佐世保便り

2008年7月に佐世保に移住。
海あり山あり基地あり。そしてダム問題あり。
感動や素朴な疑問など誰かに伝えたくて…

ペシャワール会

2010-05-18 | 平和
昨日、初めて福岡市にあるペシャワール会事務局を訪ねました。

ペシャワール会については多くの方がご存じだと思いますが、
1983年、中村哲医師のパキスタンでの医療活動を支援する目的で結成された会です。
しかし、今や中村医師は白衣を脱いで、工事現場監督に転職なさったかのよう

それは、現地で亡くなっていく多くの命が、きれいな水と食糧さえあれば失われることはなかった
という現実を目の当たりにされ、薬よりもまず水を…と思われたからです。

医療のかたわら井戸掘り事業を始め(以前読んだ本では確かその数1500以上と書かれていたような…)、
それだけでは終わらず、2003年からは、作物を収穫できる農地を回復するための用水路建設に着手。
今年2月、実に25.5kmにおよぶ用水路が完成!

かつて灰色一色だった砂漠地帯に緑の大地が蘇り、
故郷を捨て、難民とならざるを得なかった多くの民が戻り始めました。
緑の畑が広がり、その中に点在する民家、そして子どもたちの笑い声・・・

その成功の陰には、中村医師を支える日本人ワーカーや現地スタッフと住民、
そして、彼らへの賃金やすべての事業資金を提供し続けるペシャワール会の存在があるのです。


私がこの会の存在を知ったのは、20年くらい前でしょうか。
でも、実際に会員になったのは、3年ほど前、中村医師の講演を生で聴き、心打たれてからです。

その講演会に誘ってくれたSさん(埼玉県在住)が、今回所用で大分にやってきて、
「ペシャワール会事務局にも行きたいんだけど一緒にどう?」と再び誘われ、
喜んでOK、同行することになりました。

Sさんは、私とは親子ほども年齢差がありますが、それを全く感じさせない同じ目線で話せる方です。
軍国少女だった彼女は、敗戦と同時に目覚め、その時の悔しさと、平和を手にした喜びとを、
ずーっとそのまま持ち続け、今も少しも褪せることなく暮らしています。

新聞や本をよく読み、講演会に出かけ、デモに参加したり、裁判の原告人になったり、
平和な社会を守り創るために自分にできることはないか、常に考え行動する人です。

そんな彼女が特に応援していたのがペシャワール会の活動で、
会費を払ったり本を買ったりする以外にもっと何かできないかしら…と考えていました。

その機会が今年3月やってきました。
Sさんが所属する『憲法を読む会inにいざ』が地域の9条の会にも呼び掛けて、
「平和へのコラボレーション」と題するイベントを企画。
DVD『アフガンに命の水を』(ペシャワール会活動の記録)の上映と
アーサー・ビナードさんの講演をすることになり、
彼女は、ペシャワール会との窓口になり、準備に奔走しました。

DVDを上映するだけでなく、現地ワーカーだった人も招いて直接話を聞くことも企画、
100名を超す参加者が集い、大盛況となりました。
ペシャワール会へのカンパもたくさん集まり、
その上もっとワーカーの話を聞きたいとの声も寄せられ、
翌月の『憲法を読む会』の例会で、再びワーカーのお話を聴く場を持つことになったとのこと、
その反響の大きさが窺えます。

Sさんは、そのイベントの時の写真と、報告や感想を記した会報などを携えて、
お礼かたがた事務局を訪ねたいと思ったのです。

私も、『憲法を読む会inにいざ』の元メンバーとして、
イベントの成功も、ペシャワール会へ寄与できたこともとても嬉しく、
SさんやOさん、その他関係者の皆さんに心から「おめでとう!そして、ありがとう!」
と言いたい気持ちでいっぱいです。

さて、1年ぶりに会った私たちは、ゆっくりお昼を食べて、積もる話をした後、
地図を片手に天神から大名町のほうへ歩いて行き…
一度も迷うことなく目的地に辿り着きました。エッヘン!
(事務所の方の話では、福岡市の人でもたいてい途中で迷子になるとか)

事務所は、スタッフやボランティアなど14,5名の方々でいっぱいでした。
ボランティアの皆さんは、葉書の宛名書きをしていました。
その葉書は、会費が入金されたことを伝えるお礼の葉書のようでした。

Sさんが訪問の趣旨を伝えると、皆さんは温かく歓迎してくださいました。
もちろん、遠い埼玉県からの客人だから…ということもあるでしょうが、
「新座市の…」と聞いて皆さん「ああ、あの…」という反応が返ってきたのです。

「?」と思っていたら、
ここ最近、新座市からの入会者が急増しているらしく、
あのイベントが大成功だったに違いない…と職員の方々も想像なさっていたようです。
だから、Sさんが持参した写真や資料を、とても喜んで見て下さいました。

Sさんと私は、皆さんと共に、最新の現地報告ビデオを見せて頂きました。
その後、ワーカーのMさんが、アルバムやパソコンに保存されたたくさんの写真を開いて、
いろいろ教えて下さいました。

