新宿少数民族の声

国際ビジネスに長年携わった経験を活かして世相を論じる。

9月8日 その2 岸田さん、何とかして状態を良くして下さい

2022-09-08 09:49:10 | コラム
勿論、問題は¥144の円安だけではない:

止まるところを知らない円安は、遂に「この儘では¥150」との説まで出てきた。何も我が国内だけの事情ではなく、激しいインフレを阻止しようとするアメリカFRBの利上げが大きく影響していることは否定できないだろう。「だから手の施しようがない」と諦めていて良い状態ではあるまい。マスコミ的に言えば「賃金は上がらず物価のみ上がる」という長引く最悪の状態を何とかしようと努力して頂けねばならないのだ。

昨日から、くら寿司が¥100を¥115に引き上げると発表した。理由は急激な円安その他による原材料とエネルギーコストの上昇等々を挙げていた。私は「円安」を理由にするのならば、この値上げのような15%には止まっていられないと思う。それは、上昇するのは輸入の原材料だけではなく、その材料を港で荷下ろししてから、くら寿司の厨房に輸送するまでのコストも急上昇する事を忘れてはならないからだ。

簡単に見てみれば、例えばキロ当たり¥100で輸入した品物でも「通関し、保税倉庫に蔵入れし、荷主の工場にトラックなりコンテイナーの儘で内陸輸送した時点で少なくとも15%の経費が発生しているし、輸出した国で決裁してからの金利も発生しているのだ。即ち、ここまででキロ当たりの単価は¥120日価格なってしまったかも知れないし、そこから先の最終製品にするまでの経費もかかるのだ。

ここまでで皮肉なことに、全ての場面に関連している人件費は据え置かれていたのではないのかな。言いたかった事は「くら寿司は多くの原材料の魚類を輸入に依存しているというのならば、15%程度の値上げでは補い切れていないのではないのか」なのだ。

長々とくら寿司の例を採って論じたが、このような輸入品のコスト上昇は、あらゆる輸入品にでも生じている問題だと思う。だが、¥144にまで安くなったからといって、輸入品が即日に値上がりすることはないと思う。それは輸入に依存する場合の常識として、最悪でも1ヶ月分の在庫を持つようにしていないと、アメリカ西海岸からでも2週間を要する海上輸送の期間があるのだから。その貨物が到着しても保税倉庫から出せるまでには1週間以上を要するのだから。

ここまでの例が示すように、円安の悪影響(と敢えて言うが)は深刻なのである。この円安の流れを見ている限りでは、岸田内閣も、日銀も、財務省も何らかの効果があるような対策を講じてくれたような感がないのは何故だろう。私には具体的な対策など考えられる知恵も知識もないが、「悪い円安」などと言って無策で過ごしていられる場合ではないと思う。何とか「状態を良くする策」をお考え願いたいものだ。

エネルギーコストと電力の価格上昇には、何時になったら効果的な手を打って貰えるのだろうか。G7の一員だからと称して、ロシアに制裁を科した時点でこうなってくることは十分に予測できていたはずだ。そうお解りだったのならば、粋がって制裁に走る前に「国民の皆様、制裁を科せばこうなると予測できますので、事前にご了解を賜りたく」と、少なくとも語りかけておく必要があったのではないのかな。必要なことは「語りかける力」ではないのか。

安倍晋三元総理の「国葬」は重大な国事行為だ。これも、国会閉鎖中の審議があるそうだが、野党とマスコミ連合軍がどのような反応を見せるのかくらいのことを、予想できていなかったのだろうか。報道によれば、弔問に来られる他国の要人に「自費でのご滞在」を求めるような予算になってしまったとかだ。騒ぎ立てる野党が怪しからんのは言うまでもないが、本当にかかる予算措置を財務省だか何処かが言うのであれば、国家としては大恥などという次元ではあるまい。

かかる事態を生じさせないように「状態を良くする力」を発揮するのが、内閣総理大臣・岸田文雄氏の任務ではないのかな。

旧統一教会の問題も一向に火が消えない。本日発売になる週刊誌2紙の新聞広告を見れば、恰も自由民主党は邪教と手を組んで選挙対策を立てていたかの如きだ。しかも、野党とマスコミ連合軍は旧統一教会と少しでも関係があった自民党の議員のことを、まるで刑事犯罪の如くに騒ぎ立て書き立てているのだ。

