ある音楽人的日乗

「音楽はまさに人生そのもの」。ジャズ・バー店主、認定心理カウンセラー、ベーシスト皆木秀樹のあれこれ

遠くで汽笛を聞きながら

2005年08月30日 | 名曲


 初めてギターを手にしたのは中学時代、という人は結構多いのではないでしょうか。「好きな曲を自分で歌ってみたい」と思ったりしたんですよね。  
 

 当時、フォークやロックなどを消化しながら歌謡曲と洋楽の中間に位置して圧倒的に支持されていたのが、「ニュー・ミュージック」と呼ばれていた一派です。彼らの全盛期の勢いはたいへんなものでした。 
 この「ニュー・ミュージック」に属するとされていたグループのひとつが、アリスです。


     


 まだまだマイナーな存在ではあったけれど、馴染みやすいメロディーと、青春期の若者の心情を代弁するかのようなシリアスな歌詞が受け入れられて、一部では非常に人気がありました。
 また、メンバーの谷村新司は、当時ブームだったラジオの深夜番組でディスクジョッキーも務めていて、その軽妙なしゃべりは、「深夜放送愛好族」にとても人気があったんです。  


 アリスの曲は、難しいコードがあまりなく、使われているのは簡単なコードばかりだったので、カポタストを付ければギターを手にしたばかりのぼくらにも簡単に弾くことができました。これもアリスに親近感を覚えた理由のひとつでしょうね。   
 そのアリスの曲の中で、ぼくたちに一番人気があったのが「遠くで汽笛を聞きながら」でした。「冬の稲妻」で彼らが大ブレイクするより前の作品です。 


 フォークそのものの初期の作品とは違い、この曲からは「ロックっぽい」感じを受けたものです。矢島賢の弾く伸びやかなエレキ・ギターのソロがとてもかっこよくて、エレキ・ギターを始めた友達の多くはこの曲をコピーしようとしていました。またこの曲のドラムのフィル・インが大好きで、当時ドラムを叩いていたぼくは一生懸命コピーした記憶があります。 
 ちょっぴり苦くて大人っぽい歌詞は、青春時代に入りかけて背伸びをしてみたかったぼくたちの心によく響きました。


     
     アリスV


 当時、「文化祭でアリスの曲を演奏しよう」、ということになり、同じクラスのメンバーでバンドを作ったのもいい思い出です。男4人女6人、計10人の大編成のバンドでした。
 名前覚えてるかなあ。アコースティック・ギター&ボーカルはタカギくんハシモトくん、サトウさんがアコースティック・ギターとコーラス、エレキ・ギターはマツオカくん。ボーカルとサックス、フルートにツカモトさん、ベースはフジイさん、ドラムスはぼくで、ピアノはシブヤさん、シンセサイザーにタカダさん、キーボードにヒョウドウさん。
 覚えてた覚えてた。(^^)
 何度も練習するうちに、ちょっとした恋バナが咲いたり、みんなで遊びに行ったり、打ち明け話をし合ったり。まさに青春でしたね~
 メンバーのうち、フォーク・ギターを弾いていたサトウさんの家は広かったので(水島臨海鉄道のとある駅近くの薬局でした)、そこに集まって練習したりしたなあ。
 ラジカセに録音するんですが、ライブ感を出そうとして曲が終わるとみんなで大きな拍手をするんです。これが結構悪ノリして大きな拍手を何十秒も続けたりするもんだから、サトウさんのお母さんがあきれて目を真ん丸にしていたのが思い出されます。
 
 
  

 このバンドの文化祭での演奏を録音したカセット・テープがぼくの部屋に残っています。
 今聴くと本当に恥ずかしくなるような音だけれど、なんともいえない懐かしさで胸がいっぱいになるんです。



     
       


【遠くで汽笛を聞きながら】
悩み続けた日々が まるで嘘のように     
忘れられる時が 来るまで心を閉じたまま     
暮らしてゆこう 遠くで汽笛を聞きながら     
何もいいことが なかったこの街で      

俺を見捨てたひとを 恨んで生きるより     
幼い心に秘めた むなしい涙の捨て場所を     
探してみたい 遠くで汽笛を聞きながら     
何もいいことが なかったこの街で      

せめて一夜の夢と 泣いて泣き明かして     
自分の言葉に嘘は つくまい人を裏切るまい     
生きてゆきたい 遠くで汽笛を聞きながら     
何もいいことが なかったこの街で



遠くで汽笛を聞きながら
  ■歌・演奏
    アリス
  ■シングル・リリース
    1976年9月20日

  ■プロデュース
    橋場正敏     

  ■作詞
    谷村新司    

  ■作曲
    堀内孝雄

  ■編曲
    篠原信彦
  ■録音メンバー
   <アリス>
    谷村新司(backing-vocal)
    堀内孝雄(lead-vocal, backing-vocal, acoustic-guitar)
    矢沢透(drums)
   <ゲスト>
    矢島賢(electric-guitar)
    高水健司(bass)
    篠原信彦(piano, organ)

  ■チャート最高位
    1976年週間シングル・チャート オリコン51位
  ■収録アルバム
    アリスV(1976年)



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4 コメント

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こんばんは! ()
2006-03-26 22:35:06
2005-08-30 22:33:46



「アリス」だ~い好きです。

‘遠くで・・・’も良いですが、

‘愛の賛歌’‘走っておいで恋人よ’も・・・

って、全部好きなんですが



語りだすと長くなるので、

また近い内に記事にしますね!



MINAGIさんの<お気に入り>に

入っていたことがとても嬉しいです~~

返信する
杏さんこんばんは☆ (MINAGI)
2006-03-26 22:35:52
2005-08-31 00:17:23



 アリス、好きでしたねぇ。ぼくは「ベストテン」の常連になる前くらいの作品が結構好きで、「さらば青春の時」なども大好きです。



 はじめて一曲通してジャカジャカとコードを弾くことができた曲が、アリスの「今はもうだれも」なんですよ、実は。

返信する
Unknown (TROSE)
2023-02-07 14:24:06
>フォークそのものの初期の作品……。
僕もリアルタイムでアリスを聴いていた十代の頃はそう感じていました。
しかし後に洋楽ロックを聴き漁ってから改めて聴き直すと、初期のアリスには当時のアメリカンロックからの影響を色濃く感じるのですよね。
谷村さんがどこかで言ってましたが、
「ウッドストックのリッチー・ヘブンスに衝撃を受けた」
と……。
パーカッションにアコギをかき鳴らし歌うスタイルからの影響は確かに「明日への讃歌」等の曲に見られます。
そう思って聴くと、アリスは当時のフォークグループと一線を画すアメリカンロックへの憧れを強く感じる音だなと思うようになりました。
今は初期アリスはロックだと思って聴いています。
返信する
TROSEさん (皆木秀樹)
2023-02-14 22:46:56
久しぶりに聴くと、当時は伝わってきていなかったものが感じられることはありますね。
自分の感じ方で聴くことって大事だと思います。
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