから私には夢がない」と恵都は言ったけれども、結局(単純に金稼ぎのためだけではなく)その道に戻ったわけですし。
・「大洋、夢は何だったの」「おれは夢二つあったんだ、1個はサッカーの選手になること。もう1個は・・・」と照れ笑いしながら時効だからいいかと「青山と好き同士になること」。
結婚でもなく付き合うでもなく「好き同士」という表現が初々しい。しかし時効なのね。昔のことだと強調するしなあ。今はほかに好きな女がいる伏線だよなあ。
・大洋がテレ気味に去ったあと、「その日の夕日は 泣きたくなるくらいに綺麗で、あたしはあの日以来、初めて空を、明るい空を見上げている自分に気がついた」。
恋をすると世界が変わるというやつですね。ただ大洋との会話がそうさせただけでなく、スクール長との出会いに始まる人々とのコミュニケーションが、彼女の心を恋ができる状態にまで導いたその結果という気がします。
・リストンのスクール長の部屋を訪ねた恵都は「おかえり」と迎えられる。単純だけど暖かい言葉。しかし「おれの作ったルールで二度来たやつはもう生徒なんだ」というのは遅れてるな。すでに恵都がここに来るのは4度目なのに。
・紅葉が手伝ってくれと恵都を引っ張っていく。そして作業しながら恋バナを振ってきて、大洋の話を聞いた紅葉は会わせてよとすっかり盛り上がってしまい、結局恵都は紅葉を大洋のところに案内することに。
この紅葉の積極性がなかったら恵都の恋は良くも悪くも全然動かなかったでしょうね。
・恵都に気づいた大洋は声をかけてくるが、休憩時間マネージャーらしい女の子が自分が首にかけてるタオルで彼の汗ぬぐったりシャツまくって腹まで拭いたりする。あの人も大洋のこと・・・と落ちこみ気味の恵都を、紅葉は恋愛初心者はすぐ引くからダメだとハッパかける。
第三回を見る限り紅葉の恋愛スキルは大いに当てにならない。あれだけ自然な動作でボディタッチしまくり大洋も自然にそれを受け入れてるあたり、すでに付き合ってる雰囲気だと思うけども。まあマネージャーが一方的にアプローチかけてる可能性もまだゼロじゃないですけどね。
・練習試合にのぞむ大洋に手作り弁当を持っていくことを紅葉に勧められた恵都は、日曜にリストンのキッチンで人生初のお弁当を作る。その姿を紅葉が浩一や剛太を連れてきて見せている。
さらにサッカー観戦にまで二人を連れていくことに。女子二人とはちょっと離れた位置で男子たちが一人一人で座ってるのが印象的。どちらかいうと二人とも好きなことに一人で没頭するタイプですしね。
なのにサッカー観戦についてきてくれたあたりは友情というか。特に浩一の方はサッカーにはいろいろと複雑な思いがあるだろうに。
・練習試合の午前の部終了。大洋に「応援ありがとな」と声かけられて笑顔をこぼす恵都に「わっかりやすいなあ」という浩一。紅葉に「何が」と聞かれ「別に」と話をそらすが、大洋にやきもち焼いてる気配があります。
立ち上がる恵都の背中を剛太が笑顔で押し、一歩一歩という感じでグラウンドへ向かう恵都。しかしマネージャーたちがみんなの分のお弁当を買ってきたと配ってしまう。
立ちすくむ恵都に浩一はパソコンゲームにこと寄せて声をかけ、紅葉はわざとテンション高い態度で恵都を向こうへ連れていく。その間に浩一は女子マネが大洋に手作り弁当渡すのを見てしまう。なんか切ない表情なのは恵都の気持ちを慮ってでしょうね。
・一人休み時間にボールをける大洋のこぼれ球を足でキャッチして蹴り返す浩一。彼がサッカー経験者である伏線がここに。
・帰り道。残念だったねと言う紅葉も「しょうがないよ」と答える恵都もさほど堪えてはいない様子。むしろ笑顔。この時点では“お弁当渡せなかった”というだけですからね。
すでにある程度結果が見えてる視聴者的には二人の明るさが切ない。
・ファミレスで剛太と落ち合う浩一。黙ったままの浩一をいぶかる剛太に「大人はいろいろあるの、考えることがいっぱいあるの」。言い方がなんか可愛いです。
