新宿少数民族の声

国際ビジネスに長年携わった経験を活かして世相を論じる。

アメリカを層別に分析すれば

2014-12-18 16:50:08 | コラム
アメリカを構成する「層」は:

私は1~2ヶ月ほど前に「アメリカは社会的か経済的な地位によって縦列式というか上下の関係で多くの層が形成されているものではない」との私見を披露した。即ち、そのは各層には上下関係による差別なり何なりがあるような不平等な世界であると、海外の国、例えば我が国でも良いだろう、から一般的に認識されていると考えている。

私は1972年3月から94年1月末まで合計2社のアメリカ紙パルプ大手メーカーに合計約22年在籍し、その数万人の社員を雇用する企業の社員の1人として経験したかあるいは見聞してきたアメリカの一部を語っていこうというのだ。今回はその複数の「層」とは如何なるもので、各層を構成するのは誰かという辺りを、私独特の視点から分析していく。独特と言った以上、皆様ご自身の経験や有識者やマスコミ論調によって得た「アメリカという虚像」とは異なってくる危険性が高いだろうと心得ている。

なお、これから分類していく層の間には上下関係などありそうでないことを念頭に置いていて頂きたい。採り上げる順序も上下なりなんなりとは無関係で、私の頭の中に浮かんできただけの順序不同である。さらに確認しておけば、これらの層は上下関係はなく重層的にはなっておらず、寧ろ横一線の如くに並んでいるだけだとお考え頂いた方がより解りやすいと思う。

*白人(WASPを含む)を中核とする層:
確かに白人たちの集まりで、恐らくこの中にはアッパーミドル以上の裕福な家庭を持つ者が多くなるだろう。人数を特定する術の持ち合わせは私にはないが、推定ではアメリカの3億1,000万人を超えた人口の5%くらいにはなるかと推定する。ざっと言って800万人とでもなるだろうか。恐らく彼等が経済・政治・学問の世界の中枢にあるだろうし、政・財・経・官の世界を行ったり来たりしていると見ている。

私はここで所謂「キャリヤー組」で短期間に出世していくのはMBAとPh.D,等の大学院出身者であるとあの世界に入ってから知った。その連中が経済界を支配する力を持つと経験的にも考えている。即ち、高額の学費を投資してIvy League等の一流私立大学の法科大学院(Law School)やビジネススクール等の大学院出身者「スピード・トラック」に乗って出世街道を突き進んでいく。因みに、アメリカの4年制大学には法学部はない。

*4年制大学出身者等:
所謂四大卒とそれと同等ないしはそれ以下の学歴を持つ者がその多くを占めるだろう層と考えている。アメリカの多くの大手製造業界では通常4年制大学の新卒者を定期採用するシステムを採らず、各事業部の本部長の判断で必要に応じて即戦力となる経験者を外からその燭に就けるか、社内から募集することもある。即戦力の新規採用は社内、引き抜き、勧誘、応募者の面接、ヘッドハンティング等の手法で採用していく。その際にはMBA(経営学修士)かPh.D.(博士号)を持つ者が優先されるのがアメリカ。

では一般の事務職は誰がやるのかという問題が出てくる。ないしは中間管理職的存在のスピード・トラックに乗っていく者の手足になるのは誰かとなる。この種の言わば実務担当かキャリヤー組のアシスタント的な仕事をするのが、出世しない地位に止まると覚悟して入って来た言わば州立大学の4年生出身者が多いだろうし派遣もいる。彼等の多くは地位と身分の垂直上昇はハナから眼中にないか、諦めており、「与えられた仕事だけを恙なくやっていれば良い」と割り切り、その限定された範囲内の専門家となって身分の安定化を目指す。

4年制大学出身者はいきなり大企業に採用されないのであれば、中小の企業で実力をつけるか、腕を磨くかしてその業種や業界で名も顔も知られた存在となって大手からの引き抜きを待つか、自分から希望するか狙いを定めた会社の中の自分に合う事業部の本部長に履歴を送りつつけて、何時かは欠員が生じた際に事業部長が自分の履歴書に気が付いてくれる日を待つのだ。電話が来るかも知れないと。直接売り込みだってありだ。ヘッドハンティングもありかも知れないのだ。

こういう形だから、2000年代に入って知り合ったオレゴン大学(州立大学である)にやっと入れたアメリカの男子学生が「私は高校で不勉強だったので州立大学にしか受け入れて貰えなかった。これで私の将来は半ば以上決まってしまった。ここを打開するためにはアメリカ西海岸との最大の貿易国・日本との関連がある企業、就中Weyerhaeuserのような会社を目指そう。そのためには日本語を学ぼうと決めた」と言った。

