すちゃらかな日常 松岡美樹

サッカーとネット、音楽、社会問題をすちゃらかな視点で見ます。

【サッカー日本代表】ハリルの選手起用は諸刃の剣だ

2017-09-09 10:49:11 | サッカー日本代表
問題点は3つに分類できるハリルの用兵術

 最終予選を突破した今でこそ「スタメンは毎試合、猫の目のように変わる。ハリルは特定の選手にこだわらないカメレオンだ」などと選手起用がマジックであるかのように大絶賛されている。だが過去を振り返れば、W杯アジア二次予選のころの選手起用は本当にひどかった。あれがいつまた顔を出さないとも限らない。そこで今回は警鐘を鳴らす意味でハリルの用兵術を分析してみたい。

 ぶっちゃけ、ハリルのスタメン選びは諸刃の刃だ。よく言えばハリルのこだわり、悪く言えば頑迷さが足を引っ張ることがある。おおよそ問題点は以下の3つに分類できる。

(1)ハリルがその選手の技術やセンスに傾倒するあまりの頑なな囚われ、(2)ヨーロッパ・ブランドへのあくなき固執、(3)奇策に近い選手起用で自己アピールしたがるハリルの自己顕示欲ーーこの3点だ。

 特に(1)については、ハリルはテストマッチやW杯アジア二次予選で好不調とまったく関係なく香川と宇佐美に執拗なまでにこだわった。あれを見て「ああ、この監督はもう切らないと危ないぞ」とさえ思えた。で、(1)の理由から私は一時、監督解任を唱えた。私は戦術面ではハリルを支持する。だがメンタルもデュエルもダメでファイトできない香川とハリルが心中するつもりなら、「もう監督ごと香川を切るしかない」と判断したからだ。

二次予選ではヨーロッパ組を完全固定で使った

 一方、(2)については説明の必要はないだろう。相手チームがかなり格下のアジア二次予選など若手の発掘に使えばいいのに、ハリルはヨーロッパでプレイする選手にえらく固執した。ヨーロッパ由来の「黄金メンバー」を完全固定で何試合も続けて使い、頑としてスタメンを変えなかった

 現在では井手口や昌子らJリーグ勢を起用するなど以前より柔軟になったが、いまでも「私はずっと彼を追跡してきたんだ」などと自慢げに言い、ヨーロッパのクラブに所属する無名選手を呼び試合でまったく使わないなどの前科がある。

 この点は(3)とも関係するが、おそらくハリルの自己顕示癖なのだろう。要は「だれもあの選手に注目してないが、世の中で唯一オレだけは彼の良さを見抜いていたんだぞ」的な自己アピールのしかたである。日本人なら「なんだか小児的だなぁ」と引いてしまうが、「オレはこう考える」とハッキリ自分を前面に出し他人ととことん議論しようとするフランス文化の影響下にあるハリルにとっては自然なことなのだろう。このへんはトルシエとそっくりで非常に興味深い。

「どうだ? 驚いただろう?」と奇策を繰り出す

 さて、(3)の問題も賛否両論アリだ。ハリルは自分に酔った奇策を使い「どうだ? 驚いただろう?」と見る者の度肝を抜くことで自己アピールするクセがある。例えば本田を突然偽9番で使い、自陣に引きこもったW杯最終予選オーストラリア戦でのアウェイ対決。かと思えば逆に迎えた大一番のホーム戦では井手口、浅野という若手を大胆にスタメンに抜擢、香川と本田の二枚看板を控えに回した。

 こうした大胆采配は、ハマればいいが外れると痛い失敗をする。あのトルシエの「2002年日韓W杯トルコ戦」と化す危険性が常について回る。例えば過去に原口をボランチやトップ下、SBで使ったりもしたが、一度もコンバートは成功していない。またスピードと個による突破力のない本田を、それらの能力が特に要求される右WGとして固定的に考えるのも見直しの余地があるーー。

 繰り返しになるが、私は戦術的にはハリルを支持する。だが選手起用に関しては、ハリルはいつ自爆してしまうかわからない「自分の異能」と隣り合わせにいることを忘れてはならない。

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