漫画を政治的イデオロギーやプロパガンダと関連つけながら論じた書籍に小野 耕世 (著) ドナルド・ダックの世界像―ディズニーにみるアメリカの夢 、 中公新書がある。こういう類のもの(Cultural Study関係)はたくさん出版されていて枚挙に暇がない。中には田河水泡『のらくろ総攻撃』(昭和12年、1937)を捉えて帝国主義入門等と言う大風呂敷や日本の周辺国の政治風刺漫画に愚痴を溢(こぼ)すのもあって迷惑するが、poko_9はそういうレベルのものには全く興味がない。
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Dr. Joël Kotek(政治学/歴史学、1958~)はアラブ系メディアの出してくる反ユダヤ的カ-トゥーン(政治風刺漫画)2000余を分析し、それらは反イスラエルだけでなく全世界を視野に入れた反ユダヤ的なメッセージ性を含んでいるという。しかもその種の言説を中心的に形成するのが、 cartoon(イラスト版の政治戯評、新聞の社説の漫画版)。これは世論の操作に大きく関与しているという。
Manfred Gerstenfeld はこのJoël Kotek兄弟の言葉を引用しつつ次のような懸念を表明。すなわち、Kotek says: "The main recurrent theme in these cartoons is 'the devilish Jew(漫画の繰り返し使われるテーマは魔性のユダヤ人).' By extension, this image suggests that the Jewish religion must be diabolic(ユダヤ教=邪教), and the entire Jewish people evil(それが増幅されユダヤ人=悪魔のイメージが流布される). I even found a Greek Orthodox cartoonist of Lebanese origin(レバノン出身の東方正教会系の漫画家は), who conveys the message that the Jewish religion has caused the State of Israel to be so 'evil.'(ユダヤ教が災いしてイスラエルを邪悪なものにしている) The cartoons convey the idea that Jews behave like Nazis(彼らはユダヤ人がナチスのように振舞う存在だと言う観念を民衆たちに植え付け), leading readers to conclude that the only logical solution is their elimination(ユダヤ人を排除することこそが、唯一の筋の通ったやり方だという形でアラブの読者たちをミスリードする). As the Arab world is becoming increasingly convinced of these ideas, they have no inhibitions showing them on a multitude of websites."(アラブ世界がその方向で確信を強めていく中で、益々ネット上でのその種の言説の流布に対して歯止めが利かなくなっている)と。
Kotekはネット上を駆け巡っている数百の反ユダヤ風刺漫画をテーマ別に以下のように10に分類する。
① 古くからあるユダヤ人は邪悪な存在で、アラブ社会では、キリスト教社会のそれ同様にユダヤ人を二等市民だとするもの。実際、アフリカ諸国にいるユダヤ人は奴隷的な地位に追いやられてきた。それは彼らが日系のフィリピン人と同じ被差別民だったからだ。
漫画の中では左側の背が低くて見るからに異様な風体の人物として形象化されている。
②キリスト教起源のものだが、ユダヤ人はGodの殺害者である。
③イスラエルをナチスドイツと同一視するもの。
④ 動物形象(zoomorphism)、これは世界的にみられる現象だが、例えばナチスドイツやソ連・ルーマニアではユダヤ人をクモに喩えて邪悪視。よく使われたのはユダヤ人を蛇、豚、ゴキブリ呼ばわりするものだった。
ここではオクトパス+「ダビデの星」(イスラエルor ユダヤ人を象徴する紋章)で表現。
⑤ユダヤ人は世界制服を策略している。
⑥破壊的力としてのユダヤ人のイメージ。ここからはお金の力で世界を支配しようとしているとか、ブッシュ大統領はユダヤ系の銀行や人脈と結託しているといった言説を生む。
⑦(血を偏愛し、血に餓えたユダヤ人) bloodloving or blood-thirsty Jew. 前掲(下図)
⑧際立ったものだが、ユダヤ人に殺人、とりわけ子殺しのイメージを付与。
⑨イスラエルは平和を望まない不誠実な国-古くよりイスラム教徒たちが言い習わしてきた'the perfidious Jew' の変形。
⑩自爆テロ擁護論(apologies for suicide bombers)に関係したもので、ユダヤ人を市民としては捉えず、兵士か厳格なユダヤ教の信仰者ultra-orthodox Jewとして描く。
イスラエル軍のヘリとそれを文字った爆弾を身に纏ったアラブの女性の対比によってイスラエル軍の残虐性を表現。
預言者ムハンマドの風刺漫画と「表現の暴力」(Cultural violence and the Muhammed Cartoons) から政治風刺漫画について幾つかの事例を紹介してみたが、私がいま感じることはイスラム教徒だってあからさまにユダヤ人やユダヤ教の風刺漫画を出しているじゃないか、ということではない。そうではなくて、今回紹介した中東地域には「表現の自由」を認め、そこでのCartoonistsによる辛らつな風刺と皮肉を、民衆の心の叫びとして素直に受け入れるとか、芸術活動の場と現実の政治とを分離して考えるといったことがなく、逆に相手方の風刺漫画に対してのみ一方的に腹を立てるといった硬直した精神が広がっているという部分だ。
◆引用文献Manfred Gerstenfeld(聞き手”)Major Anti-Semitic Motifs in Arab Cartoons:An Interview with Joël Kotek ”,Post-Holocaust and Anti-Semitism No. 21 1 June 2004 / 12 Sivan 5764 .
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Dr. Joël Kotek(政治学/歴史学、1958~)はアラブ系メディアの出してくる反ユダヤ的カ-トゥーン(政治風刺漫画)2000余を分析し、それらは反イスラエルだけでなく全世界を視野に入れた反ユダヤ的なメッセージ性を含んでいるという。しかもその種の言説を中心的に形成するのが、 cartoon(イラスト版の政治戯評、新聞の社説の漫画版)。これは世論の操作に大きく関与しているという。
Manfred Gerstenfeld はこのJoël Kotek兄弟の言葉を引用しつつ次のような懸念を表明。すなわち、Kotek says: "The main recurrent theme in these cartoons is 'the devilish Jew(漫画の繰り返し使われるテーマは魔性のユダヤ人).' By extension, this image suggests that the Jewish religion must be diabolic(ユダヤ教=邪教), and the entire Jewish people evil(それが増幅されユダヤ人=悪魔のイメージが流布される). I even found a Greek Orthodox cartoonist of Lebanese origin(レバノン出身の東方正教会系の漫画家は), who conveys the message that the Jewish religion has caused the State of Israel to be so 'evil.'(ユダヤ教が災いしてイスラエルを邪悪なものにしている) The cartoons convey the idea that Jews behave like Nazis(彼らはユダヤ人がナチスのように振舞う存在だと言う観念を民衆たちに植え付け), leading readers to conclude that the only logical solution is their elimination(ユダヤ人を排除することこそが、唯一の筋の通ったやり方だという形でアラブの読者たちをミスリードする). As the Arab world is becoming increasingly convinced of these ideas, they have no inhibitions showing them on a multitude of websites."(アラブ世界がその方向で確信を強めていく中で、益々ネット上でのその種の言説の流布に対して歯止めが利かなくなっている)と。
Kotekはネット上を駆け巡っている数百の反ユダヤ風刺漫画をテーマ別に以下のように10に分類する。
① 古くからあるユダヤ人は邪悪な存在で、アラブ社会では、キリスト教社会のそれ同様にユダヤ人を二等市民だとするもの。実際、アフリカ諸国にいるユダヤ人は奴隷的な地位に追いやられてきた。それは彼らが日系のフィリピン人と同じ被差別民だったからだ。
漫画の中では左側の背が低くて見るからに異様な風体の人物として形象化されている。
②キリスト教起源のものだが、ユダヤ人はGodの殺害者である。
③イスラエルをナチスドイツと同一視するもの。
④ 動物形象(zoomorphism)、これは世界的にみられる現象だが、例えばナチスドイツやソ連・ルーマニアではユダヤ人をクモに喩えて邪悪視。よく使われたのはユダヤ人を蛇、豚、ゴキブリ呼ばわりするものだった。
ここではオクトパス+「ダビデの星」(イスラエルor ユダヤ人を象徴する紋章)で表現。
⑤ユダヤ人は世界制服を策略している。
⑥破壊的力としてのユダヤ人のイメージ。ここからはお金の力で世界を支配しようとしているとか、ブッシュ大統領はユダヤ系の銀行や人脈と結託しているといった言説を生む。
⑦(血を偏愛し、血に餓えたユダヤ人) bloodloving or blood-thirsty Jew. 前掲(下図)
⑧際立ったものだが、ユダヤ人に殺人、とりわけ子殺しのイメージを付与。
⑨イスラエルは平和を望まない不誠実な国-古くよりイスラム教徒たちが言い習わしてきた'the perfidious Jew' の変形。
⑩自爆テロ擁護論(apologies for suicide bombers)に関係したもので、ユダヤ人を市民としては捉えず、兵士か厳格なユダヤ教の信仰者ultra-orthodox Jewとして描く。
イスラエル軍のヘリとそれを文字った爆弾を身に纏ったアラブの女性の対比によってイスラエル軍の残虐性を表現。
預言者ムハンマドの風刺漫画と「表現の暴力」(Cultural violence and the Muhammed Cartoons) から政治風刺漫画について幾つかの事例を紹介してみたが、私がいま感じることはイスラム教徒だってあからさまにユダヤ人やユダヤ教の風刺漫画を出しているじゃないか、ということではない。そうではなくて、今回紹介した中東地域には「表現の自由」を認め、そこでのCartoonistsによる辛らつな風刺と皮肉を、民衆の心の叫びとして素直に受け入れるとか、芸術活動の場と現実の政治とを分離して考えるといったことがなく、逆に相手方の風刺漫画に対してのみ一方的に腹を立てるといった硬直した精神が広がっているという部分だ。
◆引用文献Manfred Gerstenfeld(聞き手”)Major Anti-Semitic Motifs in Arab Cartoons:An Interview with Joël Kotek ”,Post-Holocaust and Anti-Semitism No. 21 1 June 2004 / 12 Sivan 5764 .