詩と写真 *ミオ*

歩きながらちょっとした考えごとをするのが好きです。
日々に空いたポケットのような。そんな記録。

ドビュッシーの小箱

2015年12月24日 | 
ネコや子どもは小さなところが好き
隠しているけど
大人も

夜、暗闇に包まれた部屋で
ニュースを消して明かりを灯し
ドビュッシーの小箱にすっぽり入る

音符のゼリーの波間をもぐっていけば
ああ情熱も悲しみも
一輪二輪の紅いバラが咲く
小さな中庭での出来事
いつも懐かしい黄色い光が射している
部屋には暖炉があって
薪のはぜる音
炎の移ろい
モスグリーンの
厚い絨毯

感じられる世界は
ちょうどこの部屋と同じ大きさで
想いの地平に拡がる世界は
暮れ方のように広く神秘に満ちて
たくさんの美しい辿り着けない果てがあり
ここは地図に載らない街の片隅

動かし難い問題を次々投げかけられ
誰かの価値観に引っ張られ
ひとつひとつの相違に神経を這わせて
恐れや焦りや苛立ちや怒りに
体中が嵐になっている私は
いまは別の星の人

小箱の中で息をつくと
時が振り返り
ゆっくりと私の元へ帰ってくる

すべては幻想
でもこの場所を知っている人ばかりなら
世界はきっとそんな世界
そう思っている想いの中に
すっぽり入っている
ドビュッシーの小箱のような

中身をひっくり返せば
絶え間なく溢れてくる宝石の粒粒

月の光
雨の庭
レントより遅く
夜想曲
グラドゥス・アド・パルナッスム博士
ゴリウォーグのケークウォーク
亜麻色の髪の乙女
沈める寺
花火
水の反映
金色の魚
喜びの島
水の精
グラナダの夕べ

アラベスク

Monique Haasによる

これらを生んだ人がいて
生んだ人を生んだ世界があって
これらから生まれる世界がある
それも現実
奇跡のような
コメント
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