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田丸まひる歌集・『硝子のボレット』

2014-09-23 09:16:18 | 歌う

         田丸まひる歌集・『硝子のボレット』

 三年前に 「未来」の会員になった 田丸まひる は30代の女子、いただいた彼女の歌集を緊張しながら読んだ。10年前に第1歌集『晴れのち神様』を上梓、未来入会後1年で 「未来賞」 を受賞している。選考委員の一人の加藤治郎は応募作 「ひとりひとり」を初めて読んだとき「問いと否定を畳みかけてくる、欲望を隠さない、その熱量」に圧倒されたらしい。『硝子のボレット』の帯は紫、白文字の加藤治郎の言葉は<行為の果てにあるもの>

 おなじ結社でも彼女に私は会ったことがない。彼女についての情報は作品からである。恋の歌が多いが、私は精神科医らしい彼女の仕事の歌に関心がある。

  ♠ もぎたての不定愁訴をぶちまけた診察室の壁がふるえる

  ♠ 眠れずに白身魚を焼いたこと電話報告される真夜中

  ♠ 一生眠れる薬ほしがる女子生徒に言い返せない 夕立ですか

 恋は誰でも詠める。相手がいなくても架空の恋。この3首は医者でなければ詠めない。

  ♠ 父親になってくれないひとなんか捨ててしまえと書く診断書

  ♠ やわらかな睫毛がゆれる思春期の恋のはじまりカルテに記す

 精神科の患者は恋を患う女が多いのだろう、田丸まひる医師も恋の患者になることも?

  ♠ 愛してるどんな明日でも生き残るために硝子の弾丸を撃つ

 歌集最後の頁に1首のみ収められたこの歌から 「ボレット」とは弾丸であることを知る。

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  田丸まひるサマ  生き残るために私もガラスの弾丸を撃ちたいです。

                       9月23日   松井多絵子


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