時事解説「ディストピア」

ロシア、イラン、中国等の海外ニュースサイトの記事を紹介します。国内政治、メディア批判の記事もあります。

『ロシアの声』あらため、『スプートニク』が開設される

2015-03-22 20:23:44 | 国際政治
ロシアの情報サイト、『ロシアの声』が『スプートニク』としてリニューアルされた。

正直、レイアウトは前のほうが良いが、今後もロシア側からの情報を発信するのだろう。

『ロシアの声』は、一言でいえば、徳間書店や講談社のようなサイトだったと思う。

オカルトや芸能を含んだトンデモ記事も多い中、参考になる記事も多くあった。
極端というか、右も左もと言おうか、いい加減な記事もあれば重要な記事もあったのである。


例えば、北朝鮮の関連記事では
「北朝鮮ではキム・ジョンウンと同じ髪型をしなければならない」という
現地で撮られた写真を見れば一発で嘘だとわかる情報を流したかと思えば、
北朝鮮の食糧事情は年々改善されていることを指摘しているものもある。


なぜこういうことが起きるかというと、このサイトは総合型のニュースサイトであり、
そのため、いい加減な情報元と信頼できる情報元の記事がごっちゃになっているからだ。


よって、他のサイトと比較しながら、あるいは情報源をチェックしながら
読むべき記事を取捨選択しなければならない。

こういう作業が必要なのは講談社や徳間書店の出版物に通じるものである。

例えば、講談社学術文庫はハーバート・ビックス『昭和天皇(上)(下)』のような
重要文献を収録しているかと思えば、トンデモ本も多くあり、読み手の選択力が試される。


徳間書店も、オカルト本がかなり多く、あからさまな右翼本も相当ある一方で、
スティグリッツやイングドールの翻訳書も出版していたりと意外と侮れない。


要するに、今の出版業界は売れるものなら何でも売ってやろうというスタンスらしく、
この出版社の本なら安心して買えるというものが珍しくなっている。


何も考えず安心して買えるのは高文研の本くらいではないだろうか?
明石書店や新日本出版社、大月書店、緑風出版も良書を多く生み出しているが、
たまに変な本を売る時もあり、100%信頼できるかと言えば少々心もとない。

岩波書店に至っては、無難ではあるが、さりとて良書を売っているかというと、
まぁ・・・普通か?と思うようになっているし、これはちょっとなーと思うものも意外とある。
個人的に評価付けするなら、高文研がAだとすれば、岩波はCだ。


徳間書店は変な本が多いのだが、たまにスマッシュ・ヒットを飛ばす。
講談社は文字通り何でもかんでもだ。以下、PHPや文春、新潮社のようなクズ会社が並んでいる。
文春も新潮社も作り話を売ることを商売としているので、さすがに合法詐欺のテクは卓越している。


出版物にせよニュースサイトにせよ、読む側の眼が試されるようになっている気がする。
とはいえ、『ロシアの声』はロシア国内のニュースは良記事を掲載しているし、
北朝鮮や中国などのアジアの記事において、たまに大当たりを出す時もある。
(その場合、きちんとした研究所の専門員が寄稿している)


また、なんでもありというのは、裏を返せば検閲が甘いということでもある。
実際、ロシア政府の見解に反する記事も多く掲載されている。
こういう自由度があることもまた、このサイトの利点であり欠点なのだろう。


過去記事は今でも読めるが、そのうち削除されるかもしれない。
早めに保存しておいたほうがよさそうだ。

長々と語ったが、日本語で読めるロシア側の情報サイトというのは多いようで少ないので、
今後も存続してほしいサイトだと思う(ロシア・トゥデイのように英語で読めるサイトはあるが)。

汚職についてその2

2015-03-22 19:07:26 | 中国(反共批判)
「習近平中国共産党中央総書記が打ち出した「4つの全面」戦略のうち、
 最も喫緊かつ最も困難なのは「全面的な厳しい党内統治」である。

 中国人民政治協商会議第12期全国委員会第3回会議に出席した
 軍事科学院元副院長の劉継賢氏は次のような考えを示している。

 全面的な厳しい党内統治を行うには、指導幹部というカギとなる少数をしっかりとつかみ、
 指導幹部に対する全面的な管理と監督を法によって厳しく強化しなければならない。 」
(http://japanese.beijingreview.com.cn/yzds/txt/2015-03/20/content_678964.htm)

欧米の左翼も含める非欧米型国家批判では、この国は私利私欲にまみれた汚職役人の巣窟なのだと
自分たちの国のことを棚に上げて意気揚々と述べる著書が多い。


実際、汚職などはどこの国にも必ずある現象なので、
その部分だけをピックアップすれば、いくらでも本は書ける。


汚職が横行していることを理由に「だからアラブは、社会主義は間違っているのだ」と述べる
意見に対しては、アメリカやイギリス、フランスの汚職を事例に「だから民主主義はおかしいのだ」
とそっくりそのまま、同じやり方で言い返せることができる。

