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俳優・勝地涼くんのこと。

『機動戦士ガンダム00 -A wakening of the Trailblazar-』(3)ー2(注・ネタバレしてます)

2024-09-19 09:40:18 | ガンダム00
・連邦本部では、シーリンから報告のあったコロニー公社による視察妨害について大統領と男性二人のやりとり。宥和政策もいいが大統領のやり方は少し甘すぎないかという意見に対し、大統領は「宥和政策の要は根気です。事を急げば歪みも大きくなるわ。ソレスタルビーイングの時のようにね」と応える。
根気が大事、というのは迂遠なようだが真理なのではないか。紛争で人が死ぬのを防ぐための武力介入が、かえって歪みを大きくしてさらに多くの人が死ぬことになったわけで。
ただそれなら何もしない方が良かったとも言えないのが悩ましい。ソレスタルビーイングの武力介入(ファーストシーズン)のために歪みが大きくなった世界(セカンドシーズン)にさらにソレスタルビーイングたちが武力介入した結果が今の世界であり地球連邦なのだから。
ともあれ大統領に対してこれだけ正面から意見を述べられるこの風通しのよさは素晴らしい。大統領の人柄なんでしょうね。

・外見的にイノベイドとおぼしき女性広報官?(アニューと同タイプ。セカンドシーズンの最終回、議会のシーンにも出てました)が、探査船をデカルトが破壊したことを報告に来る。
研究チームはデカルトをさらなる実戦に投入してデータを取りたがってるとも報告してるので、例の士官?はその研究チームの人なんでしょうね。

・一人になったあと、深刻な表情で窓の外を見つめる大統領。彼女を悩ませているのは探査船の破片が地球に降り注ぐことではなく(なぜか大気圏で燃え尽きず地上に落ちた破片が若干存在したものの、この時点ではこの件はさほど大事とは捉えられていなかった。極秘に破片の回収部隊を派遣したりしてるので、全く気にかけてないわけではないのですが)、デカルトの話が出たさいに話題に上った、この先イノベイターが増えてゆくこと、それによって非イノベイターの人々との間で軋轢が生まれるだろうことへの懸念でしょうね。
至急インフラの整備を進めるよう彼女は指示を出してましたが、この後出てくる脳量子波を遮ることのできる施設はそうしたインフラの一環かと思われます。
しかし今回はELSから脳量子波が多い人々(優先的にELSから狙われてしまう)を保護するために使われたが、本来何を目的とする施設なのか。イノベイターに心を読まれることを恐れる一般人からの攻撃を避けるためにイノベイターを守る、というか隔離する施設なのか、と勘ぐりたくなってしまうですが。

・探査船の破片が落ちたという噂の調査に人革連の現地までやってくるイケダ。彼いわく「政府は大気圏ですべて燃え尽きたと公表していたが」。新政府でさえ秘密主義なのかと思うとちょっと悲しくなった。
一般市民を変に不安にさせないための措置なんでしょうが、「ごく一部燃え尽きずに落下した破片があります。現時点で危険性は確認されていませんが、もしも見慣れない金属片のようなものを発見されたら周囲に近づかず行政機関にお知らせください」くらいの言い回しにできなかったものか。前政権の情報統制が明るみに出たとき時あれだけ人々の怒りを買ったこと、探査船の破片についての知識がないゆえに不用意に近づいた人が何らかの被害に遭う可能性を思えば、「すべて燃え尽きた」という明らかな嘘はリスクが高い気がするのですが。
小説版によると「存在を知り、危険性を知っていながらも、十分な対策もこうじず地上に破片が墜落した。仮に墜落した場所が大都市圏だった場合、連邦政府および連邦軍は、どう責任をとるつもりだったのか」という批判を懸念したから」だったとのこと。まあ隠したくなる気持ちはわかりますが。

・破片が落ちた場所のあちこちで無人の車や地下鉄が暴走する謎の事故が。とくに最後の無人地下鉄が前方の地下鉄に衝突する事故はひどい。小説版の描写だと「数十名の重軽傷者」とあるので奇跡的に死者は出ていないようです。

・その後に「人革領 軌道エレベーター」という場所を示すテロップが。今度は軌道エレベーターで謎の事故か!被害が今までの比じゃないぞ!と危機感を覚えたら、事故の話ではなく、軌道エレベーターにオペレーターとして勤務する沙慈が電話で呼び出されるというシーンでした。電話の内容は深刻なものだったけど一瞬ほっとしてしまった。
しかし少年時代から宇宙で働くことに憧れ、一度はその夢を実現させた沙慈が地球上で働いているのが少し悲しい。さすがに元の職場には戻るのは難しかったのだろうし軌道エレベーターの仕事なら宇宙に繋がってるようなものだけども。
彼が地上の仕事に就くことにしたのはおそらくはいまだ入院中のルイスのためですね。6年前に自分のために夢をあきらめてほしくないと沙慈に言ったルイスとしては不本意な状況ではないかとも思えますが、ルイスが元気になって退院したあかつきには二人で宇宙で働こうとか約束してるんじゃないかな。

・仕事中に携帯が鳴り、先輩の目をはばかりながら小声で電話に出た沙慈は、「ルイスが!?」と大声をだして思わす立ち上がる。それから「あ、あの、すみません、急用が・・・」と先輩に断りを入れ、「またかよ」と怒鳴られ「本当にすみません!」と深々と頭を下げる。
これ保育園児の親や身内に病人を抱えてる人は思い切り身につまされる光景ですね・・・。電話に出た(まだ話を聞く前)時の沙慈の困ったような表情、「またかよ」という叱責からして、ルイスのことで病院から呼び出されるのが一度や二度じゃないこと、にもかかわらず「ルイスが!?」と驚くほどに今回の彼女の状態が悪いというのがこの短いやりとりで伝わってきます。
人革領で働いている沙慈が短時間で駆け付けられるということは(いかに現代より交通手段が発達しているだろうとはいっても)、ルイスの入院先は人革領内、セカンドシーズンラストで入院していた故郷スペインの病院(アニメでははっきりわかりませんがセカンドシーズンの小説版最終巻
(※1)に「スペインの療養所」「かつてガンダムスローネの襲撃によって負傷したルイスが運び込まれたところ」と書かれています)ではなく沙慈の勤務先の近くに転院したってことですかね。

