まど・みちおさんの死を、新聞各紙が大きく報じていた。
「ぞうさん」 「一ねんせいになったら」 「ふしぎなポケット」など、
懐かしい、誰もが知っている歌の詩を書いた童謡詩人。
私の大好きな詩人、谷川俊太郎さんが唯一のライバルと言っているのを知った時、
ふ~ん…と思っていた。
5~6年前に、まど・みちおさんのこの詩に出会って、
私も、やっとわかった気がした。
さくらの はなびら
えだを はなれて
ひとひら
さくらの はなびらが
じめんに たどりついた
いま おわったのだ
そして はじまったのだ
ひとつの ことが
さくらにとって
いや ちきゅうに とって
うちゅうに とって
あたりまえすぎる
ひとつの ことが
かけがえのない
ひとつの ことが
この広い宇宙で、かけがえのないたった一つの存在、たった一つの命、
その素晴らしさ、尊さ。
それに気づいたまどさんだからこそ、こんな詩が書けた。
うさぎ
うさぎに うまれて
うれしい うさぎ
はねても
はねても
はねても
はねても
うさぎで なくなりゃしない
うさぎに うまれて
うれしい うさぎ
とんでも
とんでも
とんでも
とんでも
くさはら なくなりゃしない
嬉しいのは うさぎだけじゃない
すべての生き物が 自分の命を生きる喜びを感じている
私たち人間も 本来はそうであるはず…
と、まどさんは信じていた…のかな?
くまさん
はるが きて
めが さめて
くまさん ぼんやり かんがえた
さいているのは たんぽぽだが
ええと ぼくは だれだっけ
だれだっけ
はるが きて
めが さめて
くまさん ぼんやり かわに きた
みずに うつった いいかお みて
そうだ ぼくは くまだった
よかったな
わたしがわたしであることを
わたしも「よかった」と思いたい…