時事解説「ディストピア」

ロシア、イラン、中国等の海外ニュースサイトの記事を紹介します。国内政治、メディア批判の記事もあります。

平和の使者オバマ、イランへの制裁続行を求める

2015-03-16 00:30:33 | リビア・ウクライナ・南米・中東
欧米列強およびその属国の論壇が説明するには、アメリカの敵は世界の敵であり、
ロシアだけでなく、イランもまた制裁を加えなければならない独裁国家の1つらしい。


オバマ大統領は、11日に提示した書簡で次のように主張した。

イラン政府の独自の政策や行動は、地域のアメリカの利益に反するものであり、
 依然としてアメリカの国家安全、外交政策、経済にとって非通常の、特別な脅威と見なされる



アメリカはカーター政権の時(1979年)にイランに対する国家緊急事態法を制定した。
このときから現在まで、アメリカの大統領は毎年、イランに対する国家緊急事態法を延長している。


アメリカは2013年のイランと6カ国が暫定合意に達した時にも同法を延長した。

イランの抗議を受け、アメリカは次のように回答している。

この延長はアメリカの政策における通常の流れであり、期限が切れる前に毎年延長すべきだ


20万以上の大軍で北朝鮮への先制攻撃作戦を予行していることに対して、
北朝鮮が同国の核・ミサイル実験の暫定停止と引き換えに同演習の中止を求めた際にも、
同じように「いつものことだ」と答えた。


そのうち、パイロットが「いつものことだ」と言いながら、
イスラム都市を爆撃する風刺画が描かれてもおかしくはない。



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イランに対する国家緊急事態法の理由のない延長は実際、イラン恐怖症を吹き込む政策の継続であり、
長年、イランの平和的核計画に反対するための曖昧な口実を繰り返す根拠となっています。


その一方で、この行動は、地域の情勢不安への抵抗、とくに地域でのテロ対策における
イランの重要な役割を疑問視しようとするアメリカの様々な努力を想起させるものです。


こうした中、国際社会と地域の国々は、
イランが常に地域のテロ対策において基本的な役割を果たしていることを知っています。


地域や世界の安全を深刻に脅かす麻薬密輸対策においても、
イランの肯定的な役割は常に認められ、国連やヨーロッパ諸国の注目を集めています。


このことから、アメリカにとって
イランのどこが、毎年国家緊急事態法を延長させるほどの脅威なのでしょうか。



こうした中アメリカは、その政策と行動、脅迫と妨害により、イランを30年以上もの間、
常に脅威とし、アルカイダなどのテロ組織を支援することでイランの周辺を情勢不安にしてきました。


アメリカのバイデン副大統領は、少し前、
サウジアラビアやトルコ、カタールといったアメリカの同盟国である一部の地域諸国が、
ヌスラ戦線やISISといったテロ組織に数億ドル、数千トンの武器を支援していることを認めました。



アメリカはこうした行動を
国家治安に対する脅威と見なしておらず、
それは自らがこの情勢不安の一部であるためです。



こうした中、イランはアメリカの安全に対する非通常の特別な脅威と見なされる、
という主張は、熟考に値します。


国家緊急事態法が毎年延長されていることは、
真の治安の評価に基づいたものではなく、単なる政治的な決定と見なされます。


しかしながらアメリカはこの先にもずっと地域の政治的、地政学的な情勢を無視し、
この法を延長することで、ボールをイラン側に投げ続けることはできないのです。

(http://japanese.irib.ir/news/commentaries/item/
52907-%E3%82%A2%E3%83%A1%E3%83%AA%E3%82%AB%E3%8
1%AE%E5%AF%BE%E3%82%A4%E3%83%A9%E3%83%B3%E5%9B%BD%
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今のところ、イランは地味に扱われているが、
この国に対するアメリカの圧力のかけ方及び同国へのプロパガンダ作戦は
中国やロシア、北朝鮮、シリアといった東側諸国へ対するものと全く同じものだ。



日本のアメリカ研究者、中国研究者、ロシア・北朝鮮研究者の大物の中には、
如何にアメリカが正しく、中露が間違っているかを力説する輩が少なくない。


彼らに欠けているのは、尋常じゃない制裁と圧力が
アメリカとその同盟国によって数十年にかけて継続されているという事実の認識だ。


北朝鮮は一時期、「先軍政治」というスローガンを打ち出していた。
これは直ちに日本の専門家やジャーナリストによって軍事化を正当化させるものだと説明された。


それは半分の事実である。この先軍政治は、軍事力が脆弱だったために
滅ばざるを得なかったイラクをはじめとする東側国家の歴史と、
朝鮮戦争後、継続されている連合軍による締め出し作戦を背景に唱えられたものだ。


