サイエンス好きな男の日記

気が向いたときに、個人的なメモの感覚で書いているブログです。

区分マンションの投資利回りの考察

2013-06-15 12:17:29 | 不動産賃貸業

最近、不動産投資について調べました。

不動産投資における投資対象としては、大きく分けて、区分マンション、1棟マンション、1棟アパートの3パターンがあるようです。

こういった不動産投資に関するセミナーは毎週いろいろな不動産販売業者によって開催されていて、先日その1つに参加してきました。

その結果、結論としては、リスクの割にはさほど利回りが高くないな、という印象です。

 

区分マンションでは、家賃と購入価格から決まる表面利回りは5-10%くらいあります。ただ、修繕・管理費を差し引き、固定資産税を払うとかなり利回りが低下します。さらに、必ずしも満室とは限らないし、家賃が年々低下するリスクもあります。

しかも、さらに気に留めておくリスクは、購入した不動産の価格変動リスクです。価格が上がればキャピタルゲインも得られるわけですが、5年、10年と経てば、購入時よりも価格が下がるケースのほうが多いでしょう。その場合、家賃と購入価格から求まる表面利回りは高くても、不動産売却後の最終的な利回りはかなり低下することになります。

この価格変動リスクはセミナーでも触れられていませんでしたし、個別相談時にもこちらから聞かないとそのリスクは話題に上りませんでした。区分マンションを中心に販売されている不動産販売業者に、10年後、20年後の物件の価格変動をどう評価すればよいか聞いてみたところ、それがわかれば苦労はしない、それで儲かると分かれば自分で買っていると言われてしまいました。(笑

ただ、何らかの仮定をしてでも不動産価格を評価しないと、最終的な利回りの予測ができないし、その結果、投資判断もつかないと思うのです。

誰にも予測できないのだから、まずは1物件からスタートしては、というのは、単に食い物にされているようで納得がいきません。

最終的には自分が投資の責任を負うわけですから、人の意見はあくまで参考にとどめるべきであり、自分自身が納得できる仮定の下で判断することが重要だと思うのです。これは、投資全般に言えることですが。

 

他の投資とのもっとも大きな違いは、購入した不動産を担保とした借り入れができるという点です。自己資金の額は比較的少なく済み、場合によっては全額をローンで賄うことができる場合もあるそうです。

ローンや税金による支払いよりも不動産収入のほうが多ければ、収支はプラスとなります。もし、全額ローンで購入した場合には、元手をかけずに収入が得られます。

それは、高額な負債を抱えることによるリスクと引き換えに、リターンを得る、ということですが、そのリスクとリターンのバランスをどう判断するかは難しいですね。もし、数%の収益が得られるなら、1億の負債に対して数100万円の収益となるわけです。しかし、なんらかの理由で入居率が悪く収益が悪化すると、1億の負債によるローン返済も高額であるため、家賃収入ではローンを払えず、持ち出しとなる可能性がでてきます。しかも、購入時よりも不動産価格が低下すると売却してもローン返済が残るため、悲惨な結末を迎えます。そういったリスクに対して期待されるリターンと折り合いがつくのかどうか。

 

以下では、典型的な区分マンションの場合に、物件価格と売却価格によって内部収益率(IRR)がどう変わるか試算してみました。

なお、区分マンションに対する私個人の投資判断としては、IRRで8%から9%以上が必要と考えています。

【仮定】

満室時売り上げ:72万円/年
修繕積立:12万円/年
その他の費用(保険、退室後のリフォーム):2万円/年

ローン金利:4%
返済期間:20年
支払い方法:元利均等払い
頭金:初期費用込の総価格の20%

初期費用:物件価格の5%

固定資産税評価額(土地):100万円
固定資産税評価額(建物):300万円
築年数:15年構造:RC
※本来なら物件価格によって上記も変わるはずだが、簡単化のため固定とした。

売却年:20年後

年間売上:5年目まで:95%, 10年目まで:90%,15年目まで:85%,20年目まで:80%上記%は満室時の年間売上に対する割合

※賃貸率も重要なパラメータですが、今回の対象は区分マンションであるため、比較的立地が良く、築年数も15年とさほど古いわけでもないため、そこそこの賃貸率が維持できると仮定しました。

