新宿少数民族の声

国際ビジネスに長年携わった経験を活かして世相を論じる。

帰らざる川を下る中国を論ずれば

2015-10-01 08:34:34 | コラム
インドネシアが高速鉄道を中国に発注した:

事態がここまで来れば、何処の国のどの指導者が天上天下唯我独尊と振る舞う中国の動きを止めようと乗り出すかが問題だ。少なくともオバマ大統領は失格だ。私は現在の中国問題にはマスコミ報道程度の知識しか無いが、ここに敢えて過去の経験から中国を語ってみることにする。

私は習近平が何を狙って先の訪米でいきなり一見中国とは何の関係もないかの如くに見える我が第二の故郷?シアトルに舞い降りたのかと訝っていた。私如きにはそれがボーイングに300機を発注するためのものだと知って、彼の強かさとオバマ大統領に対する駆け引きだと知って、寧ろ敬意をすら表したくなった。

ここから先は回顧談になるが、中国と言うよりも世界各地、特に東南アジアの諸国の経済に絶大なる支配力を持つ華僑の凄さと恐ろしさを認識させられた辺りを述べていきたい。

私は1995年に伊藤忠商事と契約してインドネシアにシンガポールの大手華僑財閥のSinar Mas(シナル・マス)が経営する製紙会社”Asia Pulp & Paper”(APP)の印刷用紙の国内の流通機構向け販売促進の手伝いを開始することになった(他には社員教育も担当した)。これが華僑の表と裏の凄さを再度目の当たりにする経験となった。

その手始めに訪問したのがジャワ島のAPP最大の工場だった。ここには業界歴40年を誇る私が目を疑うような世界最新鋭の三菱重工製の超近代的且つ大型で高速の抄紙機が稼働していたのだった。驚愕的だった。新興勢力は新鋭マシンを装備することしかないのだと知らされたのだった。アメリカの博物館から前世紀の遺物を借りてきたのかと疑いたくなるような抄紙機に馴れていた私には、当に信じられないような素晴らしいマシンだった。

簡単に解説すれば、その後我が国の大手メーカー4社がが導入した最新鋭のマシンの年産能力が30~35万tonだったのに対して、APPのマシンは軽々と50万tonを超えていたのだった。だが、その後APPは設備拡張のためアメリカの世界的製紙機械メーカー、Beloitに大量の最新鋭のマシンを発注したのだった。ところが、杜撰のように見えた経営と低迷した市況の為に、APPがその発注をキャンセルせねばならない苦境に追い込まれた。

ところが、この大口受注に賭けていたベロイトは抱え込んでしまった材料の在庫負担と売上減等にに耐えきれず破産し、消滅してしまったのだった。ベロイトの破綻は世界の製紙産業界にとっては例えようもない大ショックだった。。

ところが、そこから先が華僑の凄さでシナル・マスのオウナーのテグー・ガンダ・ウイジャヤは既に中国に設立してあったAPP・Chinaとの連係動作でインドネシアの会社は倒産を免れ操業を続け、今や全APPは世界最大級の製紙会社で全世界に向けの輸出に注力するメーカーに成長し、その間に訴訟問題も結局は切り抜けていた。私はその経緯を見ていられる立場にあったので、今更ながら華僑の凄さと恐ろしさを再認識していた。

ここで話を更に前の戻せば、私は1970年に生まれて初めての海外出張で台湾、フィリピン、シンガポール、香港と回った。華僑がこれら諸国の経済にどれほどの支配力と影響力を維持しているかを知らされてた。何しろ、何処に行っても有力者は皆中国系の姓名で金持ちだったのだから。それから45年を経てAPPに接して、中国と華僑の表と裏における凄さとイヤらしさと、ある意味での脆弱さを再認識させられたのだった。

その中国に未だに世界の政治・経済の裏表を学習したとは思えない純情?な大統領率いるアメリカと、国を代表する大企業が第二のベロイトを生じさせない事を祈りたい気分だ。我が国は既に高速鉄道で痛い目に遭わされているようだ。マスコミ報道によれば、中国はインドネシアに対して安全性の問題点を相殺するかのような価格的にも有利な条件を提示した由だ。彼らの形振り構わぬやりたい放題は今後とも続くと私は危惧するのだ。