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すちゃらかな日常 松岡美樹

積極財政などの政治経済をすちゃらかな視点で見ます。ワクチン後遺症など社会問題やメディア論、サッカー、音楽ネタも。

【J1リーグ】鹿島のハイプレスが光る ~第10節 徳島 0‐1 鹿島

2021-04-18 07:12:50 | Jリーグ
負けた徳島のポゼッション率はなんと64%

 鹿島は相手にボールを持たせ、ハイプレスで徹底して徳島のビルドアップを壊しに来た。これがまんまと当たりウノゼロ勝ち。鹿島のゲームモデルの勝利である。

 フォーメーションは両者4-2-3-1同士のミラーゲームになった。ただし戦術はまったくちがう。

 徳島は最終ラインからていねいにビルドアップしようとするが、鹿島のワントップである上田綺世や両SHが前からしきりに圧をかけプレッシングする。

 すると気圧された徳島はバックパスに逃げる、という流れ。徳島のポゼッション率64%というのは、もっぱらこのデイフェンディングサードにおけるビルドアップの試行錯誤に消費された。つまり有効なポゼッションじゃなかった。

 ふつう支配率64%などといえば負けようがないように思えるが、ポゼッション率は勝敗に必ずしも直結しないことがこの日も証明された。

 徳島は低い位置で逃げのバックパスと、横パスばかり繰り返していただけだったのだ。

相馬直樹新監督の研究が光った?

 徳島はハイライン・ハイプレスのチームである。この日、初陣になった鹿島の相馬直樹新監督はおそらくそれを研究していたのだろう。

 鹿島は徳島のビルドアップに圧をかけ、彼らを低いゾーンに押し込めた。

 そのせいでこの日の徳島は最終ラインがいつもより低く、敵にハイプレスをかけるシーンなどほとんどなかった。完全に鹿島のスカウティングの勝利だろう。

 徳島は自分たちのゲームモデルを破壊され、いつものサッカーができなかった。そのため彼らのハイライン・ハイプレスは鳴りを潜めた。

プランBがなかった徳島

 後半に入っても、この構図は変わらなかった。

 鹿島が最終ラインにハイプレスをかけてくるので、徳島は前へボールを持ち出せない。特にミドルサードからアタッキングサードにかけて、ボールを持てなかった。徳島はプランAを破られ、うしろで回しているだけだ。

 たとえば徳島は、前線にロングボールを入れるようなプランBで鹿島のラインを下がらせるなど、相手の対策に対する打開策がほしかった。

 だがその後も試合の流れは変わらず、後半46分には鹿島はFWの上田綺世に代えて守備的MFの永木亮太を入れて試合を終わらせた。

徳島は十分にJ1残留する力をもっている

 シーズンのスタートでもたついた鹿島はこの日のような知的サッカーをして行けば、上位への返り咲きも十分あり得るだろう。

 特にFWの上田綺世はよかった。巷間、東京五輪のFWのオーバーエイジは大迫を推す声が強いが、個人的にはFWにはオーバーエイジは使わず上田と前田大然(横浜FM)で行って欲しい。ぜひ見たい。

 一方、徳島は持ち前のハイライン・ハイプレスで、前節まで非常にいいサッカーをしていた。この日の反省で修正するところは修正して、また態勢を立て直し挑んでほしい。

 それができれば徳島は十分にJ1残留する力をもっている。がんばってほしい。

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サッカーメディアの愚かな「記録主義」

2021-04-16 08:22:32 | Jリーグ
試合内容より「記録」をありがたがる

 サッカーのメディアを見ていて非常に疑問を感じるのが、過剰なまでの「記録主義」だ。

 例えば「名古屋グランパスは9試合連続の無失点を達成し、27年間破られなかった無失点継続時間を818分に伸ばす新記録を樹立した」とかなんとか。

 そんなもん、選手や監督はまったく気にしていないし、観客もそうだ。

 スポーツメディアというのはどうも、このテの悪しき「記録主義」が強い。

 そんなどうでもいい記録について書くヒマがあったら、「その試合はどんな戦術によって行われ、その結果、試合の流れはどう変わったか? また相手チームはその戦術にどう対抗したか?」のような、試合の「内容そのもの」をキッチリ分析した記事が読みたい。

 そう思うのは私だけだろうか?

 名古屋グランパスがいくら「無失点記録」を更新しようが、優勝できなければ何の意味もない。

 メディアはもっと「本筋」に触れてほしい。

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【J1リーグ】名古屋が優勝するにはウノゼロ勝ちではダメだ ~第19節 名古屋 1-0 広島

2021-04-15 08:55:02 | Jリーグ
セットプレーで勝つ

 名古屋は前半22分、マテウスがキッカーを務めた左CKをCBの丸山祐市がヘッドで決めて先制。そのままスコアは1-0で動かず、難敵・広島をセットプレーのみで下す絵に描いたようなウノゼロ(1-0)勝ちを決めた。

