軽井沢からの通信ときどき3D

移住して10年目に入りました、ここでの生活と自然を写真と動画で発信しています

山野でみた蝶(1) ウスバシロチョウ

2018-05-04 00:00:00 | 
 自宅庭に植えたブッドレアとキャットミントの集蝶力はなかなかのもので、2年間にこれまで紹介してきたように、22種の蝶を自宅に居ながらにして写真撮影することができた。実際には、撮影ができず、紹介できなかった種を含めるともう少し多くなる。

 長野県産の蝶の種類は150種に及ぶが、そのうち129種が軽井沢に棲息しているとされる(「長野県産チョウ類動態図鑑」 田下昌志・西尾規孝・丸山 潔編 1999年 文一出版発行、「軽井沢の蝶」 栗岩竜雄著 2015年 ほおずき書籍発行)。周辺の山野に出かけるとまだまだ多くの蝶を見ることができる。それらを今後、「山野でみた蝶」として紹介していこうと思う。

 初回の今回はウスバシロチョウ。姿とその名前に似ず、シロチョウではなくアゲハチョウの仲間である。われわれはこのウスバシロチョウの名前の方になじみがあるが、最近はシロチョウ科と間違えることを嫌って、ウスバアゲハの名前を用いる本も増えてきている。

 正式にはどうなっているのかと思い「日本産蝶類和名学名便覧」というサイトと、「日本産蝶類標準図鑑」(白水 隆著 2011年 学研発行)で調べてみると次のように記されていた。

 日本産蝶類和名学名便覧:
 アゲハチョウ科-ウスバアゲハ亜科-ウスバアゲハ族-ウスバアゲハ属-(和名)ウスバシロチョウ/(別名)ウスバアゲハ

 日本産蝶類標準図鑑:
 アゲハチョウ科-ウスバアゲハ亜科-ウスバアゲハ族-ウスバアゲハ属-(和名)ウスバアゲハ/(別名)ウスバシロチョウ
 
とある。和名と別名に関しては逆になっている。

 ところで、古い「原色日本蝶類図鑑」(1964年 保育社発行)を見ると、当然「ウスバシロチョウ」の名が用いられているのであるが、その横に「ニッコウシロチョウ」という名前も見ることができ、日光に多産したことがその由来とされる。

 この蝶の「和名」にはいろいろあるなと思っていたら、「学名」も本により違っていた。

 上記「日本産蝶類和名学名便覧」にはウスバシロチョウの学名は「Parnassius citrinarius」とされているが、「原色日本蝶類図鑑」では「Parnassius glacialis」となっていて、ウィキペディアでも学名は「Parnassius glacialis」である。

 この点については、「日本産蝶類標準図鑑」に説明があり、次のように記されていて明快である。

 「本種の種小名はglacialis Butler, 1866が長い間用いられてきたが、Motschulskyによって記載された
citrinarius が先行することが最近判明し、本書でもこの説に従った 」。

 さて、このウスバシロチョウ、中華人民共和国東部、朝鮮半島、日本に分布、日本国内では北海道から本州、四国にかけて分布する。北方系のチョウなので、西南日本では分布が限られる。

 前翅長は25-35mm。翅は半透明で白く、黒い斑紋がある。体毛は黄色く細かい。年1回、5-6月頃(寒冷地では7-8月頃)に発生する。卵は幼虫の食草ムラサキケマンには産卵せず、付近雑木の下枝等に2~3個、或いは5~6個ずつ産み付けられ、そのまま卵の中で幼虫となって越冬し翌春2~3月頃食草の発芽するのを待って孵化する。

 日本の日本海側の多雪地帯では個体は黒く、太平洋側の低山地では白い個体が多い傾向があるとされる。

 幼虫の食草はムラサキケマンのほか、同じケマンソウ科のエゾエンゴサク、ヤマエンゴサクなど。蛹時にマユを作るという数少ないチョウ。

 軽井沢の遅い春に見られる蝶である。ふわりふわりと滑空し、我が家の周辺にも現れるが、庭にはこの蝶の好む花が咲いていなかったので、庭にきた蝶の仲間には入れなかった。

 我が家の隣地はまだ空き地になっていて、ここには春になると、タンポポやヒメジョオン、ハルジオンが咲いているので、この花に吸蜜に訪れることが多い。

 南軽井沢の八風湖の周辺に出かけると、よくこの蝶に出会うので撮影はもっぱらここで行っている。以前、1000m林道の脇でも偶然この蝶がたくさん飛び交っているのに出会ったので、翌年も楽しみにしていたが、同じ場所に出かけても、その後出会うことはなかった。

 私たちの目には、特に風景が変わったようには見えないのだが、この蝶にとっては何か大きな変化が起きていたのかもしれない。

 近縁種には、日本では北海道にのみ産するヒメウスバシロチョウとウスバキチョウがいる。ヒメウスバシロチョウはウスバシロチョウに酷似しており、北海道のほぼ全域に棲息していて、ハイブリッドもいるとされているが、ウスバキチョウは大雪山系の標高1,700m以上の山頂部などにのみ棲息するとされる。

 では、以下に軽井沢で撮影したウスバシロチョウをご紹介する。


タンポポで吸蜜するウスバシロチョウ(2013.5.26 撮影)


ハルジオンで吸蜜するウスバシロチョウ(2014.6.14 撮影)


ハルジオンで吸蜜するウスバシロチョウ(2017.5.22 撮影)


ハルジオンで吸蜜するウスバシロチョウ(2017.5.22 撮影)


ハルジオンで吸蜜するウスバシロチョウ(2017.5.22 撮影)


タンポポで吸蜜するウスバシロチョウ♀(2017.5.20 撮影)


タンポポで吸蜜するウスバシロチョウ♀(2017.5.20 撮影)


タンポポで吸蜜するウスバシロチョウ♀(2017.5.20 撮影)


ハルジオンで吸蜜するウスバシロチョウ(2017.5.22 撮影)


ハルジオンで吸蜜するウスバシロチョウ(2017.6.17 撮影)


ハルジオンで吸蜜するウスバシロチョウ♀(2017.6.17 撮影)


ハルジオンで吸蜜するウスバシロチョウ♀(2014.6.14 撮影)


ハルジオンで吸蜜するウスバシロチョウ(2017.6.17 撮影)


ハルジオンで吸蜜するウスバシロチョウ(2017.6.17 撮影)


シロツメクサの葉の上で休息するウスバシロチョウ(2017.5.22 撮影)


タンポポで吸蜜するウスバシロチョウ(2017.5.20 撮影)


ハルジオンで吸蜜するウスバシロチョウ(2017.6.17 撮影)


ハルジオンで吸蜜するウスバシロチョウ(2017.5.20 撮影)

 ウスバシロチョウは雌雄の差が少なく見分けにくいが、交尾後の♀は受胎嚢をつけるので判別は容易となる。前出の写真でも、この受胎嚢を確認できるものだけは♀としておいた。


受胎嚢をつけているウスバシロチョウの♀・1/3(2017.6.17 撮影)


受胎嚢をつけているウスバシロチョウの♀・2/3(2017.6.17 撮影)


受胎嚢をつけているウスバシロチョウの♀・3/3(2014.6.14 撮影)

 前記の通り、このウスバシロチョウの生活史は、卵の中で幼虫のまま越冬したり、繭をつくりその中で蛹になるなど興味深いものがある。なんとかその様子を3D撮影できないものかと思っている。

コメント
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