新宿少数民族の声

国際ビジネスに長年携わった経験を活かして世相を論じる。

"What's up?"という挨拶

2022-09-13 08:15:08 | コラム
2年間アメリカで暮らして一度使ったことがあった:

つい先日、某有名私立大学法学部のT教授と懇談の機会があった。その際に、私からイチロー君がシアトルマリナーズ殿堂入りの記念式典の挨拶で”What’s up, Seattle?“から入っていった件を採り上げてみた。教授は少し衝撃を受けられたような表情で「2年間アメリカで暮らしていた間に、一度だけ”What’s up?”を使ったことがあった」と回顧された。そういう類いの挨拶の仕方であると言える。教授は今世紀初頭に2年間イリノイ州の大学に研究留学され、単身で過ごす経験があった。

あらためて解説すれば、”What’s up?“は”How are you?”か、今ではごく普通にアメリカで使われている”How are you doing?“と同じの「やー。今日は。」という挨拶の一種である。戦後間もなくの大方の英会話のテキストには「”How do you do and how are you?”が初対面を含めて最も常識的な挨拶である」とされていたと思う。だが、1972年8月に初めてアメリカに渡って以来、この挨拶に出会ったことはなかったと記憶している。不思議だった。

最も一般的な言い方が”How are you doing, today?“だったと思う。1945年の敗戦から27年も経っていれば、現地での挨拶の仕方も変化してしまっていたのかくらいに軽く考えて「郷に入っては郷に従う」ようにしていた。しかし、アメリカに馴れてくると、挨拶に使われる表現は口語というか通俗的表現まで網羅すれば実に多彩だったのだ。イチロー君が使った”What’s up?”もそのうちの一つに過ぎない、打ち解けた間柄で使う言い方だった。他の例を挙げてみると、

What’s new?
What’s cooking?
How’s everything, today?
Howdy?
How’s it going?
How ya doin’?
How does the world treat you, these days?
How have you been?

などを思いつくが、未だ他にもあったかも知れない。だが、我々日本人が初めて会う人に向かっては”How are you doing?”辺りを使うのが無難だと思う。また、テレビなどで芸人たちが屡々「ナイスミートユウ」などと言っているのは、真似しない方が良いと思う。あれを文法的に正しくすると”Nice to meet you.”になるからだ。私は何処かでmeetは目下に向かって使う言葉であり、”Nice to see you.“の方が良いと聞いた気がするので、seeを使ってきた。

だが、この”Nice to see you.”も省略した形であるので、初対面では”It is very nice to see you.“のようにする方が適切だと思う。気軽に”Nice to meet you.”などと言えば、もしかすると先方は「貴方とそれほど打ち解けた間柄ではない」と不快に感じるかも知れないから。先方との関係を良く考えてから挨拶の仕方を選ぶのが良いと思う。

ここで少し韓国語での挨拶に触れてみよう。一般的に「今日は」という意味で「アンニョンハシムニカ」が知られているが、これよりも少し軽い言い方に「アンニョンハセヨ」がある。私の乏しい韓国語の知識では、冒頭の「アンニョン」は漢字を当てると「安寧」になって「安寧に暮らしていますか」という意味になるそうだ。そして、親しくなると略式で「アンニョン」とだけ言うと聞いていた。

そこで、実験として、我が家の道路の反対側に出現したキムチ等の韓国の惣菜や料理の小売店の店番の青年に、何度目かで白菜キムチを買いに行ったときに「アンニョン」と声をかけてみた。すると、露骨に嫌な顔をして「貴方とはそんな親しい間柄ではない」と突き放された。韓国語の挨拶に関する知識は間違いではなかったと証明できた。