この旧統一教会対策も、岸田総理と自民党が出だしで軽く扱ってしまったことが、今日の与論を悪い流れにもって行かせてしまったのだと見ている。今や、与論は山上徹也のことなど綺麗サッパリ忘れて、自民党非難が主体になってしまっているではないか。そこに、山際大臣のような不手際な人が出てくれば絶好のマスコミの好餌で尚更だ。

新型コロナウイルスというかオミクロン株対策も煮え切らないのが残念だ。未だに何方が司令塔で仕切っておられるのかが判然としていない。尾身茂氏も嘗てのように政治家然としたテレビへの登場もなければ、小池東京都知事もなりを潜めておられる。この問題に迂闊に手を出すと実力のほどを問われる結果になると、3年間の経験で関係者一同が認識されて、貧乏くじを引く人がいなくなったらしい。それでは困るのが国民だと総理はご存じか。

高齢者として最後に一言申し上げておけば「来月1日から病院等での負担が100%値上がりの2割になるのだが、何故政府でもマスコミでも与論でも問題にならないのだろうか」なのだ。団塊の世代が一気に後期高齢者になるので健康保険が大変だと言うが、負担する既存の高齢者も大変な負担の増加になるのだ。

内閣総理大臣岸田文雄氏はご存じなのだろうか「あれもこれも状態が悪いんですよ」という実態を。ご存じであれば、何とか有効な改善の手段を可及的速やかに講じて頂きたいのだ。


今昔物語

2022-09-08 08:07:53 | コラム
アメリカの住宅着工と自動車の生産・販売高:

今は昔の、GAFAMなど影も形もなかった頃のアメリカを回顧してみようと思う。一昨6日に取り上げた「高田馬場駅前にVESSEL HOTELが新規参入」の中で一寸触れた、往年のアメリカにおける景気の動向のバロメーターをあらためて振り返ってみたい。

ウエアーハウザーにはMarketing and Economic Research(M&ER、経済調査部と訳されていた)があり、そこにはアメリカ中に名が知られていたエコノミストのリン・マイケリスがいた。彼は90年代に我が国の経済団体に招かれて来日し、方々でアメリカ経済についての講演をしたこともあった。

また、彼が率いるM&ERが発行するアメリカ全体を論じていた「経済四季報」(勿論、英語である)は、我が国の取引先以外においても好評で予約が殺到していた。余談になるが、この四季報は各方面で広く読まれていても著作権の問題があり、我が社の了解なしには和訳すると著作権侵害になるという問題点もあった。

マイケリスが我々に説いて聞かせてくれた事柄の中で最も印象に残っているのが「アメリカの景気のバロメーターは住宅着工(housing starts)と自動車の生産・販売高である。それは、この両産業が好調になれば、関連する数多くの業界の需要も大いに喚起されるのだから」だった。言うまでもない事で、住宅着工の動向はアメリカ最大の林産物メーカーであるウエアーハウザーにとっては重大な経営上の要素だった。

だが、参考までに振り返っておくと、住宅着工は未だ何とか無事に推移してきたが、事が自動車となるとそうとは行かない。トランプ前大統領が輸入車を再三厳しく非難していたように、デトロイトは衰退の一途を辿ってきたのだった。現在では少しは盛り返しては来たが、アメリカ国内を歩いて観察してみれば「アメリカでも未だ4ドアのセダンを製造していたのか」と感じてしまうほど国産車は少ない。即ち、自動車は最早アメリカ国内の景気のバロメーターとはなり得ないだろう。

マイケリスが在籍していたウエアーハウザーも、5年ほど前に紙パルプ産業界から完全に撤退して、今や1900年に法人化された当時の木材だけの会社に戻ってしまっている。あの本社ビルも売却したし、株式会社でもない形態になってしまったと聞いた。このような流れが象徴しているのが「アメリカにおける印刷(紙)媒体の止まるところを知らない衰退」である。これ即ち、「今は昔」の物語なのだ。些か感傷的になってしまった、