 名古屋のフォーメーションは攻撃時4-2-3-1、守備時4-4-2。スタメンはGKがランゲラック。最終ラインは右から宮原、中谷、丸山、吉田。

 セントラルMFは稲垣と米本。2列目は右からマテウス、齋藤学、相馬。ワントップは柿谷だ。

サイドを変える大きな展開

 名古屋は最終ラインからグラウンダーのボールでていねいにビルドアップする。インサイドキックから放たれるパスのボールスピードが速く、非常に気持ちいい。

 スパン! という感じだ。

 さて前半4分、右SBの宮原が左SHの相馬に向け、ピッチを斜めに横切る長い対角パスを送る。これが名古屋のトレードマークである「大きいサッカー」だ。

 おそらく名古屋のマッシモ・フィッカデンティ監督は、口うるさく(笑)「サイドチェンジを入れてゆさぶれ」と繰り返しているのだろう。

 ショートパス中心の川崎フロンターレあたりには見られない、大きな展開だ。このスケールの大きい組み立てが名古屋のサッカーにダイナミズムをもたらしている。

柿谷の守備意識に目を見張る

 この日、左SHの相馬は意識してハーフスペースにポジショニングし、そのぶん同サイドのSB吉田が高い位置を取っている。

 前半11分、中盤でボールを持ったその相馬が、広島のライン裏にできた大きなスペースにスルーパスを入れる。柿谷を飛び込ませる狙いだ。だが呼応して走り込んだ柿谷はシュートまで行けない。

 しかしそれにしても柿谷の前線での守備の意識はすごい。最前線でプレッシングするだけでなく、プレスバックも丹念に怠らない。このあたり、守備にうるさいフィッカデンティ監督に口酸っぱく言われているのだろう。

 さて、その10分後。冒頭に書いた通り左CKから丸山のヘディングシュートが決まり名古屋が先制する。ここから名古屋のお家芸であるウノゼロ劇場の始まりだ。

 なにしろ守備の堅い名古屋に先制点をやると、相手チームにとっては実質、「2点分」の意味がある。それほどこのチームのゴールを割るのはむずかしい。

3センターの4-1-4-1に変える

 そして1-0でリードしたままの後半30分には、フィッカデンティ監督は名古屋の攻撃の要であるマテウスに代えてセントラルMFの長澤を投入する。この日のハイライトだ。

 これにより米本をアンカー、長澤を左インサイドMF、稲垣を右インサイドMFとし、真ん中を厚くしたシステムである4-1-4-1に変えたのだ。

 つまりゲームが残り15分のところで、1-0でリードしたまま試合を終わらせる守備固めをしたのである。イタリア人であるフィッカデンティ監督には、こういう「ウノゼロの血」が流れているのだろう。

 たぶんフィッカデンティ監督は、「残り15分だからあの選手とあの選手を代え、中盤真ん中を3センターにして堅陣にしよう」などと、あれこれチームを固くする策を練るのが大好きなんだろうな。

 セットプレーで賢く先制し、4-1-4-1で逃げ切る。確かに手堅い采配だ。

 ただし今季に関しては、個人的には大きな危惧がある。

ウノゼロでは優勝できない

 首位を走る攻撃的な川崎フロンターレは、おそらく大量点を取ってマンチェスター・シティばりの全勝に近い勝ち方でシーズンを終わるだろう。

 それに対し2位の名古屋が彼らを凌駕して優勝するには、ウノゼロ、つまり1-0の勝ち方では上回れない。

 まだシーズン序盤のいまならいいが、シーズン中盤から終盤にかけて両者全勝に近い形で競ってくると得失点差や総得点数がモノを言う。

「2位でいい」ならウノゼロを楽しむのもいいが、優勝を狙う気があるならそれでは困る。どこかで点を取りに行く勝負をかける必要が出てくるだろう。

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【Jリーグ】名古屋が優勝するには攻撃力が足りない ~第8節 湘南 0-0 名古屋

2021-04-08 08:33:16 | Jリーグ
湘南の術中にハマったグランパス

 前半43分に1人退場になった湘南が、粘りとハードワークで「勝ち点1」をもぎ取った。逆にゲームを支配した名古屋は、攻撃力と決定力の不足を露呈したゲームになった。

 名古屋のフォーメーションは攻撃時4-2-3-1、守備時4-4-2。スタメンはGKがランゲラック。最終ラインは右から成瀬、中谷、丸山、吉田。

 セントラルMFは長澤と稲垣。2列目は右からマテウス、柿谷、相馬。ワントップは山崎だ。

名古屋が終始ゲームを支配したが……

 名古屋はポゼッション率60%と終始ボールを保持した。CMFのどちらかが最終ラインに落ち、3バックを形成してていねいにビルドアップして攻撃する。

 これに対し、湘南が激しい球際でがっつりプレッシングし、カウンターを繰り出す展開である。

 逆に湘南はヘタにうしろからビルドアップしようとするとミスが出る。最終ラインから組み上げる能力は、名古屋とは1段差がある印象だ。

勝負を分けた湘南の退場劇

 ところが湘南は前半43分に1人退場者を出し、これで逆にやることがハッキリした。彼らは最終ラインを5バックに変えてシステムを5-3-1とし、堅く「負けないサッカー」をめざす。

 1人減った湘南が最終ラインを低くしたため、名古屋は敵陣でよくボールが持てるようになったが攻め切れず、フィニッシュがなかなか決まらない。

 逆にいえば名古屋は湘南にボールを「持たされ」て、ワナにはまった。

 これで後半は完全に攻める名古屋、守る湘南という展開になったが名古屋は決め切れず、最後は両者無得点のままタイムアップとなった。

 名古屋とすれば10人の相手に攻めあぐね、引き分けて「勝ち点1」は負けに等しい結果だ。一方、湘南は熱いハードワークで勝ち取った貴重な「勝ち点1」といえるだろう。

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【Jリーグ】一歩も引かないねじり合い ~第7節 名古屋 0-0 FC東京

