360の1の10『自然と人間の歴史・世界篇』不確定性原理(ハイゼンベルク、1927)
量子力学といえば、ミクロの世界を取り扱う、その中から「不確定性原理」と呼ばれる式として2つある、これらについて、まずは、物理学者ハイゼンベルク(1901~1976)が発表したのが、こうある。
εq×ηp≧h/4π(1)
それからもう一つ、同時代の物理学者ケナードが導いた式が、次のとおり。
σq×σp≧h/4π(2)
この2つの式のもたらす意味の違いとしては、まずは、ハイゼンベルクの式は、物体の位置を測ったときの正しい値からのずれ(εq)と、測定によって引き起こされる運動量の乱れ(ηp)とは、互いにトレードオフ(背反関係)の関係にある。実験器具の良し悪しには、関係がないという。
いうなれば、位置を正確に測れば測るほど(ありていにいうと、はっきりさせるほど)、運動量の乱れは大きくなり(同じく、不確定になっていく)、両方を正確に知ることはできないのだという。
次に、ケナードの式は、「物体の位置のゆらぎσqと運動量のゆらぎσpは、ある一定以上に小さくすることはできない」というのであって、こちらは量子力学による結論の一つそのものであるという。いうなれば、極微の世界での物質の振る舞いには、測定とは関係なく、曖昧さがつきまとう。位置も運動量も決まった値にはならず、ある幅でゆらいでいるという。
なおのこと、ここでいわれるのは、ミクロの世界では、そこでの事象がどうなっているかを、一定以上の精度で測れないというのであって、古典物理学でいうところの話とは大いにことなる。
それは、電子など粒子の位置を知るには光を当てる必要があるが、その光の影響で電子の運動量(速度)の測定誤差が大きくなるからだという。かくして、正確な位置と運動量を同時に知ることは不可能との立場なのであり、その事象の観察者にとっては、やるせなさを感じることなのであろう。
そういう認識の空白を生じかねないことへの問題意識からか、その後の報道によると、例えば、ある「研究グループは人工的に発生させた中性子の持つ磁石の性質を2台の装置で観測する実験で、中性子の状態を精度良く測れる方法があることを突き止めた」というように、不確定性原理とは矛盾する向きの話が相次いでいるようだ。
(続く)
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