そのころ恵都と紅葉は偶然に大洋と女子マネが付き合ってる決定的証拠の現場を見てしまう。思わず道でへたりこむ恵都を「大丈夫 ?」と心配する紅葉。恵都はほぼ無表情ですが後からトイレの洗面台で吐きそうになってます。ずっと他人と関わってこなかっただけに失恋という重い感情の受け流し方なんて心得てるはずもないですからね。
・紅葉は息せき切ってファミレスへ飛び込み、浩一たちに「恵都ここへこなかった?」と尋ねる。道で気持ち悪くなってそこのコンビニのトイレ借りたんだけどちょっと目を離したすきにいなくなっちゃって、と説明。
「どうしよう、あの子、死んじゃうかもしれない」まで飛躍してしまう紅葉に浩一は「どういうことだよ」と問うが、剛太は理由も聞かずすぐ顔色を変えて飛び出していく。それぞれの性格が表れた心配の仕方です。
・恵都を探すのに、剛太と対照的にこちらは歩いてる浩一。でも足取りはせかせか。落ちつこうとして落ちつききれてない。
紅葉は偶然スクール長に出会い、彼も巻き込むことに。紅葉は恵都の家へ友達だといって訪ねる。よく家知ってたなあ。こうして恵都がフリースクールに出入りしてることが恵都の母に知れるわけですが、特に後の展開には関係しませんでしたね。
・人ごみを歩きながら「外なんか、出なければよかった。また体が透き通っていくみたい」。
たまたまぶつかった男たちによく見たらかわいくない?とナンパされ、ディスコに連れて行かれるが、踊る皆の中で呆然と突っ立ったまま。連れて来た男たちによくぞ悪さされずにすんだ。ぼうっとしてるだけの恵都に飽きて他の女を物色しにいってくれたのか。
原作ではサッカー部の女子マネ(平野)との交流→恵都再生が描かれるエピソードがここに入る。すごくいいシーンなので削っちゃったのは残念ではありますが、ストーリーの焦点をリストンメンバーとの友情に絞る(「人間てね、再生するんだよ」という平野の名台詞も紅葉のものになってる)意味で全六回のドラマに纏め上げるうえではしかるべき改変だったのなと思います。
・探し疲れて夜道で集合した浩一たち。スクール長の“失恋はつらいが何度か経験するうちに免疫がつく”という言葉に対し、浩一は「ないですよあいつに、免疫なんて。あいつは無菌室から出たばっかりの赤んぼみたいなもんじゃないですか」。確かに二回目(浩一に彼女がいると誤解したとき)はもっと強く対処できてましたからね。
・剛太の「学校」という言葉でリストンの屋上へ向かった一同。恵都は外へ出なければよかったと言いつつ家に戻るのでなくリストンへ向かった。ここから飛び降りて死にたいという思いがあったためにもせよリストンにやってきたということが、彼女にとってリストンがすでに一番落ち着ける場所になっているのがわかります。
・大洋に好きだといってもらえてやっと生きてる意味があるかと思えたのにやっぱり自分は役立たずで、と独白を続ける恵都を「甘えてんじゃねえよ」と一喝する浩一。つかつか歩み寄って「こいつらがどれだけ心配したと思ってる」「そんな甘いこと言ってるんだったら死んじまえよ」。
ひどい言葉ですが紅葉が「浩一・・・」というだけでたしなめないのは、その言葉に浩一自身がどれだけ恵都を心配してたかが溢れてるから。「おまえを、心配してる人のことも考えろ」「(おまえが死んだら)少なくともここにいるやつは泣くよ」といったあとに「おれも泣く」と付け加えるあたりが浩一の可愛げ。
・半泣き顔で浩一の言葉を聞いている恵都を皆が見つめる。一番前に立つ浩一も今はすごく優しい目になっている。初めてしゃくりあげて泣く恵都に紅葉が駆け寄って抱きしめる。
「人間てね、再生するんだよ」「また笑える。また好きな人ができるよ」。友達に導かれた涙によって恵都の止まってた時間が流れ出した。「私が二度目の産声を上げた夜」。
じっと優しい目で見つめていた浩一があるかなしかの微笑みを口元に浮かべる。クール系であまり感情を表に出さない浩一はこういうごくわずかな表情変化に感情の流れが表れる。勝地くんの表現力がフルに生かされています。
・道路で耳をふさいだまま座り込んでしまった恵都にトラックが迫る。前回ラストの続きからですが、思ったとおり危ういところで回避してくれる。飛び出したのと違うからそうそう轢かれはしないでしょうけど。
