ある音楽人的日乗

「音楽はまさに人生そのもの」。ジャズ・バー店主、認定心理カウンセラー、ベーシスト皆木秀樹のあれこれ

スターダスト (Stardust)

2007年08月05日 | 名曲

☆夏の星空☆

 
 
 
スターダスト(Stardust)
■作詞…ミッチェル・パリッシュ(1929年)
■作曲…ホーギー・カーマイケル(1927年)
スターダスト(ナット・キング・コール)


 アメリカのポピュラー・ソングを代表する傑作です。こんなに美しい曲はめったにない、と言っていいでしょう。1965年にリーダース・ダイジェスト誌が読者の最も好きな歌を調査したところ、アメリカの歌のトップがこの「スターダスト」だったということです。


 弁護士になってマイアミに法律事務所を持ったホーギー・カーマイケルは、1927年のある夏の夜、母校であるインディアナ大学の構内で、星空を仰ぎながら学生時代に「大学の女王」と呼ばれたドロシー・ケイトの想い出に浸っていました。美しいドロシーは、ホーギーの恋人だったのですが、ホーギーが故郷を離れてフロリダやニューヨークなどで数年を過ごしているうちに、待ちきれなくなった彼女は他の男性と結婚してしまったのです。


     
     ホーギー・カーマイケル


 星空の下でそのドロシーの面影を追っているうちに、ホーギーはこの曲のメロディーを思い浮かべたといいます。彼は近くのカフェ「ピートの店」に駆け込み、そこにあった古びたピアノを使ってメロディーをまとめました。
 ホーギーの学友だった作詞家のスチュアート・ゴーレルはこの曲を聴き、「夜空に星屑の降るような感じがする」と言って、曲を「スターダスト」と名づけました。


 1927年10月、ホーギー自身はエミール・サイドル・オーケストラとともにこの曲を録音しましたが、当初は全く注目されなかったといいます。
 またホーギーは、この曲の譜面を知人のバンド・リーダーに渡していましたが、その譜面はのちアイシャム・ジョーンズ・オーケストラのヴァイオリニスト、ヴィクター・ヤング(後の映画音楽の巨匠)の手に渡ります。ヴィクターはこの曲のメロディーの美しさに惚れ込み、これをオーケストラ用に編曲、1930年に録音すると、これが大いに注目されることになりました。


     
     エラ・フィッツジェラルド


 1931年にはビング・クロスビーが歌ったレコードや、ルイ・アームストロングのレコードがヒットし、ようやく一般的な人気曲になりました。
 1940年に発表されたアーティ・ショウ・オーケストラのレコードは特に大ヒットしましたが、ショウ・オーケストラは初めてこの曲のテンポをゆるやかに設定、これがこの名曲の真価を発揮させたと言えるでしょう。それまではかなり速いテンポで演奏されていたんですね。発表されてから評価が決定的なものになるまで、実に10年以上の年月が費やされたわけです。


     
     フランク・シナトラ


 スタンダード曲のほとんどには「ヴァース」と呼ばれる、本編に入る前に語るように歌われるプロローグがあります。たいていは省略されるのですが、このスターダストのヴァースはまず省略されることがありません。ヴァースからしてこれほど有名なものも他に例を見ません。
 本編では、ホーギー自身が体験した失恋、そしてその想いを星屑とダブらせて一般的な失恋の哀しさが歌われています。


     
     ライオネル・ハンプトン・オール・スターズ『スターダスト』


 「スターダスト」はのちにナット・キング・コール、サラ・ヴォーン、カーメン・マクレエ、フランク・シナトラ、エラ・フィッツジェラルド、ライオネル・ハンプトンなど数多くのミュージシャンによって取り上げられ、「世界で最もよく聴かれる曲」にもなっています。
 あまりにもよく知られたこの曲、全部で3曲の同名異曲があるそうです。一番知られたホーギー・カーマイケル版は、ワン・ワードで「Stardust」とするのが正しく、「Star Dust」とするのは誤りなんだそうです。


【スターダスト】
そして今、黄昏時のほの暗さが私の心の草地に広がる
小さな星が空高く昇れば いつも私たちが別れたせつなさが思い出される
君はどんなに遠くに行ってしまったのだろう 君は去り歌はいつまでも残る
恋は今 昨日の星屑 音楽は過ぎ去った昔のものとなってしまった

