亡くなってから二十何年も過ぎたが父は時々私に接近してくる、明日は「父の日」、私の歌を贈ろう。私が文学に近づくのを嫌がったが父は文学が好きだったのだ。文学に関わって私を苦労させたくなかったのだろう、
遥かなる父へ
ひさびさに亡き父ゆめに現れて「やあ」と手をあげ去りてしまいぬ
怒りても目は微笑せよと言ったのはスタインペック、ではなくて父
文芸にかかわるなと言いしその父の書棚に川端康成全集
わが歌を一首も知らぬ亡き父へ詫び状ではなく挑戦状を
苛められないために苛める子と組むを許さぬ父は壮年だった
表面を見つめていればその裏が見えると言いぬ職退きし父
古書店の奥処に立ちている人よ振り向くなかれ暫し父なれ
遥かなる父へ
ひさびさに亡き父ゆめに現れて「やあ」と手をあげ去りてしまいぬ
怒りても目は微笑せよと言ったのはスタインペック、ではなくて父
文芸にかかわるなと言いしその父の書棚に川端康成全集
わが歌を一首も知らぬ亡き父へ詫び状ではなく挑戦状を
苛められないために苛める子と組むを許さぬ父は壮年だった
表面を見つめていればその裏が見えると言いぬ職退きし父
古書店の奥処に立ちている人よ振り向くなかれ暫し父なれ