サイエンス好きな男の日記

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所有権移転登記をオンラインで行う手順(1)=準備編=

2021-09-29 21:41:17 | 不動産賃貸業

所有権移転登記は通常司法書士にお願いしてやってもらうことが多いですが、物件の数が多いと、ちょっと無視できない金額になってきます。そのため、現在は原則としてオンラインで登記申請(登記ねっと)を自分で行うようにしているので、その手順について3回(準備編、登記ねっと編、書類送付から完了まで)にわけてまとめたいと思います。

以前も、登記ねっとに関する記事を書いたことがありましたが、ポイントに絞った内容だったので全体の流れはとてもわかりづらく、また、その後追記したほうがいい内容もあったかなと思い、今回、新たに記事にします。これを見てもらえば、司法書士に頼まなくても自分自身で所有権移転登記ができることがわかると思います。

なお、マニュアルではないので当然すべてを網羅できませんし、司法書士でもありませんので場合によっては内容に間違い・不要な処理もあるかもしれません。あくまでも私が普段やっている内容を紹介ということになります。また、この方法で申請をして特に登記所から何も指摘がなく無事所有権移転登記ができているのも事実です。以下の氏名や申請番号など、物件や所有者を特定できそうな情報はすべて架空のものです。

状況設定)土地および建物の買主(個人)山田太郎 が 売主(法人)株式会社戸建不動産 の申請代理人を兼ねて、登記ねっとの申請用総合ソフトで所有権移転登記を申請する。

登記ねっと:https://www.touki-kyoutaku-online.moj.go.jp/  (利用時間は平日8:30から21:00まで)

添付情報)

No 種類 内容 誰が用意する 提出方法
1 登記識別情報 対象不動産の登記識別情報 売主 オンラインで提出
2 登記原因証明情報 対象不動産の登記の理由を証明する文書 買主⇒売主 オンラインで提出(PDFファイル添付)後、登記所へ原本送付
3 代理権限証明情報 本件登記申請に係る売主の委任状(実印) 買主⇒売主 オンラインで提出(PDFファイル添付)後、登記所へ原本送付
4 住所証明情報 買主の氏名・所在等を証明する文書 買主 申請情報に住民コードを記載し、オンラインで提出
5 公租公課証明書 土地・建物の評価額を証明する文書 売主/仲介業者 オンラインで提出(PDFファイル添付)後、登記所へ送付(コピー可)
6 印鑑証明書 売主の委任状の捺印を証明するための書類 (不要) 申請情報に会社法人等番号を記載し、オンラインで提出
7 登記事項証明書 売主の名称・所在等を証明する文書 (不要) 申請情報に会社法人等番号を記載し、オンラインで提出

青字は買主が用意する書類です。

このポイントは司法書士を介さず、登記所に足を運ばなくても、登記ねっとと郵送で完結する、という点です。

買主が支払う費用としては登録免許税と送料(切手代金)だけです。

その他の条件設定)

No 内容 条件等
1 買主が電子署名に使用する電子証明書 公的個人認証サービス電子証明書
2 登録免許税の納付方法 電子納付(もしくは印紙添付)
3 登記識別情報の通知を受ける方法 送付交付
4 登記完了証の交付方法 オンライン交付

 

(1)利用環境の事前準備

オンライン申請には公的個人認証ICカード(マイナンバーカード)が必要です。もし、なければ市役所などで発行申請手続きが必要ですし、マイナンバーカードの交付申請から実際に受け取ることができるまで概ね1か月ぐらいかかるため、早めに手続きをしておくことが必要です。(公的個人認証サービス:https://www.jpki.go.jp/index.html

また、マイナンバーカードをパソコンで利用するために、ICカードリーダも必要です。

さらに、マイナンバーカード(ICカード)に記録された電子証明書を利用するためのソフトウェアとして、利用者クライアントソフトのインストールが必要です。

利用者クライアントソフト:https://www.jpki.go.jp/download/

 

次に、登記ねっとにアクセスし、パソコン等の環境を確認したり、必要な設定、ソフトウェアのダウンロード・インストールを行います。

登記ねっとのトップページの中央付近にある、申請用総合ソフトの「申請用総合ソフトの事前準備・ダウンロード」を確認し、その手順に沿ってやっていくのがわかりやすかったです。(登記ねっと:https://www.touki-kyoutaku-online.moj.go.jp/

