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すちゃらかな日常 松岡美樹

積極財政などの政治経済をすちゃらかな視点で見ます。ワクチン後遺症など社会問題やメディア論、サッカー、音楽ネタも。

【J1天王山・第2戦プレビュー】ラインの高さとトランジションをめぐる戦いに ~川崎F vs 名古屋

2021-05-04 10:08:39 | Jリーグ
現在の勝ち点差は「6」だ

 いよいよすべてを決める本当の天王山がやってきた。変則日程のせいで実現した、J1リーグの首位攻防2連戦の第2戦だ。

 2チームとも13試合を終え、川崎フロンターレは第1戦に勝って11勝2分0敗の1位。

 一方の名古屋グランパスは第1戦に負け、9勝2分2敗の2位である。

 そして現在の勝ち点差は「6」だ。もし名古屋が負けたら「9」になる。どこかのテレビ局ではないが、名古屋にとっては「絶対に負けられない戦い」になるだろう。

先制点がすべてを決める

 名古屋としては最終ラインがズルズル下がって負けた第1戦の教訓を生かし、ラインを高く保って戦いたい。こうして前からプレスをかけるのだ。

 逆に川崎Fとしてはそのライン裏を狙い、速い攻撃を仕掛けて先取点を取りたい。

 この試合、先制点の意味は大きい。

 川崎Fが先制すれば、名古屋は「ああ、またか」と第1戦の記憶がよみがえる。そこからまたメンタルが崩壊し、ズルズル行くかもしれない。

 こうなれば川崎Fとすればしめたものである。

 逆に名古屋が先制点を取れば、「よし、行けるぞ!」とメンタルが冴え渡り、勢いがつく。すべては先取点が決めるといっても過言ではない。

最終ラインをめぐる戦いになる

 もし名古屋が高いラインで戦ってくれば、川崎Fはそのラインの裏を狙いたい。選手が裏に走り込み、よーいドン、でスルーパスを出すのだ。

 川崎Fにとって、こういう戦い方は慣れているだろう。

 逆に名古屋側から見れば、裏を狙えないようにしなければならない。それには中盤からプレスをかけ、ボールをクローズ(ボールにプレスがかかった状態)にさせる必要がある。

 この状態にすれば川崎Fはスルーパスを出せない。

 逆に守備が得意な名古屋にとっても、プレッシングしながらのこういう戦いは慣れたものだ。

 つまりこの第2戦は、名古屋の最終ラインをめぐる戦いになると見る。

トランジションが決める速いカウンター

 川崎Fはチームのコンセプトから考えて、ボールを保持し、ポゼッションしてくるはずだ。とすればポゼッション率は6:4で川崎Fが上回るだろう。

 ならば名古屋とすれば中盤でプレッシングし、川崎Fを自由にさせない。ラストパスを出させない。

 それだけでなく中盤の攻防で、できればボールを奪ってしまいたい。

 ポゼッション率で上回る川崎Fは、前にかかって攻めてくるはずだ。

 ならば中盤でボールを奪えれば、相手は守備の態勢が崩れている。で、前がかりになった川崎Fのライン裏を狙い、速いカウンターを仕掛けたい。

 機敏なトランジションにより、名古屋はボールを奪ったら守備から攻めに素早く切り替える。

 そして人とボールを速く動かし、速いショートカウンターを打って川崎Fの高いライン裏を狙いたい。

点の取り合いになれば川崎Fが有利だ

 こんなふうに試合は最終ラインの高さとトランジションをめぐる攻防になる。

 もし点の取り合いになれば川崎Fが圧倒的に有利になるだろう。

 逆に0-0で1点をめぐる息詰まる攻防になれば、名古屋に勝算が生まれる。

 このゲーム、果たして終わった時には勝ち点差が「3」になるのか? それとも「9」になるのか?

 文字通り、J1リーグの今季を占う戦いになりそうだ。

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【J1首位決戦・第2戦プレビュー】自分との戦いに勝て ~第12節 川崎vs名古屋

2021-05-03 04:58:30 | Jリーグ
ふつうに力を出せれば勝てる

 5月4日に首位決戦の第2戦がやってくる。第1戦の名古屋は監督がいないことがメンタル面に作用し、普段通りのサッカーができずに敗れた。

 とすれば名古屋は第2戦をどう戦うべきだろうか?

 スタメンに関しては第1戦を最強の布陣で戦い敗れているだけに、次の一手がむずかしい。

 ただ第1戦の敗戦はメンタルの問題だっただけに、また同じ布陣で心を入れ替えて「やってこい!」ということはありうる(第1候補)。

【第1候補】

FW 山崎凌吾
MF 相馬勇紀 柿谷曜一朗 マテウス
MF 米本拓司 稲垣祥
DF 吉田豊 丸山祐市 木本恭生 宮原和也
GK ランゲラック

 いずれにしろ名古屋の場合、メンバーをどう変えるにしても後ろ半分はほぼ不動なのだ。唯一、CBが中谷から木本恭生に変わる、右SBが宮原から成瀬竣平に変わるパターンくらいである。

 ただ目先を変えるなら、いくつか候補は考えられる。第1戦で動きがよかった前田直輝をスタメン起用するバージョンだ(第2候補)。

【第2候補】

FW 山崎凌吾
MF マテウス 柿谷曜一朗 前田直輝
MF 米本拓司 稲垣祥
DF 吉田豊 丸山祐市 中谷進之介 成瀬竣平
GK ランゲラック

 この場合はマテウスを左サイドへ移し、前田を右に入れることになる。

 このほかセンターラインに手を入れるパターンもありえる。トップ下をガブリエル・シャビエルとし、柿谷をワントップで使うような場合だ(第3候補)。

【第3候補】

FW 山崎凌吾(柿谷曜一朗)
MF 相馬勇紀 G・シャビエル マテウス
MF 米本拓司 稲垣祥
DF 吉田豊 丸山祐市 中谷進之介 宮原和也
GK ランゲラック

 センターラインを変える手としてはこのほか、前田直輝をトップ下、齋藤学を左サイドに使う手(第4候補)や、阿部浩之(第5候補)をトップ下で使う方法もある。

【第4候補】

FW 山崎凌吾(柿谷曜一朗)
MF 齋藤学 前田直輝 マテウス
MF 米本拓司 稲垣祥
DF 吉田豊 丸山祐市 中谷進之介 成瀬竣平
GK ランゲラック

【第5候補】

FW 山崎凌吾(柿谷曜一朗)
MF 相馬勇紀 阿部浩之 マテウス
MF 米本拓司 稲垣祥
DF 吉田豊 丸山祐市 中谷進之介 成瀬竣平
GK ランゲラック

戦術的にはどう戦うか?

 さて一方、戦術的な戦い方だが、第1戦はメンタルの問題で最終ラインがズルズル下がってやられた。ここをまず修正したい。勇気をもって高い位置に留まることだ。

 そのほか戦術的にどう戦うか? については、第1戦のプレビューをした2本の記事と、1戦目の試合結果を分析した記事1本にほとんど書いた通りだ。第1戦では浮足立ってぜんぜん実現しなかったが、第2戦ではプレビューに書いたような戦い方をしたい。

 文末に【関連記事】としてあげておくので、参考にしてほしい。

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【J1リーグ】鳥栖が3連勝で暫定3位に ~鳥栖 2-0 徳島

