読書が趣味というと何となく真面目で向学心旺盛というプラスイメージがあるので、書くには無難というところだろうか。
こういう人が実際にどんな本を読んでるかというと、マンガや雑誌、良くてベストセラー作品がせいぜい、なのだとか(個人的にはそれも十分読書のうちだと思いますが)。
さて勝地くんもデビュー当時(中学一年)から一貫してプロフィールの趣味欄は「読書」となっているのですが、実際彼がどんな本を読んでるかといえば――
「最近読んだ本は、向田邦子さんの「寺内貫太郎一家」です。」(18歳当時のインタビュー、ソースこちら)
このコメントにのけぞりました。今どきの十代男子が向田邦子をっ!?
・・・こりゃ本物だ。真性の本好きだ。
13歳当時のインタビューにある好きな本(作家)のラインナップも「シャーロック・ホームズ」は中学生らしいチョイスだと思いましたが、芥川龍之介(渋!)とか星新一(20年前なら読書好きの中高生が一度は通る道だったでしょうが、近年もそうなのか?)とか、世の流行りすたりなど気にも留めていない感じがすがすがしい。
その後、『SEVENTEEN』2006年3月15日号の「有名人オススメBOOK☆ベスト3」でまたものけぞらされました。
第1位がリリー・フランキー『東京タワー』というのは、意外に普通だなあと思ったんですが、第2位が『小川未明童話集』・・・。
正直、名前しか知りませんでした小川未明。児童文学というジャンルのゆえかあまり国文学史では重要視されてこなかった(国語の授業で取り上げられない)作家かと思ってたんですが、19歳(当時)の勝地くんが知ってるということは、最近は短編が教科書に載ったりしてるんでしょうか。
もしくは編集部のコメントに「「赤いろうそくと人魚」は学校の図書室で読んだ人もいるかも」とあったように子供の頃に出会ったか(でも最近初めて読んだような口ぶり)、誰か年配の人にお勧めされたかしたのかな?
(ちなみに別のインタビュー記事によると『寺内貫太郎一家』は友達のお勧めだそうです。彼以外にも向田作品を愛する若人がいるわけですね!
もっとも若手俳優さんたちのインタビューなど読むと、勝地くんに限らず「若者の活字離れ」など他所事のように読書家が多かったりする)
さらに第3位は『おおきな木』という絵本。
女性タレントだとお勧め本として絵本を挙げるケースもあるように思いますが、男性が絵本を好きだと公言するのは(『葉っぱのフレディ』みたいな例外をのぞいて)珍しいかも。
まだ10代だから言える、というんじゃなくて、きっと30歳になっても40歳になっても、好きなものを好きだとごく当たり前に言い続けてそうな気がします(最近も『ダ・カーポ』6月20日発売号で「無償の友情の物語」として『おおきな木』を紹介していました)。
なんというか彼には「自分をよく見せたい」という欲をほとんど感じないです。
といって「他人の目など気にせず自分流を貫く」という気負いも感じない。ただ自然にしてるだけ。
思うところ、訊かれた事を正直に(常識と礼節に反しない範囲で)話してるだけ、という印象があります。
あと個人的に嬉しかったのは、第2位のコメントで「(寝しなに読む本の)定番は星新一さんの〝ショートショート〟でしたが、最近はこの1冊です」と話していたこと。
中学一年の頃に好きだった本を6年後も大切に読み続けている。
「サイモン&ガーファンクル(とくに「冬の散歩道」)が好き」というのもずっと言い続けてますし、『BiDaN』2007年4月発売号で、好きな本を三冊あげた中に『寺内貫太郎一家』がしっかり入っていた。
「流行りすたりに関係なく好きなものは好き」、そして「一度好きになったものはずっと好き」なんだなあ、と彼の変わらなさになにやら胸が温まる気分になったものでした。
P.S. その後『寺内貫太郎一家』を読んでみました。石屋を営む昔気質の頑固親父とその家族のドタバタ劇。
貫太郎はすぐにカッとなって手が出る性質だし、貫太郎を中心に家族の誰もが一度は(多くは相手あるいは他の誰かを思いやるがゆえに)「決して口にしてはいけない言葉」を、つい口にしてしまう。
他人であったらまず一生不通、関係の修復は不可能になるだろうほどの暴言をお互い繰り返しながら、最後には謝罪とも呼べないような、短い日常的な言葉のやり取りの中で許し合う。
いや、罵りあっている時点ですでに、心のどこかで相手を許し合っている。
家族の絆の確かさと暖かさを押し付けがましくなく伝えてくれる素敵な作品でした。
この本を読みながら、以前に読んだ瀬尾まいこさんの『幸福な食卓』(まだ映画が公開される前だったので原作のほう)を自然と思い起こしていました。
時代の流れもあり、二つの作品の中の家族のあり方は相当違っていますが、「簡単につくれないかわりにめったになくならない」家族の絆が描かれていた点は同じ。
『幸福な食卓』に出演したさいに、勝地くんは『寺内貫太郎一家』を思い出したりしたでしょうか。