ある音楽人的日乗

「音楽はまさに人生そのもの」。ジャズ・バー店主、認定心理カウンセラー、ベーシスト皆木秀樹のあれこれ

ザ・トリオ/オスカー・ピーターソンの真髄 (The Trio)

2006年04月14日 | 名盤


  「オスカー・ピーターソン」。
 言わずとしれたジャズ界の巨匠のひとりです。
 今年81歳。ハンク・ジョーンズ(piano)や、ロイ・ヘインズ(drums)らと並ぶ、「生きたジャズの伝説」と言っても差し支えないミュージシャンのひとりですね。
 オスカーの演奏はとても明快なので、いわゆるジャズ初心者からジャズ通に至るまで、幅広く愛されています。そういう意味では、ビル・エヴァンス(pf)と共通するスタンスにある、と言えるかもしれません。
 ぼくもジャズを聴き始めた頃に、やっぱりオスカー・ピーターソンのCDを買って聴きました。


 オスカー・ピーターソン・トリオといえば、レイ・ブラウン(bass)、エド・シグペン(drums)と組んだものが最も有名です。
 つくづく思うんですが、この3人のコンビネーションは絶妙ですね。
 このトリオの主役は、「オスカーのピアノから紡がれる音楽」ですが、それは決して「オスカーの独り舞台、オスカーのワンマン・バンド」という意味ではありません。3人がそれぞれのスタンスでひとつの方向に向かって「音楽」を作り上げていこうとしているのです。


     


 オスカー・ピーターソンは深いクラシック・ピアノの素養を身につけていて、驚異的なテクニックを持っていますが、そのためかえって「黒っぽさが薄い」といった評価を下されることもあるようです。しかしライヴ・アルバムを聴くと、オスカーの音楽って、あくまで陽気にスウィングするものじゃないかな、と思ったりします。

  
 このアルバムには、1961年7月28~29日にシカゴの「ロンドン・ハウス」で行われたライヴが収録されています。
 この頃は、オスカー・ピーターソン・トリオの絶頂期といってもよく、脂の乗り切った名盤を他にもいくつも残していますが、このアルバムでは、ライヴで発揮される、文字通り「オスカー・ピーターソンの真髄」が詰め込まれているような気がするのです。
 

     

 「サムタイム・アイム・ハッピー」(Sometime I'm Happy)、「恋したことはない」(I've Never Been In Love Before)、「シカゴ」(Chicago,That Todding Town)などで味わえる軽快なスウィング感は、思わず体が揺れてしまうほど。
 あくまで明るく、華麗にかつ豪快に弾きまくるオスカーのピアノが楽しいですね。レイ・ブラウンのベース・ランニングは、コードの色彩感が豊かで、ドライヴ感にあふれています。オスカーとは、水を得た魚のような自然な相性の良さを感じます。また、レイと一体となってスウィングするエドのメロディックなドラムにも心踊ります。
 「サムタイム・アイム・ハッピー」で聴かれるレイのベース・ソロは、いわゆる「ホーン・ライク」(管楽器を吹くような感覚の演奏)なもので、とても歌心にあふれていると言えるでしょう。レイ・ブラウンの本領発揮、といったところです。


 「ウィー・スモール・アワーズ」(Wee Small Hours)や「夜に生きる」(The Night We Called It A Day)などのバラードでは、オスカーのきらびやかなプレイに浸ることができます。一音一音の粒がそろった、コロコロと転がるようなオスカーのピアノは美しく、とてもロマンティックです。


     
 
     
 とてもリラックスして楽しめるアルバムだと思います。
 プレーヤーの間近で胸をときめかせながら聴いてみたいような演奏です。もちろん、エレガントな美女をエスコートしている時にも、こういう演奏が聴きたいですね。



◆ザ・トリオ/オスカー・ピーターソンの真髄/The Trio
  ■演奏
   【オスカー・ピーターソン・トリオ】
    オスカー・ピーターソン/Oscar Peterson (piano)
    レイ・ブラウン/Ray Brown (bass)
    エド・シグペン/Ed Thigpen (drums)
  ■プロデュース
    ノーマン・グランツ/Norman Granz
  ■録音
    1961年7月28~29日 イリノイ州シカゴ、ロンドン・ハウス
  ■リリース
    1961年
  ■収録曲
   A① 恋したことはない/I've Never Been in Love Before (Frank Loesser)
    ② ウィー・スモール・アワーズ/In the Wee Small Hours of the Morning (Bob Hilliard, David Mann)
    ③ シカゴ/Chicago (Fred Fisher)
   B④ 夜に生きる/The Night We Called It a Day (Tom Adair, Matt Dennis)
    ⑤ サムタイムズ・アイム・ハッピー/Sometimes I'm Happy (Irving Caesar, Clifford Grey, Vincent Youmans)
    ⑥ ウィスパー・ノット/Whisper Not (Benny Golson)
    ⑦ ビリー・ボーイ/Billy Boy (Traditional)
  ■レーベル
    ヴァーヴ/Verve





コメント (2)    この記事についてブログを書く
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« リンカーン大統領 | トップ | ら・ら・ら »
最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
まとめて (ほとり)
2006-04-16 00:16:27
読みました^^リンカーンとケネディ、すごい偶然の重なりですね。ためになりました^^

偶然が3つ重なると必然と言いますが、神様はどんな理由で二人を暗殺させたのでしょうか・・。興味深いお話でした^^
ほとりさんこんばんは  (MINAGI)
2006-04-16 01:05:19
>リンカーンとケネディ

 夏の夜の話のネタにどうぞ(^^)

 かなり有名な話らしいですよ。

 

>偶然が3つ重なると必然

 え~。。。すると「あながち『たまたま』というわけではない」ってことなんでしょうか。

 あらためて背筋が少しゾクッとしてきました(^^;)

コメントを投稿

名盤」カテゴリの最新記事