2021-05-02 16:43:12 | Jリーグ
マニアックな変則システムが機能する

 徳島ヴォルティスによるハイライン・ハイプレスの2タッチの軽快なパスサッカーと、サガン鳥栖のマニアックな変則システムのスタイルとの戦いになった。

 前半の鳥栖は徳島のビルドアップに対し、マンツーマンでハメに行った。

 これに対し徳島はボールを失ってもリトリートせず、その場でカウンタープレスして即時奪回を狙う。

 戦術と戦術が真っ向ぶつかり合うコクのある対戦になった。

 だが鳥栖は後半にシステムを変えて2得点を取り、引き離す。前半の虚々実々の駆け引きから、後半は一気にヒートアップした。

 徳島はメンバーを変えて必死に食い下がるが追いつけず。最後は鳥栖の3連勝で終わった。

鳥栖は3-1-4-2、徳島は4-2-3-1だ

 鳥栖のフォーメーションは3-1-4-2。スタメンはGKが朴一圭(パク・イルギュ)。最終ラインは右からファン・ソッコ、エドゥアルド、中野伸哉だ。

 アンカーは松岡大起。2列目は右から飯野七聖、樋口雄太、仙頭啓矢、小屋松知哉。両サイドのウイングハーフは攻撃的に振る舞い、チャンスになれば前へと進軍する。

 2トップは林大地と山下敬大だ。山下は今季5ゴールをすべてこの日のホーム、駅スタで決めている。サポーターの期待がかかる。

 一方、徳島のフォーメーションは4-2-3-1。スタメンはGKが上福元直人。最終ラインは右から岸本武流、福岡将太、石井秀典、田向泰輝だ。

 2セントラルMFは岩尾憲と鈴木徳真。2列目は右から小西雄大、クリスティアン・バトッキオ、藤原志龍。ワントップは宮代大聖である。

徳島は変則3バックでビルドアップする

 4バックの徳島はビルドアップ時、右SBの岸本が高い位置取りをして組み上げる。このとき2CBと左SBが右にスライドし、3バックでビルドアップする。

 この徳島の変則3バックに対し、前半の鳥栖はマンツーマンで前から激しくハメに行く守備をした。

 2トップの山下と林、トップ下の樋口という3人が最前線のプレス要員である。3対3だ。彼らはエネルギッシュなハイプレスを見せた。

 鳥栖のFW山下は攻撃になるとターゲットマンを務める。相方の林大地は彼の回りを衛星的に動いている。

徳島は新任・ポヤトス監督のスタイルがよく出た

 前半39分。鳥栖のウイングハーフ・飯野がドリブルでサイドを駆け上がり、中へクロスを送る。これをFWの山下がシュートしたが決められず。

 前半43分には徳島がペナルティエリア手前でボールを奪い、縦パス。

 これを受けた徳島のワントップ・宮代大聖が、2タッチしてから右足を振り抜く。だがボールはわずかにゴールの上へ逸れる。惜しい一撃だった。

 そのすぐあとだ。前半45分、今度は鳥栖のロングボールに林が抜け出す。

 徳島DFはクリアしようとするが、林がそのボールを奪ってペナルティエリア右からフィニッシュした。だが惜しくもコースアウトだ。

 前半は両者無得点に終わったが、たがいの個性あるスタイルからの駆け引きがおもしろく、非常にエキサイティングな45分間だった。

 徳島は新任のダニエル・ポヤトス監督のやりたいサッカーがハッキリ見え、「このスタイルでやって行けば」との確信を感じさせた。

鳥栖の仙頭はうれしいJ1初ゴールだ

 鳥栖の先制点は後半10分だった。彼らは混戦からボールを拾うと、アンカーの松岡がトップ下の樋口にパス。樋口は左の山下へとボールを送る。

 山下は右足でシャープなシュートを放ち、これが敵DFに当たったがゴールにすっぽり収まる。1-0だ。

 後半、鳥栖は仙頭が一列下りて松岡と2CMFを組む、3-4-2-1にシステムを変えた。

 また敵のビルドアップに対するプレッシングもやり方を変え、前半は3人だったが後半は2人で相手のCBに圧をかけている。

 そして大団円は後半30分にやってきた。鳥栖が右CKから敵に当たったこぼれ球を仙頭が押し込んだ。

 仙頭はうれしいJ1初ゴールだ。対する徳島は5試合連続でセットプレーから失点している。修正が必要だろう。

 鳥栖は2点取ったらとたんにちゃっかり自陣にブロックを敷き、試合を殺した。これで鳥栖は3連勝で暫定3位だ。川崎フロンターレがトップを走っているが、まだまだ優勝の行方はわからない。

【関連記事】

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【J1リーグ】「J1は川崎Fの一強だ」は本当か?

2021-05-02 05:42:28 | Jリーグ
どこに目をつけているのか?

「J1リーグは川崎フロンターレの一強だ」という人がけっこういる。

 どこに目をつけているのか? と素朴に思う。

 おそらく「矛盾(ホコ・タテ)対決」などと騒がれた首位決戦、第22節(変則日程で実施済)の名古屋グランパスvs川崎F戦で川崎Fが勝ったから、そんな印象になるのだろう。

 だが冷静に考えてみてもらいたい。

 その負けた名古屋にしても、現在の勝ち点は「29」だ。同じく13試合を終えて勝ち点「35」の川崎Fとは、まだ勝ち点「6」の差しかない。しかもリーグは5月1日に第12節に差しかかったばかりである。

 最終節まで、まだ20試合以上もあるのだ。

横浜FMの強さは本物だ

 客観的に言って、いまいちばん勢いがあるのは(川崎Fを別にすれば)横浜F・マリノスだろう。

 彼らは5月1日に第12節を勝ち、勝ち点「24」だ。だが横浜FMはまだ11試合しか戦ってない。

 彼らは第6節のガンバ大阪戦が、新型コロナの影響で中止になっているからだ。

 つまり川崎Fより試合消化数が2試合も少ない。

 仮に横浜FMがその2試合を勝ち、勝ち点6を積み上げたとすれば、現時点で勝ち点は「30」になる。

 すなわち川崎Fとは勝ち点「5」の差しかない。

J1は鳥栖も含めて4強である

 一方、現在、暫定3位のサガン鳥栖は、5月1日の第12節で徳島ヴォルティスを2対0で下して勝ち点「26」としている。

 この試合でJ1初ゴールをあげ勝利に貢献した鳥栖のMF仙頭啓矢は、勝利インタビューで「ぼくらは優勝をめざしていますから」とハッキリ断言していた。

 そんな鳥栖まで含めれば、J1は川崎Fと名古屋、横浜FM、鳥栖の4強ということになる。

 リーグ戦はまだまだ先が長い。

 川崎Fが巷間言われている通り無事「成仏」するまでには、ひと山もふた山もあるだろう。

 勝負の世界はゲタを履くまでわからないのだ。

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【J1リーグ】オナイウがハット、横浜FM快勝する ~第12節 FC東京 0-3 横浜FM

2021-05-01 21:20:07 | Jリーグ
ポゼッション率55%と横浜FMが支配した

 立ち上がり、横浜F・マリノスがほとんどボールを保持して試合を支配した。だがその後FC東京も盛り返し、前半は拮抗した内容になった。前半だけは点差ほど内容に差がついたわけではなかった。

 両チームともボールを失ってもリトリートせず、反撃を狙いその場でカウンタープレスする。両者、攻撃的な守備でいい前半だった。

 ただし、この日の横浜FMオナイウは圧倒的だった。

 グラウンダーのラストパスに合わせた1点目、同じくグラウンダーのクロスを受けて叩き込んだ2点目、こぼれ球を詰めた3点目とハットトリック。オナイウ爆弾が大爆発した。

 横浜FMは中盤から前線にかけての支配力が高く、エウベルは3ゴールすべてに関与した。またそのうち2点の起点になったのはマルコス・ジュニオールである。

 横浜FMの攻撃力は圧倒的だった。

横浜FMは4-2-1-3、FC東京は4-4-2

 横浜FMのフォーメーションは4-2-1-3だった。スタメンはGKが高丘陽平。最終ラインは右から松原健、チアゴ・マルチンス、畠中槙之輔、ティーラトンだ。

 2セントラルMFは喜田拓也と扇原貴宏。トップ下にはマルコス・ジュニオール。強力な豪華3トップは右からエウベル、オナイウ阿道、前田大然である。

 一方、ホームのFC東京のフォーメーションは4-4-2だ。スタメンはGKが波多野豪。最終ラインは右から内田宅哉、渡辺剛、ジョアン・オマリ、小川諒也。

 中盤は右から東慶悟、森重真人、安部柊斗、田川亨介。2トップはディエゴ ・オリヴェイラと永井謙佑である。

完全なフリーでオナイウが押し込む

 横浜FM、オナイウの1点目は前半8分だった。横浜FMがポゼッションし、試合を完全に独占している時間帯に生まれた。

 エウベルが右サイドを突破して中へ折り返しを送る。これをオナイウはワントラップして決めた。

 このときFC東京の守備陣は全員がボールサイド(横浜FMから見て右サイド)に引っ張られ、その裏にオナイウが潜り込んで完全なフリー状態でボールを押し込んだ。

 シュートの前にワントラップする余裕があったのが何よりの証拠だ。

 このあとFC東京も失点のショックから立ち直って次第に落ち着いた。ポゼッションして尻上がりに良くなる。力が拮抗した前半だった。

 FC東京のFW、ディエゴ ・オリヴェイラにはボールがよく収まったし、永井謙佑のハイプレスも圧があった。

 ただしFC東京のハイプレスは組織立ったものではなく、選手個々の判断で仕掛けている印象だった。この点が物足りない。

横浜FMの左SBティーラトンは偽SB化する

 そして後半3分。横浜FMはマルコス・ジュニオールが右からクロスを入れ、オナイウがこれをダイレクトで後ろにいたエウベルに送る。

 ボールを受けたエウベルは待ってましたとばかりにシュートしたが、FC東京のGK波多野豪がナイスセーブで弾いた。好プレーだった。

 横浜FMの左SBティーラトンは偽SB化し、一列上がって中に絞りCMFの位置に入る。これで球出しと相手のカウンターに備える。

 一方、FWのオナイウはポストプレイが非常にいい。

 こうして後半に入り試合はだんだん横浜FMに傾いて行った。

FC東京はディフェンディングサードまで引き始める

 オナイウの2点目は後半7分である。マルコス・ジュニオールが縦パスを出し、受けたエウベルが右サイドを突破。彼はグラウンダーのクロスを入れ、これをオナイウがゴールに叩き込んだ。