そこにちょうど通りかかった浩一は彼女の体を乱暴に起こす。でも動作が乱暴なわりに「自殺する気?」という言い方は責めるというには淡々とした調子。このクールさが浩一ですね。
・自殺する気がないんなら、と道路の端へ恵都を連れて行った浩一はいきなり「謝ってくれよ」と言い出す。逆じゃないの?リストンでの発言を言い過ぎたと反省したんじゃないのか?と思ったら「見に行ったんだ、サニーデイズ」「代金返してくれ」と続いてちょっと納得。
「そんなこといまさら言われても」「冗談だよ。こだわりすぎ、自意識過剰すぎ。元有名人でも今は俺らといっしょじゃん」。
前半はひどいこと言ってるようですが、その実恵都を7年間の呪縛から解き放つ言葉だったのかもしれません。
・青山家のリビングで親子三人の楽しげな会話。恵都が降りてきて冷蔵庫を開けるとその気配で会話が止まり空気が固まる。「いつもこうだ。あたしが行くとリビングの会話が止まる」。
こういうのは何気にこたえる。知佳は結構、恵都で失敗したと思ってる両親がのびのび育てる方針に転換したおかげで楽しくやれてる一面があるのかも。
・恵都はまたエル・リストンへ。理由は「誰でもいいから誰かと話したくて」。その「誰か」は自分に対して黙ってしまう家族じゃダメなんですねきっと。浩一などはキツいこともいうけど、それだけ恵都とのコミュニケーションの意思はあるということですしね。
・恵都を待ってたかのようなタイミングでコーヒーを差し出す剛太。そのまま無言で恵都の手をとって紅葉のところへつれていく。人手のほしかった紅葉は歓迎し恵都は生地切るのを手伝うことに。
こうやって向こうのペースで居場所をくれる人間はひきこもり脱出初心者には一番有難いですね。
・また来てくれて嬉しいと喜ぶ紅葉。しかし「女の子の友達があたしも欲しかったしさ」との言葉に恵都はつい身構えてしまう。友達という言葉、友達になりたいという意志表示は否応なく奈子を思い出させますからね。
「あたしやっぱ帰る」と席を立つ恵都に、浩一が来るまでいれば仲直りできると思ったのに、と紅葉は浩一が不登校になった原因(高校でのいじめなど)について話してくれる。ちょうどそこに浩一登場。恵都への第一声が「やっぱ来たか。ま、他に行くところもないだろうしな」。
紅葉がなんでそんな言い方するのと席を立って怒る。剛太はハラハラ顔。後の発言からすると、浩一もこういう言い方した後“またバカにするような言い方してしまった”と反省したりしてるのかな。
・自販機でコーヒーを入れる浩一に「一年間入院してたって、どうして?」と訪ねる恵都。「人に聞くな、そういうこと。人が話すまでは聞くな。自分だって聞かれたくないだろ、なんで15分舞台で黙ってた」。
浩一の言うことは間違ってはないけど一言多いうえキツいんですよね。そういう奴だとすでにわかってるはずなのに自分から話しかけた恵都は、言葉は悪くてもかつてクラスメートや奈子が向けてきたような悪意を彼が発散してないのに気づいてるんでしょう。
・出ていく恵都をハラハラ顔で見ていた剛太が建物の外まで後を追ってきて恵都の腕をつかむ。普通は呼び止めるところでそれができない。彼も恵都とは別の意味で声を失った人間には違いない。
一生懸命声を震わせながら「また、きて」とやっと言葉にした剛太は恵都が少し微笑んだのにほっとして笑う。こんないい顔で笑えるのになあ。
ドラマで玲の存在を消した代わりに出してきたキャラが吃音の剛太だというのは、声を失った、でも極上の笑顔や直接行動によって言葉不在によるコミュニケーション不足を補っている、という点で恵都と対比させる意味合いだったのかと想像されます。
・そこに剛太を知るいじめっこたちが校門外から現れる。なれなれしく肩を抱いてきたり彼の吃音を揶揄する連中にも剛太は微笑んでいる。でもさっきき恵都に向けたのとは違う弱々しい笑顔。
恵都は男を突き飛ばし、そのへんにあったものを投げつけたうえで、男たちの怒りの声を無視して早足で歩き去る。恵都のこうした、元有名人でそれを知られるのを怖れてるわりには躊躇いなく怒りを表明できる強さは最初期からずっと変わらないんですよね。