・病院のベッドの上で怯えて暴れ、看護師たち数人がかりで押さえつけられているルイス。「こわいのが、来るー!」という叫びはまるで子供のようです。
恐怖に見開かれた彼女の目は普通に青く(元々の目の色)、この時点では(セカンドシーズンでたびたび見せたような)金色に光ってはいない。特に脳量子波が活性化していない状態でもELSの気配は感知してしまうのか。
まだイノベイターとして目覚めたわけじゃない潜在的イノベイターとでもいうべき人たちも(少しあとで出てくる女子学生とか)も別に目が金色じゃなかったけれど、彼女たちはELSの気配を感じてはいなかったから、ルイスの方が彼らより脳量子波が強いようです。
そういえばルイスは結局イノベイターとして覚醒したんだろうか。彼女の脳量子波はリボンズの与えたナノマシン入りの薬によって人工的に引き出されたものですが、薬を止めたにもかかわらず少し後のシーンで目が金色になったということは、ELS襲来を契機として真に覚醒したということなのかも。

・友人と別れ自宅に帰った女子学生が家の鍵(指紋認証)を開けようとするが反応せず。いぶかりながらドアノブに手をかけるといきなりノブから金属の結晶体のような物が増殖し、彼女の手を取り込もうとする。
どうにかもぎ離して後ろに倒れこんだ少女の前で扉が開き、中から現れたのは宇宙服を来たリボンズ・アルマーク。ゆっくり手を伸ばす彼を少女は身動きできぬまま恐怖の表情で見つめ、画面が暗転したところで彼女の断末魔(と聞こえる)悲鳴が響き渡る。この映画でもっともホラー度合が強かったシーンですね。
リボンズのうしろ、玄関の中は金属の結晶のような物で埋め尽くされてましたが、家中がすでにあの状態なのか。たまたま彼女の脳量子波が強かったためにELSを引き付けたらしいのですが(そのわりに彼女不在の家の方が先に侵食されてる)、彼女の家族は無事だったんだろうか。

・人革領の研究所で探査船の破片を調査するも特段変わった点は見つからず。それについて宇宙物理学の専門家であるドクター・ミーナの見解を聞こうとすると、突然現れたビリーが代わりに説明を始めてしまう。
最初は面白くなさそうな顔をしたミーナは、相手がビリーと気づいたとたんに歓声をあげ、ついには彼に抱きつき、というか押し倒して「私に会いに来てくれたの~?」とデレデレに。
ユニオンの研究者であるビリーが人革領にある宇宙局技術研究所に出向したり、そもそもミーナも名前からしてユニオンかAEUの人っぽい。今や地球連合の名のもとにかつての仮想敵国同士が手を取りあってるということでしょうか。
小説版では「モビルスーツ開発の専門家である自分が、なぜ探査船の破片を調べに宇宙局技術研究所まで赴かねばならないのか腑に落ちなくはないが、いくつかの軍組織を転々としてきた自分の知識と経験を期待されてのことだと思えば悪い気はしない」とのビリーの心情描写がありました。

・研究所の職員?が破片について説明してる間もビリーにぴったりくっついて頬をすり寄せたり、彼の髪の毛をいたずらしたりと一方的にべたべたしまくるミーナ。
研究所員もあきらめ顔ですが、彼女はこうした破天荒な性格も含めて許されるほどに才能が突出した天才ということでいいんですかね。

・発見された破片が落下したはずの破片の二割にも満たないことについて、誰かが持ち去ったと考える所員達に対し、消滅したか自力で移動した可能性を述べるビリー。
そんな非科学的なと失笑気味だった所員たちだが、ミーナは「さすがだわ、ビリー」と言いながら、破片の落下推定箇所と奇妙な事件が起こった箇所との位置関係を示したデータを提示する。
彼女が「さすがだわ」と言い出したとたん所員たちがはっと話を聞く姿勢になっているので、やはり性格はともかくとして彼女の才能は皆認めてるんでしょうね。

・破片と怪事件の関連性について仮説があるのでその証明に協力してほしいとビリーに切り出すミーナ。連邦が保持している脳量子波が高い数値を示している、イノベーターになりうる人間についてのデータを手に入れてほしいという。
ビリーの叔父は今や悪の権化のごとくに思われているアロウズのトップだった人物で、ビリーも叔父のお声がかりでアロウズに参加した経緯からすれば現連邦内で冷や飯を食わされていても不思議はないところですが(セカンドシーズンの小説版5巻には「叔父がアロウズの司令官で、カタギリ自身もモビルスーツ開発主任としてアロウズに参加していたのである。 彼を取り巻く偏見のレンズも、厚く、色濃くなろうというものであった」と案の定批判の目にさらされつつもモビルスーツの研究を続けたかったビリーと彼の才能を手離すことを惜しんだ連邦軍の意向が一致して彼が連邦軍に籍を置くことになったこと、しかし結局技術開発部が彼を持て余したあげくに半分島流しのような個人研究室を与えられたがビリーはむしろ研究に集中できると喜んでいる旨の描写があります)、ビリーにそんなコネがあると判断したのはなんでかな。
彼とソレスタルビーイングの関わりを知ったうえで、ソレスタルビーイングを通じてヴェーダから機密情報を引き出せると読んだんでしょうか。

・ミーナの仮説が正しいことが、さっそくにソレスタルビーイングたちの会話によって裏付けられる。この時刹那が「仲間を助けに行かなければ」と言い、小型艇で行くと言う彼に対し(しょーがねえなあといった感じで)ロックオンが「付き合うぜ」と応じる。
この時点では「仲間」というのは脳量子波が高くてかつ地球上にいるアレルヤ(ハレルヤ)とマリーのこと、小型艇だけでは危ないからロックオンがガンダムでついて行かざるを得ないという意味にとっていたのですが、後の展開を見ると「仲間」はアレルヤ&マリーだけでなく沙慈&ルイスのことも含んでいて、一人が両方を助けに行くより二手に分かれた方が効率が良いのでロックオンが手を挙げたというのが正解ですね。
実際刹那もロックオンもぎりぎりのタイミングで間に合っているので、刹那一人で両方やろうとしていたらどちらかは手遅れになっていたのでは。

・太陽光発電施設の送電停止が気にかかるというマリーの要望で、マリーとアレルヤは人革領モンゴル地域の太陽光発電施設の様子を見に行くことに。
マリーだけが胸騒ぎを感じたというのは、脳量子波が使えるマリーと使えないアレルヤの違いでしょうね。ハレルヤが表に出ていたならやはり不穏な気配を察していたことでしょう。

・変電施設がケーブルをざっくり切断され存在しなくなっているのに加え、中の人間たちは銀色の結晶体に覆われて虫の息で倒れている。そこへ無人の車などが次々襲ってくるという・・・。
車が勝手に動くのはこれまでにも何度かあったパターンですが、今度は対抗できる能力を持ったアレルヤたちだけに、息詰まるアクションシーンが展開されることになります。