2021-04-04 04:19:03 | Jリーグ
守備のコクを味わう

 両チーム一歩も譲らず、相手の攻めをどう粉砕するか? という知略のゲームになった。攻撃は6:4でFC東京のほうに分があったが、名古屋の守備がことごとく弾き返し、非常に緊張感のあるいい試合だった。

 名古屋のフォーメーションは攻撃時4-2-3-1、守備時4-4-2。スタメンはGKがランゲラック。最終ラインは右から宮原、中谷、丸山、吉田。

 セントラルMFは稲垣と米本。2列目は右から前田、ガブリエル・シャビエル、マテウス。ワントップは柿谷だ。

敵の攻めを逆用する知力のゲーム

 前半5分にFC東京は2本続けて強烈なシュートを放つが、GKランゲラックがことごとくセーブ。ここから次第にFC東京のペースになって行った。

 名古屋はしきりにサイドを使って攻めるが、肝心のバイタルエリアで攻めの形を作らせてもらえない。

 FC東京は守備が非常によく、中央でクサビを受けた選手を絶対に振り向かせない。

 勝負は後半に入り、12分に名古屋のフィッカデンティ監督が動く。ガブリエル シャビエルに代えて相馬、前田に代えて齋藤学を投入する。

 この攻撃的な交代によりボールが動くようになり、次第に名古屋がペースを握った。相馬とマテウス、齋藤学が再三ペナルティーエリア近辺に侵入したが、それでもFC東京の守備に弾き返される。

 終わってみれば、両者無得点の引き分けという結果になった。

 守備のいいチーム同士の対戦になったが、ただ守っているだけでなく相手の攻めを利用してどう反攻するか? そこを争う知力のゲームになった。ゴールはなかったが非常に見ごたえのある試合だった。

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【名古屋グランパス】優勝に向け爆進するウノゼロ軍団が熱い

2021-04-02 07:35:50 | Jリーグ
1-0で勝つイタリアの美学

 J1開幕からここまで、名古屋グランパスの全試合を丹念に観戦してきた。彼らは実にすばらしい試合を展開している。

 成績は6勝負けなしで堂々の2位。首位の川崎フロンターレとは、1引き分け差で勝ち点1の差だ。

 しかもそのほとんどの試合が完勝といえるデキで、ウノゼロ(1-0)のシャットアウト勝ちが4試合。3-0の試合が1試合ある。要は相手に何もやらせてないのだ。いかにもイタリア人監督が率いるチームである。

攻守の切り替えが素早く帰陣が速い

 名古屋のフォーメーションは攻撃時4-2-3-1、守備時4-4-2だ。彼らはボールを失うと近くのファーストディフェンダーが素早く敵のボールホルダーにディレイをかけ、パスコースをふさぐ。

 で、速いトランジションからリトリートし、ミドルサードに4-4-2のブロックを作る。このボールロストから、ブロック守備に移るまでの切り替えがすばらしく速い。

 つまり相手チームから見ると、「ボールを奪った。さあ攻めよう」となった次の瞬間には、必ずこの難攻不落の守備ブロックを相手にしなければならないわけだ。

 特に敵のポジティブ・トランジション(守→攻への切り替え)に少しでも時間がかかると、サーッと鮮やかにブロックを完成させてしまう。こうして敵にボールを持たせ、「やらせておく」というゲームマネジメントができるチームだ。

 そして名古屋はブロックを作り終えると、2トップが敵のセントラルMFへのパスコースを切りながら、ボールをキープする相手のCBにプレッシャーをかける。

 こうして敵のボールをサイドに追い込み、サイドでボールを刈り取るのだ。

決して守備偏重のチームではない

 こんなふうに名古屋は組織守備が得意なチームだが、決して自陣に引きっぱなしでアバウトなロングボールを放り込むような守備偏重のチームではない。

 彼らはボールを持つと、強くて速いインサイドキックから放たれるグラウンダーのパスでスピーディーにビルドアップし、意図のあるボールを前線に送り込む。

 このとき繰り広げられるのは、次の展開を考えたパスワークだ。まるであらかじめ設計図を描いているかのようである。

「とりあえず隣にいる味方にボールを預けよう」というような、あいまいで意図のないプレイがない。その意味では11人が有機的につながっている。

 パスの種類は、2タッチ以内の速いパスワークが基本だ。

 またなかでも特徴的なのは、ピッチを斜めに横切る長いサイドチェンジを多用する点である。つまり「大きいサッカー」をする。狭いゾーンで必要以上にボールを足元でちまちまコネるようなシーンがない。

 特に得意としているのは速攻だが、なかでも素早い切り替えから繰り出す速いショートカウンターには威力がある。

2CMFと最終ラインは鉄壁だ

 選手別では、セントラルMFの稲垣祥と米本拓司(長澤和輝)が固めるバイタルエリアは鉄壁だ。
 
 また丸山祐市、中谷進之介という不動のCB、吉田豊と宮原和也の両SBによる最終ラインも固い。(吉田がなぜ日本代表に選ばれないのか、まったく不思議だ)

