「ナリヤラン」は、常緑性の地生ランのひとつ。熱帯アジアに広く分布し、日本では八重山諸島(石垣島及び西表島)に自生する。沖縄島中部でも見つかっているが、栽培逸出の固体である。
和名の「ナリヤラン」の「成屋」は、西表島の内湾にある小島、内離島にあった成屋集落(現在は廃村)に由来すると言われている。
『特徴』
新旧の複数の茎がまとまって生える。葉は長さ10-20センチで、線状披針形、2列に互生して上に伸びあがり、遠目で見た草姿はイネ科のアシに似ている。茎の基部には偽球茎をつけ、ひも状の根が多数ある。八重山諸島では草丈50センチ前後で止まる場合が多いが、熱帯域の尾大型系統では1-2メートル以上に達することもある。
花茎は茎の先端からさらに上に伸び、総状花序に複数の花をつける。花径は4センチ前後。
花色は通常は淡紅紫色、唇弁の先端はそれよりも色濃く、鮮やかな゛に紫色で中央に黄色の斑紋がある。花だけを見ると洋ランのカトレアによく似ている。ただし、花はカトレアのように長持ちせず、一つの花は数日でしぼむ。花期は特に決まっておらず、一定の大きさに育つと花をつける。熱帯域では1年を通じて開花する。
『その他』
西表島産は3倍体で、柱頭に花粉がつくと、それが刺激となって受精なしに種子が単為発生する。花粉親がどのような品種であっても、実生は基本的には種子親と同一の遺伝子構成になる。そのため、種子親として交配育種に使うことは不可能で゛ある。
他産地の系統に対ても、同様に単為発生している可能性がある。