北朝鮮に限らず、東側国家がなぜ軍事化へ走るのかについて、
列強の政治的経済的軍事的圧力・制裁を度外視し、ひたすらバッシングする意見が多い。


だが、そのような意見は結果的にNATOの軍事進攻を応援するものでしかないだろう。
実際に、イラク戦争・アラブの春に対する中東研究者の姿勢はまさにそうだった。

プーチン、ウクライナ危機を語る

2015-03-16 00:08:29 | リビア・ウクライナ・南米・中東
短文だが、ロシアの声にあったものを紹介する。


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ロシアは当初から、ウクライナのクーデターの
背後の「人形使い」が米国であることを知っていた。

欧州はウクライナの反体制派をただ形式的に支援しただけだった。


ロシアのプーチン大統領が「ロシア1」テレビの
ドキュメンタリー「クリミア、祖国への道」で述べた。



「形式的には、反体制派を支援したのは第一に、欧州であった。
 しかし、我々は、素晴らしくよく知っていた。
 あとから理屈付けしたのでない、知っていたのだ。
 真の人形使いは米国にいる我々のパートナーたち、友人たちであったと。
 
 彼らこそがナショナリストらを訓練し、
 彼らこそが戦闘部隊を養成したのだ
」とプーチン大統領。


プーチン大統領はまた、戦闘部隊の訓練は
部分的にポーランドやリトアニアで行われた、と述べた。



我々のパートナーたちはどう振舞ったか。
 クーデターの遂行に道をつけたのだ。
 つまり、パワーによって、行動を開始させた。
 それが事を運ぶのに一番いい方法であるとは私は思わない
」とプーチン大統領。
続きを読む: http://japanese.ruvr.ru/news/2015_03_15/283343143/



キエフのクーデターを首謀した人々は、政権奪取だけでなく、
大統領のヴィクトル・ヤヌコヴィチ氏を物理的に排除することを計画していた。


ロシアのプーチン大統領が「ロシア1」テレビの
ドキュメンタリー「クリミア、祖国への道」の中で述べた。



プーチン大統領はまた、キエフのクーデターに武器を適用しないことを決めた
ヤヌコーヴィチ氏の判断について、自らの意見を述べた。

「彼を非難する気はない。しかし、不作為によって事態は悪化した」とプーチン大統領。

続きを読む: http://japanese.ruvr.ru/news/2015_03_15/283343415/

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武力によって政権を転覆させるだけでなく、選挙で当選した
一国の大統領が殺されかけたにも関わらず、加えて、
キエフ政権にはネオナチも多くいるにも関わらず、
全力でキエフ政権を応援するEU・NATOを見ると、とても不思議な気持ちになる。


東京新聞は鳩山氏の行動を「国際社会に誤解を与える」と非難したが、
そもそも国際社会でクリミア併合を非難しているのは欧米だけであり、
他は支持か中立の立場を取っている。

このような事実確認を差し引いても、日本政府の意向に逆らう言動は
慎まなければならないといった主張をみると、さすが民主主義国だと思わざるを得ない。


民主主義国では弾圧ではなく、抑圧(プレッシャー)という手段がとられる。
民主主義国では政府ではなく、論壇(メディア)が言論の自由を自己抑制する。

その結果、いわゆる独裁国よりも独裁的な情報統制が敷かれる。

ワレンチン・ラスプーチン氏を偲ぶ

2015-03-16 00:02:25 | 文学
作家のヴァレンチン・ラスプーチン氏が、モスクワで死去した。77歳だった。
孫のアントニーナさんが、リア・ノーヴォスチ通信に伝えた。

ラスプーチン氏は、「マチョーラとの別れ」、
「フランス語の授業」、「最終期限」など、その他数多くの作品で知られている。

ラスプーチン氏は1937年3月15日にイルクーツク州ウスチ・ウジンスキー地区アタランカで生まれた。

ラスプーチン氏は社会主義労働英雄で、2012年には国家賞授与された。

続きを読む: http://japanese.ruvr.ru/news/2015_03_15/283339251/
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アフリカ文学や朝鮮文学がポスト・コロニアリズム研究の材料として利用される一方で、
ロシア文学は、逆に反共・反ソの材料としてしか紹介されない傾向がある。


