えくぼ

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焼けてしまった吉田茂邸

2013-08-17 20:53:02 | 歌う

          「焼けてしまった吉田茂邸」

 あのとき行ってよかった、吉田茂邸。わたしが訪れたのは2006年9月。消失したのは2009年3月である。「ワンマン宰相」と呼ばれた故吉田茂元首相の本宅であり、政界引退後も多くの政財界人が訪れた。約3万3千平方メートルの土地に数寄屋風建物の屋敷だった。わたしの歌集『えくぼ』に収めた歌を五首を抄出します。

✿元首相吉田茂の居間にいて今日は見えない富士山を見る

✿この居間の酸素をすべて奪うかもツアーのわれら四十人は

※二階は立ち入り禁止だった。古い木造建築で廊下の壁のところどころにシミがあった。廣い広い応接間には色々ないただきものが飾られていた。食堂兼居間が贅沢なのに驚いた。壁が革張りだったような気がする。管理している男性が「此処から富士山が見えます」と。でもあの日は晴れていたのに富士山は全く見えなかった。

✿三匹の愛犬の名はサン、フラン、シスコそれぞれ墓あり庭に

✿竹林を上りてゆけば銅像の吉田茂氏どんと立ちおり

✿銅像はわれを見下ろし大磯の海を太平洋を見渡す

 公園をまわるように庭を散策した後、すこし離れた故伊藤博文別邸へ。今は「滄浪閣」という会館。ここで中華料理、「酢豚が特においしかった」と私のメモに書いてある。吉田茂(1878~1967)が晩年まで過ごした大磯の邸宅は火災で焼失したが再建の計画が実現するらしい。しかし吉田茂が暮らした住まいに私がお邪魔できたことは何よりだった。
             8月17日  大磯の海を想いながら  松井多絵子