英語ではこう言えば良いだろう:
「タクシーを呼んで下さい」:
解説)これは寧ろ笑い話のような話で、屡々失敗の例として引用されているものである。フロント(デスク)に行って“Please call me a taxi.”と言って頼んだら“Hey, taxi.”と言われてしまったというのだ。「チャンと、私にタクシーを呼んで下さいとなっているじゃないか」と言われそうだが、ここが英語の面倒なところなのである。それは「誰のためのタクシーを呼ぶのか」が抜けているので、“Hey, taxi.”となってしまったのだとの教訓なのだ。
正解は“Please call a taxi for me.”であり、「私が乗るために」と乗る人を特定する表現を入れなければならないのが、英語という言語の理屈っぽくて、我々にとっては面倒な点なのだ。即ち、思考体系の違いなのだ。同様に「奥様のヘレンに宜しく」を“Say hello to Hellen, please.”は文法的にも言葉遣いにも誤りはない。だが、ここでは“Please say hello to Helen for me, please.”と、for meを入れておかないと、誰が宜しくと言っていたかが特定されていないことになるのだ。
勿論、for me無しでも通用するだろうが、ここではfor meと言っておくのが無難なのが英語のしつこいところなのでご注意を。
「一寸(店内を)見るだけですが、宜しいですか」:
解説)少し日本語が丁寧すぎたかも知れない。これは、その店で何か買うかどうかがハッキリと決まっていないときに、こう言って予め了解を取っておくと良い台詞。“Let me take a look around, first.”か“May I just take a look around, first?”でも良いと思う。アメリカでは「冷やかし」は問題にならないと理解しているが、一応こう言って断っておくようにしていた。ドイツでは、店内に入ったら冷やかしは許されないと聞いていたが、デユッセルドルフでは咎め立てされなかった経験があった。
だが、アトランタの靴屋だったと記憶するが、チャンと断った上で散々見て歩いていたら、店主と思しき老人に「何時まで見ているのか。もういい加減に買いに入ったらどうだ」と凄まれたこともあった。結局、何も買わずに退散した。
「今、何時ですか」:
解説)「“What time is it, now?”以外に何があるか」と言われそうだ。だが、彼等アメリカ人の中には“What time do you have?”のような尋ね方をする人もいるので困る。私が思うには「彼らは時間とは自分の物だ」と認識しているような傾向があり、その自分の時間をどのように使うかは当人次第だと考えているようなので、「貴方はどのような時間を持っていますか」という訊き方になると思っている。
因みに、“Do you have time?”となると「時間がある?」と尋ねていることになる。そこで、“Yes, I have time in plenty.”などと答えると、“Let’s sit down to have a chat.”などと「一寸(お茶でも飲んで)話をしようじゃないか」などとなるのだ。
私は初めてアメリカに行った1972年に、到着したサンフランシスコ空港で乗り継ぎ便を待っているときのことだった。同じ便で隣に座っていたアメリカ人に再会して、時間があるのなら“I’ll buy you a drink,”と誘われたようだった。それが「一杯おごるよ」だと知らなかったのでドギマギしたのだった。これを覚えておけば、こう言って何方かを「一杯飲もうよ」と誘うことも出来るようになるのだ。