about him

俳優・勝地涼くんのこと。

『少しは恩返しができたかな』(2)-1(注・ネタバレしてます)

2007-07-21 01:16:28 | 他作品
作品の性格上、ストーリー(実話)部分にはあまり触れず、主として役者の演技・演出について心に留まった点を箇条書きで抜き出してみました。

 

・どうせ抗癌剤で抜けてしまうなら、とお母さんに頼んで頭を剃ってもらうカズくん。
二宮くんは頭の形がいいですねえ。実に綺麗な坊主頭になっていました。
坊主にしてから最初の撮影日に、勝地くんが二宮くんの頭を撫でつつ「おっ、やさしい」とか言ってたそうですが、きっと凹凸のないまあるい手触りだったのを「やさしい」と表現したんでしょうね。

・拓巳がドアをくぐり病室の様子を窺うカットの直後に、ドアに背を向けてベッドにぼんやりと腰掛けているカズくんの背中が映されるので、これは拓巳の視界なのでしょうね。
久しぶりに会う親友の、内面の不安を浮き彫りにしたかのような姿に、きっと心中では動揺しながらあえて「ヒマそうだな」と皮肉めいた声をかける。「おっ、タク!」と応じるカズくんもさっきまでと打ってかわった明るい顔と声で拓巳を迎える。
どちらの態度も相手の気分を暗くさせまいとする優しい強がりに思えます。

・カズくんと拓巳のやりとりは普通に同年の友人同士に見える。実際には二宮くんが3歳年上で、勝地くんは普段彼に半ば敬語で話してる(「寒くないっすか?」とか)というのが意外なほど。さすがに二宮くん、「永遠の17歳」と言われるだけはある(笑)。
ちなみに看護士・佐々木実緒を演じた池脇千鶴さんも撮影当時24歳ですが、彼女も十分高校生で通りそう。

・カズくんが帽子を取る前後で彼の頭を見る拓巳の表情。
大げさな表情の変化はいっさいないのに、ちょっとした目線の動きやすっと真顔になるところに、先に廊下を歩いてきた時の足取りの重さ、病室の前でちょっと佇んでいたことと同様、病中の友人に何を言ってあげればいいのか戸惑う少年の心情が表れている。

・卓球部の友人たちとかち合い、帰ろうとする拓巳を「まだ居ればいいじゃん」と引きとめようとするカズくん。拓巳と卓球部のメンバーたちの仲がしっくり行かなくなってるのを取り持とうとする心遣い。
「安心しろよ。もう見舞いなんか来ねえから」と憎まれ口を聞く拓巳に、「タク」とちょっと咎めるような口調で呼び掛けるのも、彼の態度が気に障ったからではなく、拓巳が皆から反感を買うのを心配したからですね。
命に関わる大病を患っていながら友人を気遣えるカズくんの優しさと精神力の強さに驚きます。

・カズくんと拓巳が卓球しながら会話する場面。二人とも卓球のトレーニングをしたとはいえ、ごく滑らかにラリーを続けつつ、声の抑揚も表情も豊かに演じているのは大したもの。
『POTATO』2006年4月号で勝地くんが、「(ニノくんは)台詞のテンポを考えて玉を返してくれるんです。すごいと思いません?」と語っていましたが、勝地くんも負けずにすごかったです。

・「俺は受験を頑張るから、お前も頑張って病気を治せって」と真顔で告げる拓巳。真摯な目の光に思わず気圧されそうでした。
放映当時、「目が強いから制服着てると高校生より防大生に見える」との評を見かけましたが、わかる気がします。実際撮影の一年前まではリアル高校生だったんですけどね。

・自分たちも受験勉強が忙しいはずなのに、カズくんの分までノートを取ったり、英語ヒアリングのためのテープを録音したりしてくれる友人たち。
後に校長先生にカズくんを卒業させてくれるよう訴えたさい、「北原が頑張ってたから僕らも頑張れたっていうか」と語ってたように恩着せがましい部分も全くない。彼らの熱い友情に驚かされました。
この友人たちの中に拓巳の姿はありませんが、それは拓巳と卓球部のメンバーの間に溝が出来ているせいばかりではなく、拓巳がカズくんの健康を心配するゆえに彼の受験を快く思っていないのも一因なのが、後に明かされます。
かつて小児喘息に苦しんだ経験があり、医者を目指しているだけに、まず体の心配が先に立つのでしょうね。

・模試会場で離れた席からカズくんを見つめる拓巳。軽く微笑むカズくんから目をそらし、そのくせ立ち上がったあとに足を止めてまたカズくんをじっと見つめている。
最初は単にテストの出来が悪かったせいで暗い表情をしてるのかと思ったんですが、よく見返してみるとカズくんを見る拓巳の目にはどこか痛ましげな光がある。
病気を押して受験に向かう親友を直視するのが辛くて顔を背けてしまうのだろうなと感じました。
けれど同時に病気に負けていないカズくんの強さに引きつけられる部分もあって、だから目をそらしたかと思うとまた見つめ直してもしまう。
後に本番の面接が終わった直後のカズくんとばったり会ったとき、拓巳が「カズがその体で受験勉強するの賛成じゃなかった。けど、何か逆だけど俺がおまえにパワーをもらった気がするよ」(この時のカズくんの「勝手に取るなよ」という返しも、二人の気の置けなさが伝わってきて良い感じ)と語る、その心境の変化につながってゆく前振り的なシーン。

・歯の痛みを押して勉強を続けるカズくん。
「痛み止め飲んだんだけど全然効きやしないよ」と力なく言う時のふがふがした話し方が、本当に歯の激痛に耐えているかのようで(しかも台詞はしっかり聞き取れる)、二宮くんの表現力に驚かされました。

・氷入りのビニール袋を抱えてホテルへと走るお母さんが転ぶ場面。その思い切り良い倒れ方は本当に怪我をしなかったか心配になるほど。
カズくんの頬に氷を当て肩を抱く仕草と表情にも母の愛が満ち溢れていて、ここのくだりは大竹さんの演技力に目が釘付けでした。

(つづく)


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