剛太、紅葉、浩一全員に共通する“昔を知るいじめっこに囲まれて吊るし上げられる”シーン全てで彼らに代わって逆襲し、自分が近い状況になった時もそれぞれの形で堂々と対処して、恵都の精神の芯の太さみたいなものを感じます。
・窓から状況を見ていた浩一は恵都の後をついていき、CD屋で声をかける。「上から見てた」とちゃんという(たまたま知りえた恵都情報を「知っている」と開示する)あたりはフェアというか。無視してほかの棚に移動する恵都に浩一はまたも話しかけるが、この態度の変化は剛太の件で見直したということでしょうか。
・たまたま店の外で知佳が元同級生の子たちにからまれてるのを見かけた恵都は走って後を追う。カツアゲされる知佳は渡す金が少ない、姉貴が子役で稼いでたくせにと言葉で責められる。
「セイジョ入ったからってあたしたちと縁が切れると思ったら大間違いなんだから」という表現からして中学からいじめられてたわけだ。同じ高校行きたくなくて勉強頑張ったのかも。
・一部始終を見ながら出ていかれない恵都。先に剛太を助けた勇敢さからして集団に向かってくことを怖れてるわけじゃない。知佳は自分に助けられたらかえって嫌がりそうなのと恵都の顔を知ってるだろういじめっこたちがそれをネタにさらにいじめを加速させるのを心配したからでしょう。
「助けたい?」と尋ねた浩一は返事をきかずノーパソを出してパトカーのサイレンを演出。女の子たちがあわてて逃げたすきに反対に逃げた知佳は恵都と顔を合わせ、微笑みとも無表情ともつかない表情の恵都を見て反対を向いて逃げ出す。
「ちゃんと話したら一度、妹とさ」という浩一は自分もいじめ不登校体験者だけに恵都と家族との微妙な距離感を察してるわけですね。
・家に帰った恵都は、何事もなかったような顔で母と談笑する知佳を見つける。恵都と目が合った知佳は顔をこわばらせ二階へあがるが、恵都はあとを追って「知佳」と呼びかける。もしかして7年ぶりに名を呼ぶのかも。
「今までもいろいろあったの」「知らないの?あたしがあんたの妹だってだけでいままでどんなつらい思いしてきたか」。恵都はダメになった子役の妹ということでいじめられてると思ってたようですが、知佳のうらみつらみはもっぱら恵都が売れっ子子役だった時代にできる姉と比べられたこと――両親は姉にばかり夢中、学校でもあの天才子役の妹なのに意外に普通じゃんと言われたと昔の話に集中している。
学校の方はある程度しょうがないにせよ、妹にこれだけ引け目感じさせてしまったのはやっぱり両親の罪が大きいですね。
・それでも昔はまだよかった、今のあんたは最低、こんな抜け殻みたいな人のためにあたしはずっと苦しんできたの ?今でも両親は恵都の心配ばっかりで自分がいくら頑張っても追いつけやしない、目障りなんだよ、と叫ぶような知佳。
かなりひがみ入ってはいるでしょうが、子供の頃からの積み重ねが知佳を頑なにしてるんでしょう。昔の恵都ほどではないにしても両親を喜ばせたくて無理して良い子にしてる感はありありですしね。
大きな声で怒鳴ってるため階下で母も会話をすべて聞いてしまってますが、このことが母と知佳の関係を多少なりとも改善に向かわせたでしょうか。
・再び大洋の学校を訪ねた恵都は、サッカー中の大洋と目が合ってもそらそうとせず逆に目で彼を呼ぶ。恵都は着実に強くなっていってますね。
・並んで歩きながら「ちゃんと謝ろうと思って」という恵都。何のことかという反応の大洋に「セリエA」なんてバカみたいだと言ったことだと言うが、気にしない、だっておれバカだし、サッカーバカと大洋は笑う。
でも恵都は深々と頭を下げ、「あたし大洋がうらやましかったんだと思う。これだって夢を持ってるのが。私にはないから」「そっか・・・」。
それだけだからと立ち去ろうとする恵都に大洋が子供のころタイムカプセルに入れるためにと渡された瓶?を恵都がずっと机の中に入れっぱなしにしてたのを持っていると言って渡す。そんなものを大事に持っててくれるのに彼の恵都に対する好意が濃厚に感じられます。
・恵都に代わって瓶を割り、中の紙を出してやる大洋。「わたしのゆめはじょゆうになることです。」それを見た大洋は「おまえ、夢あったんじゃん」。
