佐世保便り

2008年7月に佐世保に移住。
海あり山あり基地あり。そしてダム問題あり。
感動や素朴な疑問など誰かに伝えたくて…

有識者会議の中間提言に批判の嵐

2010-07-16 | 石木ダム

13日、国土交通省の有識者会議がまとめた提言、ダム事業検証の判断基準案について、

批判の嵐が巻き起こっています。

 

それって何?と、あまり関心のなかった方も、是非耳を傾け、いえ目を通してみてください。

そして、思い出してください。

昨年夏、熱い選挙戦の末生まれた新政権は、

「コンクリートから人へ」という心地よい響きのメッセージを発しましたね。

ダムや道路、空港など建造物の大型公共事業に税金を費やすのではなく、

これからは福祉や教育に予算を回し、人に優しい政治をしたいとの決意表明。

私たちはもろ手を挙げて賛同しました。

 

国土交通大臣の前原さんは、即ダム建設の見直しを訴え、

八ッ場ダムや川辺川ダムの凍結を明言しました。

しかし、その後の推進派による巻き返しは凄まじく・・・

メディアも含め前原バッシングが続き、彼の発言もだんだんトーンダウン。

それでも、有識者会議なるものを立ち上げ84のダムを見直し対象としました。

そして、どのような基準で見直すのか、その検証作業の判断基準となるものを同会議で論議、

その中間提言が予定通り今月出されたというわけです。

 

私たちは期待と不安を抱きながら、その発表を待っていたのですが・・

中身は全くお粗末と言わざるを得ないものでした。

 

その内容とは・・

1.事業の点検

 国が事業主である直轄ダムや道府県が事業主である補助ダムなどについて、総事業費や工期、過去の洪水実績など事業計画の前提となっているデータを詳細に点検する
 
(点検をするのは当然ですが、事業主体者がするの?)

2.治水対策案の立案

 ダム以外の方法による治水対策案を2~5通り作成し、その際は、以下のような方策を参考にし、それらを組み合わせて検討する。

 (1)ダムの有効活用(2)遊水地(3)放水路(4)河道の掘削(5)引堤(6)堤防のかさ上げ(7)河道内の樹木の伐採(8)決壊しない堤防(9)決壊しづらい堤防(10)高規格堤防(11)排水機場(12)雨水貯留施設(13)雨水浸透施設(14)遊水機能を有する土地の保全(15)部分的に低い堤防の存置(16)霞堤の存置(17)輪中堤(18)二線堤(19)樹林帯(20)宅地のかさ上げ、ピロティ建築(21)土地利用規制(22)水田の保全(23)森林の保全(24)洪水の予測、情報の提供(25)水害保険。

3.対策案の評価

 各案を(1)安全度(被害軽減効果)(2)コスト(3)実現性(4)持続性(5)柔軟性(6)地域社会への影響(7)環境への影響(8)流水の正常な機能の維持への影響―の8項目で評価し、多目的ダムは利水の観点からも検討する。
 検証に際しては、コスト(完成に要する費用だけでなく、維持管理費やダム中止に伴う費用も考慮)を最も重視する。
 (なぜ環境よりもコストなのでしょう。環境破壊こそ最も高コストの結果になるはず…)

4.透明性の確保

 検証の際には、関係自治体で構成する「検討の場」を設置し、公開で審議し、学識経験者や関係住民などの意見を聞く。
(検証する大役を担うのが関係自治体の人たち?!住民や学識経験者はそこで意見を述べるだけ!?)

5.報告と国交相判断

 事業主体者は検証の結果、事業を継続するか中止するかの対応方針と理由を国交相に報告し、国交相は、検証が手順に沿って行われたかどうか有識者会議の意見を聞いた上で、各事業の対応方針を決定する。検証が手順に沿っていない場合、国交相は事業主体に再検証を指示または要請する。
 
(手続きだけが問題なのか…)

 

皆さん、どう思われますか?

そのダム事業が適正かどうか、事業主体者自身(そのダムを計画し完成したいと願う立場の者、補助ダムならば県とか府とか)が検証して判断するなんて、どう考えてもおかしいですよね?

 

例えば・・・テニスやバレーボールなどの国際試合で審判を務めているのは、

必ず他国の審判員ですよね。

どっちかの国の人が審判するなんて考えられませんよね。

 

こんなアンフェアなやり方で適正な検証ができると有識者の皆さんは本気で考えたのでしょうか?