 FC東京は高まる敵の圧力を感じ、いまや相手ボールになれば完全にディフェンディングサードまでリトリートして4-4-2のブロックを作るようになった。

 後半10分、長谷川健太監督は流れを引き戻そうと、メンバーチェンジを行う。しかも3枚替えだ。

 まず田川に代えてアダイウトンを入れ左SHに。また右SHの東を三田啓貴と交代させた。そしてCBのジョアン・オマリに代えてMFの青木拓矢を投入した。

 これにより中盤にいた森重を左のCBに下げ、守備を強化すると同時にパス出しする基点を後ろに変えたのだ。

後半16分にオナイウがハットトリック達成

 だがいったん横浜FMに吹き始めた風は、FC東京には戻らなかった。

 オナイウ阿道がハットトリックを達成するのである。

 それは後半16分に起こった。まずマルコス・ジュニオールがボールを左サイドのエウベルに振り、エウベルがこれをペナルティエリア左からシュート。GKの波多野が懸命に弾く。

 このこぼれ球を押し込んだのが、オナイウだった。嗅覚が決めたゴールである。

 いまや横浜FMの中盤ではセントラルMFの喜田が獅子奮迅の守備をし、エウベルはすばらしいポジショニングからナイスパスを連発している。完全に彼らのゲームになった。

横浜FMは10試合無敗の3連勝だ

 そして3点を奪って以降、横浜FMは相手ボールになれば自陣にリトリートして4-4-2のブロック守備をした。

「金持ちケンカせず」である。

 こうして横浜FMは試合を殺した。3連勝だ。

 しかも10試合の無敗記録付きである。

 一方のFC東京はこれで12試合21失点、泥沼の4連敗に。勝者と敗者がハッキリ明暗を分けた試合だった。

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【J1リーグ】名古屋のフィッカデンティ監督がコロナ陽性に

2021-05-01 10:20:51 | Jリーグ
首位決戦・2戦目でも指揮取れず

 名古屋グランパスのマッシモ・フィッカデンティ監督が、29日に新型コロナのPCR検査を受け、陽性判定が出たらしい。

 やれやれ、やっぱり予想通りだ。

 これで次の川崎Fとの首位決戦・2戦目である5月4日の試合には、フィッカデンティ監督は指揮は取れない。

 しかし1戦目の結果に関し「監督不在は敗戦に関係ない」とか言ってる人がいるけど、正気ですか? って感じだ。だったら監督なんていらない、って話になる。

 いずれにせよ、名古屋はメンタルを整え直し、2戦目に臨む必要がある。

 がんばってほしい。

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【J1リーグ】川崎Fが衝撃の4ゴールで劇勝する ~第22節 名古屋 0-4 川崎F

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【J1リーグ】川崎Fが衝撃の4ゴールで劇勝する ~第22節 名古屋 0-4 川崎F

2021-04-29 20:30:10 | Jリーグ
名古屋のフィッカデンティ監督が「コロナ疑い」で欠場

 この試合、名古屋グランパスのマッシモ・フィッカデンティ監督がなんと「コロナ疑い」で欠場し、名古屋はブルー・コンカ・コーチが指揮を執った。この時点ですでに彼らは敗れていたのかもしれない。

 名古屋はフィッカデンティ監督の下でひとつになり、強い求心力を発揮する集団だ。そのチームに監督がいないのではお話にならない。軸を欠いたグループはまったく機能しなかった。

 試合前から名古屋の選手は顔がこわばり、立ち上がりから足に鉛がぶら下がっているかのように動きが重かった。パスを引き出す動きがないし、守備時のカバーリングも遅れた。

 名古屋は試合前からメンタルが崩壊し、すべてにおいて川崎Fを下回っていた。先制され、なすすべなく敗れた第10節の鳥栖戦と同じ状態だった。

 だが首位決戦はまだ終わったわけじゃない。2連戦だ。名古屋はきっちりメンタルを立て直し、次は中4日おいて5月4日にくる第12節の川崎F戦に備える必要がある。落ち込んでいるヒマなどない。

名古屋4-2-3-1、川崎Fは4-1-2-3システム

 名古屋のフォーメーションは攻撃時4-2-3-1、守備時4-4-2だ。スタメンはGKがランゲラック。最終ラインは右から宮原、木本、丸山、吉田である。

 セントラルMFは稲垣と米本。2列目は右からマテウス、柿谷、相馬。ワントップは山崎が務めた。

 一方、川崎Fのフォーメーションは4-1-2-3だ。スタメンはGKがチョン・ソンリョン。最終ラインは右から山根、ジェジエウ、谷口、登里である。

 アンカーにはジョアン・シミッチが入り、右インサイドMFは田中碧。左インサイドMFは旗手が務める。

 3トップは右から家長、レアンドロ・ダミアン、三笘である。

パスワークが乱れる名古屋

 あいにくの雨とあって、試合の立ち上がりは両チームともパスミスが目立つ。特に名古屋はボールの流れが乱れ、きれいに繋がらなかった。

 そんな落ち着かない前半3分に、いきなり川崎Fが先制する。

 まず川崎Fは三笘が左サイドから斜めの縦パスを入れた。これにレアンドロ・ダミアンがポストプレイ。受けた旗手がペナルティエリア中央から右足でシュートを叩き込んだ。

 まるで前半6分に突然ゴールを決められ、0-2であっけなく敗れた第10節の鳥栖戦と同じ展開だ。

 名古屋の選手は手足は動いても、魂がここにない感じ。すっかり浮足立っている。

 このあとずっと川崎Fがポゼッションする展開になった。そのため名古屋は延々、自陣に引いてブロックを組んでいる。いや、というより「押し込まれている」と言ったほうが正解だ。

 続く前半10分。川崎Fの家長が左サイドから糸を引くようなクロスを入れ、レアンドロ・ダミアンが打点の高いヘディングシュートを放つ。またゴール。これで彼らは早くも2点をリードした。

 名古屋はマークが甘く、まったく別のチームになっている。散々だ。

名古屋がやっとロングカウンターを繰り出す

 前半15分、名古屋は待望のロングカウンターを仕掛ける。トップ下の柿谷が川崎Fの最終ライン裏にスルーパスを出す。これにマテウスが走り込んでドリブルしたが、惜しくもボールはゴールラインを割ってしまった。

 名古屋は引いて自陣でボールを奪っても、1本目のパスがなかなか通らない。それだけ川崎Fのプレッシングが利いている。

 そんな川崎Fの3点目は前半23分だった。彼らの右CKからだ。

 キッカーの田中碧が右足でクロスを入れ、ニアでシミッチが後ろにフリック。これにレアンドロ・ダミアンがこの日2点目になるヘディングシュートを決めた。

 名古屋の選手たちは、いまや亡霊のように突っ立っている。魂が抜けたかのようだ。動きがぎこちない。インテンシティが極端に低い。

「川崎Fが強い」というより、名古屋が本領を発揮できていない、というのが正確な表現だろう。それほど彼らは見ていられないデキだった。

名古屋が4-1-2-3にシステム変更する

 前半30分。名古屋は右SBの宮原を引っ込め、同じポジションの成瀬竣平を入れた。同時にワントップの山崎に代えて守備的MFの長澤和輝を投入する。

 これにより米本をアンカー、右インサイドMFを稲垣、左インサイドMFを長澤とする4-1-2-3システムに変えた。守備時は柿谷と稲垣が2トップを組む4-4-2になる。

 だがこの日の名古屋はシステムの問題じゃないのだ。

 彼らはすっかり消極的になっており、守備ブロックを組む位置がいつもより低い。ディフェンディングサードである。そのため川崎Fのパンチを容赦なく浴び続けた。

 名古屋はボールを奪ってからの速いポジティブ・トランジション(守→攻の切り替え)の動きがなく、ボールに対しサポートが欠落している。

 パスの出し手と受け手という1対1の関係しかなく、3人目の動きがない。そのため川崎Fに容易にパスコースを読まれ、守備対応される。打つ手がない。

柿谷が敵GKと1対1になる

 後半9分、そんな名古屋がやっと反撃する。

 彼らは自陣でボールを奪い、右サイドをマテウスがドリブルする。そして敵陣中央から柿谷にスルーパスを出す。柿谷はGKチョン・ソンリョンと1対1になるが、GKが好セーブを見せてゴールを割らせなかった。際どいプレーだった。

