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about him

俳優・勝地涼くんのこと。

『キャットストリート』(2)-1(注・ネタバレしてます)

2012-08-25 02:21:57 | キャットストリート
〈第一回〉

・冒頭から子供メインのミュージカル舞台。明らかに『アニー』を模したものとわかります。
画面中央でほかの子供たちに囲まれ生き生きと演じるヒロイン(奈子)と対照的に暗い表情でそれを舞台袖から見つめる少女(恵都)。衣装がおんなじことから緊急に用意された代役の子(舞台の子が?袖の子が?)と想像されます。
「友達っていいね」という歌詞と裏腹に二人の間に生じている緊張感が匂わされている。実際にはこの時点ではまだ(恵都→奈子は)仲良しなんですけどね。

・次の場面、舞台に登場したヒロイン(今度は恵都)は何も話せず耳をふさいでしゃがみこんでしまう。そこで現在に場面が転換。7年後の恵都の夢だったというオチが彼女自身のモノローグで語られる。
詳細はわからないながら、7年を経てなお塞がらぬ彼女の心の深い傷が示唆されます。

・下の部屋でにぎやかな話し声。一般家庭のリビングに制服姿の女の子たちが集まっていることから平日の日中、おそらくは放課後だと知れる。明らかに十代らしいのにこの時間まで寝ていた恵都が学校にいっていないこと、本人のモノローグからも引きこもりだというのも察せられます。
女の子のうちの一人が恵都に気づき、その睨むような視線からその子が恵都の姉妹で、引きこもりの身内の存在を恥じ、すぐそれとわかるような格好で出てきたことをとがめているのもまたわかるようになっています。

・部屋に戻った恵都を母親がたずねてきて、もっと知佳に気をつかってあげてと話す。叱責するのでない、機嫌をとるような丁寧な口調に、腫れ物を触るような扱いぶりが表れています。きっと7年間ずっとこういう感じだったんでしょうね。

・自分がいて邪魔なんだったら友達が帰るまで外に出てる、とつっけんどんな口調でいう恵都。
外にまったく出られないわけではないし、家族をいっさい部屋に入れない、口をきかないでもない。引きこもりとしてはまだ程度の軽いほう、親子関係のいい方なのかとは思います。
あとで大洋と再会したときも「おれのこと覚えてない?」と聞かれて「原沢太陽」と無愛想にでも答えていて、家族外の人に対してもコミュニケーション完全拒絶じゃないですしね。

・公園で一人じっと座っている恵都に男の子が「青山」と声をかけてくる。小学校4年から不登校だとモノローグがあったばかりの彼女を、彼はなぜ知っているのか?と思ったら「おまえほんと変わってねえなあ」。つまり小4から顔変わってないわけですね。
それは引きこもりにもかかわらず彼女の外見が崩れていない(太ったり痩せ衰えたり髪ぼうぼうだったりしてない)証であり、同時に年頃の女の子らしいおしゃれ心もない、良くも悪くも10歳で止まってる印といえます。本人も少しあとで「私の時間は止まってるから」と言っています。

・ところが「変わってねえな」のあとに続くのが「ぼーっとしてるとこ」。そこが恵都を見分けるポイントなのか(笑)。子役として活躍してた時代から学校ではぼうっとしてた、影が薄かったわけですね。

・大洋にからかわれてその場を立ち去ろうとする恵都はどこへ行くか聞かれて「買い物」とごまかそうとするが、大洋は「そこにコンビニあるだろ、つきあってやるよ」と明るい笑顔で恵都の肩を叩き、先に立って歩き出す。
子供の頃はよくわかってなかったとしても今は恵都が不登校になったのも今も続いてるぽいのも察しているでしょう。そのうえで気安く近づいてきたのが純粋な好意によるものなのか興味本位かもっとはっきり悪意があるのか。まだまだ不分明です。

・恵都の回想で、大洋は彼女が不登校になった当時も態度を変えずに家まで迎えにきてくれてたことが明らかに。恵都はそれを「マイペース」と評して、彼が何を思ってそうしていたかは考えようとしていない。そして恵都自身がどう思っていたのかも。
ただ決して嫌ってないのはわかりますが。大洋の方も昔と人間性が変わってないわけだ。

・コンビニの雑誌の棚の前で並んで一方的に話しかけてくる大洋。おまえどうしてるんだ、高校、と言いかけて黙るあたり決してデリカシーがないわけではないらしい。
ところで恵都が致命的に漢字の読めないことが後になって明かされますが、このとき恵都は雑誌の内容どの程度わかってたんだろう。

