佐世保便り

2008年7月に佐世保に移住。
海あり山あり基地あり。そしてダム問題あり。
感動や素朴な疑問など誰かに伝えたくて…

102歳の教育学者

2008-10-13 | 雑感

昨日は何とも嬉しい、そして元気がモリモリ湧いてくるようなひと時を味わった。

 

 『アルカスSASEBO』での昇地三郎博士の講演「百歳からが本番」がそれ。

1906年生まれ、つまり現在102歳の現役教育者。

今年で5回目となる世界一周講演旅行もこの夏無事に終え、

昨日は「しいのみ学園」の運動会で「僕も一緒に走ったんだよ」と楽しそうに話される昇地先生は、

懐かしい我が恩師。

 

 といっても先生は当然ご記憶ではない。

私が入学した年に退官された。すれ違いのように、ほんの少し出会っただけの学生だったのだから。

 

しかし、先生の退官記念講演で聴いた言葉が忘れられなかった。

「小さきは小さきままに 折れたるは折れたるままに コスモスの花咲く」

その意味を掴みたくて、先生が園長をなさっている「しいのみ学園」にほんの一週間ほどだが

実習に行ったこともあったっけ。

 

今は知的障害児通園施設と位置付けられているが、当時は脳性まひ児のこどもが多くて、

知能の遅れよりも肢体不自由が目立っていた。

掃除の時間、一人で寝返りも打てない重度の子にまで掃除指導するように言われ、

何をどうすればいいのか私はわからず途方に暮れた。

しばらく待って、先生はその女の子を横向きに寝かせ、洗った雑巾をその手に持たせた。

女の子はにこっと笑って、雑巾を握った手を動かした。

「おー、きれいになったね。でも、まだこのへんがよごれとるよ。○○ちゃんのよだれの跡かな?」

女の子は、きゃーという悲鳴のような笑い声を発して、本当に楽しそうに、

そして頑張って「掃除」をしていた。

あの詩の意味がわかった瞬間だった。

 

 

今日のお話は、演題の通り、100歳を過ぎた先生の充実した日々をユーモアたっぷりに紹介してくださったが、驚いたことに、先生はそれをほとんどパソコンを使ってされた!

 

百聞は一見にしかず。

海外講演の様子も、NHKスペシャルで脳の検査を受けているところも、近所の老人センター(全員先生より年下だが)の人に棒体操を教えているところも、そして運動会でこどもと一緒に競技している場面も、みんなパソコンに取り込んであって、

それを大型スクリーンに映しながら説明していくという手法だ。

たぶん映像の取り込みやメディアの管理などは周りの方がやるのだろうが、

パソコンを操作するだけでもすごいと思う。負けました!!!

 

さらに驚きなのは、その語学力である。

学生時代に英語とドイツ語を習得。

65歳から韓国語、95歳から中国語を学び始め、どちらも今はぺらぺら。

それは、両国での講義や講演の機会が多かったので、その国の言葉で伝えたいという願いから始められたもの。近年、海外講演が増えたので、100歳からはロシア語、101歳の昨年からはポルトガル語も勉強中という!

 

NHKスペシャル「老化に挑む」で日米の医学者が検査した結果、

先生の脳は海馬がしっかりしていて、脳の反応速度は30代だったそうだ。

 

さらに、講演の最中に、先生が考案された棒体操の実演があり、聴衆も全員立ち上がって、一緒にやったが、先生の体がいかに柔らかく動きが滑らかであるかがよくわかった。

これなら、毎年世界一周の講演旅行をしても問題ないはずだ。

 

そういうことを知るにつけ、みんな誰もがききたくなる。

長寿と若さの秘訣はなんですか?と。

 

何項目か説明して下さったが、覚えているのは、

まず、一口30回噛むこと

母親に言われて、子どものころからずーっと守ってこられたそうだ。

良く噛むことで満腹感が得られ、食べ過ぎることがない。これだけで、肥満や成人病の多くが防げる。

また、噛むことは脳を活性化させ、老化を予防するらしい。

 

棒体操と並んで、日々欠かさないのが、冷水摩擦

冬でも朝起きるとすぐ、水で濡らしたタオルで全身を拭くのだそうだ。

 

 一日一知。毎日何か一つ新しい知識を得る。

知ることは生きる喜びにつながる。その例の一つが、NHKラジオ講座。

語学を学ぶ楽しさに嵌られたようだ。

 

日記をつける

先生の場合、以前は韓国語で、最近は中国語でつけておられる。

ほんの数行でもいい。書くことが大切と。

 

口八丁、手八丁、足八丁、合わせて24丁

つまり、よくしゃべり、よく書き(今も巧みな筆使いである)、よく旅する。

これも健康の秘訣だと。

 

そして、ユーモア

笑顔、笑うことが何より大事。

 

 

休みなしの2時間弱の講演の間、ずーっと会場は笑い声に包まれていた。

 

 

 講演が始まる前に、主催者の一人Tさんの計らいで、楽屋で先生にお会いしたが、

間近で見る先生は、血色もよく本当に生き生きとした表情をなさっていた。

会話もぽんぽんはずみ、聴力の衰えも全く感じられない。

私の方が聞き返したり、記憶が定かでなかったり…どちらが老人やら、

不思議な気分にさえなってしまった。

 

 

不思議といえば…縁の不思議を感じる。

昨日、案内してくださったTさんは、つい最近まで見ず知らずの人。

たまたま共通の友人がカナダにいて、そのカナダからのfaxで「私の友人をよろしく」と頼まれ、

ご親切に「もう佐世保には慣れましたか?」と電話をくださった。

そうして頂いた情報の中の一つが講演会だった。

 

学生時代以来、ン十年、全くお会いする機会もなかった先生とお話までできたのは、Tさんのおかげだし、そのTさんに私を紹介してくれたのは、海の向こうのカナダ人。

 

本当に縁って不思議だ。大事にしたい。


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2 コメント

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すごい!!! (mocci)
2008-10-13 20:35:03
希望と夢の湧くお話、本当に有難う!!驚くほどの、素敵な先生ですね!!私も今の自分に出来ることを頑張ろうと思います。そして健康な長寿のために、(棒体操は分からないし、冷水摩擦も勇気が出ないけれど)、よく噛み、よく書き、よくしゃべり、出来るだけ一日一知、そして笑顔で生活しようと思います。

素敵な縁に巡り合えるのも人徳だと思います!
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でしょう? (cosmos)
2008-10-13 22:49:56
スーパーマンのような先生です。

秘訣の数々も簡単なようでいて、はたして継続できるかと自問してみると、甚だ心もとない限りです。

唯一できそうなのは…笑顔かな?

それだけじゃあねぇ…

ところがね、今日本屋さんで立ち読みした「『もの忘れ』がなくなる本」によると、"笑うこと、そして退屈しないこと、それが脳と体には最高の御馳走だ"と書かれていましたよ。
ちょっと希望がわいてきた。。
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