 柿谷は強いメンタルで孤軍奮闘、闘っていた。

 このあと名古屋は稲垣がひどいパスミスをし、決定的なピンチを迎える。これまでのシーズンで彼にこんなシーンは一度もなかった。相馬も焦りからか、次第に自己中ドリブルに陥っている。

 後半24分には、そんな相馬が前田直輝と交代を命じられる。

 前田は右WGに入り、代わってマテウスが左WGに回った。このあと前田はスタメンのメンバーにはまるでない、活発な動きをした。この交代がもっと早ければ、と思わされた。

川崎Fが自陣にブロックを作るように

 3点取って後半に入り、川崎Fはゆったり構えて無理せず自陣にブロックを作るようになった。上手に時間を使って試合を殺すうまいゲーム運びだ。

 そのため名古屋はボールが持てるようになったかに見えるが、実は「持たされて」いるのだ。川崎Fの試合巧者ぶりが光っていた。

 そんな川崎Fは後半27分、エースの三笘を引っ込め脇坂泰斗を投入。「お役御免」である。脇坂は左インサイドMFをまかされ、旗手が三笘の代わりに左WGに回った。

 そして大団円の4点目は後半39分だ。脇坂が、途中投入され左前にいた遠野大弥にスルーパスを出す。

 遠野はこれをキープし、角度のない左サイドから左足を強振。ゴール右スミに一直線、きっちりボールを沈めて見せた。見事なファインゴールである。

 続く後半41分には名古屋がマテウスに代え、齋藤学を入れた。アグレッシブな齋藤は沈んだゲームの流れを変えるいい起爆剤になる。もっと早く投入してほしかった。

 こうしてフィッカデンティ監督を欠く名古屋は采配面でも疑問手を指し、あえなくゲームセットになった。川崎Fが大量4点を奪い試合を締めた。レアンドロ・ダミアンは2得点1アシストの活躍である。

 さて、問題は変則日程のため5月4日に行われる同じカードの次の試合だ。川崎Fのホーム、等々力陸上競技場で行われる第12節である。

 この日は試合開始早々の失点で、完全にゲームプランが狂った。

 名古屋はそんなショックから立ち直り、しっかり切り替える必要がある。まだシーズンは先が長い。ひとまず今度来るのはまた同じお相手だ。この日の試合をきっちり分析し、次に備えたい。何度もやられるわけにはいかない。

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2021-04-29 06:00:15 | Jリーグ
選手のプレイと戦術のキモを一挙紹介

 いよいよ本日15時に、首位・川崎フロンターレ vs 2位・名古屋グランパスによる首位決戦・2連戦の火ぶたが切って落とされる。そこで今回は直前特集として、選手たちのプレイの見どころチェックや戦術の勘どころをご紹介しよう。

◆川崎MF・三笘薫と名古屋MF・相馬勇紀のドリブル対決

 よくお題に上がる2人のドリブルだが、実はタイプがまったくちがう。

 三苫はタッチ数が多く、細かく小突くメッシ風のドリブルだ。一方、相馬のドリブルはマーカーの重心移動を観察し、緩急をつけて相手の態勢を崩し「この瞬間」なら抜ける、という一瞬に爆発的に抜き去る。

 また三苫のドリブルは目前の敵を抜くための戦闘行為だが、相馬のドリブルは抜いたあとにクロスを入れる、シュートを打つ、など目的とビジョンがはっきりしている。

◆名古屋MF・マテウスの曲芸ドリブルは見物だ

 マテウスのドリブルは、お客さんを魅せるためのものでもある。そのため股抜きや、ボールの上に足を置いて引きワザを出すなど一種の曲芸ショーとしても楽しめる。必見だ。

◆川崎DF・山根視来はハーフスペースの魔術師である

 右SBの山根はハーフスペースにポジショニングすることが多い。そしてダイナミックにインナーラップしてニアゾーンに侵入する。で、ラストパスやシュートを放つという攻撃的なプレイが得意だ。彼のプレイは見物である。

◆名古屋MF・稲垣祥のミドルシュートを見逃すな

 守備的なセントラルMFである稲垣は、コーナーキックなどの際にはペナルティエリア外のゴール正面にポジショニングすることが多い。
 
 で、ボールがこぼれてくると、カラダを倒しながらボールが浮かないよう低く抑えた速い弾道のミドルシュートを放つ。枠を捉える確率が非常に高い飛び道具だ。

◆川崎MF・田中碧は中盤のコンダクターである

 4-1-2-3システムの右インサイドMFやアンカーを担当することが多い田中は、川崎フロンターレの心臓部を握る存在だ。

 左右へのボールの振り分けや組み立てのパス、ラストパスなどピッチの中央で全体を交通整理する。彼の存在がなければ交差点は混雑して成り立たない。

◆名古屋CB・丸山祐市と中谷進之介、GKランゲラックは要塞の守護者だ

 堅守を誇る名古屋にあって、2CMFと協力して中央に堅い要塞を作る丸山と中谷、ランゲラックは、最後の砦だ。チーム最後部での体を張ったせめぎあいやカバーリング、マーキングなど、彼らを観察して守備のコクを味わおう。

【戦術と戦術のせめぎ合いを堪能する】

 では戦術的にはどうだろうか? まずフォーメーション(予想)は川崎Fが4-1-2-3、名古屋は4-2-3-1だ。ポゼッション率は6:4でポゼッション・スタイルの川崎Fが上回るだろう。ただしカウンター攻撃が得意な名古屋は「やられている」のではない。

 攻撃的な川崎Fは前がかりになり攻めてくる。するとゾーンを上げた彼らの最終ラインの裏にはたっぷりスペースができる。名古屋はそこを狙う。

 つまり相手にボールを持たせ、川崎Fが強く前へ出てくる力を逆用してカウンターを見舞うのだ。攻めているチームは守備のバランスを自ら崩している。そこで名古屋はボールを奪うと素早く敵の崩れた陣形を突く。

 ボールを保持した川崎Fが攻め切るのが速いか? それとも名古屋の反撃が利くか? そこが見物である。

 三笘薫、レアンドロ・ダミアン、家長昭博を擁する川崎Fの3トップは強烈だ。一気に彼らが名古屋を攻め潰す可能性も大いにある。

 そんな彼らのミスを突き、名古屋がボール奪取してカウンターを決められるか? 今日のゲームの焦点はそこにある。

川崎のハイプレスを警戒せよ

 また川崎Fはゲームの立ち上がりにハイプレスをかけ、名古屋のビルドアップを壊しにくるかもしれない。ハイプレスにより前でボールを刈り取り、一気に殲滅する狙いだ。

 ならば名古屋はそれに構うのでなく、ディフェンディングサードで細かくつながず、いったんロングボールを入れて敵のゾーンを押し下げたい。

 また川崎Fは攻めにかかってアタッキングサードでボールを失ったときも、リトリートせず「その場で」カウンタープレスをかけてボールを即時奪回しようとする。

 これにより高い位置でボールを奪えれば、速いショートカウンターのチャンスなのだ。

 では名古屋はどうすればいいか? こんなとき、下手にバックパスに逃げたりするのは下策である。敵が構える刀の前に首を晒すようなものだ。

 ならば名古屋は少ないタッチ数でピッチを斜めに横切る放射状のロングボールを使い、敵のプレスを回避しながらボールを素早くサイドに振りたい。

 もしそれが間に合わないなら、大きくクリアして敵のゾーンを下げさせる。で、陣地を回復してやり直しだ。ディフェンディングサードではセーフティ・ファーストがセオリーである。

川崎Fのポゼッションが生きるか?