「何でも訊いて下さい」と言われ、知りたがり屋の私はついついいろんな質問をしてしまいました。
現地の気温のこと、女性たちの暮らしぶりのこと、事業費用のこと、護岸や河口堰の工法について等々。
Mさんはそのどれにもきちんと真面目に答えてくださって、わからないことは他の人に尋ねたりして、
本当に親切に誠実に対応して下さいました。

印象的だったお話は、

・現地労働者への支払いは、職種の別なくほぼ同額支払われ、1人200アフガニー(約400円)
 一日に約550人働いているから、合計22万円が日々支出されるってこと。
 
ということは…年間、8030万円ですよ!用水路建設事業の人件費だけで…すごい!
これがみんなペシャワール会会員の会費や寄付でなりたっているのですから…す、すごい!
他にも医療関係の費用や、膨大な建設資材など、もっともっと支出は膨大な額になるでしょう。
だから中村医師は、帰国なさっている時は全国を飛び回って講演活動に努めていらっしゃるのかも…
・夏の気温は最高50℃くらいになるとか…
 熱いと言うよりも「痛い」という表現の方がぴったりくるそうです。
 そして、夜でも30度を超える暑さが続くという。。
 (私にはとても耐えられそうにない)

・診療所では、男性の日と女性の日が別々に設定されている

・女性だけでなく男性も人前で裸になることに抵抗が強く、衣服の上から聴診器をあてる
・まっすぐ植えていく日本の田植え方法を教えても、アフガンの人々は苗を適当に投げて植える

・ソバや茶、大豆などいろんな作物を試してみたが、やはり、その地に元々植えられていた作物がよい。

・クナール河は夏と冬では水量が大きく異なり、その高低差は4~5mにも及ぶらしい。
 だから堰を造って冬でも取水できるようにしなければならない。

・その斜め堰は筑後川の山田堰をモデルとし、用水路の護岸法も蛇籠工法で柳を植えるなど、
 日本の江戸時代の川造りの知恵が取り入れられている。

などなど、興味深い話はいつまでも続き、もっともっと聞きたかったけれど、
残念ながらバスの時間が迫ってきました。
いつかまた、今度はたっぷり時間をとって聞きに行きたい…


石木ダム問題に関わるようになって、水や川の大切さを感じてきましたが、
この日、あらためて感じました。
私たちはどれほど水に恵まれた生活をしているか、
それなのに、それ以上の水を求めて、欲望のままに自然を破壊しようとしている愚かしさ…

昨年5月の号外会報で中村医師は、次のように述べておられます。


「自然は決して過剰な要求をしない。
 『過酷な自然』とは、人間側が欲望の分だけ言うのであって、
 自然を意のままに操作しようとする昨今の風潮は思い上がりである。
 インダス川の支流、クナール河は簡単に制御できるものではない、
 殊に取水口の建設は、人為と自然の危うい接点であり、
 「少しばかりお恵みください」という姿勢がなければとても成功するものではなかった。
 遊水地や護岸法の着想もそうで、古人は自然を制御するのではなく、
 同居する知恵を活かしたのである」


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4 コメント

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Unknown (そんな)
2010-05-20 21:54:34
私も石木ダムやプルサーマルに反対に関わっています。もちろんペシャワール会にも。中村先生が現地ワーカーに薦められていた本「日本の米」を読み、感動しました。一緒にがんばりましょう。月曜日は16時過ぎに会に行きましたのですれ違いだった?お会いしたかったです。
返信する
びっくり! (cosmos)
2010-05-21 00:01:57
16時過ぎにいらしたのですか?
私たちが事務所を出たのは、たぶん17時少し過ぎだったと思いますが…
私たちはMさんの説明に一生懸命耳を傾けていたので、人の出入りにも気付かなかったし…
あるいは、ちょうどボランティアの方々とスイカを食べていた時だったら、私たちもボランティアのメンバーと思われていたかも…。
石木ダム反対運動にも関わっていらっしゃるんですか?では、どこかでお会いしているかもしれませんね。
長崎県内の方でしょうか?
今月末(5/29)のホタル祭りにはいらっしゃいますか?
お時間があったら是非・・・!
返信する
Unknown (sonnna)
2010-05-26 18:43:59
私は福岡の者で、原さんや松原さんに教えてもらって、石木ダムの事を知りました。まだ一度も現地を訪問したことはありませんん。
立木トラストの私の木もみたいとは思っているのですが・・。
ペシャワール会はボランティアで作業を別の部屋でしておりました。
29日は棚田保全の田植えで残念ですがいけません。
返信する
ありがとうございます (cosmos)
2010-05-27 06:45:50
sonnnaさん、立木トラストへのご協力ありがとうございます。
原さんや松原さんからということでしたら、昨年12月福岡での「水のシンポジウム」で、お会いしていたかもしれませんね。
松原さんにはあの日初めてお目にかかりましたが、後日署名をたくさん集めて送って下さいました。原さんは現地でたいへんご尽力なさっていましたし、私もいろいろ教えて頂きました。とても感謝しております。お二人にどうぞ宜しくお伝えくださいませ。
29日は田植え、頑張って下さい。
いつかどこかでお会いできる日がくることを楽しみにしています。
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