静岡県教員(校長を含む)の不祥事が連続して起きました(発覚しました)ので、県の教育行政は大騒ぎ(?)のようです。読売新聞がこれを一番丁寧に追ってくれたようですので、主としてその記事から重要なものを引いて考えます。
01、読売新聞ネット版、2011年10月22日
静岡県で教師が生徒への強制わいせつ容疑で逮捕されるなど性的な不祥事が止まらず、県教育行政トップの県教育長が「万策尽きた」と発言する事態になっている。
県教委は、懲戒免職処分を受けた教職員の氏名公表に加え、研修などの対策を打ってきた。教育現場から教育長に理解を示す声も漏れ、無力感が漂う。生徒から「誰が生徒を守るのか」「先生は何やっているんだ」と厳しい声が噴出している。
県立科学技術高校の男性教諭(47)が10月17日、女子生徒への強制わいせつ容疑で逮捕された事件を受け、県教委は20日、臨時校長会を開催。安倍徹教育長は「私としても万策尽きた」と苦渋の表情で語り、「学校で連帯感を持った人間関係を作ってほしい」と約120人の校長らに訴えた。
静岡県内で、校長や教諭がセクハラで懲戒処分されたり、教諭が盗撮やのぞきで逮捕されたりするなど、8月からだけでも5件の性的不祥事が発覚。県教委は、外部講師による研修やセクハラ根絶のためグループ研修を導入してきた。
ところが、研修を受けていた高校教諭が9月に女性のスカート内を盗撮した容疑で逮捕。生徒への強制わいせつ容疑で捕まった教諭も研修を受けている。
安倍教育長は「万策尽きたという言葉は、思わず口に出てしまった」と打ち明ける。不祥事防止を訴える機会が再三あり、「また同じような状況で同じような話をしなければいけないのか」と無力感に襲われたという。「適切な言葉でなかったと反省している。効果的な対策を考えていかなければいけない。具体策の検討を始めている」と話した。
県高等学校長協会会長の浅羽浩・県立静岡高校長は「苦しい心境が表れた言葉」と理解を示す一方、「現場は万策尽きていない。即効性がある対策はないかもしれないが、まだ努力することはある」と話す。
感想・「万策」どころか「一策」もしていないのではありませんか。私は教育長宛てに「なぜ自分の給与の一部返納をしないのか。自分の懐に響かない限り真剣には考えないのではないか」というメール質問を送っていますが、返事も来ていません。
何しろ「著書も無ければ論文もない」教育長ですから。かつてこの点を聞いたら、総課長に返事をさせました。その返事に曰く。「安倍徹氏は川勝知事と違って学者ではないから」とか。やれやれ。
本と言うのは10年以上研究を続けていれば自然に書けるものなのです。かつての担当教科でもその教え方でも教育行政についてでも、10年研究をしていれば本は書けるのです。本が無いと言う事は、研究をしてこなかったという事です。
安倍教育長は、「対策」というのは「校長会を開いて話をする事」だと思っているのです。これで、「学校で連帯感を持った人間関係を作」れると思っているようです。呆れて物が言えません。
行政トップのするべき事は、第1に、ブログを出して自分の活動報告をする事(浜松市の山崎副市長はやっています)、第2に、同じくブログで公開の場での討論を組織することです。色々な機会に(映画を見たとか、本を読んだとか、社会問題が起きたとか、その他の機会を含めて)自分の意見を率直に発表し、管理職を含む関係者や生徒や保護者の意見を聞くことです。その時大切な事は、教育長への批判的な意見をも公開し、反論があるなら、そこで反論することです。
組織の「連帯感」はトップに対する批判の自由が保障されていなければ生まれません。そして、静岡県のみならず公務員の世界ではトップが「小天皇」になっていて、トップへの批判的な意見が言えないことなのです。だから「税金泥棒の連帯感」しか生まれないのです。校長や教育長は「自分に対する天皇視」のあることを知りながら、黙っていることでそれを利用しています。狡いやりかたです。セクハラより悪い事だと思います。
02、読売新聞ネット版、2011年10月29日