時々私はどうして寂しい夜を過ごすのかと思う
夢に聴く歌 そのメロディーは私の夢想にまとわりつき
そして再び君とともにいるような気持ちにさせる
私たちの恋のはじめの頃は キスのひとつひとつがインスピレーションだった
しかしそれは昔のこと 今の私の慰めは歌の星屑の中にある
園の壁に寄り添い 星のきらめく時に君を抱けば
ナイチンゲールがバラの花咲く楽園の物語を語っていた
むなしく夢見る私だが 君への想いはいつまでも残り
私の星屑のメロディーは 恋の想い出となって繰り返されることだろう



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コメント (16)    この記事についてブログを書く
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16 コメント

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bugaluさん (MINAGI)
2007-08-07 09:01:36
ふむー、合体させると「スタンダスト」ですか~
ナニ?駄洒落はもういいって?失敬失敬~(^^;)
スタンダードの中のスタンダードと言えば、やっぱり「枯葉」か「スターダスト」が挙げられますね。
その「スターダスト」、なんて美しいメロディーで、なんてよくできた曲なんだろう、とぼくも思います。

>「筒井康隆断筆祭」における山下洋輔氏の演奏
 これは未聴ですが、「鼻血」で「悶絶」ですか!ちょっと食指をそそられますね~。しかもパンジャ・オーケストラまで・・・。
 情報ありがとうございます。「筒井康隆断筆祭」、古本屋さんに行った時は注意して探してみますね(^^)
 

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奇蹟的な名曲 (bugalu)
2007-08-06 23:18:38
スタンダード、と言う言葉から最初に連想するのは、やっぱりこの「スターダスト」ですよね!

スタンダード→スターダスト

・・・。

いや、そう言う音の連想ではナイです・・・(^_^;)

冗談抜きで、ワタシは本当に、「Stardust」は奇蹟的な名曲だと思います。世界には、この曲より美しい曲はナイ、と言うのが正直な気持ちです。

名演と言えば、個人的には、1994年の「筒井康隆断筆祭」における山下洋輔氏の演奏。
書籍のオマケCDとして(イヤ、書籍がオマケか?)ついて来たモノですが、美しさと躍動の同居って? ・・・こんなのアリ?って、何度聴いても思います。鼻血必然、悶絶名演。スバラシ過ぎ。

『筒井康隆断筆祭 全記録』なる書籍です。PANJAスイングオーケストラも聴けます。古本屋さんででも、見つけたら、速攻でゲットする事をお勧め致します。
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土佐のオヤジさん (MINAGI)
2007-08-06 22:44:12
やはりサラ、エラ、カーメンあたりの歌物は魂が洗われるようです~
歌詞が何かお役に立っているなら幸いです(^^)
オヤジさんはすでに夏バテでしょうか。夏はまだまだこれからですよ。
でもたしかに暑い時にはボサノバやジャズ・ヴォーカルが一服の清涼剤となりますよね。
今夜はぼくも何かジャズ・ヴォーカルを聴いてみようかな~
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只今聴いてます。 (土佐のオヤジ)
2007-08-06 20:44:20
今、サラ・ヴォーンのスターダストを聴いてます。
いつも、歌詞を載せてくれて、ありがとうございます。
歌詞を噛みしめながら、じっくり聴くと、心にしみますな。
今夜のオヤジの夏バテ回復のリハビリは、これに決まりです。
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カルロスさん (MINAGI)
2007-08-06 19:09:53
「スターダスト」、曲ができてからもう80年経ってるんですね。
オータサンというと、ウクレレの名手ハーブ・オータさんのことですよね。さっきちょっくら調べてみましたよ!
ウクレレのスターダスト、星の降る静かなハワイの夜のビーチって雰囲気ですか、なんだかとっても良さそうですね。探して手に入れてみようかなあ。
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けいさん (MINAGI)
2007-08-06 19:04:56
眠くなるのは良い音楽のしるし(笑)。ガチャガチャしてたら眠くなりませんもんね。
思うに、「スターダスト」は、ホーギーが失恋してから何年か経ってできた曲じゃないかと。失恋後すぐに書いた曲なら、もっと悲愴な感じになったんじゃないかなあ。きっと辛い痛みも思い出になって、それでもまだ少し胸の奥がチクッと痛む、そんな時にできた曲じゃないでしょうか。

「ブルース・ブラザーズ」、気に入りましたか~(^^)
あれ、バカバカしくて楽しくて、いい音楽満載だったでしょ?
これでけいさんも「ブルース・ブラザーズ・ファン」の仲間入りですね(^^)
アレサは、歌うまいし声量はあるし声域は広いしノリは抜群だし、どこをとっても最高ですよね~
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結構古いんですね。 (カルロス)
2007-08-06 16:07:01
1920年代に生まれた曲なんですね。
スタンダード中のスタンダードですね~。
僕はこの曲、オータサンのウクレレ・ソロの演奏がとびっきり好きです。メロメロでっせ。(^^)
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今 聞いていたら (けい)
2007-08-06 15:32:45
だんだん眠くなってきました(笑)
これは夜に聞くといいかもしれない、わたしの場合、眠れない夜にね。
災い転じて福となす じゃないけど、失恋がこんな素敵な曲を生み出したとすれば なにがきっかけで傑作が出来るかわかりませんね。
一枚目の写真がとても美しくて惚れ惚れしました!

