マキペディア(発行人・牧野紀之)

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ノルウェーの流儀──公正な統治あっての「幸せ」

2017年09月26日 | ナ行

   アーリン・リーメスタ(駐日ノルウエー大使)

ノルウェーは今年の国連の幸福度ランキングで1位になりました。経済的な豊かさだけが国民に幸福をもたらすわけではなく、むしろ統治の公正さや政治・経済・社会への平等な参加が、人々の意識にポジティブな影響をもたらせるのだと、私は確宿しています。

 たしかにノルウェーは安全保障で差し迫った脅威がなく、北海油田による豊富な財源に恵まれています。

 しかしランキングで資源国は必ずしも上位ではない。国連報告書もわが国を「豊富な天然資源にもかかわらず(幸福度が高い)」と評価しています。資源を適正管遷し、得られる収入をすぐに使わずに、将来世代の福祉に振り向ける。カギは石油収入を運用する政府系ファンドに政府や議会が高い透明性を求め、投資先や運営方針が公開されていることです。それによって人々は安心感を築くことができるのです。

 信頼があっての幸福です。そのためには政府や公的機関の意思決定プロセスが透明で、政策形成の流れが「見える」ことが欠かせません。国民が、払った税金がふさわしい用途に使われているとの確信を持てる「平等な参加」も実現しています。

 実は私が子供の頃は父が外で働き、母が子育てと家事を担っていました。1979年に男女平等法が施行。育児休業や保育支援制度のほか、男性の育児参加を促す施策も導入されました。いま、労働市場への参加率は男女ともに約7割とほぼ同じ。画期的だったのは、2004年の会社法改正によって、「いずれの性も4割を下回ってはならない」とするクオータ制が上場企業などの取締役会に導入されたことです。

 私の妻も本国で裁判官をしています。両親が好きな仕事に情熱を傾ける姿は私の子供にきっとポジティブな影響をもたらしているはず。そう信じています。

 このほかにノルウェー人が幸せな秘密をお教えしましょう。伝統的に、所有者の財産やプライバシーを侵さない限り、誰でも私有地を自由に通行でき、自然を享受できるのです。山登りやスキー、マリンスポーツで大自然の中にいると笑顔になるノルウェー人にとって、これほど幸福なことはありません。(朝日、2017年09月21日。構成・沢村亙)

牧野の感想

 「民主主義の実践と公正な社会にとって情報の公開がひょっとすると一番大切なことではないか。これは大きくは国について言える事ですが、小さくは身の回りの公的な組織はもちろん、私的な組織についても言えることではないのか」と、かねてから思ってきました私にとっては本当に「我が意を得た」意見でした。(もちろん民主主義にとって一番の大前提は「言論の自由」ですが、それが分からないような人のことはここでは問題ではありません。)

 東京で食べ物運動をしていた時、私が広報をしていましたが、しばらくした時、「『あそこは何でも発表してしまう』と言われて拙いのではないか」、という意見が中心的な委員からも出るに及んで、私は辞めました。一度変質した運動をせっかく改革したのですが、これで又、その後は普通の「運動」に戻ってしまったようです。

 もう一つ。私はかつて2011年の浜松市長選挙に「仮」立候補をしましたが、その時発表しました「公約」の冒頭に「確約事項」として次の事を掲げました。

確約事項

 2年以内に、浜松市政の「全体的真実」を調査研究し、それをホームページ上に「分かりやすく」発表し、そして2年後に辞職します。〔そして、本当の市長選挙をやり直すのが正しい順序だと思います。〕

 説明

 浜松市だけではありませんが、行政の実情は、特にその中核的な部分は発表されておらず、従ってマニフェストは作れません。なぜなら、例えば将棋では盤面全体を見て最も重要な所から手を付けて行くのに、行政では、その「盤面全体」に当たる「行政の全体的真実」が発表されていないからです(多分、全体像の分かっている職員もいないでしょう)。
 ですから、当選してみて本当の事が分かった途端に公約を放棄する首長も出てきますし、総理になって初めて「海兵隊の意義が分かった」などと言うお粗末な首相も現れるわけです。
 ですから、国民としては、「全体的真実」が分かっていないのに「マニフェスト」とやらを発表する候補者はハッタリ屋だ、と思わなければなりません。
 従って、市長の決意だけで出来る事を「確約事項」としたのです。(引用終わり)

 なお、私は供託金が集まらず、正式立候補はしませんでした。

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