昆虫写真家、栗林慧さんをご存じですか?
「アリになったカメラマン」という異名を持つ、アリの目線で昆虫や草花を写すカメラマン。
「虫の目レンズ」を開発して、それまで誰も見たことのない昆虫の世界を撮り続けて40年。
素敵な銀髪のかっこいい紳士です。
栗林さんの作品は以前テレビで見てびっくりした記憶がありますが、そのすごいカメラマンがすぐ近くの平戸市にお住まいだったとは・・・昨日の講演を聴きに行って初めて知りました。
大きなスクリーンいっぱいに映し出された昆虫たちは、とても迫力があって、その上愛嬌があって・・・私が苦手とするカマキリさえも可愛く感じてしまいました。
そして、栗林さんの解説は、わかりやすく、おもしろく、満席の会場は感嘆や驚きの声に何度も包まれ、みんなが心から楽しんでいるのが伝わってきました。
しかし、昨日の感動はそれだけではありませんでした。
それは、講演が始まる直前のことです。
一人のおじさん(70代くらい?の方)がステージの真下に歩み出て、声をあげました。
「皆さん、私は主催者ではありません。一般の観客です。
しかし、私は皆さんにお願いがあります。
私はこの前、ここで長崎県立大学主催の講演会を聴きにきました。
講演会が始まる前に、司会者は3回も携帯の電源を切るよう注意しました。
しかし、講演中、5回も携帯が鳴りました!
皆さん、恥ずかしいと思いませんか!
今日はぜったいそんなことがないようにしてください。
もう一度しっかり確認して電源を切って下さい。
この前の主催者は注意もしませんでしたが、私は許せません。
これだけ言って、一回でも鳴らしたら、私がその人の所へ行って、
会場から引きずり出します」
やや乱暴な口調でしたが、その真意は多くの人に伝わり、拍手がおこりました。
私も、心から拍手しました。
彼が話していた講演会は、11月25日に行われた長崎県立大学開学記念特別講演で、
浅井信雄氏による「いま世界はアジアの時代」というものでした。
開演前に司会者がしつこいくらい注意したにもかかわらず、浅井氏の話が始まってすぐに、
左前方から携帯の呼び出し音がかなり長めに鳴り響きました。
携帯の扱いに不慣れなお年寄りだろうか?誰か周りの人が切ってあげればいいのに…
と私は思ってました。
その5分後くらいに、また同じ方角から聞こえてきました。
なぜ?と思い、誰もがそちらのほうへ顔を向けています。壇上の浅井氏も。
そのようなことが、なんと5回も繰り返されたのです。
本人の非常識はもちろんですが、周りの人はどうして何も注意しないのだろう。
また、ホールの出入り口には腕章を巻いた主催者側のスタッフが立っているのに、
なぜ彼らは携帯の持ち主をそのままにしておくのだろう?と不満がこみ上げてきたころ、
ついに浅井氏本人が壇上から注意しました。
「先ほどから携帯の音が響いてみんなが迷惑しています。電源を切って下さい」
と、冷静な声の中にも不快感ははっきりと感じ取れました。
私は恥ずかしくなりました。
国際政治の話を聴きにくるような人でも、こんな簡単なルールが守れないなんて…。
浅井氏は佐世保市民のマナーの悪さにあきれて、もう二度と講演に来てくれないのではないか…。
講演が終わったら、何も対処しなかったスタッフに抗議しようと思いました。
でも、終了後の人ごみの中で彼らの姿は見当たりませんでした。
また、私は探そうともしませんでした。
帰宅後、明日になったら長崎県立大学に電話しようと思いました。
でも・・・、そのまま忘れてしまいました。
そして、昨日の講演会で、あのおじさんが呈した苦言で思い出したのです。
私は、言うべきことを言う勇気に欠けていました。
ルール違反、マナー違反の人を見ても、それで迷惑している人や困っている人を見ても、
誰かが注意してくれるのを待っていることがほとんどです。
そして、そのような苦い思いも、時がたてばすぐに忘れてしまいます。
でも、あのおじさんは忘れていなかった。
怒りと恥ずかしさをしっかり受け止めて、行動をおこして下さった。
おじさんの気合いの入った呼びかけは、みんなの心に届きました。
名前も知らないおじさん、ありがとう。
あんなにかっこいいことは私にはできないけど、
言うべきことを感じたら口に出す勇気を持ちたいと思います。
はじめは蚊の鳴くような声かもしれないけれど、
何も言わなければ、何も感じなかったことと同じになってしまいますから。