・気まずいのをごまかすように大洋は自分の高校のこと、サッカーの名門に推薦で入ったことを語る。その立派な履歴は恵都には結果的に皮肉になってしまっているかも。
大洋は結構本気っぽい口調で恵都を試合観戦に誘うが、恵都は完全無視。ちょっと話してみたい気はあったんでしょうが、現在の生活を変えるほどに踏み込まれるのはイヤなのがはっきりしてます。

・大洋との会話を避けるようにテレビ誌をめくる恵都は園田奈子なる少女の特集記事に目をとめる。原作を知らずとも慧眼な人なら、テレビ誌に載ってるんだから芸能人に違いない彼女があの時の舞台「サニーデイズ」の女の子だということにすぐ気づいたんじゃ。少なくとも恵都にとって何か因縁のある相手だと見当はつきますね。

・奈子の記事に彼女の原点だという「サニー」の写真が出ていて、完全に冒頭のミュージカルの子だとわかる。BGMと急に出て行こうとする恵都の態度の変化が緊迫感をあおります。

・場面は変わって奈子のグラビア撮影現場。スタッフが持ってきた雑誌を見る奈子にスタッフが語る言葉でサニーがダブルキャストだったとわかる。
もう一人の子は今どうしてるのかと聞かれて奈子は気がなさそうに「知らない」と答えますが、その仏頂面と雰囲気から彼女のほうも多分に恵都を意識してる様子。売れっ子らしいのに幸せそうには見えません。

・恵都の両親がリビングで会話。恵都があんなになったのは母がプレッシャーをかけすぎたからではと父が言ったのを機に言い争いに。そこに知佳が割って入って、恵都のことはほっとけばいい、あの人のことで争うなんて馬鹿げてると言う。「あの人」という言い方に恵都に対する反感はわかりやすく表れています(原作のあいつよりはマシだけど)。
しかしお父さんもまだ明るいうちから帰ってきてるんですね。家もいかにも裕福そうだし重役とかなのかも。

・ファミレスで見かけた母子(成績が悪かったことで娘が母から叱責されてる)をきっかけに恵は自分の子供時代を思い出す。
こないだのオーディションは台詞がちゃんと入ってなかったから負けた、努力すれば一番になれる子なんだからと母に言われ「はい、お母さん」と暗い表情で返事を返す子供の恵都。ファミレスの母親のように怒鳴るのではなく優しい口調と笑顔ですが、まさに真綿で首を絞めるよう。
恵都の表情の乏しさと母に対するには丁寧すぎる態度が、彼女の心が萎縮してるのを表しています。

・「サニーデイズ」のオーディション。審査員から演技の指示が出るたびに確認するように母の方を見る恵都。
複数の大人に品定めされるのが不安だからというより母の思惑が一番に気になる、子役の道に気が進まないらしい(演技が嫌いなわけではない、むしろ普段より演じてる時のほうが生き生きしてる)恵都がそれでも真面目にお芝居をするのは一番に母を喜ばすためなんでしょうね。

・泣きの演技を見事にやってのける恵都の姿に、会場内のお母さんたちが恵都の母のほうに目を向ける。
恵都の演技に見入るのでなく、自分の子の有力なライバルである恵都に敵愾心を燃やすのでもなく、母親のほうを見るというのが。ステージママにとってのライバルは同じママか。お母さんも何か得意気な顔だし。
こういう光景をみると、結局恵都の母親も他の母親たちも自分の虚栄心のために体よく我が子を利用してるだけという気がしてきます。

・学校から帰ってきた恵都のもとに、母がサニーのオーディションに受かったと言って飛んでくる。喜びに完全に声が裏返ってしまっている。名演技だなあ。
いかにもなステージママを戯画化したキャラと言いたいところですが、このまんまなステージママも多いんでしょうね。

・母に抱きしめられながら対照的にテンション低く、それでも薄く微笑んで「うんよかった」と答える恵都。受かったことが嬉しいというより母親が喜んでることを喜んでるのが明らか。
この年で親に気を使いすぎてて、これでは燃え尽きるのも道理という感じです。

・算数の授業中に時間だからと抜ける恵都に「芸能人はいいよなあ」とクラス中から嫉妬と嫌味の声が。まあこれは無理もない。
先生はごく協力的ですが勉強が遅れることについてのフォローはどうしてるんだろ。ここで大洋だけは嫌味の声に同調してないのも描かれてます。

・泣きの演技にダメ出しされてた奈子にロッカールームで自分から話しかけアドバイスする恵都。なまじ演技が上手いだけに嫌味ともとられかねない態度であり、善意とはいえそれを口にする恵都もドキドキものだったのが雰囲気に表れています。
しかし自己紹介で元気がとりえを標榜した奈子は気を悪くしたようもなく、さらっと助言を受け止める。後の展開からするに内心はむかっ腹立ってたのかもですが。