・アレルヤとマリーのピンチの間に、病室で眠るルイスと付き添う沙慈のエピソードが挿入される。うなされて目を覚まし「いや」と苦しみながら目を開けた彼女の両目が金色に光るのを見て「そんな・・・!」と愕然とつぶやく沙慈。
かつてやはり目が金色になった(リボンズによる洗脳状態に置かれた)ルイスに絞め殺されそうになった経緯があるし、ルイスの異変はイノベイターがらみ、また二年前のような悲しみと争いが繰り返されるのではないかという恐怖が湧き上がっても無理からぬところ。この場面でルイスは本式にイノベイターとして目覚めたってことなんでしょうか。

・突然病室が停電。ドアが開き、入ってきたのは宇宙服姿のリボンズ。リボンズ(に擬態したELS)はうっすら微笑み歓迎するように両手を軽く広げる。これELS的には何を考えてたんでしょうね?
リボンズの姿を見た沙慈は「何だあんた」と言ってますが、彼はリボンズの顔知らないんでしたっけ?確かに直接会ったり有視界通信で顔見たりする機会なかったかも。それとも宇宙服ごしで顔が認識できてなかっただけなのか。

・リボンズに向かって折り畳み椅子を投げつける沙慈。もろに命中して倒れるリボンズ。
これ人間だったら大怪我してるかも。それでもルイスを守るために攻撃をためらわなかったのはソレスタルビーイングとの共闘を通じて愛する者のため戦う覚悟を身に着けたゆえか。ただこの場に拳銃があったとして沙慈に引き鉄が引けたかというと微妙な気はしますが。

・沙慈がルイスを支えて病室を出ると、医師たちが廊下に数人倒れている。モンゴル地域の太陽光発電施設のスタッフと違って彼らは結晶に取りつかれていないが、この違いは何だろう。
まあ同じELSといってもアレルヤたちを追い回してるのと沙慈の前にいるリボンズに擬態しているのとは別の個体だろうから(女子学生を襲った個体とは同一だろうか?どちらもリボンズの姿だけども)行動に多少の差異があってもおかしくはないのかも。
お互い同士で、または金属や人間に対しても融合できるELSにおいて「個」とは何なのかは難しいところですが。

・ルイスを連れて病院の玄関口まで逃れた沙慈は、リボンズに襟髪を取られてあっさりガラス戸に叩きつけられる。これケガはせずとも結構なダメージなのでは。
なのだが、頭を抑えて苦しむルイスは沙慈の名前を繰り返しつつも彼を心配する様子は見えない。苦痛と恐怖のあまり沙慈が投げ飛ばされたことも認識してないように思えます。

・ルイスの声に顔を上げる沙慈。しかしリボンズがルイスに手を伸ばす方が早い、というところで銃声とともにリボンズのヘルメットのガラス面に穴が開き、表にバイクで乗りつけ銃を構えている刹那の姿が。
ここで刹那が「仲間を助けに行かなければ」と言った時に脳粒子波が使えるがゆえにルイスが目をつけられること、ひいては一緒にいるだろう沙慈も襲われることも想定していた(それを察したからロックオンは付き合うぜ=アレルヤの方はおれに任せろと言った)のがわかる。
刹那が一時ソレスタルビーイングの艦に乗っていたとはいえ正規メンバーでなかった沙慈を「仲間」と表現したことに何だか胸が熱くなります。

・「今のは威嚇だ。今度は当てる」という刹那にリボンズが振り向く。その顔を見た刹那は「リボンズ・アルマーク!」と驚きの声を上げる。死んだ(自分が殺した)はずの相手とはいえ刹那があんなに驚いた顔をするのは珍しい。それだけ二度と戦いたくもない、絶対会いたくない相手だったんでしょう。

・ここで再び舞台はアレルヤたちの方へ。無人車に追われる二人。共に高所から飛び降り、追った車は大破。二人の運動能力が光る場面ですが、車は一回消滅したと思ったらたちまち再生して再び二人を襲う。
反対方向へ二手に分かれる二人。車はマリーの方へ。それを意外に思ってる風のアレルヤに、ハレルヤは「決まってんだろ、マリーの脳量子波に群がってきてんだよ」という。
群がってという表現からして、ハレルヤは相手が群体だとうすうす察しているのか。脳量子波が使えるハレルヤだけに複数の知性体の存在を感じているのかもしれません。

・「ハレルヤ、どうして君が」「うだうだしてる暇はねえ、体を借りるぜ相棒!」でハレルヤに体が切り替わる。金色に光る片目。ELSが来たことで脳量子波による刺激を受けてハレルヤが目覚め表に出てこられるようになったのか。
しかし、マリーの窮地を自分で守れないというのもアレルヤ的には悔しいところですね。

・ハレルヤが目覚めたとたんに車が向きを変えてハレルヤのほうに。脳量子波はマリーよりハレルヤの方が強い様子。
気づいて立ち止まったマリーが「ハレルヤ」とつぶやく。マリーはハレルヤの脳粒子波に車が引かれていったのを察したんですね。つまり彼女も敵が脳量子波に反応していると察してたのでしょう。
二手に分かれたのはELSが狙ってるのは自分の方と悟ったマリーがアレルヤを守るためだったのかも。

・「おれの脳量子波に惹かれてきやがった!」と歓喜の?声を上げて高い壁を飛び駆け上がるハレルヤ。とんでもない身体能力ですが、これアレルヤもできるのかな。
このあとの車(複数)との追いかけっこはハレルヤの身体能力を存分に見せつけるアクション上等場面。

・屋上に到達し「これるもんなら・・・」と勝ち誇った声を出すハレルヤ。しかしそこに今度は無人のヘリコプターが。下にも車が複数。ちょっとまずいかなというところで何者かがヘリコプターを狙撃。
マリーが空に現れた機体を見上げる。「あれは・・・ガンダム!?」。疑問形なのは彼女が知らない新型になってるからでしょうね。

・下の車も軒並み撃破し、屋上のハレルヤの前に現れたガンダムがコクピットを開け、ロックオンが「悪いな、休暇は終わりだそうだ」と陽気に声をかける。
見返すハレルヤはその落ち着いた表情からしてアレルヤに戻ったようですね。

・「リボンズ・アルマーク、なぜ貴様が」。たたきつけられるような脳量子波に、刹那は再び銃を二発打つ。
太腿を両方とも打ちぬかれながら平気で歩き続けるリボンズは血も流れていない。今までのリボンズとは明らかに異質とわかる場面。さらに腹胸額と打ちぬかれてもまるで動じない。静かに微笑んですらいるのが不気味。
しかし刹那も最初はためらいなくELS(とはまだわかってないが)を撃ってるんですね。

・ついには粘着型?の小型爆弾を投げつけリボンズの体を爆破する刹那。
すぐにそれと察して(セカンドシーズンの序盤で刹那に助けられた時もやはり同様の粘着型爆弾を使ってたからでしょう)爆発前からルイスに覆いかぶさって彼女を爆風から守る沙慈。戦い慣れてる感があります。

・爆発後、下半身だけになってもまだ歩き続けたリボンズだが、さすがに数歩歩いて倒れ、崩れて金属の破片となる。
大丈夫かと声をかける刹那に、「どういうことだよ刹那!」といきなり怒鳴る沙慈。助けてもらったお礼もないのは、現れたタイミングの良さからいってもイノベーターがらみらしいことからいっても刹那が事情を知ってる、その事情に自分たちは巻き込まれたと思ったからでしょうね。



※1—このブログではたびたび「小説版」から引用を行っていますが、この「小説版」とは木村暢氏によるテレビアニメ及び映画版のノベライズのこと。
ファーストシーズン一巻巻末の黒田洋介氏(シリーズ構成・脚本)による解説に「(一巻で描かれた部分について)アニメでは描かれていないキャラクターの内面感情や設定が描かれていますが、その全てに私や水島精二監督、SF考証の千葉智宏氏の監修が入っています。言うなれば、本書に書かれているものは全てアニメ本編とリンクしている、まさに公式な物語なのです。」とあることから、アニメの描写を補う監督たちの公式見解と見なしています。

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『機動戦士ガンダム00 -A wakening of the Trailblazar-』(3)-1(注・ネタバレしてます)

2024-09-12 21:17:38 | ガンダム00

・イアンとリンダ夫婦の会話。「高濃度粒子領域内で脳量子波による意識の共有を行い戦闘空域で人々の思いを繋げる」「戦いを止めさせるための機体」「それが刹那の望んだガンダム、ダブルオークアンタ」。
映画用に主人公に新しい機体が用意されることが開始早々に披露される。本来戦闘用に開発されたモビルスーツ(以下MS)でありながら、戦うためでなく戦いを止めさせるための機体とは。武力による紛争根絶という矛盾した理想を掲げ、矛盾していることは百も承知の上で戦ってきたソレスタルビーイング、その矛盾の代表格である主人公刹那にふさわしい機体と言えます。
「戦闘空域で人々の思いを繋げる」という言葉からわかるように、ダブルオークアンタは地球外生命体との対話を目的として作られたものではないのですが、この機体がELS来襲の直前に完成したおかげで人類は救われた。初のイノベイター刹那の覚醒がたった二年前だったことも含め、本当にぎりぎりで人間の命運は保たれたわけですね。

・前置きもなくいきなりの戦闘シーン。妙にキャラの顔や全身のパースの取り方が濃くて、動きも大げさだな!これアレハンドロ・コーナー?この人刹那?顔に傷あるけど?などと頭に?が飛び交っていたら「それが、ソレスタルビーイングだ!」とガンダムマイスターたち4人の顔がアップに。いや誰だよ(大笑)。ここで劇中劇だとやっと気づきました。ライザーソードすごい大技。本当のソレスタルビーイングより強いんじゃ?

・直後に映画を観ている沙慈の姿に。隣の青年(沙慈の友人)が手に汗握って興奮してるのに対し、冷めた笑顔を浮かべる沙慈。実際を知る者から見たらそりゃあねえ。

・観客たちの会話。「この映画事実をもとに作られたんでしょ」「新政権のプロパガンダだよ」。つい2年前はアロウズは正義の味方、ソレスタルビーイングはテロリストの扱いだったのだから、それがアロウズを排した現政権の成立後に180度ひっくり返ったことに違和感や不信感を持つ人がいるのは当然。むしろ情報統制であっさり騙されないためにも疑ってかかるくらいでいいんじゃないでしょうか。
まあ回りが騙されてるときに一人騙されないというのも孤独のみならず危険ですらあるので(アロウズが実質世界を牛耳ってた頃がまさにそうだった)騙されてた方が本人的には幸せなのかもしれませんが。

・友人と別れたあと、「僕、出てなかったな」と苦笑気味につぶやく沙慈。沙慈の存在が表に出ていない証拠なのでむしろ良いことなのは本人も重々承知のうえでのちょっとしたボヤキですね。
振り返ると映画宣伝の映像広告にデフォルメされたソレスタルビーイングたちの姿。鼻眼鏡状態のティエリア、左右の眼の色が違うのはアレルヤ、頭だけ見えるのはロックオンぽいが、正規パイロットでなかったマリーまでいるのが謎。デフォルメキャラの方が映画のなんちゃってマイスターたちより本物に忠実なのも謎。

・沙慈の独白。現在の平和は「多くの紛争に武力介入を行ったソレスタルビーイングと、さまざまな弾圧行為を行った独立治安維持部隊アロウズが、人々に、武力による恐怖を植えつけたせいだ。今ある平和は忘れられない恐怖によるかりそめの平和。だから僕たちは考える必要があるんだ。変わっていく世界を見つめ、本当の平和を手に入れるために。」
勝地くんが出演した映画『亡国のイージス』には「平和って戦争の狭間に生まれるもん」という台詞がありました。これは沙慈から見れば「かりそめの平和」でしょうが、現状人類が得られそうな平和は「かりそめの平和」がせいぜい。ではかりそめではない「本当の平和」を手に入れるにはどうすればいいのか。そもそも手に入れるなんてことができるのか。
『00』シリーズの中で何度となく提示されてきたこの問題、この映画のラストが一応の答えのように思います。

・病院へルイスを見舞う沙慈。最近発作も起きないし、もう退院でもいいのにというルイス。あれから二年経ってまだ入院しているとは。二年前はアロウズでパイロットとして戦える程度には(たびたび発作に見舞われ、薬を飲みまくっていたが)元気だったのになあ。かえってそのせいで体がボロボロになってたってことですかね。
小説版によると「悪性GN粒子を浴びたせいでテロメアが破壊されたことや、その治療薬と称して飲み続けさせられていた脳量子波コントロール処置のためのナノマシンによる影響は、ダブルオーライザーの放出した虹色の高濃度GN粒子によって解決されているのだが、それでも彼女の体には後遺症が残っている」とのこと。やっぱりあの薬がガンだったわけか。

・不安げなルイスの頭を抱き寄せる沙慈。その手の大きさに彼がすっかり大人の男になったんだなあと実感します。ファーストシーズンでルイスのわがままに振り回されていた少年時代が嘘のよう。対するルイスも怒涛のような不幸と憎しみに取りつかれた時期を経て、陰りを帯びた落ち着いた大人の女性になりました。