彼は3年時に明治大学政治経済学部に編入した。私が情けないと驚いたことは、彼が「アメリカで2年間だけ勉強してきた日本語の力は明大の日本語の講義に何の障害も問題もなく付いていけた」と言ってのけたこと。僅か2年でそこまでの力がつくとは。即ち、中・高と6年間も教えた我が国の英語教育の成果は何処にありや」と慨嘆せざるを得なかった。さらに付け加えれば、遺憾ながら韓国人には我が同胞よりも英語力は高いものが多いのは何故だろう。

*労働組合員等:
次ぎの一塊が「労働組合員」のような存在だと思う。アメリカの組合は社内の組合ではなく、会社側と別個の職能別に組織された存在である。また、ここは年功序列の時間給の世界で組合員ともなれば、経験で仕事の質というか内容も高度化され、時間給もそれに連れて上がっていく仕組みだ。彼等の身分は法律で保護されて、そこからサラリー制で何時何時何らかの問題を起こせば即刻馘首される危険性がある会社側に移っていく者は本当に極めて少ない。

見方を変えれば、そこでには地位や身分の垂直上昇はない世界だ。学歴が必要でないか否かは知らぬが大卒者もいる。ここでは絶対に技術を身に付けておく必要がある。最大の特色は多くの人種がいることで、白人、アフリカ系、ヒスパニック系、アジア系等々がい。動もすると英語が通じな者がいて悩まされるものだし、この辺りが問題で「識字率」だの「初等教育の充実の要あり」といった声が政府筋から上がるのもそのためだ。

*少数民族:
これが最も複雑で難しい層だろう。嘗ては少数民族(Minority、余談だが、カタカナ語製造業者は何故これを「ミノリティー」にしなかったのだろう。majorを「メジャー」と歪曲したくせに)と言われたアフリカ系、アジア系(中国、韓国、ベトナム等)インド、日系等々が間もなく3億1,600万人を超えるアメリカ人口の半分以上となる日が来るとさえ危惧されている。過半数でも少数民族というのかとの疑問が生じるのではないか。

「職業に貴賎の別なし」という綺麗事があるが、嘗ては最も単純且つ反復労働的な仕事に就いていたのがアフリカ系アメリカ人だった。だが、自由で開放的なアメリカは次第次第に移民を受け入れていったためにスペイン語系(ヒスパニック)が南米から不法も含めて急増し一大勢力となった。そこに今やアジア系で最大となった中国人も殺到し、さらに韓国からも増えてきた。インド人も増えた。中近東も増えたという具合だ。

この多くの人種間で仕事の奪い合いとなっていった事実もあるが、スポーツ界ではアメリカの三大スポーツ、ベースボール、フットボール、バスケットボールのプロリーグを見れば、さながらアフリカ系とヒスパニックが過半数を占めるかの如き有様だ。ここでは成功すれば巨万の富が得られるのだ。誰でも知っているだろう者にはバスケットボールのマイケル・ジョーダンがいる。Nikeには彼の名前をブランドにした靴があるのを承知している若者(だけか?)は多いだろう。

アフリカ系は芸能の世界にも数多く進出し、成功すれば経済的には潤おう。映画、音楽、テレビの世界では有名人が多い。だが、誤解してはならぬことは「彼等がアメリカを代表してはいない」ことだ、仮令大統領まで出した時代になってはいても。だが、我が国にはそういう者たちに憧れている傾向がある、差別も無きが如き公平だ平等な国だから。

成功者ばかりではない。アフリカ系の職場を荒らしたのが、きつい労働を厭わない韓系で、多くの大小の小売店にはキャッシュレジスター等には韓国系が多い。職を奪われたアフリカ系が反発して何時だったかのLAでの騒動が起きた。ヒスパニックも何時の間にかLAの30~40万人の韓国人がいると言われるKoreatownでは、韓国人に雇われ雑役夫となった者すら出てきたほど単純反復労働の職場を失ってきた。この少数民族間の職の確保競争は激化した。

私が聞かされた限りでも、アメリカの失業率を高めているのはこの層に属する人たちだ。しかも、合法違法を問わず、アメリカには移住、観光ヴィザ等で入って居座る者の数は多い。だからこそ、間もなく彼等が過半数を占めるとの観測が出るのだ。オバマ大統領はそこを狙ったのか新移民法を立案したが未だ議会を通過していない。邪推すれば、市民権を貰えた者が民主党の支持層になると読んで(希望して)いるのかも知れない。何しろ、そのうちに過半数となるのだから・・・。