 まとめるとゲームの焦点のひとつは、名古屋の緻密なビルドアップからの攻撃が決まるか? それとも川崎Fがハイプレスでその組み立てを破壊しカウンターを見舞うのか? だ。

 またカウンターだけでなく、もちろん川崎Fは丁寧なビルドアップからショートパスとドリブルでポゼッションし、きっちり組み立てて攻めることもできる。この時間帯が長くなれば名古屋はガマンの時になる。

 もっとも名古屋はミドルサードやディフェンディングサードにリトリートし、4-4-2のブロックを作って組織的守備をすることに慣れている。繰り返しになるがこのとき名古屋は「やられている」ように見えて、実は相手にボールを持たせてカウンターのチャンスをうかがっている。

 ならば「個の力」が強い川崎Fとしては完全に攻め切り、シュートで終わることが肝心だ。こうしてプレイをいったん切れば、名古屋の速いカウンターを食らわずにすむ。

 いずれにしろ、今日の試合は狸と狐の化かし合いだ。2連戦のうち1戦目を先勝すればグンと有利になる。ゆえに双方、総力戦で来ることはまちがいない。

 川崎Fの鬼木達監督、名古屋のマッシモ・フィッカデンティ監督による選手交代を使ったゲームマネージメントも含め、見どころ満載。極上のエンターテインメントになりそうだ。

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【J1リーグ】サガン鳥栖が7億円の赤字で大変だ

2021-04-28 19:39:12 | Jリーグ
育成クラブへの転換を図る

 サガン鳥栖が7億円の赤字で大変だ。

 彼らのサッカーには一目惚れしたので、寄付でもしようかな?(まじめな話)

「かつて元スペイン代表FWフェルナンド・トーレスなどを獲得した大型補強路線から、アカデミー出身の若手を数多く起用する育成クラブへと大きく舵を切った」

 これは大正解だと思う。

「今季は19歳MF松岡大起や17歳DF中野伸哉など、若手の成長もあり、ここまでリーグ3位につける健闘を見せている」

 そうそう。若くてイキのいい選手がたくさんいる。

 可変システムでチームのスタイルは変則的かつマニアックだけど、非常にアグレッシブで魅力的なクラブだ。

 FWの林大地や酒井宣福がとてもエネルギッシュですばらしいし、「第二のリベロ」みたいなプレーエリアが広いGKパク・イルギュにも目を見張る。

 実はGKパクには横浜F・マリノス時代に一目見て、ガツンと後頭部をやられた。

 あとはMFにも樋口雄太や仙頭啓矢など渋いところが揃ってる。

 機会があればぜひみなさんも一度観てください。一目惚れすること請け合いです。

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【J1首位決戦】矛と盾はどちらが堅いか? ~第22節 名古屋 vs 川崎プレビュー

2021-04-27 21:22:56 | Jリーグ
対照的なスタイルの戦いだ

 今季J1の首位を争う天王山は、4月29日と5月4日に行われる。

 川崎フロンターレと名古屋グランパスによる異例の2連戦となった。

 あらゆる点で対照的なチーム同士の対戦である。

 首位の川崎Fは遅攻のチームだ。ショートパスとドリブルでポゼッション率を高めながら、ひたすら押してくる。攻撃的だ。

 一方、2位の名古屋は速攻、カウンターのチームである。相手ボールになったら堅い4-4-2の守備ブロックを作り、敵をわざと引きつけてバランスを崩させ反攻を仕掛ける。堅い守備が特徴である。

 だがひとたびボールを持てば、美しいビルドアップからのポゼッション・サッカーもできる。

 両者の予想布陣は以下の通りだ。

【川崎フロンターレ】4-1-2-3

FW 三笘薫 レアンドロ・ダミアン 家長昭博
MF 脇坂泰斗 田中碧
MF ジョアン・シミッチ
DF 登里享平 谷口彰悟 ジェジエウ 山根視来
GK チョン・ソンリョン

【名古屋グランパス】4-2-3-1

FW 山崎凌吾
MF 相馬勇紀 柿谷曜一朗 マテウス
MF 米本拓司 稲垣祥
DF 吉田豊 丸山祐市 中谷進之介 宮原和也
GK ランゲラック

初戦がカギを握る緊迫の2連戦

 異例の2連戦になったこの首位決戦、すべてのカギを握るのは初戦だろう。

 両者の勝ち点差は「3」だが、川崎Fの得失点差が22もあるため、名古屋はたとえ1勝しても(常識的には)順位は変わらない。

 とすれば川崎Fとしては、もし1戦目に勝てば十分なデキだ。2戦目は負けないように戦えばいい。

 一方、得失点差で離されている2位の名古屋としては1勝1分けでもいいが、できれば2連勝して完全にひっくり返したい。では、川崎Fを相手にそれが可能か? この得失点差は予想以上に意味が大きい。

点の取り合いになれば川崎Fが有利だ

 川崎Fは守備の堅い名古屋とちがい、普通に失点する。とすれば守備とくらべ相対的に攻撃力のほうが落ちる名古屋とぴったり噛み合う。ゲームとしてはおもしろい。

 もし点の取り合いになれば川崎Fが有利だ。逆に0-0のまま進むようなジリジリする試合展開になれば名古屋が本領発揮する。

 川崎Fは多彩なフィニッシュを誇るチームだが、特にGKと最終ラインとの間に入れるグラウンダーの速いクロスには要注意だ。強力な破壊力を誇る。

 名古屋の堅陣に対し川崎Fが何点取れるか? というゲームになるが、川崎Fの戦闘力を考えれば十分おつりがくるだろう。

 一方、名古屋としては、川崎Fのショートパスとドリブルをどう抑えるか? がポイントになる。激しいプレッシングを主体にしたインテンシティの高い守備で無失点に抑え、1点を争う展開にしたい。

名古屋はボールを奪ったらサイドチェンジをかませ

 チームとして長くボールを保持しようとするポゼッション・スタイルの川崎Fは、それだけカウンターを受ける可能性が高い。自分たちがボールを持ってポゼッションしているのだから当たり前だ。

 こうしたスタイルに対し、有効なのが名古屋の組織守備とプレッシングだ。つまりチームとチームの噛み合わせがよく、観ている人にとってはスムーズな試合展開が期待できる。

 また川崎Fはショートパスを多用するため選手と選手が近づき、選手間の距離を縮めてボールをつなごうとする。すなわち「小さいサッカー」だ。

 つまりそれだけボールの周辺に選手の「偏り」ができるのが特徴である。

 ならば名古屋はボールを失ったら、素早いネガティブ・トランジション(攻→守の切り替え)から複数の選手がプレスをかけ、ボールを奪ったら一発、大きなサイドチェンジをかますのがコツだ。

 こうすればさっきまでボールに群がっていた川崎Fの3~4人の選手を、まとめて置き去りにできる。そのぶんカウンター攻撃が有効になる。

 ボールを奪ったら、名古屋の特徴であるピッチを斜めに横切る放射状の長いパスを使って大きい展開をし、川崎Fのプレスを回避しながらカウンターをかけたい。

両チームのキーマンはだれだ?

 川崎Fのキーマンはズバリ、三笘とレアンドロ・ダミアン、家長の3トップだ。彼ら3人の「矛」は名古屋の堅陣を粉砕できるのか?

 一方の名古屋はマテウスと相馬という両翼のドリブルに加え、守備的なCMFの稲垣と米本、およびCBの丸山と中谷で作る中央の四角い堅い要塞、つまり「盾」である。

 さて、矛と盾はどっちが堅いのか?

 ついに『韓非子』の故事に結論が出る。

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【J1リーグ】横浜FMが縦横無尽に暴れた ~第11節 横浜FM 5-0 横浜FC

2021-04-26 08:35:26 | Jリーグ
崩壊した横浜FC

 横浜F・マリノスのていねいなビルドアップからの攻撃に対し、横浜FCはミドルプレスで対抗した。だがすぐにボールを持ち出され、横浜FMの攻撃を受ける。

 かなり力が違う印象だ。

 このため横浜FCは失点がかさみ、2失点して以降は相手ボールの際はディフェンディングサードまでリトリートし完全に自陣に引きこもった。

 そのため横浜FMはマイボールになると、常にハーフウェイライン付近まで最終ラインを上げて攻撃した。

 まるでコーナーに追い詰められたボクサーがパンチのラッシュを食らうかのよう。かくて横浜FCは計5失点。勉強代は高くついた。

偽SB化する横浜FMの両SBは攻撃的でおもしろい

 横浜FMのフォーメーションは4-2-1-3だ。スタメンはGKが高丘。最終ラインは右から小池龍太、チアゴ・マルチンス、畠中槙之輔、ティーラトン。

 CBの畠中は非常にフィードが正確でセンスがある。

 かたやセントラルMFは喜田拓也と扇原貴宏。トップ下はマルコス・ジュニオール。3トップは右からエウベル、オナイウ阿道、前田大然だ。

 さて横浜FMのふるまいを見ておもしろかったのは、両SBの動きである。

 例えば右SBの小池は攻撃的でかなり自由に動く。インナーラップしてニアゾーンに入ってきたり、変化に富んでいる。

 かと思えば偽SB化して一列上がって絞り、敵のカウンターに備えたりもする。

 かたや左SBのティーラトンも、チャンスになればゴール前に侵入してくるかと思えば、逆サイドの小池同様、偽SBにもなる。

 このへんは、かのグアルディオラの「発明」に準拠した動きといえる。

PKで「5ゴール劇場」の幕が開く

 ゲームが動いたのは前半29分だった。横浜FMのオナイウが倒されてPKが執行された。キッカーのマルコス・ジュニオールはGK六反勇治の逆を突き、ゴール右スミにきれいに決めた。

 2点目は横浜FMのコーナーキックからだった。キッカーのマルコス・ジュニオールが右足でクロスを入れると、オナイウがヘディングシュートを打つ。

 これがGKに弾かれ、こぼれたところを、エウベルが拾ってゴール前にパス。反応したオナイウがシュートを決めた。

 3点目は後半23分だ。このときは前がかりになった横浜FCのライン裏のスペースが使われた。

 右からマルコス・ジュニオールが、グラウンダーのきれいなパスをライン裏に出す。これに対しオナイウがペナルティエリア中央へ走り込み、GKをかわしてゴール右スミに冷静に決めた。

何が横浜FCを崩壊させたのか?