・この二年、表に現れていないソレスタルビーイング。「刹那、君は今、どうしてる?」と空を見つつ考える沙慈。一時期ソレスタルビーイングと行動をともにし、他のメンバーとも交流があった沙慈ですが(ティエリアにきつく叱られたりイアンの整備を手伝ったり)、やはり一時期隣の部屋に住んでて(刹那がソレスタルビーイングとしてのコードネームを普通に名乗っててびっくりした。マリナ・イスマイールに初めて会った時には偽名名乗ったのに)、ともに(単に同じ戦場でというのでなく刹那の機体と合体した状態で)戦った刹那が一番印象深いのはまあ当然かな。 

・ラグランジュ3のコロニー建設現場を中東施設団として視察にやってきたマリナたち。肝心の建設現場を視察できないという話に、作業員が強制労働させられている可能性を疑い、真正面からぶつかるシーリン。
この後「視察ルートから外れていない」かと気づく場面もそうですが、セカンドシーズン同様、彼女の着眼点の鋭さ、度胸のよさといった魅力は、危地にある時ほど輝いてるように思います。

・シーリンと公社の代表?がもめているところに現れるマリナ。公社側の言い分にも理解を示したうえで作業員と直接話してみたいと慈愛溢れる笑顔で頼む。シーリンの要求をはねつけた補いもあってか、作業員宿舎の慰問を日程に組み込むと公社側が一歩譲ってくる。
強気のシーリンが引かざるを得なかった部分を優し気なマリナが穏やかに押し込む。前もって相談した結果というわけでもないのでしょうが、互いの性格を活かしたいいコンビネーションです。

・マリナの要求を呑んだと見せて、事故に見せかけ彼らを葬りさろうと画策する公社代表。彼らもわかっている通り連邦の後ろ盾があり(シーリンは連邦の議員)、さらにマリナは弱小とはいえ一国の王女で世界規模で一種カリスマ的人気がある(セカンドシーズンで彼女が子供たちと作った歌が平和のシンボルとして短期間に世界中に広まった)。
彼らを抹殺しようとはいい度胸すぎる気がしますが、代表?がいうように「ここは宇宙だ」、中央政府から遠く離れた一種治外法権的空間だという驕りがそうさせるんでしょうね。

・案内役の若い男に「あなたはこのコロニーの開発現場をどう捉えていますか?」「あなたの言葉で話してもらえませんか」と穏やかな笑顔で諭すマリナ。
「私は中東の民はもちろんですが、あなたにも幸せになってもらいたいのです」というマリナの言葉に青年は目を伏せてから「家族が幸せであれば私も幸せです」と応える。観客には「ああ、この人家族を人質に取られてマリナたちの暗殺を命じられてるのね」と感じ取れる場面。おそらくは観客だけでなくマリナも(後に銃を向けられた時の反応からいっても)そうと察したことでしょう。
青年の方も実は察してほしくてあえて口にしたのではとも思えます。それはマリナの「あなたにも幸せになってもらいたい」という言葉が彼の胸に響いたがゆえでは。おそらくは初対面、長くとも数日の付き合いでしかない相手からこんな台詞を言われたら普通はいかにも嘘くさく感じるところですが(マリナのことだから全くの本音なんでしょうが)、彼女の上品な聖女然とした物腰がこんな台詞にも真実味を与えるのと、何より家族を人質に人殺しを命じてくるような公社の人を人とも思わぬやり方に怒り苦しんでるはずのこの人にとっては、口先だけだとしても彼の幸せを願ってくれた、自分を人間として尊重してくれたマリナの言葉にいくばくかの救いを感じ、それゆえに内心を少しのぞかせたのでは。

・船長から所属不明のMSが接近している旨放送が。船長の隣のパイロット、宇宙服ごしで顔がはっきり見えませんが、後の展開を知ったのちに見直してみると明らかにロックオンですね。
公社の代表がマリナたちを暗殺しようと決定したのは上の会話の時だったようですが、それ以後に乗り込んだのか、それ以前からこんな展開になりそうだと踏んでクルーに偽装していたのか。後者のほうが入れ替わりが簡単そうなのでそっちかな。

・謎のMS(コロニー公社の用意した暗殺者)がマリナたち使節団の乗る船を攻撃しようとするのを、突然現れ迎撃する謎のMS。「フラッグ」(かつてユニオンが使用していた機体。ファーストシーズンでグラハムがこれのカスタム版に乗っていたのが印象深い)なのに、パイロットは明らかに刹那。目が金色に輝いているのはイノベイターの力を使ってるってことなんですかね。
ガンダムでなくフラッグなのはソレスタルビーイングだと知られないためなんでしょう(小説版によると「表立ってガンダムを運用することが出来ないミッションに対応するため」フラッグを入手し、改良を加えたとのこと)。
とはいえ元ユニオンつまり現在は連邦に属するのだろう(中古もいいところだろうけど)フラッグの機体をどんなルートで入手したのか。アロウズを倒し連邦の現体制を築くにソレスタルビーイングの貢献は大きかったので、連邦とも公然とではなくとも裏でいろいろ融通できる程度の関係を保っているのかも。あるいはカタロンみたいにユニオンの処分品を非合法に手に入れたか、カタロンから譲ってもらったとかかな?

・戦いの推移に危機感を覚える船長の横から副船長?(実はロックオン)が突然舵?を勝手に動かして艦を大きく旋回させる。最初この人も公社の回し者で船にMSの攻撃が当たるよう仕向けてるのかと思ってしまった。結果は逆でこの旋回のおかげでビームの直撃を免れる。
しかしロックオンは艦船の操縦もプロの船長以上なのか。まあ戦艦ではない普通の輸送艦の船長と、船ではないが戦闘用の機体のパイロットなら戦闘勘は後者が優れてるのかもしれません。

・MSによる襲撃が失敗したのを見て、例の青年がマリナとシーリンに銃を向ける。二人をかばおうとした中年男性(使節団のメンバー?SP?)が上腕を撃たれる。「こんなことをして!」と厳しい顔を男に向けるシーリンを抑えるようにマリナが静かに、すこし悲しげな顔で「これであなたの家族は幸せになれるのですね?」と問いかける。
「助かる」でなく「幸せになれる」なのが(意識してではないのかもしれませんが)いい所をついている。命は助かったとしても、青年が自分たちを助けるために罪もない人、というより明らかな善人を殺したと知れば家族は苦しむのではないか、という迷いを彼の心に生じさせる効果を生んでいる。