「万策尽きた」。相次ぐ教員不祥事を受け、安倍徹県教育長が10月20日、そう発言した後、教職員のメンタルケアに協力を申し出る内容の手紙が2通届いた。県教委は「受け入れるかどうか検討したい」としている。
県教委は個人情報保護を理由に差出人について明らかにしていないが、1通は県内の大学教員からで「相次ぐ不祥事対応には、メンタル面の支援が必要。職員のメンタルサポートで私を使ってください」と、県教委が教職員のメンタルケアを行う場合、協力を申し出る内容。もう1通も「役に立つことがあれば使ってほしい」と、メンタルケアに協力を申し出る内容だった。
県教委は、相次ぐ不祥事に対応するため、県立高校に設置されているセクハラ相談員の増員や、相談員が受け付けた意見を吸い上げて検討し、研修などにつなげるコンプライアンス委員会を設置する方針を明らかにしており、こうした対策の一環として、今後、採用するかを考えるという。
一方、教育長の発言以降、県教委には不祥事を批判するメールや電話が寄せられている。26日現在でメールは20件以上、電話も10件程度寄せられた。
メールの内容は「不祥事が続いているが、専門職に必須と言われている倫理綱領がないからでは。自らが誰のために何を行い、何を守るべきか、再度問い直してほしい」といった意見や、「性的不祥事を起こした教師については、氏名だけでなく、現住所、本籍のある出身地を公表すべきだ」「わいせつし放題だから、俺も静岡で教員になろうかって考えるやつが出てくる」などの厳しい意見が書かれていた。
感想・問題の起きた組織には何でも言いさえすれば好い、というものではないと思います。ここに紹介された意見者も日頃から教育行政の問題を調査研究しているとは思えません。大学教員が何か手伝ってもいいと言ってきたそうですが、自分の大学でどんな授業をしているのでしょうか。どうやって学生と話し合っているのでしょうか。多分、大した事はしておらず、ネット上に発表してもいないでしょう。
こんな根の深い問題は調査研究しなければ答えは出てこないと思います。皆さんは、校長というのは皆、1000万円を超える年俸を取っていると言う事を知っていますか。県の教育長の年俸は1400万円、浜松市の教育長の年俸は1300万円です。60歳の定年で校長を辞めずに、その後も多額の年俸を懐に入れ、年金も増えるから狙ったポストではないでしょうか。⇒
教育行政の真実
03、読売新聞ネット版、2011年11月01日
川勝知事は10月31日の定例記者会見で、相次ぐ教職員不祥事への対策について、「教育委員長の顔が全然見えてこない。見えてこないような教育委員会ならいらない」などと、痛烈に県教委を批判した。一方、金子容子県教育委員長は同日、「委員会としては当然役割を果たしている」と語った。
県教委は知事が議会の同意を得て任命する外部有識者ら委員6人で構成される行政委員会。トップは教育委員長。知事への権限集中を防止し、中立的・専門的な行政運営を担保するための独立機関として位置づけられている。
教育委員の1人で、県教委の事務局トップである安倍徹教育長が10月20日、「万策尽きた」と発言したことについて、川勝知事は「万策尽きたとは全く思っていない。ここまで不祥事が続くのは構造的な問題がある」などと語り、「教育委員会がどう動いているのか見えてこない。教育委員会はこのために存在しているのに、もっとしっかりしてもらわなければ困る」などと語気を強めた。
また、「教員不祥事の一因がストレスにある」という意見に対しては、「みんなストレスはある。ここは倫理の欠如で済ませられるのか、不祥事が生じる教育従事者の環境があるのか、メスをいれないといけないと思っている」とも述べた。
一方、県教委は31日、県庁で定例会を開いた。相次ぐ不祥事について、「どのくらいコミュニケーションがとれているか」「(不祥事を起こした教員に)兆候はなかったか」などの声が相次いだという。
定例会後、取材に応じた金子県教育委員長は「本当にあってはならないこと。万策尽きたと言っているが、万もやっているかという感じがしている。もっともっと真剣に色々な手法で未然防止をやっていかなければいけない」と話した。