 後半26分の4点目は横浜FMが左サイドでパス交換して作り、扇原がペナルティエリア左からグラウンダーのパスをゴール前に入れる。反応した前田が倒れながらシュートを沈めた。

 最後の5点目は後半33分である。エウベルが左から中央へグラウンダーのパスを入れた。これを交代出場していたブラジル人のレオ・セアラが拾い、ペナルティエリア中央からゴール左スミに軽く決めた。

 それにしても5失点した横浜FCは前途多難だ。

 前シーズンの最終節、下平監督が指揮する横浜FCの試合を見て「いいチームだな」と思ったのだが……何がマイナスに作用したのだろうか? なんとか立て直してほしいものである。

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【J1リーグ】鳥栖が豪快な2ゴールで2連勝する ~第11節 FC東京 1-2 鳥栖

2021-04-25 19:22:04 | Jリーグ
FC東京、懸命な猛追も及ばず

 J1第11節。アウェイの鳥栖は爆発的な2ゴールで先制し、前半は彼らの独壇場で終わった。

 鳥栖の攻撃的MFの仙頭啓矢が要所で一列下り、アンカーの松岡大起と2CMFのような形を組む変則システムは守備力が高い。FC東京にまったく付け入るスキを与えない。

 だがハーフタイムをはさみ、後半からシステムを4-1-2-3から4-4-2に変えたFC東京が1点を返して激しく反撃する。一進一退の展開になった。

 しかし猛追は及ばず。交代出場したレアンドロの惜しいシュートを最後に、FC東京の逆襲は潰えてタイムアップだ。かくて鳥栖の2連勝で激闘に幕が下りた。

 鳥栖の攻撃的MF、樋口雄太は1ゴール1アシストの大活躍だ。FWの酒井宣福も2試合連続となる完璧なゴールを叩き込んだ。

 終盤、選手交代でDFを増やし、守備を固めた鳥栖・金明輝監督のうまい試合運びが光った。

鳥栖は3-1-4-2と4-4-2システムを使い分ける

 鳥栖のフォーメーションは攻撃時3-1-4-2、守備時4-4-2だ。スタメンはGKが朴一圭(パク イルギュ)。最終ラインは右からファン・ソッコ、エドゥアルド、中野伸哉。

 アンカーは松岡大起、2列目は右から飯野七聖、樋口雄太、仙頭啓矢、小屋松知哉。2トップは林大地と酒井宣福だ。

 攻撃時は両サイドがウイングハーフ的に振る舞い、2トップの背後の中央のMFは樋口が攻撃的に、かたや仙頭は後ろの面倒も見てやや守備的にプレイする。

 一方、FC東京のフォーメーションは4-1-2-3である。GKは波多野豪。最終ラインは右から岡崎慎、渡辺剛、ジョアン・オマリ、小川諒也。

 アンカーは森重真人。右インサイドMFは安部柊斗、左インサイドMFは東慶悟。3トップは右から永井謙佑、ディエゴ・オリヴェイラ、アダイウトンだ。

鳥栖のFW酒井が完璧な先制弾

 立ち上がりはFC東京が支配したが、前半18分に鳥栖が反転攻勢する。

 樋口が右サイドから、左足でドンピシャのダイアゴナルな強いクロスを入れる。これに敵DFと競り合いながらFWの酒井が頭で合わせ、完璧なヘディングシュートを見舞う。

 鳥栖の先制弾だ。

 酒井がうまくカラダを入れた。彼はフィジカルに優れ競り合いに強い。頼もしいアタッカーである。

 鳥栖のビルドアップは攻撃的な左CBの中野伸哉が、幅を取り高く前へ張り出す。これでオフェンシブなMFが4人から5人へと変化し、2バックの状態で組み上げる変則的なスタイルだ。

 チームにはカラダをぶつけてハードワークできる選手がそろっており、球際のデュエルが激しく競り合いに強い。

鳥栖のMF樋口がファインゴールを決め2点目

 前半33分。一列下りた鳥栖の仙頭が、フィールド中央のライン間にいる樋口にグラウンダーのパスを出す。

 これをゾーンのギャップで受けた樋口は、ダイアゴナルな強くて速いグラウンダーのスルーパスをペナルティエリアに侵入した酒井に送る。だが酒井はマーカーともつれて倒れた。

 このときマークについたFC東京のCB渡辺が、右足で酒井の左足を小突いて倒したように見えた。だが笛は鳴らない。

 そして34分、鳥栖の2点目が入った。

 まず鳥栖の酒井および林と、FC東京のアンカー森重が競り合う。で、鳥栖がボールを奪取した。このとき仙頭がボールを松岡に預け、松岡はダイレクトで前縦にいた樋口にパスする。

 樋口はそのままひらりとターンしてドリブルし、ペナルティエリア手前右からゴール左スミへと豪快に突き刺す。ファインゴールだ。

 このときFC東京は、左インサイドハーフの東が樋口を追走しただけ。だれも強く競りに行かなかった。左SBの小川も絞りが遅れた。またCBのジョアン・オマリは、ゴール前の敵選手につられて下がり寄せに行けなかった。

FC東京はプレスが弱く競り合わない

 FC東京はマークが甘く、競り合わない。そのため鳥栖の選手はボールを持つと、ほとんどノープレッシャーで自由自在にパスをつないだ。

 また2点先行している彼らは、FC東京ボールになれば念には念をとディフェンディングサードまでリトリートして4-4-2の強固なブロックを敷く。

 一方のFC東京は、ビルドアップ時に右SBの岡崎が高い位置取りをする。で、2CBと左SBが右にスライドして3バックを形成する。だがビルドアップ後にうまく前でボールをつなげずフン詰まってしまう。

後半、FC東京が激変した

 そんなFC東京は後半の頭から、右SBの岡崎に代えMFの内田宅哉を入れた。同時にCBの渡辺をひっこめ、MFの青木拓矢を投入する。

 FC東京はこの交代で内田を右SBに、またアンカーの森重をCBにして4-4-2に変えた。そしてアダイウトンを左SHにし、ディエゴ・オリヴェイラと永井謙佑の2トップにした。

 ハーフタイムにFC東京の選手たちは、長谷川健太監督からネジを巻かれたのだろう。彼らは前半の動きとはぜんぜんちがい活発だ。

 そして後半8分。FC東京は小川がキッカーを務めた左CKから、森重が競りながらヘディングシュート。ボールはゴールの左ポストを直撃して入った。

 これで1-2だ。追撃である。

FW林大地が猛然とプレスバック!

 続く後半9分。FC東京は森重が鳥栖ボールを奪い、カウンター攻撃を見舞う。森重は前縦にいた永井へ浮き球のパス。永井はこれをヘディングで右サイドのディエゴ・オリヴェイラへ。

 オリヴェイラは鳥栖陣内をドリブルで駆けるが、なんとこれに鳥栖のFW林大地が激しく並走する。FWの位置から自陣ゴール前まで戻り切った林は、最後に一発、強烈なタックルをかます。

 そのためたまらずオリヴェイラはシュートをバーの上へはずした。

 自ゴール前まで全力疾走する林の熱いプレスバックだ。こんな壮絶な守備をするフォワードは見たことがない。

FC東京が激しくハイプレスをかけ始める

 だがFC東京はディエゴ・オリヴェイラのシュートで勢いづき、ボールを保持してポゼッションする時間が長くなった。左SB小川諒也がオーバーラップして積極的にシュートを放つ。いい選手だ。

 これに対し鳥栖はピッチを斜めに横切る放射状の長いサイドチェンジを入れるなど、大きい展開をしている。

 FC東京も負けじと、前半とは打って変わって激しく競るようになる。彼らは永井を中心に強くハイプレスをかけるようになった。FC東京のほうが「個の強さ」があり、それに対し鳥栖が組織力で対抗する構図だ。