・友達になってほしいと自分から切り出した奈子は、恵都に学校の友達がいないと聞いて、じゃああたしが友達第一号だとことさらに喜ぶ。
この時点でもう後の手ひどい裏切りを計画してたんでしょうか。そのくらいしたたかじゃないと子役も務まらないのかも。

・ダブルキャストが気に入らず、あんな素人の子なんてと悪く言う母に「でも奈子は友達だから」と恐る恐る口答えする恵都。母は笑顔ながら「あなたは特別な子なのよ」「友達がいないとかさびしいとかちょっとぐらい我慢しないと」と言い切る。この人は恵都をどんな偏った人間にしたいんだ。あげく「恵都負けちゃだめよ絶対に」。
恵都の心に決定的な傷を負わせたのは奈子でしたが、下地を作ったのは完全にお母さんですね。

・回想終了。まさに「負けちゃだめよ」の台詞で娘をあおる母。聞くに堪えなくなった恵都は乱暴に席を立ちメロンソーダのドリンクバーをつぎ足す。そして母子の席に行くとテーブルと母親の膝にソーダをぶちまける。
しかしそのままの勢いで暴れたり怒鳴ったりするのでなく、「手元が狂いましたすみません」と口先だけだが謝ってちゃんと勘定も払って外に出て行く。
自分に重なったとはいえ他人のために怒りそれをちゃんと形に出せる。形だけでも謝ったり店には迷惑かけないようにしたりの配慮もできる。この母親より恵都のほうがよほど健全な人間かもしれません。

・この騒ぎをたまたまファミレスで見てた男性が後を追ってくる。いわく、前からよく恵都をあのファミレスで見かけてた、もっと楽しい時間のつぶし方がある・・・どう見ても怪しい人です。一応その道のプロのはずなのにこんな勧誘方法でいいんだろうか。
「お断りです」と言い切って歩き去る恵都のあしらい方は堂に入っていて、先の母親への対応といい、引きこもりの割には対人関係でちゃんとふるまえてる。もっぱら相手を否定する方向の言動に置いてではありますが。

・この近所にあるフリースクールへと恵都を誘う男。そこの校長だという言葉にやっと恵都が足をとめる。校長という柄にそぐわない外見をあからさまに怪しんでる顔つきですが、結局恵都は男についていく。それどころか男の紙袋が破れてぶちまけた中身まで拾って一緒に運んでやる。
こうして恵都は初めてエル・リストンへと足を踏み入れることになります。

・ヒップホップの音楽が聞こえてくるのが気になって音をたどった恵都は、部屋で一人音楽にあわせて踊る少年(剛太)と出会う。
ついでその隣の部屋で一人パソコンを打っている少年(浩一)をドア越しに覗くがこちらは恵都の視線に気づいて振り返る。睨むような(そこまできつくないが友好的ではない)視線に浩一の(当時の)排他的な部分が出てるような。

・浩一の視線に気おされて一歩さがった恵都は後ろにいた剛太とぶつかってしまう。
そのせいでコーヒー ?が服にこぼれたのに、彼は怒らず笑顔で恵都の謝罪を受ける。でも口を利こうとはしない。これは吃音を気にしてることの伏線ですね。
そして恵都に自販機のコーヒーをもってきてくれる。彼の優しさが伝わってくるシーン。

・スクール長の言葉に思うところがあったか大洋の学校を訪ねてみる恵都。サッカーするところを金網ごしに見ていると、大洋が気づいて呼び止め、踵を返そうとした恵都に「馬鹿にすんなよ、おれは絶っ対セリエAにいくからな」と宣言。恵都は自分の方が馬鹿にされたと思って反発心から大洋を罵倒したのに。
そして大洋は「だからおまえも頑張れよ」と続ける。引きこもりの彼女を低く見ず同じ目線で励ましてくれる。いいやつだ。

・「大洋の言葉に押されるようにして」もう一度エル・リストンへやってきた恵都。スクール長に刺激されて大洋を訪ね、大洋に刺激されてエル・リストンを訪ね、という連鎖。こうした人との繋がりは引きこもっていては得られないものですね。

・エル・リストンにやってきて早々ロリータファッションの女の子(紅葉)に声をかけられた恵都はいきなり部屋に連れていかれ、彼女の服作りを手伝わされるはめに。
たくさんあるデザイン画を見て「この絵を自分で?」と自分から話しかける恵都。こうしてみると彼女は普通に他人に興味を持てるし自分から近づくこともできる。家に引きこもることによって自ら他人と接する機会を失っているだけで、きっかけがあればちゃんとしたコミュニケーションが可能なんですよね。
以前からファミレスで恵都を見かけてたというスクール長があの日に限って恵都に声をかけたのは、例の母子への対応を見て(スクール長自身もあの母親の発言が聞こえてて相当苦々しく思ってたんでしょう)、あの子供と同じ辛さを恵都も負わされてきたんだろうこと、それ以上に他人のために怒りそれを表明した恵都が“自分から外に働きかける力”を持ってる、場を与えさえすれば他人と関わっていけることに気づいたからでしょう。

