ある音楽人的日乗

「音楽はまさに人生そのもの」。ジャズ・バー店主、認定心理カウンセラー、ベーシスト皆木秀樹のあれこれ

毎日1枚、自分に影響があったアルバムをご紹介するプロジェクト 【6】

2020年06月19日 | 随想録

【Live Information】


★毎日1枚、自分に影響があったアルバムをご紹介するプロジェクト★
 
 
【6】 ダニー・ハサウェイ 「Live」

 
 遊びというものは真剣にやらないと面白くないので、こういうバトンであってもいろいろ考えながら文章を作っております。
 そういうわけで、このバトンのタイトルにある「影響」という言葉をどうとらえるか、というところから改めて考えてみたんですが、「影響を受けた=好き」ではあるけど、必ずしも「好き=影響を受けた」ではないんじゃなかろーか、ということに思い至っております。
 好きである以上なんらかの影響は受けているんでしょうけれど、このバトンでは、自分の価値観や音楽観を変えるくらいのインパクトを受けて「影響された」と言える、ということにしようと思います。
 
 
 英米のポピュラー・ミュージックって、ルーツが黒人文化にあるものが多いです。
 
ジャズしかりロックしかりブルースしかり。
 20代くらいの頃というのは、ブルースというとエリック・クラプトンやマイク・ブルームフィールド、オールマン・ブラザーズなどなど、ジャズといえばビル・エヴァンスだったりキース・ジャレットだったり、ソウル系ならばホール&オーツとかライチャス・ブラザーズ、というふうに、黒人音楽を白人が(リスペクトして)演奏したものばかり聴いておりました。
 黒人が演奏する黒人音楽には独特の「体臭」みたいなものがあって、当時のぼくには濃すぎたんですね。
 
 
 子供の頃って、ピーマンなんて食べなくても人生になんの影響もないと思ってるし、ブラックコーヒーも苦いばかりだから砂糖とミルクは必ずしこたま入れるし、多少コーヒーっぽくあれば絶対にコーヒー牛乳や缶コーヒーの方を選んでいましたね。
 ところがいつしか野菜炒めにピーマンがないと物足りなく思うようになるし、缶コーヒーと豆を焙煎したコーヒーでは全然香りが違う、というのが分かってきます。
 なにが言いたいかというと、黒人が自らのルーツである音楽を演奏するのは濃くて当たり前、最初はその濃さが苦手でも、だんだん自分がそれに馴染んできたんではなかろうか、ということです。
つ まり、オトナになってピーマン入りの野菜炒めの方が味に幅が出るのに気づくとか、コーヒーに砂糖とミルクを入れてわざわざコーヒーらしさを薄めてそれをおいしいと思っていただけではなかろうかということに気づく、ってことに似ていると思うのです。
 
 
 そういう意味ではスリー・ドッグ・ナイトというロック・バンドには音楽的な垣根を取っ払ってもらったかもしれません。
 このバンドは黒人音楽をリスペクトする白人6人+黒人1人の7人編成です。いわばぼくとR&B系音楽を「とり持ってくれたバンド」です。
 ぼくは「Old Fashioned Love Song」や「Joy to the World」で彼らが好きになり、どんどん聴き漁っていくうちに「Try a little tenderness」に出会いました。ブラック・ミュージックをリスペクトしているだけあって、スリー・ドッグ・ナイトの「Tenderness」の黒っぽさがたまらなく好きだったのですが、それでもオーティス・レディングが歌うバージョンは、まだ自分には濃すぎて馴染めなかったんですね。
 そういうところをガラリと変えてくれたのが、ダニー・ハサウェイの「Live」です。


 このアルバムは、R&Bの領域に限らず、ポピュラー音楽全体の中でもひときわ輝いている逸品ではなかろうか、と思っています。
 ファンキーなグルーブと演奏の楽しさカッコよさはもちろん、いわゆる「ソウルフル」な歌声、ステージと一体感を持っている客席の熱気、どれをとっても理屈抜きにアツくなれます。
 ベース弾きのはしくれとしては、「Voices inside」におけるウィリー・ウィークスのベース・ソロの流れや盛り上げ方にはノックダウンされました。絶品としか言いようがないのです。
 
 
 わかりにくくて長い前置き(汗)ですが、黒人が演奏する黒人音楽に対して抱いていた苦手意識をきれいに拭い去ってくれ、その楽しくアツい世界に引っ張り込んでくれたのがダニー・ハサウェイの「Live」なのです。


コメント
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