CPUの役目を担うのは誰だ：
今回は、我が国には「中心になって司令塔として当面する諸問題を処理しようとする、CPUのような役を担おうとする存在がいなくなったのでは」という辺りを論じていこうと思う。
目下の所、我が国には大小取り混ぜで色々と早急に解決すべき案件が多いようだ。大きい方の範疇に入るかと思う例には「処理水の問題」や「高騰する一方のガソリン価格」があると思う。小さい方には「ビッグモーター」が入り、民間の芸能の分野のことだが「ジャニーズ事務所問題」を入れても良いだろう。
大きい方の範疇に入れた件は、岸田内閣と中央官庁が責任を持って事に当たるべきだと思ってみている。だが、処理水についてはマスコミの動きにも至らざる点が見えるのが不満であるし遺憾でもあるのだ。
それは、彼らはしきりに早くから「風評被害」を強調して、福島と東北地方の漁業者が被るだろう損失を強調する点だ。彼らは先月に排出が始まる前からしきりに「風評被害」を取り上げていたが、その頃には風評など立っていなかった。でも、彼らは報じていた。私は彼らが漁業者の苦境を強調し寄り添う姿勢を見せるだけではなく、中国が不当な圧力をかけているのを取り上げて、政府と東電に排出を辞めさせるキャンペーンでも張る気なのかと疑っていた。
彼らは中国が輸入禁止を発表するや「中国向けの水産物の輸出額と、その中の帆立貝の額を取り上げて、水産物の輸出が危機を迎える」と報じていた。それはそれで解ることだが、彼らの報道には我が国の中国向けの輸出の中に水産物が占める比率などには、一切触れていなかった。正確な統計は知らないが、その率は1％程度だと漏れ承っている。そういう点を明らかにして報道すべきではないのか。彼らの姿勢は感情論に聞こえてしまいそうで片手落ちだ。
政府にしたところで、どのように中国の「我が国を悪者の如くに世界に知らせよう」との戦略的姿勢が、排出前から明らかだったのだから、どのような逆櫓を用意して排出を開始すべきかの準備が出来ていて当たり前ではなかったのかと考えてしまう。でも、農水大臣は「そこまでやるとは想定外」と言ってしまった。中国は去る1月からフェイクニュースも含めて、悪意ある内容で我が国の処理水が健康被害を与えると全世界向けに流していたそうではないか。
それを外務省も農水省も知らなかったと言えるのか。言いたいことは「排出することは以前から決まっていたのだから、その時に中国が牽制してきた場合の対応策を取り仕切る司令塔は準備されていなかったのか」なのだ。野村哲郎農水大臣の視野と思考力の幅の狭さは論外だと指摘したい。
ガソリンの価格にしたところで、経産省か財務省がどのように政権に入れ知恵しているのか知る由もないが、税金からの補助金ばかりではOPECの生産調整が変わらず、円安傾向止まらないのでは、弥縫策に過ぎないのではないか。何故、ガソリンにかけている税を見直さないのだろう。
小さい方に行こう。ビッグモーター（BM）は所謂「御店」（オタナ）で同族経営なのだ。そこは、旦那の意向次第で全てが決まってしまう会社であるのは常識だ。そのようなBMの実態を取材していたジャーナリストがいたくらいだから、監督官庁乃至は行政機関がその気になって調査し検査していれば「何がどのように宜しくないか」は解っていても不思議ではなかったはず。
でも、ここにもCPU的な存在がなく、事があそこまで行ってしまってから対応した。“Better late than never.”では済まされない問題にしてしまった。損保ジャパンほどの大手損保会社が、事の実態が明らかになった今頃になって、社長が辞任を表明しただけで「何時か」は明らかにしていない。これまでに何度も日本経済の不振が「経営者の劣化の為だ」と言ってきたが、その悪い例を見せつけられたようで残念である。
ジャニーズ事務所の問題も同様で、中心になって実態を明らかにして、どのように対処するかを主導する存在が見当たらなかった。報道機関はと言えば、週刊文春が取り上げて有罪判決まで出ていたにも拘わらず「見て見ぬ振り」を決め込んでいた。それが、事が公になるや否や一斉に朝から晩まで「ジャニーズの性加害怪しからん報道」である。花田凱紀氏ではないが、当方も「もう良いよ」状態になった。
故喜多川某のテレビや新聞に与えていた強権的圧力が、今でも効いているのかと思わせられたほど、あの記者会見の後でも彼らマスコミはあの空疎な内容に突っ込んだ報道はしていない。スポンサー企業にしたところで、実態が明らかになって漸くジャニーズ事務所所属の芸人を広告に起用しないと表明するなど遅まきだ。宣伝広告を担当する会社では喜多川とジャニーズ事務所が何をしているかを承知していたはずだ。「誰が何の為に誰に気を遣っているのか」と非難したい。
岸田総理は来週には内閣を改造されると報じられている。総理には「是非、自分が中心に立って全体を引っ張っていくぞ」と言う気概を示す専門的知識と経験豊富な方を、眼下の危機を可及的速やかに脱すべく起用して頂きたいと願うのだ。