ましてや、米英仏の侵略トリオは中東・アフリカの再植民地化に勤しんでいるのだから、
全く汚職が存在しないと仮定してもなお、その邪悪さ、害悪にはお釣りがくる。



汚職を撲滅するのには、役人を監督する機関の設立が必要だが、
仮にこういう機関を設立したり、あるいは既存の検察機関を強化したりすると、
これ幸いにと「人間の自由を奪う中国!党が国を支配する地獄の国!」とまぁ、
こんなアホみたいなフレーズを嬉しそうに述べる輩が噴出するだろう。


かつて、松平定信の寛政の改革では、田沼意次の時代に定着した汚職政治を払拭するために、
かなり厳しい規制を役人だけでなく町民にも強いた。汚職があっても、自由だった昔が
懐かしいなという句すら読まれる有様だったが、汚職の対策というのは得てして、
個人の自由を制限することで達成される。ここに着目して、相手国の攻撃をする輩が
わらわらと出てくるのではないかと思われる。

尖閣諸島の電子資料館がオープンされる

2015-03-22 00:23:57 | 中国(反共批判)
今月の初め、中国の国家海洋情報センターが運営する尖閣諸島の電子資料館がオープンされた。
(http:/www.diaoyudao.org.cn/jp)


尖閣諸島に関しては、中国側が相当数の資料をそろえていることは知っていたが、
いよいよ本格的に、資料を公開し、自国の領有権を主張する構えに入ったようだ。


なお、北京週報の特集サイトでも尖閣諸島に関するページがある。
個人的には、こちらのほうが資料は少ないものの解説は充実しているように思う。
(http://japanese.beijingreview.com.cn/zt/node_66181.htm)


竹島についても思うのだが、日本の外務省は東大出身の秀才揃いのわりには、
領土問題においてネット上での広報活動がまったくなっていないような印象を受ける。


一言でいえば、ダサい、ショボい、ホームページの出来からしてレベルが低い。

去年開設された南京事件の電子資料館&追悼サイトを見ても思ったが、
中国政府はたっぷりと予算をかけ、歴史問題に取り組もうとする意気込みを感じる。

資料も充実しており、その一部はネットで閲覧することもできる。


他方で、日本の場合、自分の領土だというわりには
根拠となる資料もアップされてないし、学術論文や学術書の紹介もされていない。
一言でいえば、これをもって中国側に反撃できるだけの情報が掲載されていない。


たとえば、尖閣諸島の中国側の主張に対しては、こう書かれているだけだ。
「中国側が挙げている文献や地図の記載内容は,領有権を有することの証拠とするには全く不十分。」


これに対して、中国側のサイトではどうなっているのか?


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1762年にポルトガル人が作成した『航海針路』において、
三王島(釣魚島)と台湾、漳州、寧波等を同一の表に記入されている


また、針路の配列順序並びに経緯度の対応状況からも、
釣魚島と台湾等が中国に属することが明らかである。

この針路表では、日本に属するものは「日本(Japaó)」と明確に表記されている

(http://www.diaoyudao.org.cn/jp/content_34828642.htm)

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以上の解説を問題の資料のスキャナ画像と共に記載している。ちょうどこんな風に。




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沖縄県管内全図


1895年に日本で出版された『沖縄県管内全図』では、
沖縄県所属の島嶼の地理的範囲が明確に記されている。

図面中に、久米島が琉球諸島西南方面の境界であることが明記されており、
釣魚島及びその付属島嶼は沖縄県の管轄内に含まれていないことが一目瞭然である。

http://www.diaoyudao.org.cn/jp/content_34817833.htm
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このような資料が現段階で、23点も紹介されている。
また、近年中国側で発刊された資料集では図表、文献約380点が収録されている。


これについて日本の外務省では、
「尖閣諸島は,1885年から日本政府が沖縄県当局を通ずる等の方法により
 再三にわたり現地調査を行い,単に尖閣諸島が無人島であるだけでなく,
 清国の支配が及んでいる痕跡がないことを慎重に確認した上で,
 1895年1月14日に現地に標杭を建設する旨の閣議決定を行って,正式に日本の領土に編入しました。」
というフレーズを繰り返すばかりで、当時の調査報告書すらアップロードされていない。


一応、少々の具体的反論を行っている個所もあるが、数の上では10点にも上らない。
(根拠が比較的薄い資料をピックアップして反論しているような印象を受ける)


情報の開示でいえば、中国が数段上を行っているのは確かだ。



さらに、日本の外務省のサイトには明らかな虚偽も含まれている。

「そもそも,中国政府及び台湾当局が尖閣諸島に関する独自の主張を始めたのは,
 1968年秋に行われた国連機関による調査の結果,東シナ海に石油埋蔵の可能性がある
 との指摘を受けて尖閣諸島に注目が集まった1970年代以降からです。
 それ以前には,サンフランシスコ平和条約第3条に基づいて米国の施政権下に置かれた地域に
 尖閣諸島が含まれている事実に対しても,何ら異議を唱えていません。
 中国側は,異議を唱えてこなかったことについて何ら説明を行っていません。」
(http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/senkaku/qa_1010.html#q4)