「アリになったカメラマン」という異名を持つ、アリの目線で昆虫や草花を写すカメラマン。
「虫の目レンズ」を開発して、それまで誰も見たことのない昆虫の世界を撮り続けて40年。
素敵な銀髪のかっこいい紳士です。
栗林さんの作品は以前テレビで見てびっくりした記憶がありますが、そのすごいカメラマンがすぐ近くの平戸市にお住まいだったとは・・・昨日の講演を聴きに行って初めて知りました。
大きなスクリーンいっぱいに映し出された昆虫たちは、とても迫力があって、その上愛嬌があって・・・私が苦手とするカマキリさえも可愛く感じてしまいました。
そして、栗林さんの解説は、わかりやすく、おもしろく、満席の会場は感嘆や驚きの声に何度も包まれ、みんなが心から楽しんでいるのが伝わってきました。
しかし、昨日の感動はそれだけではありませんでした。
それは、講演が始まる直前のことです。
一人のおじさん(70代くらい?の方)がステージの真下に歩み出て、声をあげました。
「皆さん、私は主催者ではありません。一般の観客です。
しかし、私は皆さんにお願いがあります。
私はこの前、ここで長崎県立大学主催の講演会を聴きにきました。
講演会が始まる前に、司会者は3回も携帯の電源を切るよう注意しました。
しかし、講演中、5回も携帯が鳴りました!
皆さん、恥ずかしいと思いませんか!
今日はぜったいそんなことがないようにしてください。
もう一度しっかり確認して電源を切って下さい。
この前の主催者は注意もしませんでしたが、私は許せません。
これだけ言って、一回でも鳴らしたら、私がその人の所へ行って、
会場から引きずり出します」
やや乱暴な口調でしたが、その真意は多くの人に伝わり、拍手がおこりました。
私も、心から拍手しました。
彼が話していた講演会は、11月25日に行われた長崎県立大学開学記念特別講演で、
浅井信雄氏による「いま世界はアジアの時代」というものでした。
開演前に司会者がしつこいくらい注意したにもかかわらず、浅井氏の話が始まってすぐに、
左前方から携帯の呼び出し音がかなり長めに鳴り響きました。
携帯の扱いに不慣れなお年寄りだろうか?誰か周りの人が切ってあげればいいのに…
と私は思ってました。
その5分後くらいに、また同じ方角から聞こえてきました。
なぜ?と思い、誰もがそちらのほうへ顔を向けています。壇上の浅井氏も。
そのようなことが、なんと5回も繰り返されたのです。
本人の非常識はもちろんですが、周りの人はどうして何も注意しないのだろう。
また、ホールの出入り口には腕章を巻いた主催者側のスタッフが立っているのに、
なぜ彼らは携帯の持ち主をそのままにしておくのだろう?と不満がこみ上げてきたころ、
ついに浅井氏本人が壇上から注意しました。
「先ほどから携帯の音が響いてみんなが迷惑しています。電源を切って下さい」
と、冷静な声の中にも不快感ははっきりと感じ取れました。
私は恥ずかしくなりました。
国際政治の話を聴きにくるような人でも、こんな簡単なルールが守れないなんて…。
浅井氏は佐世保市民のマナーの悪さにあきれて、もう二度と講演に来てくれないのではないか…。
講演が終わったら、何も対処しなかったスタッフに抗議しようと思いました。
でも、終了後の人ごみの中で彼らの姿は見当たりませんでした。
また、私は探そうともしませんでした。
帰宅後、明日になったら長崎県立大学に電話しようと思いました。
でも・・・、そのまま忘れてしまいました。
そして、昨日の講演会で、あのおじさんが呈した苦言で思い出したのです。
私は、言うべきことを言う勇気に欠けていました。
ルール違反、マナー違反の人を見ても、それで迷惑している人や困っている人を見ても、
誰かが注意してくれるのを待っていることがほとんどです。
そして、そのような苦い思いも、時がたてばすぐに忘れてしまいます。
でも、あのおじさんは忘れていなかった。
怒りと恥ずかしさをしっかり受け止めて、行動をおこして下さった。
おじさんの気合いの入った呼びかけは、みんなの心に届きました。
名前も知らないおじさん、ありがとう。
あんなにかっこいいことは私にはできないけど、
言うべきことを感じたら口に出す勇気を持ちたいと思います。
はじめは蚊の鳴くような声かもしれないけれど、
何も言わなければ、何も感じなかったことと同じになってしまいますから。