マキペディア(発行人・牧野紀之)

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サバティカルという制度

2013年03月04日 | 読者へ
     日野原 重明(聖路加国際病院理事長)

 サバティカルリーブ(sabbatical leave)という制度をご存じですか。その有意義さについて最近、色々と考えたので、お話ししたいと思います。

 サバティカルリーブは、英語で「7年ごとの有給休暇」という意味で、英米の教職関係者や研究者らの間でよく聞かれる言葉です。

 サバティカルは、旧約聖書の中のラテン語に由来します。神様が天地を創造された時、神様のわざは6日間で完了し、7日日は「安息日(sabbaticus)」と記されていました。古代ユダヤ人も、7年ごとに土地に安息を与え、耕作を休んだそうです。

 そういう文化的な背景もあって、英米では大学の教職にある者は、1年程度のサバティカルリーブが認められています。その間は本職を離れ、国内外の大学に、自分の研究のためだけに留学することなどが可能です。このような制度が、若い研究者ばかりでなく、年配の教授にも適用されています。母国にとどまって著述活動に休暇をあてたり、留学先で新しい研究を始めたりしてもよいのです。

 日本でも国立大学などで、長年勤めた教授に3ヵ月~1年間の留学が許可される制度はありますが、いつ自分の番が来るかは不定です。私が63歳の時、聖路加看護大学の学長という職に就いて、すぐに導入した制度の一つが、10か月間のサバティカルを助教授以上の研究者に順番で取らせることでした。この制度改革のことは、今でも誇りに思います。

 私が親しくしている、ハーバード大学医学部出身のロバート・S・ローレンス医師は、1年間のサバティカルの期間に、カリフォルニアのスタンフォード大学で学び、今までやったことのない予防医学と行動医学の勉強を一から始めたと聞きました。

 こんな有意義な制度が、教育や医療関係以外にも、もっと様々な職場で広がっていけばよいのではないでしょうか。というのも、人間の長い一生の中で、自分の発想を変える機会を持つことの重要性を、私はひしひしと感じてきました。発想の転換は、時に生き方の転換にも結びつきます。私自身もまた、「今年の生き方は、私がどんな発想の転換の機会を持つかにかかっている」と思っています。 
 (朝日、2013年02月02日。氏のコラム)

 感想

 趣旨には賛成です。私のいた東洋大学でもこの制度はあったようです。但し、専任教員に対してだけです。日野原さんが聖路加看護大学の学長として導入されたのも「助教授以上の研究者」に対してだけのようです。

 私のような非常勤の教員には適用されません。たしかにサバティカルには賛成ですが、今の日本では、それよりも「同一価値労働、同一賃金の原則」の方が先だと思います。大学の非常勤講師がどれほどひどい条件下で働いているか、日野原さんはご存知ないのでしょうか。
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