通常、決済日に所有権移転登記を行うと思うので当日は何かとバタバタします。そのため、この事前準備は決済日の前日までにやっておいたほうが安心です。

インストールするソフトウェアとしては以下の2つです。

・申請用総合ソフト(オフラインでもソフトの起動は可)
・PDF署名プラグイン(インストール後、再起動が必要)

申請用総合ソフトをオンラインで利用するためには、事前にアカウントを作成しておくことが必要です。

登記ねっとの中央左側にある「申請者情報登録」ボタンをクリックしてアカウント作成します。

これは、利用時間(平日8:30~21:00) に行うことが必要です。

 

(2)必要な書類の準備

これはオンライン申請だから必要ということよりも自分自身で所有権移転登記を行うための確認・準備作業になります。

ここでは、売主(法人)、買主(個人:私)、登記申請人(私)を前提に説明します。

決済日当日までに必要な書類を双方で確認し、書類を準備します。(なお、以下はあくまでも登記申請に必要な書類・情報です。)

なお、必須ではありませんが、法人の場合、登記事項証明書で法人の住所や会社法人等番号などをきちんと確認できると安心です。委任状や登記原因証明情報の作成の際にも、法人の住所が正確に確認できます。

登記申請人が準備する書類

・委任状(※1)
・登記原因証明情報(※2)

買主が準備する情報

・住民票コード(※3)

売主(法人)が準備する書類・情報

・委任状(売主の捺印済み)(※1)→ PDF化
・登記原因証明情報(売主の捺印済み)(※2)→ PDF化
・登記識別情報
・公租公課証明書 → PDF化

 

これら書類・情報を決済日までにきっちり準備します。「PDF化」と示した文書は、登記ねっとでのオンライン申請時に添付するため、事前にスキャナーを使ってPDF化しておきます。

また、委任状や登記原因証明情報の作成、登録免許税の計算等で登記簿謄本が必要です。売主の住所や名称が登記簿に記載のそれらと一致していることも事前に確認します。万が一、異なっていると、住所・名称変更の登記申請が必要になってしまい、やっかいです。

(※1)委任状(登記では代理権限証明情報と呼びます)のひな型をこちらで用意し、事前に売主に渡して実印を捺印していただき、決済日に受領します。(通常は司法書士が用意する書類です。)

(※2)登記原因証明情報のひな型をこちらで用意し、売主の捺印をします。実印である必要はありません。(通常は司法書士が用意する書類です。)

(※3)住民票コードは、住民票の提出を省略するために必要です。これは、住民票コード付きの住民票を取得すればわかる情報です。何度も不動産の売買を行うのであれば、初回は住民票コード付きで取得して次回からは単にコード情報だけを提供すれば、住民票取得の手間を省け、コストも削減できます。

これらは私が行っている方法であり、必ずもこうでなくてはいけない、ということではありません。念のため。

 

(3)登録免許税

公租公課証明書および登記簿謄本から、課税価格および登録免許税を計算しておきます。特に、土地が何筆もある場合、また持分が分数になっている、等、場合によっては、計算が複雑で法務局や司法書士に相談するなど、予想外のことが発生する可能性もあります。持分は公租公課証明書には記載されていませんので、登記簿謄本で詳細を確認します。

登録免許税に関する私の以前の記事はこちら

これは、ある例ですが、このように内訳も含めてオンライン申請では申告するようにしています。

登録免許税の税額表:https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/inshi/7191.htm

 

(4)ICカードの登録

マイナンバーカードを申請用総合ソフトに登録します。

すでに(1) でインストールした「申請用総合ソフト」を起動します。もし、利用時間外の場合は「キャンセル」をクリックしてオフラインでの利用とします。

最初は、以下のような画面が表示されますが、□次回から表示しない にチェックを入れて、「閉じる」をクリックします。

すると、処理状況表示ウィンドウが表示されるので、「ツール」→「オプション」を選択し、「ICカード切替」タブをクリック。

ICカードリーダにマイナンバーカードをセットして、「登録」をクリック。「公的個人認証サービスのICカードライブラリ設定ファイルを登録しますか?」と聞かれるので「OK」をクリック。「ICカードライブラリの登録が完了しました。」と表示されれば「OK」をクリック。