・男がなかなか引き金を引けずにいるところを何者かが銃で打ち倒す。撃ったのはコクピットから入ってきたロックオン。なんで使節団を助けた彼まで手を挙げている(無抵抗なのを示している?)んだろうと思ったら、使節団のメンバーらしい人の一人がロックオンに銃を向けている。
助けてくれたとはいえ相手が何者かわからない状況では警戒するのは当然で、ロックオンもそれを見越したから、使節団に対して攻撃の意思がないことを前もって示したわけですね。

・「あなたは・・・」と尋ねるマリナに「名乗るほどの者でもないさ」とロックオンは答え、シーリンがはっとした顔をする。
マリナもシーリンもロックオン=ライルとは面識がありますが、反政府組織カタロン時代の同志だったシーリンの方が付き合いが長い分、顔が見えなくても声で察したということですかね(小説版によると、マリナもロックオンが何者がわかったが、彼が正体を伏せたがっているのを察して気づかぬふりをしたそう)。そのわりにロックオンが去ってゆくときに「待ちなさい!」と掛けた声はきつい調子だったのだけど。

・ヴェーダからの定期報告。連邦軍が地球圏に飛来してくる探査船の撤去作業を行うという内容。探査船が木星から来たと聞いてにわかに関心を示す刹那。それを見てフェルトの表情も引き締まる。ただなぜ関心を引かれたのか刹那自身にもよくわからない様子。
イノベイターとして目覚めた刹那は自分たちにはわからない何かを感じてるのかもとラッセは言う。イノベイターとしての能力ゆえに他メンバーと刹那の間に見えない溝のようなものが生まれてしまってるのが感じられる一幕。

・探査船撤去のための部隊?を指揮するのはカティ・マネキン。いつものように颯爽と適切な指示を出すところへ、コーラサワーが入ってきて「大佐」と声をかける。「准将だ。何年間違えば気が済む!」とマネキンに突っ込まれて「すみません」と嬉しそうに照れ笑いするコーラサワー。こう見えてこの二人夫婦なんですよねえ。
そういえばセカンドシーズンラストの結婚式の場面でもまさに「大佐」「准将だ」とおんなじ掛け合いをしていた。コーラサワーにとって初めて出会った当時の(そして恋に落ちた時の)彼女に対する呼び方(上官なので当然階級で呼ぶことになる)は特別なんでしょうね。戦いの最中でプロポーズした時は「カティ」って呼んでましたけどね。
夫婦になって二年経ってもいい意味で全然変わらないこの二人の関係性が微笑ましくて素敵です。

・マネキンとコーラサワーはソレスタルビーイング号内部の視察に。そこで連邦軍初のイノベイター、デカルト・シャーマン大尉と出会う。
「デカルト・シャーマン大尉、イノベイターだと言われています」とわりと標準的な挨拶をしたにもかかわらず「生意気だな」とマネキンに言われてしまうデカルト。まあ最初にマネキンに声をかけられた時には何も言わず、コーラサワーから大佐に挨拶しろと促されてからの挨拶なのと、すぐ挨拶しなかったことへの詫びも恐縮する様子もなかったですからね。
そして「生意気だな」に対するデカルトの返答は「モルモット扱いされ続けていれば、心も腐りますよ」。言いながら首につけた首輪のような物、というか本当に首輪を引っ張るデカルト。「心も腐りますよ」という時の自嘲するような言い方が上手い。

・ちょっと間があってからコーラサワーが「イノベイターってなんです?」とマネキンに質問。間があったのは首輪までつけられてるデカルトの境遇にちょっと同情とかしてるのかと思ったら(マネキンの方は本当に同情してたんじゃないかな)。
マネキンが「そんな事も知らんのか」と叱責してるがまったくだ。まあこれはイノベイターの何たるかをコーラサワーへの説明を通して観客にわかりやすく提示するための仕込みですね。そういう役回りを担わせるのに二枚目半のコーラサワーは実に最適。

・ちょうど探査船の軌道を変更させるためのミサイルが全弾命中したとの報告が入るが、デカルトは「失敗ですよ」とかすかに笑いを含んだ声で断言する。なぜわかるのかというコーラサワーに「理屈なんかありはしません。あるんですよ。そうだという確信がね」と左手を持ち上げ指で額をとんとんと触ってみせる。
先に刹那が探査船が木星から来たと聞いて、おそらく本人にもなぜかわからないままに何らかの重要性を感じていたように、やはりイノベイターであるデカルトの勘は確かなのだろうと思わせる。
それにしてもそのゆっくりと重々しい動作を見ると、一見隊服の一部(体を防護するためのアイテム)みたいに見える両手首の金属製ぽいブレスレット?も動きを縛るための拘束具なのかと思えてくる。小説版によれば「イノベイターの生体反応を記録するためのセンサー」とのことだが、拘束具も兼ねていてもおかしくないし。

・探査船の軌道変更率が二割にも満たない、いまだ地球への到達ルートに乗っているとの報告が。デカルトは何も命じられないうちから「行きますよ」といい「もちろん、あなたの希望通り新型で出ます」とマネキンに告げる。「貴様、私の思考を(読んだのか?)」と睨むマネキンに「モルモットですから」と不敵に笑うデカルト。その目がイノベイターが能力を使う時に特有の金色に光る。ここはむしろ「イノベイターですから」と答えるべきところだと思うのだが、「モルモットですから」と言ってしまうあたりデカルトの中ではイノベイター=モルモットなんだろうなあ・・・。
連邦軍がもっとデカルトを優遇はしないまでも普通に人間らしく扱っていて、彼が〈心を腐らせて〉いなかったら、彼のELSへの対し方ももう少し変わってきたのかなあ。

・デカルトの機体=イノベイター専用に作られた「ガデラーザ」の性能についてマネキンに対し得々と説明する士官?。「(ガデラーザはMS五個小隊と渡り合える実力があるが)それ以上の戦果をあげてくれますよ、シャーマン大尉なら」。
デカルトの能力についての説明も我が事を誇るかのよう。デカルトの手柄は自分の手柄というか、自身の〈作品〉を誇るかのような態度を見るに、イノベイターとしての能力に目覚めたデカルトをガデラーザのパイロットたらしめた、そのために彼に体のいいモルモットとしての環境を強いたのはこの人なんじゃないのか。
少なくともこの後マネキンに促されるまでデカルトの待遇を良くしようとした形跡もないあたり、彼の不遇の片棒を担いでいたのは間違いないかと。

・「ガデラーザ、デカルト・シャーマン、出撃をする」。この出撃時のパイロットの名乗りというのはファーストガンダムの「アムロ、行きまーす」以来の見せ場というか声優さんの声の聞かせどころと言った感じで、それぞれのキャラクター性が滲み出た台詞をここぞという感じの美声で聞かせてくれるのですが(個人的には刹那の「××(××の部分はガンダムエクシアだったりダブルオーガンダムだったり)、刹那・F・セイエイ、出る」がシンプルかついい声で好きです)、このデカルトの名乗りも彼の生真面目な性格が出ていて良。声の良さはいうまでもないですね♪

