軽井沢に町内で2番目のラウンドアバウト「借宿ラウンドアバウト」が新設された。従来からあった「六本辻ラウンドアバウト」に次ぐもので、信濃追分駅から続く町道借宿バイパス線から軽井沢バイパスに合流する手前に位置している。
同交差点は外形30mで、3本の道路が交わっている(内1本は退出専用)。環状内の通行車両が優先であるのは、ラウンドアバウトには一般的なルールであるが、六本辻と違い、侵入時は「とまれ」ではなく「ゆずれ」の路面表示となっている。
軽井沢町内のラウンドアバウト設置場所(軽井沢町公式HP掲載の地図を一部修正)
この「借宿ラウンドアバウト」の写真が、町の「広報 かるいざわ」の2019年1月号の表紙に、町道借宿バイパス線が開通したということばと共に紹介されている。
借宿ラウンドアバウトを掲載した地元誌「広報 かるいざわ」(2019年1月号)
また、昨年のことになるが、このラウンドアバウト(環状交差点)の普及を目的にした「ラウンドアバウトサミット」が、全国16市町からなる普及促進協議会の主催で、10月25,26日軽井沢大賀ホールなどで開かれている。全国の自治体関係者ら約600人が参加したというから、かなりの規模の会議であったことが伺える。
以前、軽井沢・六本辻にあるこのラウンドアバウトを紹介した時(2016.8.4 公開)には、まだ日本では数えるほどしかないと思い、その珍しさもあって紹介したつもりであったが、今回この記事により、日本各地にもずいぶん多くのラウンドアバウトが設置されていることを知った。
ラウンドアバウトサミット開催を伝える軽井沢新聞(2018.11月号)
この記事によると、「ラウンドアバウトは2014年9月の道路交通法改正以降、各地で整備され、(2018年)9月末時点で30都府県78ヶ所で運用されている。」という。また、ラウンドアバウトサミットで、軽井沢町地域整備課の担当者が報告した内容によると、「ラウンドアバウトの正式運用が始まってから現在までは事故はおきていない」とのことである。
英国はじめ、ヨーロッパやアメリカでは広く普及しているとされるこのラウンドアバウト、日本での普及状況の実態は、とみてみると次のような状況であった。ここで、宮城県は日本で最もラウンドアバウトが普及している県であるが、その設置年度は資料には示されていなかったので、下表のようになった。また、設置総数も上記最新情報とは若干異なったものとなっている。
これによると、2014年の道路交通法改正が契機となり、設置は急増しており、その後も徐々に設置数の増加がみられている。
日本のラウンドアバウト設置状況(ウィキペディア「日本のラウンドアバウト⦅2019年1月3日 13:19⦆」のデータによる)
宮城県で設置が進んでいるのは、東日本大震災の時、停電により交差点での通行が混乱したことへの反省によるとされている。長野県はその宮城県に次いで設置件数の多い県であり、軽井沢町六本辻のものは、2012年11月13日からの運用というから、茨城県の常陸多賀駅前広場の同年6月27日に次いで、全国でも、かなり早い時期の設置ということになるが、どのような背景があったのだろうか。
常陸多賀駅前広場のラウンドアバウトについては、日立市の当時のHPに、「駅前広場の・・・錯綜する交通の整理など、交通結節点としての課題が山積していましたが、この度、再整備工事が平成24年6月27日に完成しました。・・・ロータリー内の車両の通行が優先となります。徐行や一時停止でロータリー内へ入り、時計回りの一方通行で走行し、目的の方向へ抜ける方式です。信号処理によるストレスが軽減され、災害等で停電になった際にも機能します。」とその目的と運用方法が記されている。
軽井沢町の公式HPを見ると、ラウンドアバウトの運用方法は出ているが、特に設置理由は見られない。六本の道路が交わっている場所なので、通行車両のスムーズな通行と、安全の確保が主たる目的であることは容易に想像がつくが、それだけであったのだろうか。
国土交通省が作成した資料「ラウンドアバウトの現状」(http://www.mlit.go.jp/road/ir/ir-council/roundabout/pdf01/4.pdf)に紹介されている、「軽井沢六本辻ラウンドアバウト社会実験協議会資料」によれば、アンケート調査結果として、交差点の全体的印象や歩行者・自転車の安全性が取り上げられているので、車両どうしの事故発生のほかにこうした問題意識があったことが伺える。
一方、2014年9月1日の道路交通法の一部改正とはどのようなものか。「環状交差点における車両等の交通方法の特例に関する規定の整備」が盛り込まれたとされているが、今までの交通方法に大きな変化を与えるその要点は次の2点とされる。
①車両等は、環状交差点においては、当該環状交差点内を通行する車両等の進行妨害をしてはいけない。
②車両等は、環状交差点に入ろうとするときは徐行しなければならない。