 いまや双方たがいにポゼッションし合い、どちらが勝つのかまったくわからない展開になった。劇的な死闘である。

鳥栖が名古屋に勝ったのはフロックじゃない

 後半38分、鳥栖はFWの林に代えてDFの田代を入れ、3バックから4バックに変える。守備を固めて試合を終わらせる作戦だ。

 後半46分、途中出場したFC東京のレアンドロが、鳥栖DFの前で左に切り返して強烈なシュートを見舞う。だがこれを鳥栖のGK朴一圭は、ジャンプして左手1本で弾いた。ファインセーブである。

 このシーンがついに幕切れとなり、終わりを告げるレフェリーの笛が静かに鳴った。

 これで鳥栖は2連勝。7勝2分3敗で堂々の3位である。前節、鉄壁の守備を誇る名古屋グランパスにリーグで唯一、土をつけたのはフロックじゃない。

 自ゴール前まで自陣を縦に走り切り、壮絶なプレスバックを見せたFW林大地の熱い姿が今も頭から離れない。

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【J1リーグ】柏のハイプレスが冴え渡る ~第11節 柏 5-1 徳島

2021-04-25 07:00:00 | Jリーグ
徳島はビルドアップを壊された

 ビルドアップに迷いがある徳島ヴォルティスの最終ラインに対し、柏レイソルが容赦なくハイプレスをかけてボールを刈り取った。

 徳島はダニエル・ポヤトス監督が就任する3節前までは、ハイライン・ハイプレスでいいサッカーをしていたが……。新監督はどんなサッカーを志向しているのか、よく見えない。

 試合の途中で徳島の左SBジエゴがベンチの監督に何か言っていた。もしかしたら監督とのコミュニケーションがうまく行ってないのだろうか? 徳島が心配だ。

柏は日本代表の江坂任に注目だ

 徳島のフォーメーションは4-2-3-1である。スタメンはGKが上福元。最終ラインは右から岸本、鈴木大誠、福岡、ジエゴ。

 セントラルMFは岩尾と藤田譲瑠チマ。2列目は右から杉森、宮代、藤原。ワントップは垣田だ。

 一方、柏のフォーメーションは3-4-2-1。この日も1ゴールを上げた、日本代表に選ばれている江坂任が注目の選手だ。関係ないが柏の選手はイケメンが多い。

徳島のバックパスをプレスが襲う

 ボールを保持した徳島の中盤はプレスを受けると、こわがってすぐバックパスしてしまう。ボールを下げて最終ラインで回そうとする。これに柏が、待ってましたとばかりに狙いのハイプレスをかける。飛んで火にいる夏の虫だ。

 この展開がえんえんと90分間続いた。

 その徳島のポゼッション率はなんと66%だ。ポゼッション率がそれだけあれば、ふつう勝っていそうなものだが。要はいかに徳島は最終ラインで意味もなくムダにボールを持たされていたか? という結果である。

 一方、柏は中を締めた守備が非常にタイトですばらしく、万一、徳島にボールを渡してもまったく危なげない。特にセントラルMFの仲間が守備に非常に効いている。いい選手だ。

 チーム全体のゲームモデルといい、選手個々の質といい、さすが名将ネルシーニョが丹精込めて作り上げたチームだけのことはある。そんな彼らが12位にいるというのは不思議だ。開幕ダッシュに失敗したからだが、彼らならいまからでも遅くない。勝負はこれからだ。

徳島はロングボールで敵を下げさせるべき

 ではそんな柏に対し、徳島はどうプレイすべきだったのか? 徳島は最終ラインでプレスを受けたら、例えばいったんロングボールを入れて相手のゾーンを下げさせるなどの対策を取るべきだった。

 にもかかわらず真っ正直にバックパスしてはプレスを受けるのでは、敵が刀を構えるところに首を差し出すようなものである。これではどんなチームでも勝てないだろう。

 あるいは背後にマークがついていても、例えばその選手の足元にボールを当ててそれをダイレクトで落とす、そしてボールをサイドに開く、などのトライもすべきだった。とにかくボールを動かすことだ。

 にもかかわらず、この日のように後ろ向きのパスばかりではどうしようもない。

 一時期、Jリーグではバックパスが疫病のように流行ったが、いまではすっかり収まっている。つまりJ2から昇格したばかりの徳島は、いわば時代に遅れているのだ。このやっかいなバックパス癖から脱出する必要がある。

 万一、このバックパスが新監督の指示なのだとしたら……問題を早期に除去すべきだろう。

江坂と呉屋が光った柏の1点目

 そんなこの日の展開が象徴的だったのは、柏の1点目のゴールだった。あの得点劇にこの試合のエッセンスがすべて凝縮されている。

 まず徳島のビルドアップに対し、柏が激しくプレスをかけて押し上げてきた。

 そして江坂がペナルティエリア付近で徳島のパスを巧妙にカットし、左へパス。それに呼応した呉屋がエネルギッシュに左足を振り抜き見事にシュートを決めた。

 こんなふうに徳島は柏のプレッシングを受けながら、よりによって最大の危険地帯である最終ラインでボールを無理やり回そうとした。

 5-1の敗戦はその結果だ。

 なにごとも経験である。徳島はこの試合をよく分析し、ぜひ今後に生かしてほしい。

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【J1リーグ】名古屋のいいところしかないゲームだった ~第11節 名古屋 2-0 G大阪

2021-04-23 22:04:03 | Jリーグ
ついに首位と勝ち点3差に

 完勝だった。

 ガンバ大阪は「枠内シュート」すら1本も打たせてもらえなかった。

 一方、名古屋グランパスのMF相馬勇紀は、1ゴール1アシストと大爆発。先制点を取ったFWの山崎凌吾は今季3点目のゴールである。

 この日、名古屋のポゼッション率はなんと39%。敵を引きつけて敵陣にスペースを作り、相手の態勢を崩させてからカウンターを見舞うゲームモデルが光っている。

 これでリーグ2位の名古屋は9勝2分1敗で勝ち点29とし、首位・川崎フロンターレに勝ち点3差と迫った。次は4月29日と5月4日にその川崎Fとの2連戦を迎える。天王山だ。ついにトップを射程に捉えた。

 名古屋のフォーメーションは4-2-3-1。スタメンはGKがランゲラック。最終ラインは右から成瀬、木本、丸山、吉田。セントラルMFは米本と稲垣。2列目は右からマテウス、柿谷、相馬。ワントップは山崎だ。

またマテウスがトランジションの悪さを露呈するが……

 序盤は両チーム、ロングボールの蹴り合いになった。そんな落ち着かない展開のなか、前半10分。名古屋は左SHの相馬が、ドリブルから枠内シュートを放つがGK東口がセーブ。

 16分にもマテウスが右からシュートを撃ち、これはガンバDFに当たりあわやオウンゴールだったがGK東口が収めた。

 そんななか、マテウスがまた悪いクセを出す。

 20分、ガンバのパスミスから名古屋ボールになる。絶好の速いショートカウンターのチャンスだった。だが肝心のマテウスがのんびり歩いて攻撃をスローダウンさせてしまい、せっかくのチャンスがフイになる。トランジション(切り替え)の悪さを露呈した。

 マテウスは序盤に接触プレイを受け、イライラが続きメンタルが落ち着かない感じだった。彼はいつもこうしてメンタルがトランジションに影響する。非常に攻撃力のある選手だが、ブラジル仕込みのムラっ気なメンタルがネックだ。

山崎が氷のように冷静な先制ゴール

 だがそんなもやもやを吹き飛ばしたのが前半29分の先制点だった。

 左サイドを相馬がドリブルし、最後のひと突きでマーカーをかわしクロスを入れた。これをファーにふくらんだFWの山崎凌吾が胸トラップし、落ち着いてきっちり左足で決めた。完璧なゴールだった。

 相馬のドリブルは川崎フロンターレ・三笘薫の「日本人が大好きな」チマチマこねるドリブルとは違い、爆発的な推進力がある。

 三笘のドリブルはとりあえず目の前の敵を抜くためのものだが、相馬のドリブルはクロスを入れるため、シュートをするため、という「次のプレイ」がハッキリしている。そんな特徴がよく出た好アシストだった。