親に勧められてやらされてたことでも恵都自身も本当は演技が好きだった、ただ無理強いされた格好のために自分でもそれがわからなくなってた。
「でも親から押し付けられた夢だから。だから私には夢がない」と恵都は言ったけれども、結局(単純に金稼ぎのためだけではなく)その道に戻ったわけですし。
・「大洋、夢は何だったの」「おれは夢二つあったんだ、1個はサッカーの選手になること。もう1個は・・・」と照れ笑いしながら時効だからいいかと「青山と好き同士になること」。
結婚でもなく付き合うでもなく「好き同士」という表現が初々しい。しかし時効なのね。昔のことだと強調するしなあ。今はほかに好きな女がいる伏線だよなあ。
・大洋がテレ気味に去ったあと、「その日の夕日は 泣きたくなるくらいに綺麗で、あたしはあの日以来、初めて空を、明るい空を見上げている自分に気がついた」。
恋をすると世界が変わるというやつですね。ただ大洋との会話がそうさせただけでなく、スクール長との出会いに始まる人々とのコミュニケーションが、彼女の心を恋ができる状態にまで導いたその結果という気がします。
・リストンのスクール長の部屋を訪ねた恵都は「おかえり」と迎えられる。単純だけど暖かい言葉。しかし「おれの作ったルールで二度来たやつはもう生徒なんだ」というのは遅れてるな。すでに恵都がここに来るのは4度目なのに。
・紅葉が手伝ってくれと恵都を引っ張っていく。そして作業しながら恋バナを振ってきて、大洋の話を聞いた紅葉は会わせてよとすっかり盛り上がってしまい、結局恵都は紅葉を大洋のところに案内することに。
この紅葉の積極性がなかったら恵都の恋は良くも悪くも全然動かなかったでしょうね。
・恵都に気づいた大洋は声をかけてくるが、休憩時間マネージャーらしい女の子が自分が首にかけてるタオルで彼の汗ぬぐったりシャツまくって腹まで拭いたりする。あの人も大洋のこと・・・と落ちこみ気味の恵都を、紅葉は恋愛初心者はすぐ引くからダメだとハッパかける。
第三回を見る限り紅葉の恋愛スキルは大いに当てにならない。あれだけ自然な動作でボディタッチしまくり大洋も自然にそれを受け入れてるあたり、すでに付き合ってる雰囲気だと思うけども。まあマネージャーが一方的にアプローチかけてる可能性もまだゼロじゃないですけどね。
・練習試合にのぞむ大洋に手作り弁当を持っていくことを紅葉に勧められた恵都は、日曜にリストンのキッチンで人生初のお弁当を作る。その姿を紅葉が浩一や剛太を連れてきて見せている。
さらにサッカー観戦にまで二人を連れていくことに。女子二人とはちょっと離れた位置で男子たちが一人一人で座ってるのが印象的。どちらかいうと二人とも好きなことに一人で没頭するタイプですしね。
なのにサッカー観戦についてきてくれたあたりは友情というか。特に浩一の方はサッカーにはいろいろと複雑な思いがあるだろうに。
・練習試合の午前の部終了。大洋に「応援ありがとな」と声かけられて笑顔をこぼす恵都に「わっかりやすいなあ」という浩一。紅葉に「何が」と聞かれ「別に」と話をそらすが、大洋にやきもち焼いてる気配があります。
立ち上がる恵都の背中を剛太が笑顔で押し、一歩一歩という感じでグラウンドへ向かう恵都。しかしマネージャーたちがみんなの分のお弁当を買ってきたと配ってしまう。
立ちすくむ恵都に浩一はパソコンゲームにこと寄せて声をかけ、紅葉はわざとテンション高い態度で恵都を向こうへ連れていく。その間に浩一は女子マネが大洋に手作り弁当渡すのを見てしまう。なんか切ない表情なのは恵都の気持ちを慮ってでしょうね。
・一人休み時間にボールをける大洋のこぼれ球を足でキャッチして蹴り返す浩一。彼がサッカー経験者である伏線がここに。
・帰り道。残念だったねと言う紅葉も「しょうがないよ」と答える恵都もさほど堪えてはいない様子。むしろ笑顔。この時点では“お弁当渡せなかった”というだけですからね。
すでにある程度結果が見えてる視聴者的には二人の明るさが切ない。