知事の発言については、「(聞いていないので)わからない」としながらも、「委員会としては、民間の視点で『ここはおかしい』『こうした方がいい』という意見をしていく。当然役割を果たしている」と語った。
感想・第1に、時々感情的になるのは川勝知事の悪い所だと思います。これは「セクハラより悪い」と思います。行政トップの資質に欠けます。
第2に、教育委員たちと話し合う場を設けないで、いきなり「定例記者会見」の場で教委批判をするのも、行政のルール無視でいただけません。
第3に、上の引用でははっきりは出ていませんが、川勝知事は、教育委員長(非常勤)に責任があり、教育長(常勤)は事務長でしかないと言ったようですが、これは自分の任命責任を逃れるためでしょうか。実際に教育行政を取り仕切っているのが教育長であることは「常識」です。
第4に、「構造的な問題」と言っていますが、具体的に何がどう問題なのか、意見を持っていないようです。川勝さんは静岡文芸大で学長(行政職)をしていた人なのですよ。怒ればいいというものではありません。知事はかなり「自分の意見」を言ってはいますが、書き言葉での議論が重要です。知事もブログを出して県民と議論をするべきです。
以上の通り、川勝知事の不見識も「セクハラより悪い」(悪影響が大きい)と思います。
04、読売新聞ネット版、2011年11月8日
教員による不祥事が止まらない。性的なものだけでなく、4日には高校教諭の男が無賃乗車で逮捕され、安倍徹・県教育長が緊急の謝罪会見を開くなど、県教委が対策に苦慮している。しかし、教員の不祥事が相次いでいるのは静岡だけではない。全国的にも、教員の不祥事は後を絶たないのが現状だ。不祥事が相次いだ他の自治体では、どのような対応を取っているのか。
ボトムアップ型
長崎県では、昨年度、教員の不祥事による懲戒処分が13件相次いだ。このうち性的な不祥事は3件。当時の教育長が責任を取って辞職した。
同県教委によると、同県では2006年度から懲戒処分の件数が10件程度で推移しており、対策が急務となっていた。事態を打開しようと、同教委は、これまで県教委が指定して行っていた年3回のセクハラや飲酒運転に対する対策強化月間を、各学校独自の判断で開催するように要請。各校が自発的に不祥事対策をする「ボトムアップ型」(同県教委)だ。
さらに、外部有識者による不祥事対策会議など、粘り強い対策を重ねた結果、今年度は11月7日現在、教員の懲戒処分件数はゼロ。同県教委は「対策が奏功してきた」と自己評価する。安倍徹・静岡県教育長が「万策尽きた」と発言したことについては、「昨年の長崎と非常に似たようなケース。大変苦労していると思う」とした。
携帯電話に規制
広島県では、昨年度の教員の懲戒処分件数は40件(うち性的不祥事は5件)、2009年度は70件と、静岡と比べても処分件数は少なくない。2005年度から、懲戒処分の件数が40件未満になったことがないという。
同県教委では、10年1月、各学校に教員らからなる不祥事対策委を設置。専門家による不祥事対策会議や、体罰やセクハラの相談窓口を各校にもうけるなどの対策を続けた。さらに、生徒に対する教員の性的不祥事が携帯電話のやりとりを端緒にしているケースが多いことから、10年10月には教員と生徒間の携帯電話によるメール、電話のやりとりを全面的に禁止した。
こうした対策が奏功し、同県での今年度の懲戒処分件数は10月14日現在で10件にとどまっている。
静岡県教委でも、相次ぐ不祥事を受け、各校で教職員のセクハラ問題について相談を受けるセクハラ相談員の増員、各学校へのコンプライアンス委の設置に向けて調整を急いでいるが、担当者は「他県の対策状況なども参考に、今後、県内の対策に生かしていきたい」としている。(古屋祐治)
05、読売新聞ネット版、2011年11月11日
相次ぐ教員不祥事を受け、県教委は10日、県庁で教育委員協議会を開き、新たな再発防止策として、専門家から意見を聞いて対策を講じる不祥事根絶委員会(仮称)の設置や、学校単位でコンプライアンス(法令順守)委員会を設けることなど、6つの取り組みを行うことを決めた。