次に、「使用するICカードライブラリを選択してください。」というメッセージの下で、「公的個人認証サービス(個人番号カード)」をプルダウンメニューから選択します。

このあと、「適用」をクリックし、「設定」をクリック。

申請用総合ソフトにて申請書に署名をするために必要な設定です。

もし、署名の際に、以下のエラーが発生して署名ができない場合、パソコンを再起動して、改めてこの画面にて「公的個人認証サービス(個人番号カード)」をプルダウンメニューから選択して、「適用」をクリックし、「設定」をクリックするとうまくいくことがありました。

 

(参考)

参考までに委任状と登記原因証明情報の例を以下に示します。(当然ながら住所や氏名等実在しません。)

【委任状での注意点】

  • 買主(売主の申請代理人)が「登記識別情報提供様式」を作成するため、委任状の委任条項として「登記識別情報の暗号化および復号化」が必要です。
  • 売主の「実印」が必要です。
  • 自署である必要はありません。記名押印で差し支えありません。

【登記原因証明情報での注意点】

  • 登記の原因の日付は、登記を行う日であり契約日ではありません。

 


委任状

 

私は、大阪府東大阪市丸山町弥生2番地の3未来マンション101号山田太郎に、次の権限を委任します。

1 下記の物件について申請情報として記録した事項の登記(以下「本件登記」という。)を申請する一切の権限
2 本件登記に関し、申請情報とともに提供した添付情報の原本還付請求およびその原本を受領する件
3 本件登記の申請の取下げ、登録免許税または手数料の還付請求および再使用証明の手続きの件
4 本件登記に係る登記識別情報の暗号化および復号化の件
5 登記識別情報および登記完了証の受領の件
6 復代理人を選任する件

令和3年9月22日

大阪府八尾市谷山町1丁目2番3号
株式会社戸建不動産 代表取締役 佐藤花子   実印

 

登記の目的      所有権移転

原因   令和3年9月22日売買

権利者     大阪府東大阪市丸山町弥生2番地の3 
              未来マンション101号
                            山田太郎

義務者       大阪府八尾市谷山町1丁目2番3号
            株式会社戸建不動産 代表取締役 佐藤花子

不動産の表示

(土地の表示)
所 在:東大阪市畑山九丁目               所 在:東大阪市畑山九丁目
地 番:1番2                           地 番:1番3
地 目:宅地                              地 目:宅地
地 積:2・43平方メートル             地 積:36・66平方メートル

(建物の表示)
所 在:東大阪市畑山九丁目 1番地3
家屋番号:1番3
種 類:居宅
構 造:木造瓦葺2階建
床面積:1階 26・19平方メートル  2階 24・50平方メートル


登記原因証明情報

1 当事者および不動産
(1)登記の目的 所有権移転
(2)登記の原因 令和3年9月22日売買
(3)当事者   権利者(甲)大阪府東大阪市丸山町弥生2番地の3 未来マンション101号  山田太郎
         義務者(乙)大阪府八尾市谷山町1丁目2番3号 株式会社戸建不動産 代表取締役 佐藤花子
(4)不動産の表示
(土地の表示)
所 在:東大阪市畑山九丁目       所 在:東大阪市畑山九丁目
地 番:1番2             地 番:1番3
地 目:宅地              地 目:宅地
地 積:2・43平方メートル      地 積:36・66平方メートル
(建物の表示)
所 在:東大阪市畑山九丁目 1番地3
家屋番号:1番3
種 類:居宅
構 造:木造瓦葺2階建
床面積:1階 26・19平方メートル  2階 24・50平方メートル

2 登記の原因となる事実又は法律行為
(1)甲と乙は、令和3年8月31日、上記不動産の表示に記載した不動産の売買契約を締結した。
(2)売買契約には、所有権の移転の時期について、甲が売買代金を支払い、乙がこれを受領した時に所有権が移転する旨が付されている。
(3)令和3年9月22日、甲は売買代金を支払い、乙はこれを受領した。
(4)よって、上記不動産の表示に記載した不動産の所有権は、同日、乙から甲に移転した。
令和3年9月22日 大阪法務局 東大阪支局 御中
上記の登記原因のとおり相違ありません。

(売主) 大阪府八尾市谷山町1丁目2番3号
             株式会社戸建不動産 代表取締役 佐藤花子       印


 

 

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