・ファミレスで剛太と落ち合う浩一。黙ったままの浩一をいぶかる剛太に「大人はいろいろあるの、考えることがいっぱいあるの」。言い方がなんか可愛いです。
そのころ恵都と紅葉は偶然に大洋と女子マネが付き合ってる決定的証拠の現場を見てしまう。思わず道でへたりこむ恵都を「大丈夫 ?」と心配する紅葉。恵都はほぼ無表情ですが後からトイレの洗面台で吐きそうになってます。ずっと他人と関わってこなかっただけに失恋という重い感情の受け流し方なんて心得てるはずもないですからね。
・紅葉は息せき切ってファミレスへ飛び込み、浩一たちに「恵都ここへこなかった?」と尋ねる。道で気持ち悪くなってそこのコンビニのトイレ借りたんだけどちょっと目を離したすきにいなくなっちゃって、と説明。
「どうしよう、あの子、死んじゃうかもしれない」まで飛躍してしまう紅葉に浩一は「どういうことだよ」と問うが、剛太は理由も聞かずすぐ顔色を変えて飛び出していく。それぞれの性格が表れた心配の仕方です。
・恵都を探すのに、剛太と対照的にこちらは歩いてる浩一。でも足取りはせかせか。落ちつこうとして落ちつききれてない。
紅葉は偶然スクール長に出会い、彼も巻き込むことに。紅葉は恵都の家へ友達だといって訪ねる。よく家知ってたなあ。こうして恵都がフリースクールに出入りしてることが恵都の母に知れるわけですが、特に後の展開には関係しませんでしたね。
・人ごみを歩きながら「外なんか、出なければよかった。また体が透き通っていくみたい」。
たまたまぶつかった男たちによく見たらかわいくない?とナンパされ、ディスコに連れて行かれるが、踊る皆の中で呆然と突っ立ったまま。連れて来た男たちによくぞ悪さされずにすんだ。ぼうっとしてるだけの恵都に飽きて他の女を物色しにいってくれたのか。
原作ではサッカー部の女子マネ(平野)との交流→恵都再生が描かれるエピソードがここに入る。すごくいいシーンなので削っちゃったのは残念ではありますが、ストーリーの焦点をリストンメンバーとの友情に絞る(「人間てね、再生するんだよ」という平野の名台詞も紅葉のものになってる)意味で全六回のドラマに纏め上げるうえではしかるべき改変だったのなと思います。
・探し疲れて夜道で集合した浩一たち。スクール長の“失恋はつらいが何度か経験するうちに免疫がつく”という言葉に対し、浩一は「ないですよあいつに、免疫なんて。あいつは無菌室から出たばっかりの赤んぼみたいなもんじゃないですか」。確かに二回目(浩一に彼女がいると誤解したとき)はもっと強く対処できてましたからね。
・剛太の「学校」という言葉でリストンの屋上へ向かった一同。恵都は外へ出なければよかったと言いつつ家に戻るのでなくリストンへ向かった。ここから飛び降りて死にたいという思いがあったためにもせよリストンにやってきたということが、彼女にとってリストンがすでに一番落ち着ける場所になっているのがわかります。
・大洋に好きだといってもらえてやっと生きてる意味があるかと思えたのにやっぱり自分は役立たずで、と独白を続ける恵都を「甘えてんじゃねえよ」と一喝する浩一。つかつか歩み寄って「こいつらがどれだけ心配したと思ってる」「そんな甘いこと言ってるんだったら死んじまえよ」。
ひどい言葉ですが紅葉が「浩一・・・」というだけでたしなめないのは、その言葉に浩一自身がどれだけ恵都を心配してたかが溢れてるから。「おまえを、心配してる人のことも考えろ」「(おまえが死んだら)少なくともここにいるやつは泣くよ」といったあとに「おれも泣く」と付け加えるあたりが浩一の可愛げ。
・半泣き顔で浩一の言葉を聞いている恵都を皆が見つめる。一番前に立つ浩一も今はすごく優しい目になっている。初めてしゃくりあげて泣く恵都に紅葉が駆け寄って抱きしめる。
「人間てね、再生するんだよ」「また笑える。また好きな人ができるよ」。友達に導かれた涙によって恵都の止まってた時間が流れ出した。「私が二度目の産声を上げた夜」。
じっと優しい目で見つめていた浩一があるかなしかの微笑みを口元に浮かべる。クール系であまり感情を表に出さない浩一はこういうごくわずかな表情変化に感情の流れが表れる。勝地くんの表現力がフルに生かされています。