 攻撃陣では運動量が豊富な両SH、相馬勇紀とマテウスが光る。

 さらに最前線ではFWの柿谷曜一朗がポストをこなすなど瞬間的な動きをし、これにトップ下のガブリエル・シャビエル(阿部浩之)、前田直輝らがからむ。

 彼らは高いインテンシティで泥臭く球際のデュエルに挑み、強く激しくファイトする。

 全員が非常に献身的で、特にSHの相馬は相手ボールになれば自陣までこまめにプレスバックして「第2のSB」のような働きをする。

監督の哲学でチームが一体化している

 一方、マテウスは昨季あたりはすぐに倒れてなかなか起き上がらなかったり、攻撃から守備への切り替えが遅いなどトランジションに問題があったが、いまでは見違えるように修正された。

 本来、マテウスやムラっ気な柿谷あたりは献身性の薄い選手のはずだ。それが熱く献身的なプレイをこなしているのだから、明らかにこれは監督の力だろう。

 おそらく、あのイタリア人のおっさん(マッシモ・フィッカデンティ監督)がうるさく言うのだ(笑)

 またこのチームはリードして終盤になるとDFの木本恭生を投入し、5バックにしたり、3センターの4-1-4-1にするなど守備を固めるシステム変更を行い試合を終わらせる。

 いかにも守備にこだわるイタリア人監督がやりそうな手堅いゲームプランだなぁ、と思わずクスッと笑ってしまう。

 名古屋グランパスにはそんな、「この監督を信頼すれば勝てる」という一体感がある。そういう熱い息吹が観ている観客にひしひしと伝わってくる。

 なにを隠そう、私なんかは前世がイタリア人なので、ウノゼロで名古屋が辛い勝ち方をするたんびに超絶興奮して全身の血が沸騰してしまう。そんな日は早めに風呂に入って気持ちを静めることにしている。

 これでもし名古屋が優勝なんぞしたら、はてさていったいどうなることやら。

 いまから先が思いやられる。

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【極私的J1見どころ】今年はJリーグを観るぞ!

2021-01-20 05:55:30 | Jリーグ
話題沸騰のおいしい観戦ポイントだらけ

 今年は個人的に話題沸騰のJリーグを集中的に観ることにした。いや、なにしろとても気になるポイントがたくさんあるのだ。

 ザッと思いつくツボをあげると……。

「超絶補強をした名古屋は優勝できるか?」

「横浜FMは『ハイライン裏』問題にどう挑むか?」

「鹿島の上田綺世は何点取り、どこまで成長するか?」

「ロティ―ナ監督は清水をどう変えるか?」

「昨年最終節を見て『いいな』と感じた下平監督の横浜FCはどうか?」

「徳島を昇格させたリカルド・ロドリゲス監督の浦和はどこまでやるか?」

「昇格組の徳島はJ1に定着できるか?」

 どれもワクワクもんの見どころばかりだ。

 なお徳島ヴォルティスは、新型コロナの影響で来日のメドが立っていないスペインのダニエル・ポヤトス新監督が心配される。早期に解決することを祈りたい。

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【横浜FM】頑なに理想にこだわるガラスの城

2021-01-04 05:26:57 | Jリーグ
ラインを下げるのはタブーか?

 ハイライン・ハイプレスをまるで修行僧のように突き詰める横浜FMを見ていると、チームが掲げるフィロソフィ(哲学)と、勝ち点はどちらが重いのか? という芸術の世界ではよくある問いを思い出す。

 すなわち芸術家として崇高なポリシーを貫き通すと作品が売れない。逆に売りやすいポップな作品を作ると、それは必然的に自己のポリシーを妥協したものになっている(商業主義)、と言うような永遠のパラドックスである。

 おそらくアンジェ・ポステコグルー監督にとっては、売れることよりポリシーの方が重いのだろう。いや、というより、自己の哲学(ハイライン)を押し通すことこそが勝利につながると確信しているのだ。

プレスを強化することでハイラインを維持する?

 今季の横浜FMは、高いディフェンスラインの裏を狙われて失点を続けた。前でプレスがかかってなければ、ラインを下げるのがふつうだ。だが横浜FMはあくまで下げない。

 ラインを下げて対応するのでなく、前でのプレスのほうをより強化することでハイラインを維持しようとした。

 だが人間はフルタイムでプレッシングできるほどインテンシティを堅固に保つのがむずかしい。で、どうしてもプレスが緩む瞬間は出てくる。

 その緩んだ瞬間に要所にパスを通され、ハイラインの裏を狙われて失点する、というのが負けパターンだったように思う。

 結果的にポステコグルー監督という芸術家は、ポリシーを貫き通し、そのために作品がたとえ売れなくてもいい、という選択をしていることになる。

来季はラインを下げる妥協をするか?

 無責任な外野としては、作品を売るためにはある程度ポリシーを妥協してはどうか? と思える。だがポステコグルー監督にとってはあくまで哲学の貫徹=勝利なのだろう。

 よく言えば崇高な、悪くいえば青臭いそのメンタリティによって今季は負けた。

 果たして来季も、プレスがかかってなければ妥協してラインを下げる、という選択をしないのだろうか?