・格好よいBGMに乗せてのガデラーザ無双。探査船に手こずり、悲愴感を漂わせはじめていた対探査船部隊の人たちの「友軍機か!?」という声に乗せての現着シーンからもう格好いい。圧倒的な戦闘力・火力で探査船を木っ端微塵に。
新キャラの強さを物語の最初で見せておくためにこうした無双シーンを入れるというのは戦闘ものの定石であり、それだけにBGMも含め実に強そうに格好よく演出されている。デカルトが一番格好良かったのはこの場面じゃないかというくらい。
ただ相手が無抵抗の無人艦というのがちょっと情けない感もあったりして。まあ無人だったからこそ〈日頃の鬱憤晴らし〉で遠慮なくがんがん撃ちこめたってのはあるでしょうが(敵であっても鬱憤晴らしで人間をぼこぼこにするのは道義的にどうよって感じもしてしまうし)。
ちなみに小説版では出撃するシーンで「鬱屈している自分を解き放つもの。それは破壊だ。デカルトは思う。もっと早くにこの能力に目覚めていたら、俺はソレスタルビーイングに入っている。そして、世界を壊す!」なる物騒なデカルトの本音が描かれています。
そんな動機じゃソレスタルビーイングの方でお断りだろ、ソレスタルビーイングを何だと思ってるのかと言いたくなります。これだとソレスタルビーイング対リボンズの最終決戦前=イノベイターになる前からデカルトは鬱屈していて破壊を望んでいたのかとも思えますね。

(つづく)


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『機動戦士ガンダム00 -A wakening of the Trailblazar-』(2)(注・少々ネタバレしてます)

2024-09-05 16:14:50 | ガンダム00

今回の映画はTVシリーズ(ファーストシーズン全25話、セカンドシーズン全25話)の続編ということで、まずは予習のためにTVシリーズをレンタルで全話視聴しました。
私はガンダムシリーズは子供の頃に放映していた『機動戦士ガンダムZZ』をリアルタイムで見ていたのと、あとは福井晴敏氏による『∀ガンダム』のノベライズ版を読んだ程度でほとんど知識がなかったのですが、とても面白かった。とくに戦闘シーンのダイナミックな動きやビーム兵器の色鮮やかさに驚かされました。この時期10年くらいほとんどアニメというものを見ていなかったので、こんなにアニメのクオリティは進化していたのかと驚きました。
劇場版ではさらにこのクオリティが増し、ガデラーザ無双に始まり、ラファエル初登場、火星周辺での戦闘、クライマックスの戦いまで、息もつかせぬスピーディーな機体や敵生命体の動き、巧みなカット割り、それらを盛り上げる音楽など見ごたえ十分でした。

また私はプロの声優さんの、いわゆる“アニメ声”というものにその当時あまり馴染めなかったというか、正直好きではなかったのですが(スタジオジブリ作品をはじめ多くのアニメ映画が俳優さんを声のキャストに起用することについては賛否がありますが、アニメ声が苦手な私にとっては有難い傾向です)、『ガンダム00』を見ていて声に聞き苦しさを感じることはさほどなかった。むしろ声質・演技ともに聞き惚れてしまう場面も多く、この人たちに混ざって勝地くんが声を当てるんだなあと思うと妙な緊張が走ったりしました(笑)。
(ちなみに近年はこの〈アニメ声が苦手〉はほぼなくなりました。『鬼滅の刃』でプロの声優さんのすごさを思い知らされたので)

物語的にも、化石燃料の枯渇と温暖化対策を受けての太陽光発電システムの全世界的普及、それを支える3つの軌道エレベーターの存在、エレベーター建設の費用と技術力の確保をめぐり世界は大きく3つの勢力(ユニオン、人革連、AEU)に分かれて冷戦状態、化石燃料が売れなくなった中東諸国の没落と紛争の続発─といった設定は、実際の社会情勢を色濃く反映していて、本当に23-24世紀にはこうなっているかもしれないという現実世界と地続きのリアルさがある。そして主人公チーム(ソレスタルビーイング)の多くは紛争やテロによって傷を負った過去があり、戦争の根絶を切望しながらもその手段として武力を用いざるを得ない・・・。“紛争根絶のための武力介入”という彼らが抱えている矛盾は第一話の時点で鮮やかに示され、その矛盾の中で葛藤する人間たちの姿が丁寧に描かれていました。

それだけに、映画版の“敵”が人間でなく、外宇宙の生命体ということに戸惑った人も多かったようです。そもそもガンダムシリーズで地球外生命体を出したケース自体が初だったそうで、水島精二監督も反発を受けるのは覚悟のうえだったものの案の定〈人と人との戦いを描いてこそガンダム〉〈地球外生命体との戦いならガンダム以外でやればいい〉など結構な批判があったとのこと。
確かにガンダムシリーズはファーストガンダム以来、敵も悪ではなく、彼らには彼らの正義があり主人公たちとは考え方や立ち位置が違うだけという姿勢で描かれてきたように感じます(今に至っても初期三部作と『ガンダムUC』くらいしか見ていないので確実なことは言えないし言う資格もないのですが)。今回の“敵”である地球外生命体「ELS」も彼らなりの事情はあるのですが、その“事情”は主人公によって説明されるだけで最後まで彼ら目線でその心情が語られることはない(言葉も話せなければ顔がないので表情で語ることもできない)。互いの心情のぶつかり合い、考え方が異なるゆえの葛藤をガンダムシリーズに求める人にとっては(『00』もTVシリーズはそうしたテーマが濃厚だっただけに)納得がいかなかった気持ちはわかりますし、映画の評価が賛否両論となったのも無理ないなと思います。

ただ個人的には“敵が地球外生命体、それも非人間型”というのはすんなり受け入れられました(劇場版では〈地球外生命体が登場する〉ことを含め多少の前情報を知ってからTVシリーズを視聴したので当然ではあるんですが)。無限と言ってよい広大な宇宙に知的生命体が棲む星が地球ただ一つである可能性とそうでない可能性なら後者の方が大きいように思えるので、いずれ人類が地球外生命体と遭遇する日が来てもおかしくないし、その知的生命体が人間型である可能性とELSのような非人間型である可能性ならこれも後者の方が大きい(“Aに似ているもの”と“Aに似ていないもの”なら圧倒的に“似ていないもの”の方が選択肢が多い)だろうから。
またTVシリーズで“イオリア計画”の最終目的が“来たるべき対話”なのは繰り返し言及されていたので「これが来たるべき対話なのねー」という感想でした(というか「映画で地球外生命体とのコンタクトを描くことはTVシリーズの時点で想定済だったのか」と思いながら見ていました)。

