「殻ちゃん⑧」
❤はじめての口づけするのはセンパイと夕日の海辺の潮風のなかで
夕食をすませて8時半、殻ちゃんはもう眠っている。隣のプロダクション「はるこ」で水口はまだ仕事をしている。アキは殻ちゃんの寝顔を見ながら思いだしている。20歳の頃のことを。
あの頃だった。オラに映画出演の話が舞い込んだのは。鈴鹿ひろ美の娘の役で共演、「潮騒のメモリー」だ。ママと水口がすごく喜んでいた。もちろんオラもうれしかったが、、、。
センパイ◆「おめでとうアキ。よかったね。あきらめないで」。
アキ✿「でもね。イヤなんだ。ラブシーンが」
センパイ◆「誰とするの?ただ抱き合うだけだろう?」
アキ✿「それがねえ。キスシーンなんだ。オラのキライな前髪クネ男と」
センパイは何も言わずに目を伏せていた。オラも黙ってアナゴの握りずしを見ていた。そのとき水口が店に入ってきて、オラの隣の席に座った。
水口 M「アキちゃん、いよいよ映画にデビューだ。主演だよ。体調を崩さないように。
今は8時半だ。そろそろ家に帰って寝なさいよ」。
あの夜はなかなか眠れなかった。なんだって前髪クネ男とラブシーンを。オラはまだキスをしたことがないんだ。ファースト・キスはセンパイとしたい。早くしたい。今夜だって水口が来なかったらセンパイを誘いだして。あのビルの木陰で、でもセンパイにはじめて抱かれるのは三陸の海辺で。「陽の沈む頃がいいなあ」と思いながら、、。、あの夜は夢のなかで、、。
10月25日 今日はここまで。 次回もどうぞよろしくね。 松井多絵子
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