 来シーズンの横浜FMの浮沈はそこにかかっているように思える。

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【国際親善試合】「世界」に伍した横浜FMのハイライン・ハイプレス ~横浜FM1-3マンチェスターC

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【Jリーグ】強力補強で来季の名古屋は優勝を狙う

2020-12-29 05:47:42 | Jリーグ
柿谷、長澤のビッグ補強で戦力アップ

 マッシモ・フィッカデンティ監督は本気だ。優勝を狙っている。

 元日本代表の柿谷曜一朗、長澤和輝を獲得したフロントからも強いヤル気が伝わってくる。名古屋にはぜひ、川崎フロンターレ一強のJリーグに「革命」を起こしてほしい。

 柿谷はムラっ気がありトランジション(切り替え)に問題はあるが、とにかく瞬間的なプレイのキレ味は一級だ。

 また長澤はハリルジャパンに招集された際に試合で観て、いい選手だったので強く印象に残った。その後、「代表メンバー予想」的な企画で何度も彼の名前を上げたことがある。

 名古屋は戦力的にもゲームモデル的にも、優勝、またはそれに準じる可能性は十分ある。現にJリーグ最終節の広島戦でも、彼らはいいサッカーをやっていた。

ピッチを斜めに横切るサイドチェンジが素晴らしい

 広島戦の名古屋は攻撃時4-2-3-1だった。グラウンダーの低いボールで最終ラインから丁寧にビルドアップする。

 インサイドキックから放たれる強くて速いグラウンダーのパスを基調に、要所でピッチを斜めに横切る大きなサイドチェンジを織り交ぜながら攻める。

 特に試合の立ち上がりに、1本のパスで素晴らしく正確で長いサイドチェンジを立て続けに2度決めたときには驚いた。

 私事で恐縮だが私がまだJリーグを取材していた90年代には、日本人のサイドチェンジといえば2本のパスを使って中央を経由して行うのがふつうだった。日本人はロングボールを正確に蹴れないからだ。

 で、2本のパスが、えっちらおっちら逆サイドに届くころには、相手チームはすっかり守備の陣形を立て直している。

「ヨーロッパの選手みたいに1本の速いパスでサイドチェンジできなければ世界で勝てない」

 そう警鐘を鳴らす記事を何度も書いた記憶がある。それが今のJリーガーは事もなげに1本のロングボールでやってしまうのだ。Jリーグの進歩は著しい。未来は明るい。

縦パスを切りボールをサイドへ誘導する

 一方、彼らは敵のビルドアップ時には4-4-2に変化し、ミドルプレスで前の2枚が敵のCBに圧力をかけて縦パスのコースを切る。で、ボールをサイドに誘導し、サイドでボールを回収する。

 選手別では、ワンプレイ終わると足を止めてしまうマテウスはトランジション(切り替え)の悪さが気になったが、途中出場し最後の「サヨナラゴール」でおいしいところを持って行った前田直輝は素晴らしかった。

 また稲垣、米本の2セントラルMFや最終ラインは守備がよく危なげなかった。オフェンシブな相馬も要所で利いていたし、阿部やGKランゲラックもよかった。

 イタリア人監督らしく、安定した守備をベースに変化のある攻撃で魅せる。Jリーグをあまり見てない私は、ひと目見てすっかりファンになってしまった。

 同じチームが毎年勝つのではリーグ全体が発展しない。来季は必ず川崎フロンターレを倒してほしい。期待している。

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【Jリーグ最終節見て歩き】横浜FMのハイライン裏問題やいかに?

2020-12-28 02:20:56 | Jリーグ
セレッソと名古屋、横浜FMがおもしろかった

 ふだんJリーグをほとんど見ないので、勉強のためにとダゾーンで最終節の見逃し配信をザッと見て歩いた。

 私の好みのチームは、最低限、インサイドキックのボールスピードが一定以上に速いチームだ。インサイドキックが「ズバンッ」と決まってるチームでなければ見る気がしない。(というか一定以上にボールスピードがないとパスで狭いところを通せない)

 そんなわけでガンバーエスパルス戦は10分だけ見て消した(失礼)。なぜガンバはあんなサッカーで2位になれるんだろう? 不思議だ。

 で、お眼鏡にかなったのは前回紹介したセレッソ大阪のほかには、名古屋グランパスと横浜Fマリノスだった。この3チームのサッカーは非常におもしろかった。

横浜FMは2019年夏に見て一目惚れ

 このうち特に印象に残ったのは最終ラインが高い横浜FMだった。彼らに関しては2019年夏にマンチェスターシティとの親善試合をたまたま見て一目惚れし、そのときの印象を記事『「世界」に伍した横浜FMのハイライン・ハイプレス ~横浜FM1-3マンチェスターC』にまとめた。

 すると同年、スルスルと勝ち進み、その年のうちに優勝したので驚いた。ところがその同じチームが今年は9位に沈んだというので、いったい何があったのか気になっていた。最終節を見た印象だと、高い最終ラインの裏をしきりに狙われて苦しんでいる印象だった。

高いライン裏をどうケアするか?

 横浜FMはゲームモデルからいってハイライン・ハイプレスを変えるわけにいかない。とすればカギは、ハイラインの裏をどうケアするか? が問題だろう。なにしろ最終ラインが高いので、裏に速い縦パスを入れられて「よーいドン」で走り負けたら失点する。

 とすれば中盤でのプレスをさらに厳しくしてライン裏にラストパスを出されないようにするのが第一選択だ。

 それでもパスを出されたらGKが「第2のスイーパー」になり、思い切りよく飛び出してスルーパスを刈り取る必要があるのではないか? パッと見たところGKの梶川はそういうプレイスタイルではなかったので心配だ。 さてライン裏問題、来季はどうするんだろうか?