【変数】

物件価格:600万円,800万円,1000万円

売却価格:物件価格の60%,80%,100%

【結果】

各条件でのIRRを計算した結果は次の通り

(ローンなしの場合)

売却価格物件価格と表面利回り・実質利回り

600万円
12.0%
9.5%

700万円
10.3%
8.2%

800万円
9.0%
7.1%
60% 6.1% 4.8% 3.9%
80% 6.6% 5.4% 4.5%
100% 7.0% 5.9% 5.1%

表面利回りとは、物件価格+初期費用(物件価格の5%)に対する家賃収入の利回りです。

実質利回りとは、家賃収入から修繕・管理費を引いて、表面利回りと同様に計算した利回りです。

売却価格とは、購入時の物件価格に対する売却価格の割合です。たとえば、物件価格が600万円の場合、売却価格が60%とは、360万円で売却できたことを意味します。

売却価格が100%とは購入価格と同じ価格で売却できたということ。

20年後の売却価格にはかなり差をつけたつもりでしたが、 ±0.5%程度の差でしかないことがわかります。

物件価格や実質利回りの違いの差は、ほぼIRRの違いの差になっているようです。

ただ、いずれにしても、表面利回りは12%、実質利回りが9.5%ぐらいあったとしても、IRRは6.5%前後となってしまうようです。

次に、頭金を総価格の20%としてローンを組んだ場合は次のようになりました。

(ローンありの場合)

売却価格物件価格と表面利回り・実質利回り

600万円
12.0%
9.5%

700万円
10.3%
8.2%

800万円
9.0%
7.1%
60% 10.4% 6.3% 3.7%
80% 11.5% 7.7% 5.3%
100% 12.3% 8.8% 6.6%

こちらも売却価格によってIRRに差があるものの、大体650万円以下の物件、表面利回りが11%以上、実質利回りでは9%以上であれば、投資対象として検討してもよさそうです。

レバレッジを効かせることで、利回りがかなり向上することがわかります。

見える!賃貸経営(http://toushi.homes.co.jp/owner/) には賃貸物件に関するいろいろな統計情報が閲覧できますが、それによると東京都の想定利回りは8.2%、大阪府は10.7%でした。大阪府であれば、レバレッジを効かせることで8%ほどのIRRが期待できそうです。

大阪府の物件を対象に件数を調べた(2013年6月現在)ところ、
区分マンション:1289件 → 11%以上:401件 → 駅から徒歩10分以内:343件 → 築15年以内:4件

利回りだけでみると半分近くの物件の利回りは高いものの、そのほとんどが築古物件だと言えますね。マンションなので、みな駅から徒歩圏内であるのはよいのですが、築古では賃貸率が大きく下がり、IRRも小さくなってしまいます。

 

最終的に残った4件は、割合としては、0.27%です。次の物件はその1つです。

販売価格:650万円、表面利回り:12%、実質利回り:10.4%、築12年
アクセス:地下鉄御堂筋線「東三国」駅徒歩7分およびJR東海道線「新大阪」駅徒歩10分

この物件の家賃、修繕・管理費、販売価格をもとにIRRを計算すると、
ローンなし:7.1%   ローンあり:13.2%

このような物件であれば、ローンを組んでレバレッジを効かせることで、投資対象として検討してもよいと思います。しかし、割合としては1%にも満たず、そのようなまれな物件が一般公開されて数か月も経っているところを見ると、何か隠れたデメリットがあるのではないかと勘繰ってしまいます。

インターネットで公開されている、もしくは不動産業者が普通に勧めるような物件ではなく、本腰を入れて自分自身でよい物件を探す、よい物件に変えていくような意気込みでないと、不動産投資は成功しないように感じました。

投資信託や社債といった物と違い、手間暇をかけて育て上げる、それだけ不動産が好きでないとうまくいかないように思います。

最初は真剣でも途中で面倒に感じてしまうような人には向かない投資かもしれません・・・

 

コメント
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