ところで先日紹介していた「ブルース・ブラザース」どちらもレンタルして見て楽しんで、さらに今日は購入してしまいました。ときどき見ては一緒に身体を動かそうと目論んでおりまする(かなりノリノリで動けました!)。アレサ・フランクリンの歌にしびれましたー。
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オンデン1970さん (MINAGI)
2007-08-06 15:00:48
>シャボン玉ホリデーのエンディング
 分からなかったのでYouTubeに行って見てきました~(^^)
http://jp.youtube.com/watch?v=MzS-ITgRbfs

こうやって聴いてみると、ピーナッツのスターダスト、なかなか雰囲気ありますね。
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そっか~。 (オンデン1970)
2007-08-06 13:13:29
>全部で3曲の同名異曲があるそうです
私が知ってる「スターダスト」は、シャボン玉ホリデーのエンディングでザ・ピーナッツが歌うやつです。
…といっても若い方はご存じないでしょうけど。
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Nobさん (MINAGI)
2007-08-06 11:51:41
遅ようござります

>お得意の時代
 ああぁぁ、やっぱり言われてしまったぁぁ(^^;)

ウィリー・ネルソンのシブいスターダスト、一聴の価値ありかもですね~
ぼくはこれは歌入り、インストゥルメンタル、どちらでも大丈夫でございます。良い曲はどういうアレンジでも映えるよね。

>美人をほったらかしておくと~
 ホーギーに聞かせてやりたいですね、このセリフ。
 「ホーギー、お前がほったらかしにするのが悪い!」
 ま、そのお陰で名曲が誕生したんですからヨシとしましょう(^^)
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お歯用ございます。 (Nob)
2007-08-06 11:26:03
むふふ・・・ お得意の時代が出ましたね~(笑)
 
この曲はですね、ウィリー・ネルソンの歌も結構良いですよ~
ジャズでもいろいろ演奏されていますが、私は歌入りの方が好きな曲♪

美人をほったらかしておくと、
誰かに獲られるのは当然でございます。
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ジェイさん (MINAGI)
2007-08-06 10:47:36
おっ、ジェイさんもこの曲好きですか~(^^)
きっとホーギー・カーマイケルが見上げていた空も、今にも星屑が降ってきそうな、満天を覆う星空だったんでしょうね。

>思わず物語~
 ジェイさんもロマンチスト~(^^) 仲間だ仲間。

 やっぱり良い曲・美しい曲だからこそ聴き継がれ、演奏され続けているんでしょうね。この曲も80年の古さなんて感じさせない曲です。
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Dulgeさん (MINAGI)
2007-08-06 10:39:51
美しいし、夜空にとても似合う曲ですよね。

>人間が凝りもせず~
 少なくとも恋したり失恋したりするのは、芸術を創造する原動力になってますよね。それに恋や失恋は鑑賞する側のスパイスにもなってるし。
 中には「芸のこやし」として積極的に恋にはしるタイプの人もいますね~
 少なくとも「恋」と「芸術」の間には密接な関係があるってことですね。

ふーむ、Dulgeさんはシナトラもタイプなんですね。命短し恋せよ乙女~(^^) あ、乙女だったっけ・・・(汗)
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Unknown (ジェイ)
2007-08-06 09:49:16
この曲好きですね~。メチャメチャ美しいだけじゃなくて、曲のイメージとタイトルがピッタリで思わず物語作っちゃいたくなりますよね。
スタンダードって何故スタンダードになるのか解りますよね。ほんっと良い曲が多いです。
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ナットキングコール版を (Dulge)
2007-08-05 23:47:18
いまYouTubeで聴いてます。ホント、美しい曲ですね~
少し前の「Without You」を読ませていただいたときにも思ったのですが、人間が凝りもせず何度も恋したり破れたりを繰り返すのは、こうゆう美しい音楽や文学やいろんな芸術を造ったり味わったりする為なのかしらん?
このフランク・シナトラ、めっちゃ渋くてカッコイイですね

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