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【セレッソ大阪】「ロティーナ事件」は価値観の問題だ

2020-12-27 03:52:45 | Jリーグ
「守備的=悪」なのか?

 セレッソ大阪を退任することになったロティーナ監督の問題については、いろいろと考えさせられた。

 この「ロティ―ナ事件」を知らない人のために関単に説明しておこう。

 まずリーグがまだ終わる前から内部リーク(?)が行われ、スポーツ紙がいっせいに「ロティ―ナ監督は今季限りで退任する」と報道した。

 で、その理由をスポーツ各紙は「ロティ―ナは守備的だから」「攻撃的じゃないから」辞めるハメになったんだ、と報道した。つまり「攻撃的なサッカーをするために監督を変えるのだ」というわけである。

川崎フロンターレが大好きな日本人

 ここで強く思うのは、じゃあ「守備的=悪」なのか? ということだ。

 そんなものは個人の価値観によってまったくちがう。現にこの私なんかは川崎フロンターレのチマチマしたショートパスを足元だけで繋ぐスケールの小さなサッカーなんかより、セレッソ大阪のサッカーのほうが「おもしろい」と感じる。

 だがぶっちゃけ、川崎フロンターレのサッカーが大好きで「あれこそサッカーだ」と思っている日本人の大多数にとって「守備的=悪」なのだ。

 彼らには守備の「おもしろさ」や「コク」なんてわからないし、守備をめぐる駆け引きなんてものも理解できない。とにかくパッ、パッ、パッとド派手にパスがつながり、ガンガン点が入れば「攻撃的でおもしろい」のだ。

 理屈の問題じゃなく日本人はそういう感性なわけで、ゆえに「攻撃的なサッカーをするために監督を変えるのだ」と聞くと「なるほど、そうだろうな」と納得するわけである。

「攻撃的=もうかる」てな視点もある

 では、逆にこれを興行側から見てみよう。

 日本人の大多数にとって「守備的=悪」であり、川崎フロンターレが大好きな人ばかりなのであればどうだろうか?

 なら興行者サイドは「攻撃的」なサッカーをすれば、「カネが落ちるぞ」と考える。攻撃的であれば客が入るし、なによりスポンサーがついてウハウハ広告費がもうかる。これがデカい。

 興行側にとっては「攻撃的=バンザイ」なのである。

ハリルジャパンでも似たことは起こった

 これと似たようなことは代表チーム=ハリルジャパンをめぐっても起こった。

「守備的」で日本人が大好きなパスをつながないハリルジャパンに、日本サッカー協会が大爆発。なんとワールドカップへ行く切符はすでに取ってあるのにハリルの首を切った。

 つまりセレッソ同様、「攻撃的なサッカーをするために監督を変えた」わけである。「俺たちは華麗にパスをつなぐサッカーをするんだ」ってわけだ。

 まあそれだけじゃなく、「日本サッカー協会の言うことを何でも聞く森保サンみたいなナアナアの監督じゃなきゃダメだ」って話である。

日本人の価値観は変わらない

「守備的=悪」な日本では、これと似たようなことは今後何度でも起きるのだろう。

 過激派の私なんぞは、この日本の社会構造を作っているのは川崎フロンターレだ、川崎フロンターレこそ悪だ、などと公言するから顰蹙買うわけだが。

 でも過激に言えばそういうことだと思うのだ。

 まあ日本人はイタリア人みたいに、「今日の試合は0-0の引き分けで非常にコクがあった」なんてことには未来永劫ならないだろう。ゆえにこの風潮は今後も続くのだ。

 うんざりだけどね。

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【セレッソ大阪】香川待望論が守備的なロティーナ監督を切らせた?

2020-12-22 10:16:34 | Jリーグ
香川を迎えて攻撃的なチームに

 前回の記事でセレッソ大阪がロティーナ監督を手放した理由がわからない、と書いた。

 邪推だが、理由は香川真司にあるんじゃないか?

 セレッソは、欧州での再就職めざして「浪人中」の香川にオファーを出し続けている。

 単にチーム作りの方針というだけでなく。おそらく経営戦略的にも、あの英雄・香川を迎えて「攻撃的で華のあるチームを作りたい」という狙いがあるのではないか?

 とすれば守備的なロティーナ監督がジャマになる。で、監督の方を切り、香川を迎えるための環境作りを整えた、というのが舞台裏じゃないだろうか?

 いや、あくまで邪推ではあるが。

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【Jリーグ】セレッソ大阪・ロティーナ監督はなぜ退任する必要があるのか?