これは、「ラウンドアバウトの交差点では、交差点内の車両が優先」であることを示している。従来の道交法では、優先道路の標識がある場合や明らかに道幅が異なる場合、一時停止・徐行の道路標識がある場合など交差する道路で優先関係が決まる場合を除いて、車両は「左方優先」、つまり、左方向から進行してくる車両の進行を妨害してはならないと定められている。
そうすると、ラウンドアバウトにおいても、この「左方優先」の原則が適用され、ラウンドアバウト内を通行する車両ではなく、進入する側の車両が優先となる。これによって、ラウンドアバウト内には、必要以上に通行車両が多く、滞留してしまい、通常の十字交差点に比べ、信号待ちや加減速の時間が抑えられるというメリットが半減してしまうことになる。
この問題を解消し、ラウンドアバウト本来の特性を生かせるようにするための特例が今回の改正の目的であった。
軽井沢町が配布しているラウンドアバウトの通行方法
現在、六本辻ラウンドアバウトでは、進入車両を一時停止させているが、今後は借宿ラウンドアバウトのように徐行に変わっていくとの話も聞かれる。ラウンドアバウトでは車だけではなく、自転車や歩行者の通行・横断方法も十字型交差点とは異なる。こうしたことを周知させることも、今後ラウンドアバウトを普及させるうえで重要である。
海外でのラウンドアバウトの設置状況をみると、ヨーロッパやイギリス連邦、アメリカで普及している。ラウンドアバウト先進国のイギリスでは1960年代から導入のための調査・研究が行われ、1993年にはガイドラインが発行されていることもあり、設置が先行していて、2014年時点で25,000ヶ所の実績がある。ヨーロッパではフランスの設置数が最大で、同じく2014年の資料で30,000ヶ所以上とされる。また、オーストラリアでは、イギリスとほぼ同時期にガイドラインを発行している。
アメリカでは1990年代からメリーランド州、フロリダ州などで設計ガイドラインが発行され、導入が始まった。2010年の統計数字によると、2,000ヶ所以上、2014年には4,000ヶ所に設置されている。このほかドイツでも2000年頃からガイドラインの発行と改訂が行われ、2008年ごろから普及が進んでいる。
日本ではまだこれらに比べると、設置数はとても少ない現状であるが、今後ラウンドアバウトに関するルールの周知と共に、ラウンドアバウト設置のメリット・デメリットの検討、設置環境による適・不適の検討などが進むにつれて、設置数が増えて行くのではと思われる。
同交差点は外形30mで、3本の道路が交わっている(内1本は退出専用)。環状内の通行車両が優先であるのは、ラウンドアバウトには一般的なルールであるが、六本辻と違い、侵入時は「とまれ」ではなく「ゆずれ」の路面表示となっている。
軽井沢町内のラウンドアバウト設置場所(軽井沢町公式HP掲載の地図を一部修正)
この「借宿ラウンドアバウト」の写真が、町の「広報 かるいざわ」の2019年1月号の表紙に、町道借宿バイパス線が開通したということばと共に紹介されている。
借宿ラウンドアバウトを掲載した地元誌「広報 かるいざわ」(2019年1月号)
また、昨年のことになるが、このラウンドアバウト(環状交差点)の普及を目的にした「ラウンドアバウトサミット」が、全国16市町からなる普及促進協議会の主催で、10月25,26日軽井沢大賀ホールなどで開かれている。全国の自治体関係者ら約600人が参加したというから、かなりの規模の会議であったことが伺える。
以前、軽井沢・六本辻にあるこのラウンドアバウトを紹介した時(2016.8.4 公開)には、まだ日本では数えるほどしかないと思い、その珍しさもあって紹介したつもりであったが、今回この記事により、日本各地にもずいぶん多くのラウンドアバウトが設置されていることを知った。
ラウンドアバウトサミット開催を伝える軽井沢新聞(2018.11月号)
この記事によると、「ラウンドアバウトは2014年9月の道路交通法改正以降、各地で整備され、(2018年)9月末時点で30都府県78ヶ所で運用されている。」という。また、ラウンドアバウトサミットで、軽井沢町地域整備課の担当者が報告した内容によると、「ラウンドアバウトの正式運用が始まってから現在までは事故はおきていない」とのことである。
英国はじめ、ヨーロッパやアメリカでは広く普及しているとされるこのラウンドアバウト、日本での普及状況の実態は、とみてみると次のような状況であった。ここで、宮城県は日本で最もラウンドアバウトが普及している県であるが、その設置年度は資料には示されていなかったので、下表のようになった。また、設置総数も上記最新情報とは若干異なったものとなっている。
これによると、2014年の道路交通法改正が契機となり、設置は急増しており、その後も徐々に設置数の増加がみられている。
日本のラウンドアバウト設置状況(ウィキペディア「日本のラウンドアバウト⦅2019年1月3日 13:19⦆」のデータによる)
