佐世保便り

2008年7月に佐世保に移住。
海あり山あり基地あり。そしてダム問題あり。
感動や素朴な疑問など誰かに伝えたくて…

闇の子供たち

2008-11-04 | 雑感
10月31日から11月3日まで、「アルカスSASEBO」でアジア映画祭が開催された。

上映されたのは、4カ国7作品で、それほど多くはなかったが、私はどれも観ていなかったので、
さんざん迷ったあげく3作品を鑑賞した。

ダム建設によって水没していく古都を舞台に、2組の夫婦の出会いと別れを描いた『長江哀歌』、
モンゴルの荒れ果てた大地(砂漠化が進む元草原)を舞台に、家族をかかえて必死に生きる女性の姿を描いた『トゥヤーの結婚』、二つの中国作品を見た。

そして、もう一つ、2008年作品『闇の子供たち』に大きな衝撃を受けた。

阪本順司監督、江口洋介主演の日本映画であるが、舞台はタイで、出演者もタイの人々が圧倒的に多く、日本とタイの合作と言ってもいいのではないか。
しかし、タイでは上映禁止になっているときく。
それは、その内容があまりにもタイのイメージを傷つけるからだろう。
人身売買、子ども買春、臓器売買等々。

まるで動物園の檻の中のような部屋に押し込められたこどもたち。

飼育している大人が、その日の客の好みに合った子を選んで連れて行く。
ブヨブヨに太った白人の大男が幼い少年の手を引いて小部屋に入る。
そこで少年に課せられる行為、醜くおぞましい姿を晒す獣以下の人間の大人、吐き気のする映像。
大人の命令を拒めば、火のついたたばこが押し付けられる。

部屋の片隅には横になったまま動かない女の子がいた。
彼女の瞳は大きく見開かれ、何かをじっと見ているようだった。その体はエイズに侵されていた。
後日、彼女は黒いビニールのゴミ袋に入れられ焼却場へ。

その妹は、ある日、体中をきれいに洗ってもらってきれいな服を着せられ、車に乗り込む。
着いた先は大きな病院。そこで待っていたのは心臓外科医。
これから彼女の心臓は、はるばる日本からやってきた日本の子どもに移植されるのだ。

作品としての映画、その脚本がフィクションであることは明白だが、ここに描かれているようなことが現在のタイで、あるいは東南アジアで、あるいはどこか別の国でおこっている現実のことなのか?どこまでが本当で、どこからが作り話なのか私も混乱してしまった。

TVの報道番組などで貧しい国々の人身売買のことは見聞きしてきた。
日本でもかつては同じような時代があった。まだ子どもながら労働者として売られていったり、
若い女性が遊郭に売り飛ばされたり。
しかし、ここに出てくるのはまだ小学生かそれ以下の子どもたち。
しかも労働ではない。完全に性の玩具として。そして、まれに臓器提供者として?

後でこの映画に関する情報を検索すると、タイにおける心臓移植手術などあり得ないことが専門家の話でわかった。
そうすると、他の描写も、完全なフィクションなのか?

私の疑問に、友人があるサイトアドレスを送ってくれた。
日本ユニセフ協会のアドレスだった。
私も末端会員でありながら、このメッセージを知らなかった。


日本ユニセフ協会は、映画「闇の子供たち」を応援しています。
と題して以下のコメントが示されていた。


<映画『闇の子供たち』は、フィクション(創作)でありながら、ユニセフはもちろん、(財)日本ユニセフ協会が、長年にわたりその撲滅を訴えてきている「子どもの商業的性的搾取」、すなわち、子ども買春・子どもポルノ・人身売買といった問題を、非常にリアルに描いた作品です。それ故、スクリーンに映し出された映像に、あるいは目を背けたくなるかもしれません。しかし、残念ながら本映画のストーリーは、映画の舞台となったタイのみならず、洋の東西を問わず、世界各地で実際に起っている「現実」を映し出しています。>

「どうか目をそむけないでほしい」と訴え、
そこに旅行する世界各国の人々、そしてそこに住む国民の一人ひとりが、
子どもの商業的性的搾取問題について「知る」ことの重要性を説き、
そして、そのきっかけを作ってくれたこの映画関係者に「敬意を表し感謝申し上げます」
と述べられていた。

そして最後に
<どうか、みなさまも、映画『闇の子供たち』が描く状況に目を背けることなく、この映画をきっかけに、子どもたちを守るために何をしなければならないのかを、私たちと一緒に考えてください。>
と結ばれていた。
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3 コメント

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Unknown (そぷん)
2008-11-04 14:43:14
アジア映画祭行かれたのですね。
私はパスしました。なかなか時間がとれなくて、このところ映画はご無沙汰です。
この原作者は在日韓国・朝鮮人作家・梁石日氏ですね。残念ながら、この本は読んでいません。彼の小説が映画化されたものは「月はどっちにでている」と「血と骨」を見ましたが、どちらもなかなかの映画でした。「闇の子供たち」は衝撃的で見た後が辛かったと友人たちから聞きましたが、それだけで終わらずに自分に何が出来るのかを問いかけていけたらいいですね。
返信する
想像力 (mocci)
2008-11-04 20:01:42
そのようなことが「その国」では実際に行われていると、「その国」から来た学生たちから聞いたことがあります。浅はかな私は、それをただ驚くだけでやり過ごして来てしまいました。
ただ聞きかじるより、文章の方が、文章だけより映像で見る方が衝撃の度合いも実感の度合いも大きくなるのでしょうが、もっと想像力を働かせなければいけなかったと思います。と同時に、それが映画の大きな役割の一つであることを実感します。

そのような愚かな憎むべき犯罪を撲滅するために、私たち一人一人は何をしたらいいのでしょう。
返信する
私にできること (cosmos)
2008-11-04 23:23:18
そぶんさんのおっしゃるように、
「自分に何ができるのかを問いかけ」てみること大切ですね。いますぐ、直截的なことはできないけど、そんな力はないけれど、まずは誰かに伝えよう。そう思って友人たちにメールを送ったり、ここにも書いてみました。そして、それを読んだ誰かがこの映画に興味を持って見てくれて、何かを感じて、また誰かに伝えてくれて…そういう人々と繋がりあって、考えあって、微力な私たちにできることを見つけていけたらいいな…そう思います。

mocciさん、
「その国」から来た人に直接聞いていたんですね。それなのに「驚くだけでやり過ごしてしまった」んですね。わかります。私達の想像力ってそんなものですよね。でも、遅くないよ。聞いたことはきっと頭のどこかに残ってる。mocciさんがこの映画を見たら、あるいは原作本を読んだら、何も聞いてなかった私以上に理解できると思います。
そうしたらmocciさんも伝えてください。私たちに、周りの人々に。そして、いっしょに考えましょう。私たちにできることを。
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