えくぼ

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あるきだす大西久美子

2016-07-01 09:16:13 | 歌う

              あるきだす大西久美子

 3日前の☀あるきだす言葉たち を読みほっとした。8首の短歌は「走り出す言葉たち」ではなく、私も一緒に歩けそうな気がした。この♦「つばめ」の作者は第6回中城ふみ子賞次席
『イーハトーブの数式』で4月、神奈川県歌人会第一歌集賞受賞、「未来短歌会」所属 「劇場」同人。私とおなじ「未来」の会員だが、まだお目にかかったことがない。

 ✿ 六月のゆふべのコインがふとにほふ古典のやうな雨後の図書館

 今日から七月、今年の前半は終わった。今日は晴天なので六月のじめじめした空気から逃れたような気がする。湿気はイヤな臭いがこもっている。人びとの手を巡ってきたコインから人間の垢が臭うのか。下句の「古典のやうな雨後の図書館」も効いている。

 ✿ 根をふかく地下に張りゐる植物の大きな図譜をデスクに開く

 草取をしながらその根の大きさに驚くことがある。机上に開かれた植物図鑑からまるで草木が育っているようだ。本のページから視界が広がってゆく楽しさ。

 ✿ 閉館を知らせるチャイムはわたくしを巣より飛び立つつばめに変へる

 この1連のタイトルは♦「つばめ」である。私は「つばめ」を特に見たことがない。春から夏に日本に来る渡り鳥。飛びながら小虫を捕まえて食べるらしい。雀のように身近に見るとができない。図書館の閉館を知らせるチャイムと共に、作者は家路に。冬が近づけば日本を去る
つばめのように、大西久美子は速歩で家へ帰るのなだろうか。

♦「中城ふみ子賞」は夭折の歌人・中城ふみ子没後50年となる平成16年に創設された。
入選者の作品は♦短歌研究8月号に発表される。中城の命日は8月3日

      今日から今年は下り坂、あっという間に私は冬の女になりそうです。

                           7月1日 松井多絵子   

  


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