宮城県で設置が進んでいるのは、東日本大震災の時、停電により交差点での通行が混乱したことへの反省によるとされている。長野県はその宮城県に次いで設置件数の多い県であり、軽井沢町六本辻のものは、2012年11月13日からの運用というから、茨城県の常陸多賀駅前広場の同年6月27日に次いで、全国でも、かなり早い時期の設置ということになるが、どのような背景があったのだろうか。
常陸多賀駅前広場のラウンドアバウトについては、日立市の当時のHPに、「駅前広場の・・・錯綜する交通の整理など、交通結節点としての課題が山積していましたが、この度、再整備工事が平成24年6月27日に完成しました。・・・ロータリー内の車両の通行が優先となります。徐行や一時停止でロータリー内へ入り、時計回りの一方通行で走行し、目的の方向へ抜ける方式です。信号処理によるストレスが軽減され、災害等で停電になった際にも機能します。」とその目的と運用方法が記されている。
軽井沢町の公式HPを見ると、ラウンドアバウトの運用方法は出ているが、特に設置理由は見られない。六本の道路が交わっている場所なので、通行車両のスムーズな通行と、安全の確保が主たる目的であることは容易に想像がつくが、それだけであったのだろうか。
国土交通省が作成した資料「ラウンドアバウトの現状」(http://www.mlit.go.jp/road/ir/ir-council/roundabout/pdf01/4.pdf)に紹介されている、「軽井沢六本辻ラウンドアバウト社会実験協議会資料」によれば、アンケート調査結果として、交差点の全体的印象や歩行者・自転車の安全性が取り上げられているので、車両どうしの事故発生のほかにこうした問題意識があったことが伺える。
一方、2014年9月1日の道路交通法の一部改正とはどのようなものか。「環状交差点における車両等の交通方法の特例に関する規定の整備」が盛り込まれたとされているが、今までの交通方法に大きな変化を与えるその要点は次の2点とされる。
①車両等は、環状交差点においては、当該環状交差点内を通行する車両等の進行妨害をしてはいけない。
②車両等は、環状交差点に入ろうとするときは徐行しなければならない。
これは、「ラウンドアバウトの交差点では、交差点内の車両が優先」であることを示している。従来の道交法では、優先道路の標識がある場合や明らかに道幅が異なる場合、一時停止・徐行の道路標識がある場合など交差する道路で優先関係が決まる場合を除いて、車両は「左方優先」、つまり、左方向から進行してくる車両の進行を妨害してはならないと定められている。
そうすると、ラウンドアバウトにおいても、この「左方優先」の原則が適用され、ラウンドアバウト内を通行する車両ではなく、進入する側の車両が優先となる。これによって、ラウンドアバウト内には、必要以上に通行車両が多く、滞留してしまい、通常の十字交差点に比べ、信号待ちや加減速の時間が抑えられるというメリットが半減してしまうことになる。
この問題を解消し、ラウンドアバウト本来の特性を生かせるようにするための特例が今回の改正の目的であった。
軽井沢町が配布しているラウンドアバウトの通行方法
現在、六本辻ラウンドアバウトでは、進入車両を一時停止させているが、今後は借宿ラウンドアバウトのように徐行に変わっていくとの話も聞かれる。ラウンドアバウトでは車だけではなく、自転車や歩行者の通行・横断方法も十字型交差点とは異なる。こうしたことを周知させることも、今後ラウンドアバウトを普及させるうえで重要である。
海外でのラウンドアバウトの設置状況をみると、ヨーロッパやイギリス連邦、アメリカで普及している。ラウンドアバウト先進国のイギリスでは1960年代から導入のための調査・研究が行われ、1993年にはガイドラインが発行されていることもあり、設置が先行していて、2014年時点で25,000ヶ所の実績がある。ヨーロッパではフランスの設置数が最大で、同じく2014年の資料で30,000ヶ所以上とされる。また、オーストラリアでは、イギリスとほぼ同時期にガイドラインを発行している。
アメリカでは1990年代からメリーランド州、フロリダ州などで設計ガイドラインが発行され、導入が始まった。2010年の統計数字によると、2,000ヶ所以上、2014年には4,000ヶ所に設置されている。このほかドイツでも2000年頃からガイドラインの発行と改訂が行われ、2008年ごろから普及が進んでいる。
日本ではまだこれらに比べると、設置数はとても少ない現状であるが、今後ラウンドアバウトに関するルールの周知と共に、ラウンドアバウト設置のメリット・デメリットの検討、設置環境による適・不適の検討などが進むにつれて、設置数が増えて行くのではと思われる。
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