2020-12-21 08:01:44 | Jリーグ
ロジカルなサッカーだったが……

 J1第34節で鹿島アントラーズとセレッソ大阪の試合を見たが、いったいなぜセレッソのロティーナ監督はやめなければならないのか、まったく理解できなかった。

 試合は1-1の引き分けに終わったが、非常にハイレベルでコクのある内容だった。

 セレッソは相手ボールになると5-4-1または5-3-2のフォーメーションを取り、スペースを埋める。そしてパスコースを限定し、敵のボールをサイドへ誘導して絡め取る。

 セレッソの選手はデスマルケがよく、攻撃になると清武も非常に利いていた。

 確かに敵にボールをもたせるセレッソのサッカーは「攻撃的」とはいえなかったが、固い守備からマイボールにするとサポートがロジカルでスムーズだった。

 ボールをもたされて攻め続けるしかなかったアントラーズは、攻め疲れが目立った。

「Jリーグではああいうサッカーは認められないのかなぁ」という感じ。まあロティーナ氏は来季はJ1清水の監督に就任するから、ロティーナ流のポジショナルなサッカーはまた見れそうだが。

 来季を愉しみにしよう。

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【国際親善試合】「世界」に伍した横浜FMのハイライン・ハイプレス ~横浜FM1-3マンチェスターC

2019-07-29 09:35:40 | Jリーグ
プレミア覇者に超攻撃的サッカーで挑む

 アンジェ・ポステコグルー監督率いる横浜F・マリノスが、プレミア覇者のマンチェスター・シティ相手に堂々、殴り合いを仕掛けた。

 プレッシング・ゾーンを前に設定し、最終ラインを過激に高く保つ。これでハイプレスをかけて敵のビルドアップを破壊し、ショートカウンターを見舞うゲームモデルだ。もちろん王者相手にすべてが通用したわけではないが、肉を切らせて骨を断つ横浜FMのサッカーはとんでもなく爽快だった。

 横浜FMのフォーメーションは4-2-3-1。スタメンはGKがパク・イルギュ。最終ラインは右から広瀬陸斗、チアゴ・マルチンス、畠中槙之輔、ティーラトン。セントラルMFは喜田拓也と扇原貴宏。2列目は右から仲川輝人、三好康児、遠藤渓太。ワントップはマルコス・ジュニオールだ。

 一方、マンチェスター・シティのフォーメーションは4-2-3-1。スタメンはGKがブラボ。最終ラインは右からウォーカー、ストーンズ、ラポルト、ジンチェンコ。セントラルMFはロドリとデ・ブライネ。2列目はベルナルド・シウバ、ダビド・シルバ、サネ。ワントップはスターリングだ。

シティのハイプレス対策は?

 立ち上がりから横浜FMは盛んにハイプレスをかけ、シティのビルドアップを壊そうとする。だがシティは巧みにプレスの網の目をかいくぐり、前にボールを運ぶ。

 シティの監督グアルディオラは、横浜FMのプレスのかけ方を事前にスカウティングしていた。で、この日はセントラルMFを2枚にし、ビルドアップ時にはロドリだけでなくデ・ブライネもかなり低い位置まで下りてきた。そのためビルドアップ時におけるボールの預け所が多くでき、これが横浜FMのハイプレスを無効化した。

 両SHのベルナルド・シウバとサネはサイドに開いて充分に幅を取り、サイドチェンジのボールを受けている。カットイン専門の中島翔哉(ポルト)にはぜひ見習ってもらいたいものだ。

 さてシティの1点目は前半18分。高い最終ラインを敷く横浜FMのライン裏に抜けようとしたベルナルド・シウバに対し、GKブラボからのロングパスが通る。いまやGKがスルーパスを出す時代なのだ。

 このパスを受けたシウバが、右に回り込んでボックス内に侵入したデ・ブライネにパス。ボールをキープしたデ・ブライネは正対したCB畠中をかわし、ゴール右スミへ強烈なシュートを叩き込んだ。

熱くなったペップが檄を飛ばす

 横浜FMの最終ラインからは強くて速いグラウンダーの縦パスが出る。特にビルドアップの一歩目になる畠中の強いパスはすばらしい。サイドに開いたアタッカーに出すグラウンダーの斜めのパスあり。山なりのダイアゴナルなサイドチェンジのボールあり。彼はJリーグというレベルを超えているのではないかと感じた。

 一方、横浜FMのマルコス・ジュニオールは偽9番で、しきりに中盤へ下りてきてはボールにからむ。彼の一人二役が多くのチャンスを作る。

 かくて横浜FMの同点弾は前半24分に生まれた。中央の三好から右前の仲川にパスが出てシュート。シティのGKブラボが弾き返すが、そのリバウンドをマルコス・ジュニオールが拾って二の矢のシュート。これもDFに弾かれたが、セカンドボールを遠藤が冷静にコースを狙いダイレクトで決めた。1-1の同点だ。

 直後の給水タイム。ペップが熱くなり、DFカイル・ウォーカーをつかまえて激しく檄を飛ばしていたのが痛快だった。それだけ横浜FMが圧力をかけているのだ。試合内容からは、この時点では「ひょっとしたら横浜FMが勝つんじゃないか?」とも感じた。実際、横浜FMの縦に速い攻めに、なんとあのシティが警戒して慎重にリトリートしているのである。

GKパク・イルギュは「第二のスイーパー」だ

 なにより目を奪われたのは、横浜FMのGKパク・イルギュである。前半31分、左サイドのジンチェンコから、横浜FMの浅いライン裏に抜け出したスターリングに矢のようなスルーパスが出る。だがGKパク・イルギュはすばらしい出足で前へ出てパスカットした。

