「どうして、そんな難しいことを簡単な単語だけで言えるのですか」:
この見出しは1998年頃に個人指導を依頼されていた商社の若手に言われた台詞である。これは寧ろ「易しい単語だけを使って、そういう事が表現できるのがnative speakerたちの日常会話だ」ということなのだ。現実にアメリカ人の中に入って仕事をしていると「へー、そういう場合にはそう言えば良かったのか」と、思わず感心してしまうほど、難しい単語を使う必要はないのだと解ってきたのだった。
これから思いつくままに、そういう現場で習い覚えた表現の例を並べていこうと思う。強調しておきたいことは、「このような簡単な言い方を日本語にしてみて、それをもう一度英語に戻してみようなどと思うと、予想以上に難しくなってくること」だ。毎度の事ながら例文は順序不同である。
“I’ll be right with you.”
解説)この表現には、私が常に指摘している「こういう場合にはこう言えば良いのだ」と覚えておくことが肝腎で、無理に日本語に訳す必要などないと言う点が現れているのだ。これは「直ぐに(貴方の所に)行くよ」という意味なのだ。「この日本語にしたい方を英語で言って見ろ」と言われたら、案外に苦労することになると思う。注目すべきはwithの使い方だ。
“I’ll tell you what.”
解説)これを初めて聞いたときには意味が解らなかった。それは、5~6人で昼食にと外出した際に、何処に行くかの意見が分かれて動きが取れなくなってしまった。すると、最長老の技術サービスマネージャーが“I’ll tell what. Let’s get to Chinese.”と言って話が纏まったのだった。この意味は「良い考えがある」か「こうすれば良いじゃないか」なのだが、日常会話では“I have a good idea.”とはならないのだ。私は後になって別の者に「あれは何という意味」と尋ねて覚えた言い方。
“Can you get hold of him?”
解説)意味は「彼と連絡が付くかい?」と言っても良いし「彼の居場所を知っているか」でも「彼とコンタクトできるか」などでも良いと思う。これは実際に某国の大使館の書記官に、その国の「ある人に緊急に会いたいのです。居場所をご存じですか」と電話をしたところ、誰かにこう尋ねているのが聞こえたのだ。次に聞こえたのが“You mean you know his whereabouts?だった。「それは、君が彼は何処にいるのか知っているという意味か」と確認した言い方だった。
似たような表現に“get in touch with 誰それ”というのもある。言っておきたいことは、“Can you contact him?“などと言う固い言葉は使われないものだという辺りだ。しかし、whereaboutsのように複数形でなければならない単語は、易しい部類には入るまいと思う。
“I’ll sleep on it.”
解説)これも「はて、何の事を言っているのか」と一瞬戸惑わせられた言い方だった。意味は「この件を明日まで考えてきます」でもあるし「よく考えてきます」でも「暫く時間を下さい」と言いたいときにも使えると思う。要するに、即答を避けたいのである。You sleep on it.にすれば、命令になる。「明日まで時間を下さい。考えてきます」と英語で言うとなれば、かなり苦心することになるだろう。これが日常会話なのだ。
結び:
矢張り強調しておきたいことは「日本語の表現を、色々と数多く習い覚えた単語を思い出して、それを文法に則して並べて文章を構成しようとするのではなく『こういう場合にはこう言えば良いのだ』という例文を沢山覚えて置く方が、自分の思うところを表現するときに役に立つ」である。
そういう例文は音読・暗記・暗唱した教科書に中にあったかも知れないし、テレビの画面の他に流れてくる音声の中にもあるかも知れないのだ。換言すれば、単語をバラバラに覚えるのではなく、文章の流れの中で使い方を学ぶ方が実際の役に立つのだ。一寸気をつけていれば、英和辞典には手頃な例文が出ている。未だ未だ、言うなればこのような口語的な日常的な言い方は沢山あるが、今回はここまでにしようと思う。
なお、このような言い方を取り上げてみた訳は、17年5月に採り上げた「旅先で役に立つ簡単な表現」が有り難いことに今でも読んで下さる方がおられるので、簡単な表現を追加してみようと考えた次第。
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