民意
「民意を無視する職員は大阪市役所から去ってもらう」
昨夜新市長に決まった橋本徹氏は、こう語った。
民意を大切にする首長の誕生は嬉しい。
世の中、民意を大切にしないトップや官僚や政治家が多いから。
でも、民意って何だろう。
投票率の大幅アップ。
その中で大差をつけて勝利した橋本さん。
それは確かに大阪市民、府民の民意。
大阪の民は、今のままではイヤだ、大阪を変えたい、何とかしてほしい、
それができるのは橋本さんだ…と考えたという民意、それは間違いない。
だから、市役所職員は、市民が選んだ橋本さんを支えて、
市役所の改革に励むべきだろう。
でも、橋本さんを市長として選んだこと、イコール、
橋本さんの政策のすべてに賛同しているとは言えない。
私が大阪市民なら、迷っただろう。
脱原発のエネルギー政策には大賛成。「どんどんやって!」と支持したい。
が、教育基本条例案には「ちょっと待って!」と言いたい。
君が代斉唱の押し付け、
成果の出せない教員はクビ、
教育目標は知事が定める!?
こんな強権的なやり方を教育現場に持ってくるなんて、絶対反対。
大阪都構想?
まだよく理解できてないけど、行政のムダが省かれそうで、良さそう…
つまり、仮に私が橋本さんに1票を投じたとしても、
私は橋本さんや「大阪維新の会」の政策のすべてに賛同したわけではない。
そこのところを、橋本さんは勘違いしないでほしい。
新知事と二人三脚で、これからいろんな改革改変に着手していかれるのでしょうが、
その都度、民意にはしっかり耳を傾けてほしい。
ファシズムならぬハシズムという声もすでに聞こえてくる。
自分の意見はすべて民の意見などと思いこみ、議会や民に押し付けを始めたら、
それこそ貴方も「民意を無視する」首長として、
「大阪市役所から去ってもらう」しかありません。
なんて、大阪市民さんも思っているのでは?
これだけ強いリーダーシップのある人を選んだのですから、
市民も負けずに、しっかり民意を伝えていってほしい。
また、民意が常に正しいわけじゃない。
間違った情報、偏った情報から生まれる民意は、とても危うい。
作られた民意もある。
一昨日の毎日新聞によると、
八ッ場ダムのパブリックコメントで、
寄せられた意見の約96%が同一文書に署名だけ手書きしたものだった。
「八ッ場ダムは必要不可欠」などと印刷され、
ダム推進派が組織的に署名を呼びかけた可能性が高い。
寄せられた5963件のうち5739件は全く同じ内容だった。
「八ッ場ダムは利根川水系における治水、利水の安全度を高める対策として、もっとも現実的、かつ確実に効果を見込める事業」
「速やかにダム本体工事に着手し、計画通りに事業を完成すべきだ」
などと推進を求める意見がパソコン文字で印刷されており、署名だけが異なっていた。
パブコメは10月6日~11月4日に全国から募集。
集まった5963件のうち埼玉県在住者の意見が5738件に上っており、
同一文書の大半は同県在住者が寄せたとみられる。
パブコメもまさに民意。
国交省の結果欄を見ると、96%以上の民が、早期のダム建設を望んでいるのだな
と受け止められるだろう。
1都5県に関わりのある八ッ場ダムなのに、
民意の96%は埼玉県民から。
しかも、そのほとんどが同一文書。
同じ理由でダムを早く造ってほしいと。
1字1句違わずに。
違っているのは、名前だけ。
誰かが原文を作り、後はそれに従っただけ。
これも民意と見做されるのだろうか?
埼玉県知事が強固な八ッ場ダム推進者だということは知っているが、
私の知り合いの中に推進者は一人もいない。
(30年間埼玉県民だった私の周りの人たちは、皆反対だった)
九電のヤラセメールよりも大胆な手口。
こんなヤラセパブコメが通用するのか!と唖然とするが、
それが現実…。
未来を良くするのは、
たった一人の英雄や、強いリーダーの存在ではなく、
私たちの民意、一人ひとりの意識にかかっている。