以前この有識者会議でヒアリングを求められた嶋津氏(「水源連」共同代表)は、

「会議のメンバーは河川行政を変えたいという意識を持っていた」しかし
「実務能力がなく河川官僚がつくったシナリオに踊らされてしまったのだろう」
「こんな手続きで進めるなら、ほとんどのダムにお墨付きが出るだろう」
と危惧しています。

 

また、このような結論に導いたのは、「有識者会議が非公開だったから」と言うのは、

国交省河川局で長らくダム建設にあたった宮本博司氏。

彼は退職後、淀川水系流域委員会に参加していますが、

2005年、この委員会は大戸川ダムの建設中止という画期的な提言をしました。

それが可能になったのは、「住民参加」と「公開」という大原則があったからだそうです。

「治水を考えるのは、国の姿や住民の命をどう考えるかということ。

それが密室で話し合われたことが残念だ」と、宮本氏は嘆きます。

 

今回の提言でも「公開」と「住民に意見を聞く」とは言っていますが、

その意味は、住民市民が検証作業自体に参加するわけではなく、ただ「聞き置く」だけ

言わせてあげるけど、その意見を取り入れるかどうかはこっちの判断ですからね~

と事業主体者の天下。

 

また、ダムに代わる25の方法も目新しいものは何もなく、従来通り。

「今さら8か月もかけて議論して出すほどの内容ではない」と、

藤原信氏(宇都宮大名誉教授)の感想も手厳しい。

「森林整備のほうがより安く治水効果もある。

老朽化したダムは将来、撤去しなければならない。

費用は莫大で産業廃棄物を処分する場所の確保も必要となる」

 

さらに、コストを最重要視するという点も気がかりです。

事業者の言い分はいつも「すでに○○の金を投じてきた。これを白紙に戻せばそれがすべてムダになるだけでなく、原状回復への新たなお金や住民への補償など莫大なコストが生じる」でした。

この言い分にお墨付けを与え、ダム推進の免罪符を与えるようなものだと専門家たちは言います。

 

石木ダムの場合、事業主体である長崎県の中村知事は、次のようにコメントしました。

「これまでいろんな代替案なども検討した上で石木ダム建設いう方向性に結びついた。全く新たな手続きで検証作業が出てくることではないと思う」

河川課の西田課長は、こう述べました。

「委員会でこれまで治水の代替施設を検討してきた。必要性は変わらない。検証しても見直すことにならないのではないか」

また、佐世保市水道局の田中事業部長のコメントもほぼ同じでした。

「これまで代替案を検討した上で石木ダム以外にないということで事業認定を申請してきた。ダムが必要という方向性は変わらない」

 

そして、昨日ばったりあった佐世保市議さんは、いきなり、

「新聞読みました?あれはないよね~。半年以上もかけてあんな内容じゃあね」と。

彼はダム推進派です。といっても、真剣に佐世保の水問題を考えている議員さん。

今のこう着状態を打開できるような新しい指針が示されるのでは…と少し期待なさっていたようで、

「これじゃあ今までやってきたこととなんら変わりないし、反対派でなくてもあきれますよ」と。

 

 

これらのコメントを、有識者の皆さんは、どのように受け止めるのでしょう?

それでもまだ、適正な検証ができると断言なさるでしょうか?

前原大臣は有識者会議のこの提言をすんなり受け入れるのでしょうか?

 

今ならまだ間に合います。

今日16日、前原大臣は、この見直し案について一ヶ月間意見を公募すると言いました。

集まった意見を基に、9月をめどに基準をまとめ、それぞれのダムの見直し作業に入るそうです。

http://www6.river.go.jp/riverhp_viewer/entry/resource/y2010e548b916bc9c018cb393976475cb9c8ef06f25728/%E6%84%8F%E8%A6%8B%E5%8B%9F%E9%9B%86%E8%A6%81%E9%A0%98.pdf

提出先は以下の通りです。


  国土交通省河川局河川計画課
  今後の治水対策のあり方に関する有識者会議事務局宛

    ①郵送の場合:〒100-8918 東京都千代田区霞が関2-1-3

    ②FAXの場合:03-5253-1602

    ③電子メールの場合:chisuinoarikata@mlit.go.jp
    (件名に、「中間とりまとめ(案)に関する意見」と明記する)

 

前原大臣が初心に沿った決断をされることを願って、私たちの声を届けませんか?

あなたの素朴な思いを送ってみませんか?

もしも、あなたも、この提言に納得がいかないならば・・

 

 

コメント (2)
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