これについては、少なくとも1958年に抗議がされており、
当時の中国政府からの抗議文が資料館にアップロードされている。
(http://www.diaoyudao.org.cn/2014-12/11/content_34291770.htm)



他にも、
「1885年の外務大臣の書簡は,編入手続を行う過程における一つの文書であり,
 そこには清国の動向について記述があるのは事実ですが,日本政府として,
 清国が尖閣諸島を領有していると認識していたとは全く読み取れず,
 同書簡はむしろ当時尖閣諸島が清国に属さないとの前提の下,
 我が国がいかに丁寧かつ慎重に領土編入の手続を進めてきたかを示すものです。

 外務大臣が同書簡の中で実地踏査を支持していることからも,
 尖閣諸島を清国の領土であると考えていなかったことは明らかです。

 また,1885年に内務大臣から外務大臣に宛てた書簡でも尖閣諸島に
「清国所属の証跡は少しも相見え申さず」と明確に記載されています。」
(http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/senkaku/qa_1010.html#q8)

と書かれているのだが、肝心の史料にはこう書かれている。


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右島嶼(注:尖閣諸島)の儀は,清国国境にも接近しており,
踏査を終えると大東島に比べれば,周囲も小さく見え,
特に清国にはその名も付し,
近時清国新聞等にも我が政府において台湾近傍清国所属の島を占領せんとする等の風説を掲載し,
我が国に対して猜疑を抱き,頻に清政府の注意を促しているところでもあり,
これについては,
この際,公然と国標を建設する等の処置を行えば,
清国の疑惑を招くだろう。

実地踏査をさせ,港湾の形状並びに土地物産開拓見込の有無詳細を報告させるに止め,
国標を建て開拓等に着手するは他日の機会に譲るべきだろう。


http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/senkaku/qa_1010.html#q8
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つまり、調査を終えると島には中国の名前もついていて、
近頃、日本政府が台湾や近隣の島を占領しようとしているという噂があるので、
公然と処置を行えば疑惑を招くので、とりあえずは調査の段階に止めるべきだと書いているのである。

(この手紙の10年後、実際に台湾とその付属諸島は馬関条約により日本の領土に吸収される。
 この際に台湾と同時に領土とされたのが尖閣諸島である)

なお、この手紙は1885年9月22日、西村捨三沖縄県令が山県有朋内務卿にあてた
尖閣諸島への国標建設に関する秘密報告において、これらの無人島について

「中山伝信録に記載の魚釣台、黄尾嶼、赤尾嶼と同一のものであるはずだ。
 清朝の冊封使船はこれらの島嶼を詳悉するのみならず、
 すでに名称も付し、琉球航海の目標としていた。

 従って、釣魚島に日本の国標を建設すべきか否かについて懸念があり、
 政府の指示を仰ぎたい」と述べたことを受けたものである。具体的には、こう書かれている。


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本県ト清国福州間ニ散在セル無人島取調之義ニ付
先般在京森本県大書記官ヘ御内命相成候趣ニ依り取調致候処

概略別紙ノ通ニ有之候仰モ
久米赤嶋久場嶋及魚釣島ハ古来本県ニ於テ称スル所ノ名ニシテ……
沖縄県下ニ属セラルルモ敢テ故障有之間敷ト被存候得共過日御届及候大東島
(本県ト小笠原島ノ間ニアリ)トハ地勢相違
中山傳信録ニ記載セル釣魚台黄尾嶼赤尾嶼ト同一ナルモノニ無之哉ノ疑ナキ能ハス

果シテ同一ナルトキハ既ニ清国モ旧中山王ヲ冊封スル使船ノ詳悉セルノミナラス
夫々名称ヲモ附シ琉球航海ノ目標ト為セシ事明カナリ


依テ今回大東島同様踏査直ニ国標取建候モ如何ト懸念仕候」

(http://japanese.beijingreview.com.cn/zxnew/txt/2013-05/24/content_544490.htm)
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これに対して山縣が井上に相談したのが例の資料だった。

要するに、清国の領土である疑いが出てきたからどうしようかという話だったのである。
井上はとりあえず建てずに、目立った動きはしないように、調査のことは公にしないようにと進言した。


日本政府は、一連のうち、国標を建てようとした山縣の言葉だけを強調しているが、
これは全体の流れを無視した曲解である。



以上のように、中国政府が明確な資料を提示しているのに対して、
日本政府が虚偽と曲解を含んだ不十分な説明しかされていないのだが、
これは中国と比べて日本での研究があまり進展していないからだと思われる。


今のところ、資料はさほど多くはないが、今後、多くの文献資料が公開される可能性がある。
加えて、中国人学者の論文が日本語訳されることも。その時、日本政府は情報戦に勝てるのか。
少々不安になってくる。