すちゃらかな日常 松岡美樹

サッカーとネット、音楽、社会問題をすちゃらかな視点で見ます。

【ロシアW杯最終予選】ストロングポイントを捨てた必然の敗戦 〜サウジ1-0日本

2017-09-06 09:41:39 | サッカー日本代表
未完のポゼッションにトライし自滅する

 日本は持ち前のショートカウンターに加え、ポゼッション・スタイルに挑戦して自滅した。日本は最終ラインからグラウンダーのパスで丁寧にビルドアップしようとするが、暑さのせいか味方の動き出しが悪くパスコースを作れない。で、ビルドアップの1〜2本目の縦パスをカットされてカウンターを食らう。サウジはショートパス主体に多くのボールをつなぎ日本の守備陣を混乱に陥れた。

 ただ失敗はしたものの、カウンターとポゼッションの融合は意義あるトライだ。これまでのようにタテに速いカウンター一辺倒ではフィジカル勝負になりがちである。そのため体格のいいヨーロッパの選手に競り負ける可能性もある。そんなときポゼッションできれば相手のやり方を見て変化をつけられるし、疲労時の体力温存にも効く。また自陣に引きこみブロックを作る相手にもポゼッションは有効だ。日本はW杯本大会までの期間にぜひ、ポゼッション・スタイルを自分のものにしてほしい。

 日本のシステムは4-3-3。右サイドに時間を作れる本田を入れポゼッションに挑んだ。ディフェンスラインは右から酒井(宏)、吉田、昌子、長友と不動の4人。中盤のアンカーに山口を置き、右のインサイドハーフに期待の柴崎、左のインサイドハーフには豪州戦でブレイクした井手口を配した。左WGには原口、ワントップはベテランの岡崎だ。

ロングボールを封印し足元勝負へ

 立ち上がり、日本は例によってハイプレスから入った。日本の圧力が強く、タテにボールを繋げないサウジは横パスとバックパスを繰り返す。この日の日本はタテへのロングボールをまったく使わない。徹底して足元にグラウンダーのショート&ミドルパスを出してポゼッションしようとする。またバックパスして最終ラインでじっくりボールを回すなど、速攻一辺倒だったハリルジャパンでは珍しい光景が頻発した。まるでジーコジャパンかザックジャパンを見ているかのようだ。

 前半15分頃から日本はゾーンをやや下げた。相手ボールになるとリトリートして自陣に4-4のブロックを作り、相手を待ち受けるようになる。ゲームプラン通りなのだろう。暑さ対策の省エネ戦術だろうか。

 だが日本はこの形からボールを奪っても後ろからビルドアップできず、組み立て直すためにバックパスするところをサウジに狙われる。またバックラインから出る縦パスをカットされてカウンターを食っている。

 カウンターの場面ではワントップの岡崎に預けるボールが出るが、岡崎はキープし切れない。日本は次第に最終ラインと最前線の距離が開いて間延びするようになり、ますますビルドアップが難しくなって行く。そんなときにはロングボールを織り交ぜることも有効だが、この日の彼らはまるでオーストラリアのように頑固にショートパスにこだわった。

 前半の日本はいつもの鋭いカウンターもなければ、パススピードもない。ワントップにボールも収まらない。凡庸なふつうのチームに成り下がっていた。

バイタルにパスを通され失点する

 日本は後半の頭から本田に代えて若い浅野を投入する。スピードのあるサイド攻撃を意図したか、あるいはタメの作れる本田を下げてポゼッションをあきらめる狙いだろうか。

 後半の日本はバイタルエリアにパスを通されて苦しんだ。相手の攻撃を跳ね返しクリアしても、またボールを拾われて2次攻撃を受けている。

 後半18分の失点シーンは日本陣内でボールを回され、密集した中央で2本のダイアゴナルなパスを通されゴールを割られた。このときサウジは自陣から4本のパスを繋いでビルドアップしたが、特に3本目のパスをバイタルに通されたのが痛かった。日本は自陣にブロックを作り人はいたが、疲れからか足が止まってボールウォッチャーになっていた。

 日本の最終ラインは相手ボールに自分が先に触れるのに待ってしまい、自陣でボールをキープされ続けるシーンが目立った。また前線と最終ラインの間がますます間延びし、コンパクトに保てなくなる。前と後ろが分断される時間帯が増えた。

 後半22分には岡崎に代えてFWの杉本健勇、35分には柴崎に代えて久保を入れた。久保の投入でシステムを4-2-3-1にし、久保を中央のトップ下のような位置に置いた。だが期待の杉本は前線でポイントを作れず消えてしまい、久保も出場時間の短さのためか良さが出せなかった。

 日本は最前線でボールを収め、タメを作ってくれる大迫がいないと攻めにならない。大迫ら従来からのスタメン陣と、この日起用された控え組とのレベルの差が強く目についた。個人的には力のわかっている岡崎より、アグレッシブな武藤をぜひ使ってほしかった。

オフ・ザ・ボールの動きが足りない

 では修正すべき点はどこだろうか? まずビルドアップに関しては、SBを高い位置にポジショニングさせ、サイドにポイントを作る組み立てができなかった。またこの日のように後ろからショートパスを繋いでビルドアップするためには、パスの受け手になる選手がもっとフリーになる動きをする必要がある。オフ・ザ・ボールのフリーランニングが決定的に足りなかった。

 加えてリードされた後半は特に日本が焦りから前がかりになったところでボールを奪われ、カウンターを食らうシーンが目立った。南米やヨーロッパの中堅国はカウンターが得意なチームが多い。ここはW杯本大会でも注意する必要があるだろう。

 そんなわけで課題の出たゲームだったが、新しいトライをした上での失敗ゆえ悲観する必要はない。ビルドアップしポゼッションする戦い方は今後のテーマだが、ぜひマスターしておきたい。そうすればロングボールを使ったカウンター主体のこれまでの戦い方に加えバリエーションができる。局面や時間帯、相手との兼ね合いによって両者の使い分けがきく。 

 また控え組のレベルアップも重要なテーマだ。選手層の厚みはそのままチーム力となって跳ね返ってくる。W杯グループリーグ突破に向け産みの苦しみが続くが、その先には輝かしい栄光がある。ハリルジャパンの面々にはぜひこのヤマ場を乗り越えてほしい。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする