本屋大賞は▲「鹿の王」
♦ 本という本が背をむけ立ち並ぶ振りむかないで、そのままでいて 松井多絵子
スーパーへ行く途中、つい立ち寄ってしまうのが本屋。まだ読まないままの、私に読まれるのを待っている本が何冊も家にあるのに。新聞の広告で見た本が気になるのだ。「書店で領収書をもらっても、作家と気づいてくださる方はいません」という上橋菜穂子(52)が本屋大賞を受賞した。朝刊朝日「ひと」の欄に笑顔の彼女が載っている。オメデトウゴザイマス。(昨年は国際アンデルセン賞を受賞)。▲本屋大賞♦「鹿の王」は、前近代を舞台にしたファンタジー。帝国の侵略から故郷を守る戦いに敗れ、奴隷となったヴァンはある日、「野犬」にかまれ、不思議な力を持つという物語らしい。わたしも野犬に噛まれてみたくなる。
先日三島大社の「神鹿園」で見た鹿をおもいだす。檻に近づいた私に寄ってきた鹿は可愛らしかった。やさしい眼差しでわたしを見上げていた。少女のような鹿。その後ろに角のある鹿が寄ってきて私を睨む。王の鹿だろうか。角のある鹿は好きになれない。角は武器に見えるのだ。受賞作には支配者と被支配者の二つの相剋が描かれているらしい。
上橋菜穂子は幼少時代体が弱かった。祖母が枕元で聞かせてくれる物語に夢中になった。猫に育てられた子供や、平家の落人の恩返し。耳底に残った口承のリズムが、少女の夢を育んだらしい。「書きたいのは、長い間、人類が伝え、愛してきた素朴な物語」 その物語が全国の本屋の店員さんたちに、「本屋大賞」として選ばれたのである。
読書の春になりましたね。読みたい本が新緑のように。
4月8日 松井多絵子
✿ 短歌情報
第26回斉藤茂吉短歌文学賞
小島ゆかり歌集 『泥と青葉』 (青磁社)
贈呈式は5月17日、山形県の上山市体育文化センターで。
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