私が知る限り、日本語で読めるソ連文学の多くは、反体制派の作家の作品ばかりだ。
そこには、したり顔で文学者がソ連批判をするだけのつまらない解説が添えられている。


結局そのような言説は列強の冷戦史観(悪のソ連が滅び正義の時代が訪れる歴史)
を正当化させるだけのものであり、実にいい加減な内容になっている。
現に、市民も参加する研究会によって、その解説・翻訳の胡散臭さを暴露されている人間もいる。


亀山郁夫著『謎とき『悪霊』』の虚偽を問う

― テクストの軽視と隠蔽、あるいは、詐術と談合 ―

(または、「マトリョーシャ=マゾヒスト説」の崩壊)


商品としてのドストエフスキー

-商業出版とマスメディアとにおける作家像-



亀山教授は日本のロシア文学業界で中心となって活躍している方で、
彼の言説を知ることで日本のロシア文学研究の水準を見極める指標にもなる。


ゴーゴリの新訳に対して私は以前、「ロシア文学の洗浄作業」といって酷評した。
ゴーゴリに限らず、最近の文学者は新訳と称して手前勝手な解釈を刷り込ませており、
正直、その翻訳のレベルも神西清氏や中村融氏といった過去の名訳者に遠く及ばない。



ここで、イギリス文学やフランス文学の翻訳状況に目を向けてみると、
植民地支配や戦後の独立運動に対する弾圧を批判する小説はなぜかメジャーになっていない。

ドイツ・イタリア文学でもナチスやファシスト政権を批判する文学はなぜか傍流だ。

アメリカ文学に至ってもキング牧師のような融和的活動家の翻訳書は岩波にはあるが、
マーカス・ガーヴェイやマルコムXのような対決的な運動家の本はなぜか翻訳されていない。


欧米の文学はむしろ、大衆文学の翻訳がメジャーで、
向こうの価値観が知らず知らずのうちに読者の脳にしみとおる様に作られている。


他方、ソ連や東欧、中国の小説は反体制派の本ばかりが翻訳され、
いかにこの国がろくでもない国であるかを読者に説明するものになっている。


真のプロパガンダとは、「本当は正しかった日本」だとか
「薄汚い国韓国」とかいった威勢のいい負け犬の遠吠え書籍ではなく、
むしろそれがプロパガンダとは決して思わせない透明感のあるものなのだと言えよう。



そういう中で、ワレンチン・ラスプーチンの作品は
プロパガンダ翻訳活動の波の中で珍しく発掘されたポスト冷戦を描いたものである。


そこでは冷戦が終わり、ソ連が否定された後に、時代に馴染めず翻弄される人間を描かれている。

実際、ソ連崩壊後のロシアは国の財産を新興財閥が収奪し、
そこからさらに欧米に資本が流出されるという非道い有様に陥った。

新興財閥の個人的利益と引き換えに、国や社会は疲弊し、多くの人間が貧窮したのである。


この時期、西側諸国は悪の帝国を葬り去ったことに小躍りし、
西側の左翼は、そそくさと手のひらを返し、反共主義者たちの犬となり餌をねだった。


抵抗者たちが自発的に解散を宣言し、権力者に服従し、弱体化した結果、
新自由主義が浸透し、中東・アフリカに軍が侵攻し、国内の貧困者が増大した。


その癌は、冷戦終結後、20年が経った現在になり、いよいよ勢いを増すばかりだ。

当然ながら、敵に降伏するだけでは飽き足らず、
味方を売り、時にはかつての仲間の虐殺作戦に参加したこの人殺しどもは、
現状の責任は自分たちにもあるという反省をしていない。しようともしない。


私は、常々ポストコロニアリズム研究はソ連や中国を対象にされるべきものだと思う。
冷戦時、ソ連は西側の敵としてありとあらゆる悪魔化がされてきた。ちょうど今の北朝鮮のように。


しかし、振り返ってみると、ペレストロイカは果たして本当に手放しに礼賛できるものだったのか?
冷戦終結は、新しい春をもたらしたのか?冷戦後20年たった今をみると、とてもそうは思えない。


どちらの事件も西側にとっては非常に喜ばしいものだったが、
東側にとって、それは必ずしも良いものだけではなかったのではないか?

ラスプーチンの小説を読むと、ペレストロイカを当初は喜びながらも、
やがてそれがもたらすものに悩まされる農民や町民の姿が描かれている。


私たちは今こそ、ラスプーチンのような本を読み、
西側の都合のよい歴史観から脱却すべきではないだろうか?