そしてこの「来たるべき対話」の相手をELSという非人間型の地球外生命体にしたのは英断だった。通常フィクションで描かれる地球外生命体というと“宇宙人”という表現が示すように人間型であるケースがほとんどだと思います。加えて相手の側が地球人より知性や科学力で上回っていて地球の言語をあっさり習得したり翻訳機を使用したりテレパシーを利用したりして会話を成立させてくれる。そうでないと敵対するにせよ友好関係を結ぶにせよコミュニケーションが成り立たず話が進まないので当然の演出的配慮ではあるんですが、『00』劇場版ではあえてここを切り捨てた。
会話は成り立たず相手の考えも目的もわからず、形状が人間と違いすぎて表情を読むこともこちらの意思を伝えることもできない。そんな相手とどう対話を成立させるのか。上で書いたように将来人類が遭遇するとしたらELSタイプの地球外生命体に当たる確率の方が高そうなので、シミュレーションとしてこちらの方がよりリアルかつ切実さを感じました。

そのうえでただ一つ脳量子波をELSとのコミュニケーションツールとして設定することで、連邦の大艦隊ではなくイノベイターである主人公刹那が人類最大の危機を救う必然性を作った。リアルさを追及するならコミュニケーション手段は一切なしでもおかしくないところですが、TVシリーズからお馴染みの、イノベイターの特徴でもある脳量子波をELSと分かり合うための生命線として残すことで、どう考えても人類滅亡はまぬがれないだろうというぎりぎりのところで物語をELSとの和解によるハッピーエンドに着地させている。
ELSの形状についても、非人間型の地球外生命体ならもっと人間が生理的嫌悪感を催すような外観であっても不思議はない(古典SF『幼年期の終わり』はある意味これ。『00』セカンドシーズンラストシーンに書きつけられた言葉「The Childfood of Humankind Ends」は『幼年期の終わり』の原題(「Childfood’s End」)を意識したものらしいので、地球外生命体とのファーストコンタクトという設定ほか『幼年期の終わり』に影響を受けた部分はあるのでは)ところを、金属という地球上にも存在する無機物、〈人間からかけ離れていていかにも意思の疎通は困難、接近・侵食されることに恐怖は感じさせつつも外観に対する生理的嫌悪感は少ない、むしろ結晶化した姿はオブジェのようで美しくさえある〉形状に落とし込んだ。
物語のテーマ的に見るからに異質である必要があるが、観客に生理的嫌悪感をもたらすような外観の生命体がスクリーンを乱舞するような事態は避けたいという状況において、金属異性体というのは実に適切な選択だった。リアルさとエンターテインメント性を両立させるための微妙な配分―これが劇場版を賛否あれど危ういバランスの上で傑作たらしめた最大要素のように思います。


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『機動戦士ガンダム00 ーA wakening of the Trailblazarー』(1)

2024-08-28 20:41:27 | ガンダム00

2010年に公開されたTVアニメ『機動戦士ガンダム00』の劇場版。TVシリーズ第1シーズン、第2シーズンの続編であり、真の完結編ともいうべき内容となっています。 勝地くんは劇場版で初登場する新キャラクター、デカルト・シャーマン大尉を演じています。主人公刹那に続いてイノベイター(「単純に言うと進化した人類」)として覚醒したという役どころ。勝地くんと仲良しの小栗旬くんが『00』の音響監督の三間雅文さんと親しく、声優でなく俳優を起用したいと相談を受けたさいに勝地くんを推薦した、という経緯があったとのこと(※1)
アニメ声優への挑戦は2006年公開の『銀色の髪のアギト』以来であり、その『アギト』で声優の難しさを痛感しただけに不安が大きかったそうですが、「いい意味での異物感を出したい」との三間さんの言葉を聞いて引き受ける決心をしたそうです(※2)

私自身はアギトの声はおおむね良かったと思ってますが、『銀色の髪のアギト』の感想((4)-1)で書いたように世間的に酷評されたのは無理もないとも感じていたので、『00』で再び声優に挑戦することには「また批判されまくるのかなあ」と不安な気持ちも強かったのですが、蓋を開けてみれば前回が嘘のような高評価にホッとしました。個人的にもデカルトのちょっと低めのいい声質と皮肉っぽい声音はとても魅力的で、彼の声聞きたさで映画リピートしてしまいました(笑)。

上掲の(4)-1でも書いたのですが、『アギト』の時の勝地くんは自身の皮膚感覚に照らして、自然と思われる形の発声を行っていたように思えます(当時のインタビューで、アクションシーンでは実際にブースの中で体を動かしたりしていたと話していました)。ただアニメ声優の演技において求められるのはそうしたリアルさより一種の様式─声だけで感情表現を成立させられるような大げさなほどの声の出し方や台詞回しだった。ゆえに勝地くんの“自然さ”がアニメファンの耳には“棒読み”と聞こえる逆効果になってしまったのでしょう。勝地くん自身もそうした問題点を自覚していたのは、インタビュー記事での発言からも察せられます(※3)

こうした反省点を踏まえ、三間さんのきめ細かなご指導もあったようで、勝地くんのデカルトはよりプロの声優さんに近い(声優さんの発声とはやはり若干の違いはあるものの、“異物感”を求められている点を踏まえればこれで正解)演技を存分に見せてくれました。というか最初に録音した分は上手すぎて異物感が弱まってしまい撮り直しになったそうなので、その長足の進歩ぶりには驚かされます。ここ数年声優の仕事はしていないようですが(2017年の『パワーレンジャー』の吹き替えが最後かな)、久々にアニメ声優としての活躍も見て(聞いて)みたいものです。

 

※1-「機動戦士ガンダム00:勝地涼インタビュー 小栗旬の指名でデカルト役に 「いい意味での異物感を」」(https://mantan-web.jp/article/20100915dog00m200031000c.html)

※2-上掲記事。

※3-「ガンダムワールドへ飛び込んだ俳優・勝地涼が生み出す“異物感”」(https://eiga.com/movie/55064/interview/3/)。「あのときは、感情を込めて芝居をしたりしながらやってみたんですよ。表情や体も動かしたりして。でも結局、映像に乗るのは声だけなので、もっと冷静に考えなければいけないなと思っていました。なので、今回はもちろん気持ちも大事にしましたけど、音の強さや息や声の高低、抑揚といったテクニカルな部分にかなり気をつけて演じました。」


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