不祥事根絶委員会は、県教育次長を委員長として、県教委の各課の課長らで構成する。不祥事が発覚したときなどに随時開催し、原因の分析や根絶するための方法などを検討する。外部アドバイザーとして、犯罪心理学者、警察関係者から意見を聞き、対策に生かしていくという。今月中に第1回の会合を開く。
県教委には、すでに外部有識者による教職員コンプライアンス委員会があり、不祥事を検証、評価したうえで、県教委に提言を行っている。今後は、不祥事根絶委員会とも協力して総合的な対策を目指す。
また、各学校には年内にも、教職員やPTA役員らでつくる校内コンプライアンス委員会を設け、法令順守を浸透させる企画の立案や、不祥事の検証にあたらせる。県立高校や特別支援学校、規模の大きい小中学校が対象となる。このほか、各校でセクハラ相談員を務めている教員を対象に、セクハラ防止講座を12月までに開催することも決めた。
この日は、県内5校からセクハラ相談員や養護教諭が参加し、現場で感じている児童・生徒の様子や、職場の問題点について意見を述べ、安倍徹・県教育長や教育委員らが耳を傾けた。
主な意見は、「最初からセクハラに関する相談が出てくることは少なく、人間関係の話をしている中で出てくることが多い」「管理職の先生と連携を深めながら、サポートできる体制でありたい」「気になることがあればすぐに対応し、一つ一つ起こった事を積み上げ、支援方法や生徒との距離感を考えていくべきだ」――など。
協議会では、金子容子・県教育委員長が安倍教育長に対し、「『万策尽きた』という発言はびっくりした。未然防止策はいくつも出てくるはず」と苦言を呈す場面も。安倍教育長は「あの言葉については私も反省している。まだまだ対応策はあると考えている。子どもたちのために何ができるかという視点でやっていきたい」と答えた。
06、浜松市教委の取り組み(中日新聞、2011年11月15日)
教員の不祥事に対応するため、浜松市教育委員会は、教職員でつくる「学校を元気にする委員会」の設置や、教職員悩み事相談システムの構築など5つの対策に取り組むことを決めた。開始時期は未定だが、可能なものから、早急に始める方針。
学校を元気にする委員会は、委員として小中学校の校長や教頭、教務主任、養護教諭、事務職員、20代から50代の教諭らの代表を1人ずつ選び、アドバイザーにカウンセラーや臨床心理士、医療関係者、弁護士らを招く。学校組織の改善方法や職員集団のあり方などを協議、各校や教職員組織に提案する。
悩み事相談システムでは、教職員が相談員や保健師に相談して解決策をともに探る。情報共有の必要があれば、プライバシーに配慮しながら事例を各校に紹介する。
このほか教職員で自覚アップ作戦委員会を設け、独自の身分証明書や職員章などを作って自覚や使命感を促す。改善に向けて具体策を練る教頭研修会を開いたり、教職員の研修に不祥事根絶を盛り込んだりもする。
感想・県も市も、消化試合行政の考える事はどこでも同じですね。委員会を作る、システムを作る、講座を開く、研修会をもつ、等々。
ここでテーマとされている事は、どれも皆、校長の仕事ではありませんか。校長は何をしているのですか、1000万円超もの年俸を取って。
そもそも「学校教育というものは個々の教員が行うものではなくして、校長を中心とする教師集団が行うものである」ということが分かってないようです。
「毒にも薬にもならない」という言葉があります。毒よりも何の役にも立たない人間の方がもっと悪いという庶民の考えです。これで考えると、セクハラ教師は毒でしょうが、やるべき事をやらないダンマリ校長と丸投げ教育長は「毒にも薬にもならない」人間で、最低だということが分かります。
関連項目
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静岡大学のセクハラ問題
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教科通信「天タマ」
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組織はトップで8割決まる
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白熱教室は50点