マキペディア(発行人・牧野紀之)

本当の百科事典を考える

産業廃棄物(不法投棄)

2010年01月18日 | サ行
 沼津市の愛鷹山ふもとに不法投棄された産業廃棄物が、発覚から5年以上たった今も撤去されない状態でいることがわかった。膨大な量のため多額の撤去費用がかかり、土地を奪われた地権者や付近の住民は泣き寝入りするしかない状況だ。県は専門家による委員会を立ち上げ、対応に乗り出した。
                       
 投棄現場は沼津市西野の山林や茶畑計約3.6ha。投棄量は23万立方㍍と県内過去最大規模で、県内に残存する投棄量の6割を占める。地元の石川地区を中心に約20人の地権者の土地に無断でプラスチック類や金属片が埋められた。

 産廃中間処分業者「スルガ産業」(2005年02月に破産)が、5年ほどの間に違法に埋め立てたもので、2004年11月に社長や社員が相次いで逮捕された。

 業者側は一部撤去を始めたが、その後、大部分は資金不足を理由に滞ったまま。県の試算では、撤去や処分費用を合わせると100億円近くかかる見込みだという。

 廃棄物が生活環境上の支障になると認められれば、県は撤去を行政代執行することができる。不法投棄現場から高濃度のダイオキシンが確認された岐阜市では、市が約100億円を計上して撤去を決めた。そのうち約45%は地方交付税による国の助成も認められている。

 だが、県が2008年に地質調査を実施したところ、大地震で崩落する恐れや硫化水素の発生が確認されたものの、すぐに人体に悪影響を及ばす心配はないと判断され、「県が撤去する根拠は失われた」(県廃棄物リサイクル室)。

 一方で、今後ガスの濃度が上がる可能性も否定できない。県は昨年末に環境や地盤の専門家による委員会を立ち上げ、生活環境の評価や安全確保の検討を始めた。

 発覚から5年以上たっても撤去できずに残存する産業廃棄物は、県内でほかに下田市や三島市など6件ある。

 委員長の島岡隆行・九州大学大学院教授(環境工学)は「まずは環境面の安全を確保する最低限の対策しかできない。不法投棄の撤去問題は未然の早期発見にかかってくる」と話している。

 石川地区の集落から車で北上し、茶畑の間を5分ほど走ると鉄の門に突き当たる。門は閉められ、奥にある投棄現場には入れないが、中には人や番犬がいるようだ。スルガ産業の関係者が今も現場横で休日にモトクロス場を経営している。同地区の女性は「怖いからあそこにはもう近づきたくない」と眉をひそめる。

 住民によると、ごみが持ち込まれ始めたのは関係者逮捕の10年以上も前。自治会は環境悪化を心配し、不法投棄を禁ずる看板を付近に設置し県や沼津市に相談してきた。県は1998年30日間の業務停止命令を出したが、その後再び投棄が続けられた。県廃棄物リサイクル室は「当時の法律では疑わしくても県が強制的に立ち入り調査できる権限がなかった」と説明する。

 業者に退去を訴えた住民の中には、業者から夜中の電話や自宅前に街宣車を走らせるなどの脅しを受け精神的ダメージを受けた人も多いという。地権者の男性は「地権者が協力して民事訴訟を起こしたいが、皆怖くてできない。泣き寝入りだ」と嘆く。

 一方、不法投棄を防げなかった行政への不信感もくすぶる。自治会役員の1人は「今は環境面に心配がないと言っても、あってからでは遅い。せめて関心を持ち続け監視を徹底してほしい」という。

 スルガ産業の元社長は朝日新聞の取材に対して「住民には申し訳ないと思っているが今は誰も騒いでない。金の工面ができれば撤去したいが、できない」と話した。

 (朝日新聞、2010年01月12日。阪田隼人)
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 医療(医療崩壊) | トップ | 障害者(雇用) »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

サ行」カテゴリの最新記事