・高校1年から不登校だという紅葉。原因はロリータ服を学校に着ていって回りに引かれたこと。「こういう格好してないと自分が自分じゃないような気がしちゃうんだよね」。
服にその人間の性格が表れる、アイデンティティが反映されるのは当然だし、服装で気分が変わることも多々あるものですが、しかし常に好みの格好じゃないと落ち着かないというのはやや精神的に脆弱な気もします。精神状態を服に依存しちゃってるというか。
ポリシーをちゃんと持ってるのはいいんですが、結局回りに引かれたせいで不登校になったというあたり、集団の中で人目を気にせずポリシーを貫けるほどの強さはなかったということですしね。
第三回で明かされるように紅葉はロリータ服で登校する以前からクラスで浮いてたそうなので、本当は彼女の居心地悪さは制服を着ることではなく周囲との不調和に由来してた、ロリータ服はもともと根のあったいじめを顕在化させたきっかけに過ぎないんでしょうが。

・名乗るのをためらう恵都は紅葉のところにやってきた生徒たちに「どこかで見た顔」といわれ固まる。そこに廊下側からやってきた浩一が「青山恵都だろ」とぶっきらぼうに言い切る。
恵都が人に知られたくないことを、それを察したうえで暴露するひどい行動ですが、あえてそうすることで彼女を膠着状態から救おうとする彼なりの優しさなのでしょうね。
おかげで恵都が自分から逃げるなりごまかすなりしなくて良くなったのだし、今後もリストンに出入りするなら遠からず直面する問題ですしね。

・「声をなくした天才子役、だった人だろ」。過去形なのがキツい。「サニー」は子役の登竜門だと母親が喜んでたので恵都はまだ駆け出しの部類なのかと思ってたんですが、周囲の反応を見るにすでにテレビなどで十分に売れっ子だったみたいですね。

・恵都の隣にやってきて右手を差し出した浩一は「芸能人の義務だろ?握手」と傷ついた(自分が傷ついた)恵都をさらに痛ぶるような言葉を。
しばらく恵都は浩一を睨んでいたが、やがて彼を思い切り突き飛ばして(あっさりひっくり返る浩一も結構情けない)部屋を出て行く。「それだけは言ってほしくなかった。サニーだって指を指されたくなかった」。なまじこれだけ顔が売れてなければ引きこもりにまでならないですんだんでしょうか。

・回想。「サニーデイズ」本番前、メイク中に倒れたという奈子。恵都母はチャンスとばかり恵都に昼公演もやらせるよう演出家?に進言するが、奈子が起き上がってきて自分はや
れると言ったため恵都が袖で待機して奈子が出る形に。これで冒頭のシーンに話が繋がった。「奈子、大丈夫だからね」と励ます恵都をなぜか奈子は無言で睨むように見る。その視線の意味はまだ明かされませんが、出番取られそうになったことでいよいよライバル意識が炸裂したんでしょうね。恵都への意地で体調不良ふっとばしたんでしょうし(原作では、この時倒れたのは芝居だったとあとで告白する場面があります)。

・舞台へあがった奈子は元気に活躍。演出家たちも袖で彼女をほめる。幕が無事下りて引っ込んだ奈子は拍手する恵都を無視して横を通り過ぎる。その態度をいぶかる恵都。
それでも「奈子おめでとうすごいよかったよ」と褒める恵都に「お礼言ってほしいの ?あげないよなーんにも。友達一人もいないなんて気持ち悪い人」と奈子は言い放つ。
一番恵都の弱い部分を的確にえぐるかのような発言。夜公演を失敗させてやろう、立ち直れないほど傷つけてやろうという気があっての言葉だったんでしょうか。まさか恵都を子役引退、引きこもり状態にまで追い込むとは予期してなかったろうから、さすがに寝覚めの悪い部分はあったんだろうか。

・回想終わり。「あの日から私は言葉を失った」。夜公演、幕が開いてる15分間何もできず突っ立ってるだけだったという恵都。
夜までの恵都の様子はどうだったんでしょう。きっと奈子に暴言を浴びせられた瞬間からずっと茫然自失状態だったろうと思うのですが、お母さんは恵都の異常に気付かなかったんでしょうか?

・エンディングで並んで歩く4人。最初の方で自然と恵都が浩一のほうに体を寄せてくのは、いずれ彼と結ばれる伏線なんですかね。

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