相馬のよさが炸裂した2点目

 そんな相馬がこの日のハイライトを演出した。

 後半10分。敵のライン裏にたっぷりできたスペースに、左SBの吉田が強いグラウンダーのパスを入れ、相馬を走り込ませる。

 受けた相馬はドリブルでペナルティーエリアまでボールを持ち込んだ。そして左足で切り返しマーカーをかわすと、右足でシュート一閃。きれいにゴール右スミへ突き刺した。

 オープンスペースに爆発的な勢いで走り込んだ相馬のすばらしいオフ・ザ・ボールの動きが光った。彼は東京五輪スタメン奪取に向け、猛烈なアピールになっただろう。

カウンター攻撃を見据えた鉄壁のブロック

 一方、チーム全体の動きに目をやると、名古屋はボールを失えば例によってスルスルとミドルサードまでリトリートし、4-4-2の鉄壁のブロックを敷く。

 この状態で、例えばこの日は前半44分から47分までガンバがたっぷりボールをキープし続けた。だがまったくのノーチャンス。最後は名古屋が右サイドでボールを奪うと、マテウスがワンツーで抜け出したちまちチャンスを作った。

 堅い守備を生かし引き気味でブロックを作る。これにより敵をわざと前がかりにさせてバランスを崩させ、カウンター攻撃のチャンスを狙う。そんな名古屋のゲームモデルが光った。

 その直後にはガンバのCK崩れからのこぼれ球に反応した名古屋のCMF稲垣祥が、ペナルティエリアの外から低く抑えられた速い弾道のミドルシュートを見舞う。

 わずかにそれたが、稲垣のミドルは本当に得点確率が高い。

 かたや稲垣と2CMFを組む相棒の米本は、中央でのボール奪取から左サイドの相馬に向けダイアゴナルな長い放射状のパスを繰り出す。名古屋名物の「大きいサッカー」だ。

「リトリート劇場」発動

 笑ったのは2点目を奪い2—0にした後半10分以降である。これ以後、名古屋はガンバのボールになるとご丁寧にディフェンディングサードまで引いてブロックを作る余裕の「リトリート劇場」を展開した。

 まるでイタリアにいるみたいだ。

 ボールを失うたび名古屋が完全に自陣に引くので、ガンバ陣内には無人のスペースがたっぷりある。

 そのためガンバGKの東口はなんと1人でハーフウェイライン付近まで上がってきて、DF2人とともに「3バック」を作りビルドアップしている。GKのあんなシーンは初めて見た。

最後は5-3-2に変え守り切る

 そして試合終盤になると、今度は名古屋の指揮官の出番だ。「マッシモ・フィッカデンティ劇場」である。

 まずは後半32分に攻撃の要である柿谷に代え、守備的なCMFの長澤和輝を投入。米本をアンカーにした3センター含みの4-1-4-1にシステムを変えた。名古屋の勝ちパターンである。

 しかもそれだけじゃない。この日はさらに後半36分、攻撃の駒マテウスに代えてCBの中谷進之介を入れて3CBを形成し、システムをなんと5-3-2に変えたのだ。

 そのためガンバ陣内には無人のスペースがたっぷりできた。途中投入で2トップの一角に入った齋藤学がその前のスペースでガンガンプレスをかけ、ガンバのボールを1人で追いかけ回して猛ダッシュを繰り返す。

 まあ走るわ、走るわ。しかも彼はなんとボールを奪取し、後半51分にはドリブルからトウキックのおもしろいシュートまで放って見せた。

齋藤学のフォア・ザ・チーム

 チームはすでに守備的なモードチェンジをしている。ゆえに2トップがプレッシングし、少しでも敵の攻撃を緩和するのは当然だ。

 だがそれだけでなく攻撃の駒である齋藤学の頭には、おそらく首位・川崎Fに遠く離されて10点近くも差がある得失点差がよぎっていたのではないか?

「ここで俺が点を取れば、得失点差が少しでも縮まる」

 そんなフォア・ザ・チームな熱いメンタルがあの猛ダッシュを生んだのだ。この名古屋のチーム一丸となった一体感はすごい。

 さて終わってみれば、名古屋は10試合目のクリーンシートだ。

 相馬は29回もスプリントし、米本と稲垣の2セントラルMFは13キロ近く走っている。まったく名古屋のいいところしかないゲームだった。

 さあ、あとはゴールデンウイークに迎える首位・川崎Fとの黄金の2連戦だ。

 ぶちかまそう。

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【J1リーグ】先制された名古屋は脆かった ~第10節 名古屋 1—2 鳥栖

2021-04-19 07:00:50 | Jリーグ
鳥栖がすばらしくファイトした

 開幕からここまで名古屋はオウンゴールのみの1失点、対する鳥栖は3失点と守備の堅いチーム同士の対戦になった。

 ところが試合は思わぬ展開になる。前半6分にいきなり鳥栖がゴールを決め、名古屋は明らかに動揺した。組み立てにミスが多い。

 そこを狙われ前半45分にも2失点目を食らい、万事休す。後半に1点返したものの、名古屋は意外な脆さを露呈した。

 名古屋のフォーメーションは4-2-3-1。スタメンはGKがランゲラック。最終ラインは右から宮原、中谷、丸山、吉田。セントラルMFは稲垣と長澤。2列目は右から前田、阿部、マテウス。ワントップは山崎だ。

 一方、鳥栖のフォーメーションは3-1-4-2。林大地、酒井宣福の2トップが強烈にアグレッシブなチームである。

早々の失点でビルドアップが不安定に

 まず最初に名古屋が「洗礼」を受けたのは前半6分だ。

 左サイドの崩しから鳥栖のFW酒井がダイレクトで鋭いマイナスのクロスを入れた。これに呼応しニアに走り込んだFW林大地が、これまたダイレクトのすばらしいヘッドで鮮やかにゴール。名古屋は10試合ぶりにゴールを割られた。

 名古屋は相手に先制される初めての形だ。彼らがこの試合に勝つためには、この時点で最低でも2点を取らなければならないことが確定した。相対的に攻撃力が弱い名古屋にしては苦しい展開だ。

 事実、この失点以降、彼らは明らかに精神的に動揺していた。いつもはスムーズに組み上げるビルドアップも微妙にパスがズレるシーンが続出。鳥栖が激しくプレスをかけてくる影響もあるが、明らかにいつもの名古屋ではなかった。

 加えて鳥栖の試合ぶりがすばらしかった。特に林と酒井の2トップは名古屋のビルドアップに対し激しくプレス。チーム全体に球際の競り合いが強く、インテンシティが高い。よくプレッシングし、よくハードワークする粘り強い好チームだ。

ミドルサードより前でボール保持できない

 そして第二のショックは前半45分に訪れた。

 前半45分、鳥栖のFK崩れから名古屋のクリアを拾った酒井が、爆発的なミドルシュートを名古屋ゴールに叩き込んだ。これもすばらしいシュートだった。

 鳥栖は林、酒井の2トップに粘りがあり、攻撃をよくけん引していた。鳥栖の攻撃は時に3トップ気味になり、ゴールを陥れる鬼気迫る迫力があった。

 名古屋はいつもとちがいややぎこちないビルドアップで組み立てるが、特にミドルサードから前で有効なボール保持ができてない。鳥栖のプレッシングがよく、必ず競り合いに持ち込まれ余裕をもってボールキープできない。

 さて前半を終わり、シュート数は鳥栖の6本に対して名古屋は1本。この数字の対比が本ゲームをよくあらわしていたといえるだろう。

リードした鳥栖は4-4-2にシステム変更

 ゲームは後半を迎え、大きく動いた。まず名古屋は後半開始と同時に阿部と長澤に代えて、柿谷と米本を投入。また後半9分には前田と宮原を引っ込め、相馬と森下を入れた。

 これに対し鳥栖は、後半立ち上がりからフォーメーションを4-4-2に変えた。

 彼らは2点のリードをもっている。で、より守りやすい陣形である4-4-2を選択したのだろう。案の定、鳥栖はボールを失うとミドルサードに強固なブロックを敷いた。

 このあたり、両監督の虚々実々の駆け引きが見られ非常に興味深かった。

名古屋は玉砕的なパワープレイに

 後半、攻めに出た名古屋は積極的に動いた。後半40分には今季初出場になった森下龍矢が右サイドからドリブル突破。このこぼれ球に稲垣が鮮やかなミドルシュートを突き刺した。

 後半40分、名古屋は攻撃の要であるマテウスに代え、DFの木本恭生を投入。一瞬、この交代の意味がわからなかったが、マッシモ・フィッカデンティ監督は強さのある木本を最前線に置き、パワープレイを展開した。

 試合の残り10分、名古屋は鳥栖陣に向けアーリークロス、ロングボールの雨を降らせたが果たせず。鳥栖が名古屋の攻撃を抑え切って堂々勝利した。

 この試合、追う立場になった名古屋は意外なメンタルの弱さを見せた。優勝戦線に向け、この点は改善すべき課題だろう。

 また負けた名古屋のポゼッション率が61%なのも興味を引いた。ポゼッションにこだわらず、カウンターに徹した鳥栖に軍配が上がったということだ。日本人のポゼッション信仰は、これで少しは収まるだろうか?

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