 同様のシーンは一度や二度ではなかった。シティは横浜FMの高いラインの裏を狙って盛んにスルーパスを突き刺してくる。それをGKパク・イルギュが素早い飛び出しでことごとく刈り取って行く。横浜FMのハイライン戦術にあって、彼は広大なライン裏を掃除する「第二のスイーパー」として欠かせない。

 一方、シティの最終ラインも、横浜FMがバックパスすれば少し上げる、というふうに、こまめに上下動してゾーンを非常にコンパクトに保っている。

 またSBの広瀬とティーラトンが偽SB化する横浜FMの変則的なビルドアップに対し、シティも強烈なハイプレスで対抗する。狸と狐の化かし合いだ。戦術的に非常に見ごたえのある試合である。

ゴールとゴールの間が近い現代サッカー

 そしてシティが勝ち越したのが前半40分だった。ビルドアップ時にデ・ブライネがボックス近くまで下りてボールをもらう。彼は中盤でベルナルド・シウバとワンツーをかました後、裏抜けしたスターリングにスルーパス。スターリングは短いドリブルからゴールを仕留めた。1点リードだ。

 このあと前半40分台に、横浜FMには何度も惜しい得点機があったがモノにできない。実質、この山場の空振りで試合は決まった。もしここで横浜FMが得点していれば、ゲームはまだわからなかった。結局は、決定力。日本のサッカーは個の力を上げ、この大きな軛(くびき)から一刻も早く自由になる必要がある。

 ハイラインの横浜FMに対しシティも非常にコンパクトなため、この試合では一方のゴール前からもう一方のゴール前まで、ボールが光速で移動した。息もつかせぬ攻防だった。

 現代のフットボールでは精巧なビルドアップから縦に速くボールを運ぶ技術と戦術が進化し、そのためゴールとゴールの間が近い。決して「縦ポン」などではない戦術的なコクがある。
 
 シティはプレシーズンでフィットネスが上がっておらず一部主力も欠いたとはいえ、横浜FMの健闘は光った。日本のサッカーはまた一歩、「世界」に大きく近づいたと感じさせられるゲームだった。

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【国際親善試合】砕かれた「日本人らしさ」 ~川崎フロンターレ1-0チェルシー

2019-07-20 08:54:00 | Jリーグ
結果的に勝ったが内容は大差

 川崎フロンターレはショートパスをつなぐ小さいサッカーをする。悪い意味でガラパゴス化した日本人らしいスタイルだけに、そのまま日本サッカーの課題が浮き彫りになった試合だった。負けたチェルシーのポゼッション率は61%。ボールを握ろうとする川崎Fの「自分たちのサッカー」は砕かれた。

 川崎のフォーメーションは4-2-3-1。スタメンはGKがチョン・ソンリョン。最終ラインは守田英正、谷口彰悟、ジェジエウ、登里享平。セントラルMFは下田北斗と田中碧。右SHは阿部浩之、左SHは齋藤学。ワントップは小林悠だ。

 一方、チェルシーのフォーメーションは4-2-3-1。レギュラークラスはジョルジーニョやコヴァチッチ、ペドロ、ダヴィド・ルイス、アスピリクエタ、マルコス・アロンソらが出場した。チェルシーのビルドアップは中央のセントラルMF経由、サイド経由とまんべんない。プレシーズンだというのに楽にパスをつないでいる。

 一方、川崎は立ち上がりからチェルシーの激しいプレッシングを受け、自慢のパスワークがたどたどしい。各駅停車だ。川崎は選手間の距離を縮めてショートパスをつなごうとするために、複数の選手がまとめてチェルシーによるプレッシングの餌食になりやすい。ゆえにカウンターに弱い。

 かたやチェルシーはピッチを広く使い、ボールスピードがケタ違いに強くて速い。スペースのない現代サッカーにおいて、密集地帯でパスを通すにはボールスピードが必要だ。パスが遅くて弱々しい川崎とは対照的である。

日本人は「カラダの入れ方」を研究すべき
 
 川崎がプレスにもろいのは、ファーストタッチが雑なせいもある。川崎の選手は最初のトラップに失敗し、ボールを1回弾く間にマーカーに詰められる。ファーストタッチで潰される。その点、チェルシーの選手はボールコントロールが非常に巧みで、敵に距離を詰められても簡単にボールを失わない。

 またフィジカルの差も激しく、チェルシーの選手にカラダを入れられると川崎は何もできなくなる。またチェルシーの選手はフィジカルが強いだけでなく、カラダの使い方そのものがうまい。このあたりも日本のサッカーは基本から見直す必要がある。

 とはいえオフ明けでフィットネスが上がってないチェルシーだけに、後半が半分も過ぎるとすっかりダレた試合になった。そして試合終了間際の後半42分、途中出場した中村憲剛の技術が巧みなラストパスとなって結実し、同じく途中出場のブラジル人FWレアンドロ・ダミアンの決勝点を呼んだ。

 結局、最後の最後はシーズン真っ最中でコンディションのいいJリーガーと、休み明けでカラダが重いプレミアリーガーとの差になった。

 巷間、日本のメディアは「川崎Fがプレミアの雄、チェルシーを撃破!」などと大はしゃぎだ。結果だけに囚われ、だれも「内容」を見ようとしない。暗澹たる思いがする。日本のサッカー関係者はぜひこのゲームを緻密に分析し、日本サッカーが抱える深刻な問題点を修正するための教材にすべきだろう。

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